押しボタンスイッチは、箱から出した時点ですでに何本か結線されている。「余った線は外して整理したい」——その1本を外した瞬間、作品はどう判定されるか。
見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、支給された部材に「すでに手が加えられている」という状態そのものが何を意味するか、分かるようになっている。
欠陥の判断基準は、第一種も第二種も同じ1つの文書
前のトピックで見たとおり、欠陥の判断基準——「電気工事士技能試験(第一種・第二種)欠陥の判断基準」——は、第一種・第二種共通の1つの文書だ。だから「第一種固有の欠陥」という項目が、判断基準の中に別建てで存在するわけではない。
それでも、第一種でしか実際に問われない項目がある。理由は単純で、第一種の材料(高圧絶縁電線、押しボタンスイッチなどの制御機器)が登場して初めて、その項目に該当する状況が生まれるからだ。ここでは、その代表的な3つを見ていく。
12-3 — 支給品の既設配線を変更・撤去したもの
候補問題No.8のような電磁開閉器(MS)+押しボタン(B)の回路では、押しボタンスイッチが結線済みの既設配線が付いた状態で支給されることがある。この配線を取り除いたり変更したりすると、判断基準12-3「支給品(押しボタンスイッチ等)の既設配線を変更又は取り除いたもの」に該当し、欠陥になる。概要ポイントにも、既設配線を取り除いてしまった作品の写真例が載っている。
第二種の候補問題には押しボタンスイッチという材料自体が登場しないため、この項目は第一種で初めて実際の判定対象になる。
より線の結線——緩い基準と厳しい基準が同居する
第二種でもVVRなどより線が出る余地はあるが、より線を本格的に扱う場面は第一種のKIP(高圧絶縁電線)や制御回路の電線で増える。素線をすべて端子内に収める、減線しない、という2点は、単線の感覚では気づきにくい確認項目だ。
端子台の高圧側・低圧側——同じ作業に2つの基準
前のトピックで扱った8-3イ(高圧側20mm以上で欠陥)・8-3ロ(低圧側5mm以上で欠陥)も、第一種で高圧側の結線(変圧器一次側)が登場して初めて実際に使われる基準だ。同じ「端子台への結線」という作業の中に、2つの許容値が同居している。
共通項目として押さえておくもの
一方で、次の項目は第一種・第二種で共通に問われる。
- 5-1ハ(VVR,CVVの介在物が抜けたもの) — CVV(制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル)は第一種の制御回路で使われ得るケーブルだが、この項目自体は第一種専用ではない
- 1〜11の大半(未完成・配置寸法・誤接続・色別・電線の損傷・リングスリーブ・差込形コネクタ・器具への結線・管工事・取付枠) — 第二種の既存トピックで詳述済みの項目がそのまま適用される
つまり、第一種の学習で新たに足すべきは、①押しボタン等の既設配線、②より線特有の欠陥、③高圧側・低圧側の露出基準という3点であり、それ以外の12大項目の骨格は第二種の理解がそのまま生きる。この3点さえ意識して上乗せすれば、第二種で身につけた12大項目の読み方を、そのまま第一種の練習に持ち込める。
一歩先の使い道
支給品にすでに手が加えられている状態を「触らない」と判断する感覚は、現場での改修工事でも重要になる。既設の配線・機器を安易に外さず、まず設計図と現況を照合してから手を入れる、という規律の縮図がここにある。
今日試せる行動
判断基準のPDFを開き、12-3・8-3イ・ロ・5-4・8-2の原文を実際に読んでみるといい。第二種のときに読んだ項目と、今回初めて実感を伴って読める項目の違いが分かる。
覚える意味
既設配線を勝手に外さない、より線を丁寧に扱う、高圧側の基準を混同しない——どれも、事故につながる状態を未然に防ぐための申し送りだ。丸暗記の対象というより、先に失敗を見てきた側からの警告だと思って読むほうが頭に入る。
面白さ
「第一種固有の欠陥」という言葉から特別な条文を想像していた人ほど、実は共通の1文書の中に答えがあったと知ったときの驚きが大きい。
ワクワクする未来
支給品を活かす判断、より線を丁寧に扱う技術は、そのまま自家用電気工作物の現場で求められる基本動作になる。
冒頭の「押しボタンの配線を1本外した瞬間、作品はどう判定されるか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。