「60W形」と書かれたLED電球のパッケージを裏返すと、消費電力はたった7W前後だと書かれている。同じ明るさで働くはずなのに、電気は8分の1近くしか使っていないように見える。パッケージのどこにも嘘は書かれていないのに、この2つの数字は何を測っているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電球売り場に並ぶlm・W・Ra・Kという4種類の数字を、それぞれ別の物差しとして読み分けられるようになっている。
明るさに関わる量には、光束・光度・照度・輝度という4つがある。どれも「光の量」に関係するが、測っている対象が違う。
| 名称 | 記号 | 単位 | 測っているもの |
|---|---|---|---|
| 光束 | F(Φ) | lm(ルーメン) | 光源から出る光の総量。放射束〔W〕を人間の目の感度で重み付けした「目にとってのワット数」 |
| 光度 | I | cd(カンデラ) | ある方向への光の強さ。単位立体角あたりの光束(I=F/ω) |
| 照度 | E | lx(ルクス) | 照らされる面が単位面積あたりに受け取る光束(E=F/A) |
| 輝度 | L | cd/m2 | 光源や照らされた面を、ある方向から見たときのまぶしさ(見かけの明るさ) |
この中でSI(国際単位系)の基本単位になっているのは光度cdだけで、lmとlxはcdから組み立てられる単位だ。これは歴史的な経緯によるもので、かつて明るさの基準は「標準ろうそく1本の光の強さ」という、ある方向への強さ(光度)で定義されていた。そこから、光度Iの点光源が単位立体角(1sr、球の表面積のうち中心角に対応する部分)あたりに送り出す光を足し合わせたものが光束F、光束を受け取る面の単位面積あたりの量が照度E、という順番で組み立てられている。光源が全方向に一様な強さI〔cd〕で光っているなら、球の全立体角は4π〔sr〕なので、光束の総量はF=4πIになる——光度という「ある方向の強さ」から、光束という「全方向の総量」を導ける関係がここにある。光束は「光源が出す光の総量」、照度は「面が受け取る光の密度」というように、主語が光源側か受け手側かで区別すると整理しやすい。
この区別を知らずに光源を選ぶと、実際の失敗につながる。たとえば「光束(lm)が大きいから明るいはずだ」と思って選んだスポットライトが、部屋全体では思ったより暗いことがある。これは配光(光をどの方向にどれだけ飛ばすか)が狭く集中しているためで、正面方向の光度は高くても、部屋全体に広がる光束のうち作業面に届く割合(次のトピックで扱う照明率)が低いと、机の上の照度は上がらない。逆に、光度がそれほど高くなくても配光が広く均一な器具なら、部屋全体の照度は稼げる。「光度が高い=部屋が明るい」ではなく、「その光度がどれだけの立体角に広がっているか」まで見て初めて、部屋の明るさ(照度)が決まる。
もう2つ、色に関する指標がある。演色性は、その光で照らしたとき物の色が基準光(自然光)に対してどれだけ忠実に見えるかを表す平均演色評価数Raで、100が最高値だ。色温度は光の色みを、その色を放つ黒体の温度〔K〕で表したもので、2800K前後は赤みがかった暖色(電球色)、5000K以上は青白い寒色(昼白色・昼光色)になる。夜空の星を思い浮かべると分かりやすい。オリオン座のベテルギウスのような温度の低い恒星は赤く、リゲルのような温度の高い恒星は青白く見える。日常の「熱いものは赤い(赤熱した鉄など)」という感覚は、実は温度が上がりきる手前の色にすぎず、さらに温度を上げていくと色は黄→白→青白へと変わっていく。色温度の数字は、この「温度をもっと上げた先の色」を基準にしているため、直感とは逆向きになる。
効率と演色性は独立の指標で、片方が良くても片方が悪い光源はいくらでもある。この区別を怠ると、演色性の低い光源を選んでしまい、精肉店やパン屋で商品の色がくすんで見える、美容室で仕上がりの髪色が実際と違って見える、といった実務上の失敗につながる。効率(lm/W)だけを見て光源を選ぶと、色を扱う仕事の現場では思わぬクレームの原因になる。
何lxにすればよいのか — JISの照度基準
単位と計算ができても、「では、その部屋は何lxにすればいいのか」には答えられない。その目安を用途別に定めているのが、JIS Z 9110(照明基準総則)だ。試験では「学校の教室の机上面の維持照度の推奨値はどれか」といった形で、数値そのものが問われる。
代表的な推奨値は次のとおり。
| 場所 | 維持照度の推奨値 |
|---|---|
| 事務所の事務室・設計室 | 750lx |
| 学校の教室(机上面) | 300lx |
| 学校の実験実習室 | 500lx |
| 廊下・階段 | 100lx 程度 |
教室の300lxと事務室の750lxの2つを軸に覚えると、間の値も見当が付く。なお製図室のように細かい図面を扱う室は、教室や実験実習室より高い区分(事務所の設計室と同じ水準)に置かれるとする資料が多い。室ごとの正確な値は、JIS Z 9110の表そのものに当たって確認したい。
なぜ場所で桁が変わるのか。求められているのは「明るさ」ではなく「その作業ができること」だからだ。細かい図面を長時間見る設計室と、黒板と教科書を見る教室では、目が必要とする情報の細かさが違う。廊下は歩ければよいので、さらに低い。照度基準の表は、その空間で人が何をするかの一覧表でもある。
実務でも、リニューアルの提案はここから始まる。既存の照度を照度計で測り、基準値と比べ、足りていなければ器具の増設や光源の変更を提案する——「なんとなく暗いですね」ではなく「教室基準の300lxに対して180lxです」と言えるかどうかが、提案の通りやすさを変える。
銘板の数字が「別々の物差し」だと分かると、光源選びが変わる
この整理が頭に入ると、照明器具のカタログや電球のパッケージに並ぶ数字が、単なる型番の羅列ではなく「明るさ(lm)」「電気代(W)」「色の自然さ(Ra)」「色み(K)」という4つの独立した情報だと読めるようになる。今日試せることとして、家にある電球や照明器具の梱包箱・器具本体の銘板を見て、この4種類の数字がそれぞれ書かれているかを確認してみるといい。全部そろっていない製品もあり、その場合は選ぶ側が何を優先しているか(価格重視でRa表示を省いている、など)を推測する材料になる。
この4つの単位が国際的に統一されているのは、照明の設計・検査・取引を誰が測っても同じ結果になるようにするためだ。次のトピックで扱う「距離による照度の変化」も、ここで定義した照度Eが土台になる。第一種電気工事士がビルや工場の照明設備を扱うようになると、住宅よりも広い空間・多様な光源を相手にすることになり、この4つの物差しを正しく使い分けられるかどうかが、照明計算全体の理解を左右する。
冒頭のLED電球、「60W形」と「7W」という2つの数字は本当に矛盾しているのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。