過去の試験問題で支給されたKIP(高圧絶縁電線)は、たった約200mm。切って、剥いて、端子台に差すだけの作業に見える。
それなのに欠陥の判断基準は、この高圧側だけ「心線の露出20mmまで」と、低圧側(5mm)の4倍も緩い数値を設定している。細くて短い電線のはずが、なぜそこだけ基準が緩いのか。
見当がつかなくて当然だ。というより、この数値差の理由は公表資料のどこにも書かれていない。読み終えるころには、書かれていないことを推測で埋めずに、2つの数値をそのまま使い分ける構えが身についている。
「KIP」という名前について、まず確認しておくこと
候補問題の公表資料(P_R08P.pdf)にも、欠陥の判断基準にも、技能試験の概要と注意すべきポイントにも、「KIP」という電線名は一度も登場しない。確認できるのは、実際に令和7年度上期に出題された試験問題(候補No.1の構成)の材料表と配線図だけだ。
材料表には「高圧絶縁電線(KIP),8mm2,長さ約200mm…1本」とあり、配線図では「KIP 8×2」として、電源(1φ2W 6 600V)から変圧器一次側(端子台のU・V)までの2本・各約100mmに使われていた。これは1回分の実施結果であり、令和8年度の各問で実際にKIPが支給されるかは当日の試験問題で確定する。過去の実績として「例年の試験問題ではKIPが支給されてきた」と理解しておくのが、事実に即した書き方になる。
より線であることが持つ意味
KIPは8mm2のより線だ。単線(VVFなど)を扱う感覚のまま結線すると、より線特有の欠陥に気づきにくい。
判断基準5-4「より線を減線したもの」、8-2「より線の結線」では素線の一部が端子に入っていないことが欠陥にあたる。一方で8-1ロの解説には「より線の場合は,引っ張ると外れてしまう恐れがありますが,持ち上げる程度で外れなければ欠陥とはなりません」ともある。単線より緩い判定と、単線にはない独自の欠陥が、より線には両方存在する。
高圧側と低圧側で、数値がまったく違う
端子台への結線で押さえるべきは3点——①心線の確実な締め付け(単線は引っ張って外れない・より線は持ち上げて外れない・素線をはみ出させない)、②心線の露出(高圧側20mm・低圧側5mm未満)、③絶縁被覆を噛み込ませない——だが、②だけは高圧側と低圧側で数値がまったく違う。同じ「端子台への結線」という作業を、頭の中で2つの基準に分けておく必要がある。
実際に高圧を扱っている時間はどれだけか
候補問題No.7・No.10のような、VCB(真空遮断器)・CT(変流器)・VT(計器用変圧器)を含む高圧受電設備を模した課題でも、VCB・CT・VT本体はいずれも施工省略枠内に描かれている。実際に受験者が結線するのは、CT・変圧器・VTの端子台まわりと、そこから継電器・電流計・電圧計へ至る低圧の計器回路が中心と読める。
つまり、作品の中で本当に「高圧」なのは、電源から変圧器一次側(KIP約200mm・端子2箇所)までの、ごく狭い範囲にとどまる。60分の作業のうち、高圧部分そのものに使う時間は決して多くない。「高圧の試験」の実体は、高圧を安全に低圧へ落とす、その結線を正確にやれるかにある。
一歩先の使い道
高圧絶縁電線の処理は、キュービクル内の高圧引込線まわりの工事に直結する。より線の端子処理、端子台の高圧側・低圧側の使い分けは、この技能試験だけの知識ではない。
今日試せる行動
手元により線の電線があれば、素線を1本だけ意図的にはみ出させてみて、端子にどう入るかを観察してみるといい。素線の未挿入がどれだけ見た目で分かりにくいかが実感できる。
覚える意味
高圧側の数値が低圧側と違う理由は、公表資料に書かれていない。理屈で埋めようとせず、高圧側20mm・低圧側5mmを別々の数字として覚えておく。いずれにせよ判断基準は合否の最低ラインであって、実際の工事ではより厳密な施工が求められる。
面白さ
高圧・低圧という言葉の重さに反して、実際に施工する範囲がごく限られていると分かると、高圧受電設備そのものへの見方が変わる。
ワクワクする未来
高圧絶縁電線の処理ができるということは、ビルや工場の受変電設備の新設・改修という、これから需要が続く現場に入っていける、ということでもある。
冒頭の「なぜ高圧側だけ基準が緩いのか」——公表資料はその理由を書いていない。書かれていないことを推測で埋めない構えについては、理解度チェックの最後の問題で確かめてみよう。