第二種電気工事士の技能試験は40分だった。第一種はそれより20分長い、60分。
指定工具は第二種のときと同じ品目で、増えていない。欠陥の判断基準も、第二種のときに読んだのと同じ1つの文書がそのまま使われる。合否の決め方——「欠陥のない作品が合格」——も変わらない。
では、増えた20分は何に使われるのか。工具が増えたわけでも、判定が甘くなったわけでもないのに、時間だけが1.5倍になっている。
見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、この20分がどこに吸収されているかが具体的に分かるようになっている。
まず結論から言うと、第一種の技能試験は、第二種の延長線上にありながら、いくつかの前提が変わる。ここでは候補問題の練習に入る前に、その前提を第二種と並べて確認しておく。
試験時間 — 60分(予定)
候補問題の公表資料には「試験時間は,すべての問題について60分の予定です」と明記されている。第二種の40分と比べて20分長い。ただし「予定」という表記のとおり、試験時間は変更される場合があるとされている。
支給材料 — 全て支給、持込禁止
作業に必要な材料は全て支給され、支給材料のみで作品を完成させる。持込材料の使用は欠陥の判断基準12-1「支給品以外の材料を使用したもの」に該当する。作業開始後の交換・追加支給は、リングスリーブ・差込形コネクタ・端子ねじ以外は行われない。だからこそ、試験開始前の材料確認の時間で、材料表と実際に支給された材料を1つずつ照合しておく必要がある。この確認時間は60分の作業時間には含まれない。
令和7年度上期に実際に出題された試験問題(候補No.1の構成)の材料表を見ると、高圧絶縁電線(KIP)8mm2・約200mm、VVF2.0-2C(シース青色)、VVF1.6-3C、VVF1.6-2C×2、接地線用のIV5.5mm2緑・IV1.6緑、変圧器代用の端子台(3P・ねじ締め端子5箇所)、ランプレセプタクル、スイッチ類、コンセント類、アウトレットボックス、ゴムブッシング、リングスリーブ、差込形コネクタが並ぶ。これは実際にあった1回分の実例であり、令和8年度の各問でどの材料が支給されるかは当日の試験問題で確定する。
持参工具 — 第二種と同じ品目
工具は自分で持参し、貸し出しはない。受験案内は「電動工具以外のすべての工具を使用することができます」としつつ、最低限必要な指定工具として次の品目を挙げている。
- ペンチ
- プラスドライバー・マイナスドライバー
- 電工ナイフ
- スケール
- ウォーターポンププライヤー
- リングスリーブ用圧着工具(JIS C 9711:1982・1990・1997適合品・柄が黄色のもの)
「6点」「7点」という数え方は、ドライバーをプラス・マイナスで1項目に数えるか2項目に数えるかで変わる。市販の工具セットの「◯点セット」という表示も同じ理由でぶれるので、数ではなく品目で照合するほうが確実だ。
改造工具・自作工具・回路計(テスター)等の計測器は使用禁止。カッターナイフは「使用は自粛してください」とされている。適合外の圧着工具で圧着マークが刻印されない場合は欠陥の対象になる。
判定の仕方 — 「欠陥のない作品が合格」
合否は「作品の欠陥の有無の判定結果」に基づいて決定される。部分点や減点の積み上げという考え方はなく、判断基準に該当する箇所が1つでもあれば不合格になる。この判断基準——「電気工事士技能試験(第一種・第二種)欠陥の判断基準」——は、1.未完成のものから12.その他までの12大項目で構成され、第一種・第二種で共通の1つの文書が使われている。
数値[mm]の許容についても、試験センターは「試験環境や代用品の使用からくる制約等を勘案して設定したもの」であり、実際の工事では限りなく0mmに近い施工が求められる、と注意を添えている。この前提は第一種でも変わらない。
第二種との違いを一覧で見る
| 項目 | 第二種 | 第一種 |
|---|---|---|
| 試験時間 | 40分(予定) | 60分(予定) |
| 候補問題数 | 13問 | 10問 |
| 電源の起点 | 低圧側から開始(単相100V・200Vが中心。No.4のように三相200Vの電源が同居する問題もある) | 全問が高圧受電(3φ3W/1φ2W 6 600V)から開始し、変圧器の結線が入る |
| 図に書かれる電線種 | 記載あり(無指定はVVF1.6というデフォルト規定つき) | 記載なし。デフォルト規定自体が存在せず、当日の試験問題で確定する |
| 指定工具 | ペンチ/プラス・マイナスドライバー/電工ナイフ/スケール/ウォーターポンププライヤー/リングスリーブ用圧着工具 | 同じ品目(第二種と同一) |
| 欠陥の判断基準 | 共通の1文書 | 共通の1文書(第二種と同一) |
| 図記号の準拠規格 | JIS C 0303:2000 | JIS C 0617-1〜13及びJIS C 0303:2000(第一種のみ2規格を併用) |
表の中で本当に押さえるべきなのは、時間・候補問題数・図の情報量という「増えた側」と、工具・判断基準という「変わらない側」がはっきり分かれていることだ。この線引きを最初に持っておくと、これから読む各トピックが「共通の基礎の上に、何が追加されているか」という整理で頭に入ってくる。
高圧受電から始まる、という構造
第一種の10問は、すべて「電源 6 600V」の高圧受電から始まり、変圧器(端子台代用)の結線を経て、100V・200V・三相200Vといった低圧側の回路につながる。第二種にはなかったこの構造こそが、増えた20分の主な行き先になる。次のトピックからは、この構造を1つずつ分解していく。まずは、候補問題の図に「何が書かれていて、何が書かれていないか」という読み方から始める。
一歩先の使い道
60分という時間配分は、試験のためだけの技術ではない。現場でも「今日は何にどれだけ時間を割けるか」を先に見積もってから作業に入る段取りは同じ形をしている。指定工具と判断基準が第二種と共通だと知っておけば、練習道具を買い足す前に、まず今持っている工具で足りるかを確認する癖がつく。
今日試せる行動
手元に第二種受験時の工具箱があれば、そのまま受験案内の指定工具のリストと照合してみるといい。買い足しが必要かどうかは、この5分の確認で決まる。
覚える意味
「欠陥のない作品が合格」という基準は、部分点という発想を捨てさせることで、現場での仕事の質を担保している。高圧を扱う自家用電気工作物では、小さな欠陥が事故につながる規模も大きくなる。時間が延びたのは、その分だけ確実な作業を求められているからだ。
面白さ
第二種と第一種で、指定工具と判断基準の文書がまったく同じだと知ると、両者の距離が急に近く感じられる。差は道具でも判定基準でもなく、扱う電気の規模だけだ。
ワクワクする未来
自家用電気工作物の現場——ビルの受変電設備や工場の動力設備——に踏み込む資格を、この60分の試験が用意している。試験の形を正しく理解しておくことは、その入口に立つための最初の一歩になる。
冒頭の「増えた20分がどこへ消えるか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。