第二種の候補問題には「EM-EEF 2.0-2C」のようにケーブル名が書き込まれ、「記載のない電線の種類は,VVF1.6とする」というデフォルト規定まであった。図を見れば、使う電線の見当がついた。
第一種の候補問題10問を隅々まで見ても、ケーブルの種類がひとつも書かれていない。電線の太さも、寸法も、色別も、施工条件も、何も書かれていない。
第二種の資料より不親切に見える。だが試験センターは、わざわざ手を抜いて情報を減らしているわけではないはずだ。
見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、この「何も書かれていない」ことの意味が分かるようになっている。
まず、候補問題公表資料(P_R08P.pdf)にある注記を並べてみる。第一種の資料には、次のような注記がある。
- 注1: 図記号はJIS C 0617-1〜13及びJIS C 0303:2000に準拠する
- 注6: 機器・器具においては,端子台で代用するものもある
- 注7: 電源・機器・器具の配置については変更する場合がある。接地端子に係る接地工事及びA・Vに至る工事については出題時に明記する
そして出題方法には「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します」とある。ここまでは第二種の資料にも似た文言がある。だが決定的に違うのは、第二種にある「記載のない電線の種類は,VVF1.6とする」という一文が、第一種の資料にはどこにも無いことだ。
「無いこと」を確認する
第二種の学習経験がある人ほど、この違いに最初つまずく。第二種では、図を見た時点である程度「この回路はこう作る」と像を結べた。第一種で同じ感覚のまま候補問題を眺めると、書かれていない部分を無意識に補ってしまい、実は何も確定していない箇所を「分かったつもり」にしてしまう。
骨格から読み取れる4つのこと
図だけを見て確実に言えるのは、次の4点にとどまる。
- 電源の系統 — 1φ2W 6 600Vか、3φ3W 6 600Vか
- 機器の種類と配置 — 変圧器(単相1台・単相2台V結線・三相1台)、開閉器、電磁開閉器、計器類などがどこにあるか
- 施工省略の範囲 — 破線や注記で示された、当日結線しなくてよい部分
- 器具の記号と役割 — イ・ロ・ハといった記号、R(ランプレセプタクル)・MS(電磁開閉器)といった注記された略号
これ以外——電線の種類・太さ、寸法、色別、リングスリーブか差込形コネクタか、端子台がどの機器を代用しているか——は、すべて当日の試験問題で確定する。
端子台代用という「もう1つの空白」
注6の「機器・器具においては,端子台で代用するものもある」も、同じ構造を持つ。実際に令和7年度上期に出題された試験問題(候補No.1の構成)では、変圧器が「変圧器は端子台で代用する」と明記され、代用の内部結線図まで別途配られた。だが、これは1回分の実例であり、変圧器以外の機器(開閉器・電磁開閉器・タイムスイッチ・継電器など)が端子台で代用されるかどうかは、公表資料からは確定できない。候補問題の図に端子台らしき記号を見つけても、「これは○○の代用だ」と先読みしないことが大切だ。
なぜこの構造なのか
第二種の候補問題にデフォルト規定があるのは、住宅や小規模店舗という比較的画一的な現場を想定しているからだと考えられる。一方、第一種が対象にするビル・工場の受変電設備は、電線の種類も接続方法も現場ごとに事情が変わる。候補問題の図があえて骨格だけを示しているのは、当日配られる施工条件を正確に読み取る力そのものを、技能試験で問おうとしているからだ、と読むことができる。
つまり、練習で鍛えるべきは「No.5はこの色」という記憶力ではなく、「電源はこの系統、機器はこの配置、あとは当日の施工条件次第」という骨格の把握力になる。この視点を持って次のトピック以降——変圧器の端子台結線、KIPの処理、第一種固有の欠陥、制御回路——を読んでいくと、どの候補問題にも共通する読み方が見えてくる。
一歩先の使い道
現場に出れば、配線図と施工条件が別々の書類として渡されることは珍しくない。図面だけを見て「分かったつもり」にならず、指示書や仕様書と突き合わせて初めて確定させる癖は、この読み方の延長線上にある。
今日試せる行動
候補問題のPDFを1問開き、「これは図に書かれている」「これは書かれていない」と実際に線を引き分けてみるといい。線を引く作業そのものが、丸暗記への逃げ道を塞ぐ。
覚える意味
図に情報を詰め込みすぎないことは、試験センターなりの配慮でもある。電線種や色別といった、年度や現場事情で変わりうる要素を候補問題という共通の土台に固定してしまうと、逆に応用が利かなくなる。
面白さ
「不親切に見える図ほど、実は読み手の力を信頼している」という見方は、候補問題以外の設計図やマニュアルを読むときにも使える視点になる。
ワクワクする未来
当日の施工条件を読み解く力は、そのまま現場での図面読解力に直結する。第一種の技能試験は、その最初の訓練の場になっている。
冒頭の「なぜこの問題だけ、電線の種類がひとつも書かれていないのか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。