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電気応用 ・ 1 / 10

光束・光度・照度・輝度 — 明るさを測る4つの物差し

読み終えると、こうなる

電球売り場の棚に並ぶ『650lm』『7W』『Ra83』『5000K』という数字が、明るさ・電気代・色の自然さ・色みという4つの別々の情報だと見分けられるようになる

  • 『60W形なのに7W』のような表示を見て、どちらが明るさの指標でどちらが電気代の指標かを即座に言い分けられる
  • 色温度『2800K』『5000K』の数字だけで、電球色か昼白色かを判定できる
  • 演色性『Ra80』『Ra100』の違いから、その光の下で肌や食品の色がどれだけ自然に見えるかを見積もれる
考えてみよう

「60W形」と書かれたLED電球のパッケージを裏返すと、消費電力はたった7W前後だと書かれている。同じ明るさで働くはずなのに、電気は8分の1近くしか使っていないように見える。パッケージのどこにも嘘は書かれていないのに、この2つの数字は何を測っているのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電球売り場に並ぶlm・W・Ra・Kという4種類の数字を、それぞれ別の物差しとして読み分けられるようになっている。

明るさに関わる量には、光束・光度・照度・輝度という4つがある。どれも「光の量」に関係するが、測っている対象が違う。

名称記号単位測っているもの
光束F(Φ)lm(ルーメン)光源から出る光の総量。放射束〔W〕を人間の目の感度で重み付けした「目にとってのワット数」
光度Icd(カンデラ)ある方向への光の強さ。単位立体角あたりの光束(I=F/ω)
照度Elx(ルクス)照らされる面が単位面積あたりに受け取る光束(E=F/A)
輝度Lcd/m2光源や照らされた面を、ある方向から見たときのまぶしさ(見かけの明るさ)
光束・光度・照度・輝度の位置関係 光源から出る光の総量 光束 F〔lm〕 ある方向への強さ(単位立体角あたり) 光度 I〔cd〕=F/ω 面が単位面積あたりに受け取る量 照度 E〔lx〕=F/A 面をある方向から見たまぶしさ 輝度 L〔cd/m2〕 光源→方向→面→視線、の順に測る対象が変わっていく(自作の概念図) 光束は光源側の総量、光度はある方向への強さ、照度は受け手の面が受け取る量、輝度は見る側から見たまぶしさ

この中でSI(国際単位系)の基本単位になっているのは光度cdだけで、lmとlxはcdから組み立てられる単位だ。これは歴史的な経緯によるもので、かつて明るさの基準は「標準ろうそく1本の光の強さ」という、ある方向への強さ(光度)で定義されていた。そこから、光度Iの点光源が単位立体角(1sr、球の表面積のうち中心角に対応する部分)あたりに送り出す光を足し合わせたものが光束F、光束を受け取る面の単位面積あたりの量が照度E、という順番で組み立てられている。光源が全方向に一様な強さI〔cd〕で光っているなら、球の全立体角は4π〔sr〕なので、光束の総量はF=4πIになる——光度という「ある方向の強さ」から、光束という「全方向の総量」を導ける関係がここにある。光束は「光源が出す光の総量」、照度は「面が受け取る光の密度」というように、主語が光源側か受け手側かで区別すると整理しやすい。

照度と輝度は似ているようで別物だ。照度は「その面にどれだけ光が当たっているか」という入射側の量で、面の材質や色には関係しない。ところが輝度は「その面を見たときにどれだけまぶしく見えるか」という反射・放射側の量で、同じ照度でも黒い机と白い紙では輝度がまったく違う。「明るい部屋」という表現が、照度(机の上の量)の話なのか輝度(見た目のまぶしさ)の話なのかを区別すると、光の話が急に精密になる。

この区別を知らずに光源を選ぶと、実際の失敗につながる。たとえば「光束(lm)が大きいから明るいはずだ」と思って選んだスポットライトが、部屋全体では思ったより暗いことがある。これは配光(光をどの方向にどれだけ飛ばすか)が狭く集中しているためで、正面方向の光度は高くても、部屋全体に広がる光束のうち作業面に届く割合(次のトピックで扱う照明率)が低いと、机の上の照度は上がらない。逆に、光度がそれほど高くなくても配光が広く均一な器具なら、部屋全体の照度は稼げる。「光度が高い=部屋が明るい」ではなく、「その光度がどれだけの立体角に広がっているか」まで見て初めて、部屋の明るさ(照度)が決まる。

もう2つ、色に関する指標がある。演色性は、その光で照らしたとき物の色が基準光(自然光)に対してどれだけ忠実に見えるかを表す平均演色評価数Raで、100が最高値だ。色温度は光の色みを、その色を放つ黒体の温度〔K〕で表したもので、2800K前後は赤みがかった暖色(電球色)、5000K以上は青白い寒色(昼白色・昼光色)になる。夜空の星を思い浮かべると分かりやすい。オリオン座のベテルギウスのような温度の低い恒星は赤く、リゲルのような温度の高い恒星は青白く見える。日常の「熱いものは赤い(赤熱した鉄など)」という感覚は、実は温度が上がりきる手前の色にすぎず、さらに温度を上げていくと色は黄→白→青白へと変わっていく。色温度の数字は、この「温度をもっと上げた先の色」を基準にしているため、直感とは逆向きになる。

効率と演色性は独立の指標で、片方が良くても片方が悪い光源はいくらでもある。この区別を怠ると、演色性の低い光源を選んでしまい、精肉店やパン屋で商品の色がくすんで見える、美容室で仕上がりの髪色が実際と違って見える、といった実務上の失敗につながる。効率(lm/W)だけを見て光源を選ぶと、色を扱う仕事の現場では思わぬクレームの原因になる。

何lxにすればよいのか — JISの照度基準

単位と計算ができても、「では、その部屋は何lxにすればいいのか」には答えられない。その目安を用途別に定めているのが、JIS Z 9110(照明基準総則)だ。試験では「学校の教室の机上面の維持照度の推奨値はどれか」といった形で、数値そのものが問われる。

**維持照度**とは、「その照明施設を使っている期間中、下回らないように維持すべき平均照度」のことだ。新品の器具は明るいが、ランプは劣化し、反射板やカバーには埃が積もる。**いちばん暗くなったときでも、この値を下回らせない**——だから設計時にはこの値より明るく作る。「設計照度」ではなく「維持照度」という言い方が使われるのは、時間による目減りを織り込んだ基準だからだ。

代表的な推奨値は次のとおり。

場所維持照度の推奨値
事務所の事務室・設計室750lx
学校の教室(机上面)300lx
学校の実験実習室500lx
廊下・階段100lx 程度

教室の300lxと事務室の750lxの2つを軸に覚えると、間の値も見当が付く。なお製図室のように細かい図面を扱う室は、教室や実験実習室より高い区分(事務所の設計室と同じ水準)に置かれるとする資料が多い。室ごとの正確な値は、JIS Z 9110の表そのものに当たって確認したい。

なぜ場所で桁が変わるのか。求められているのは「明るさ」ではなく「その作業ができること」だからだ。細かい図面を長時間見る設計室と、黒板と教科書を見る教室では、目が必要とする情報の細かさが違う。廊下は歩ければよいので、さらに低い。照度基準の表は、その空間で人が何をするかの一覧表でもある。

実務でも、リニューアルの提案はここから始まる。既存の照度を照度計で測り、基準値と比べ、足りていなければ器具の増設や光源の変更を提案する——「なんとなく暗いですね」ではなく「教室基準の300lxに対して180lxです」と言えるかどうかが、提案の通りやすさを変える。

銘板の数字が「別々の物差し」だと分かると、光源選びが変わる

この整理が頭に入ると、照明器具のカタログや電球のパッケージに並ぶ数字が、単なる型番の羅列ではなく「明るさ(lm)」「電気代(W)」「色の自然さ(Ra)」「色み(K)」という4つの独立した情報だと読めるようになる。今日試せることとして、家にある電球や照明器具の梱包箱・器具本体の銘板を見て、この4種類の数字がそれぞれ書かれているかを確認してみるといい。全部そろっていない製品もあり、その場合は選ぶ側が何を優先しているか(価格重視でRa表示を省いている、など)を推測する材料になる。

この4つの単位が国際的に統一されているのは、照明の設計・検査・取引を誰が測っても同じ結果になるようにするためだ。次のトピックで扱う「距離による照度の変化」も、ここで定義した照度Eが土台になる。第一種電気工事士がビルや工場の照明設備を扱うようになると、住宅よりも広い空間・多様な光源を相手にすることになり、この4つの物差しを正しく使い分けられるかどうかが、照明計算全体の理解を左右する。

冒頭のLED電球、「60W形」と「7W」という2つの数字は本当に矛盾しているのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 明るさの比較にW(消費電力)を使わせる

    なぜ引っかかる白熱電球の時代は『60Wの電球』のようにWで明るさを語る習慣が染み付いている。LEDのように効率がまったく違う光源が同じ売り場に並ぶと、W数が小さい方を暗いと錯覚しやすい

    見破り方明るさの比較は必ずlm(光束)の表示で行う。Wは電力・電気代の指標であって明るさの指標ではないと決めておく。パッケージにlm表示があればそちらを見る

  2. 色温度の高低を、暖色・寒色と逆に覚えさせる

    なぜ引っかかる『温度が高い=熱い=赤い』という日常の直感と、色温度(黒体放射の温度)の定義は逆方向になる。数値が大きいほど実際は青白い寒色になる

    見破り方数字と色を機械的に結びつけて覚える。2800K前後は電球色(暖色)、5000K以上は昼白色・昼光色(寒色)。直感の『高温=赤』は色温度には当てはめない

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 光束F〔lm〕は光源から出る光の総量、光度I〔cd〕は特定方向への光の強さ(I=F/ω)
  2. 照度E〔lx〕は面が受け取る光の密度(E=F/A)、輝度L〔cd/m2〕は目に届く見かけの明るさ
  3. 光度cdはSI基本単位であり、lm・lxはcdから組み立てられる単位
  4. 演色性Raは光がどれだけ自然に色を再現するかの指標(最高100)、色温度Kは光の色みの指標で低いほど赤い暖色・高いほど青白い寒色
  5. 明るさの比較はlm(光束)で行う。W(消費電力)は電気代の指標であって明るさの指標ではない
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