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技能試験の基礎(試験の形・端子台・KIP・第一種固有の欠陥) ・ 2 / 6

候補問題図の読み方——ケーブル種も寸法も特記もない理由

読み終えると、こうなる

候補問題の図を『答えが半分書かれた設計図』ではなく『骨格だけの見取り図』として読み分けられるようになる

  • 図に書かれている情報(配置・機器・施工省略の範囲)と、書かれていない情報(電線種・寸法・色別)を線引きできる
  • 『この問題はこの色・この電線』という丸暗記に頼らず、当日の施工条件を読み取る前提で練習計画を立てられる
  • 変圧器・開閉器などの機器が端子台で代用されている図を見たとき、代用の範囲は当日確定すると理解した上で練習できる
考えてみよう

第二種の候補問題には「EM-EEF 2.0-2C」のようにケーブル名が書き込まれ、「記載のない電線の種類は,VVF1.6とする」というデフォルト規定まであった。図を見れば、使う電線の見当がついた。

第一種の候補問題10問を隅々まで見ても、ケーブルの種類がひとつも書かれていない。電線の太さも、寸法も、色別も、施工条件も、何も書かれていない。

第二種の資料より不親切に見える。だが試験センターは、わざわざ手を抜いて情報を減らしているわけではないはずだ。

見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、この「何も書かれていない」ことの意味が分かるようになっている。

まず、候補問題公表資料(P_R08P.pdf)にある注記を並べてみる。第一種の資料には、次のような注記がある。

  • 注1: 図記号はJIS C 0617-1〜13及びJIS C 0303:2000に準拠する
  • 注6: 機器・器具においては,端子台で代用するものもある
  • 注7: 電源・機器・器具の配置については変更する場合がある。接地端子に係る接地工事及びA・Vに至る工事については出題時に明記する

そして出題方法には「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します」とある。ここまでは第二種の資料にも似た文言がある。だが決定的に違うのは、第二種にある「記載のない電線の種類は,VVF1.6とする」という一文が、第一種の資料にはどこにも無いことだ。

「無いこと」を確認する

候補問題の図に書かれている情報/いない情報 図に書かれている ・電源の系統(1φ2W/3φ3W) ・機器の種類と配置 ・施工省略の範囲 ・器具の記号(イ・ロ等) ・変圧器の結線表記 (V2V/△3△等) 図に書かれていない ・電線の種類 ・寸法 ・電線の色別 ・接続方法 ・端子台代用の対象範囲 (デフォルト規定自体が無い) 左は図から読み取れる骨格。右は当日の試験問題で初めて確定する部分——第一種にはここを埋める既定値が存在しない

第二種の学習経験がある人ほど、この違いに最初つまずく。第二種では、図を見た時点である程度「この回路はこう作る」と像を結べた。第一種で同じ感覚のまま候補問題を眺めると、書かれていない部分を無意識に補ってしまい、実は何も確定していない箇所を「分かったつもり」にしてしまう。

第一種の図の不親切さは、手抜きではない。電線種・寸法・接続方法という、実際の工事でも現場ごとに変わる要素を、候補問題という共通の骨格からあえて切り離している。裏を返せば、公表図から練習できるのは回路の骨格と結線の考え方であり、「この問題はこのケーブル」と丸暗記する勉強法が第二種以上に通用しない設計になっている。

骨格から読み取れる4つのこと

図だけを見て確実に言えるのは、次の4点にとどまる。

  1. 電源の系統 — 1φ2W 6 600Vか、3φ3W 6 600Vか
  2. 機器の種類と配置 — 変圧器(単相1台・単相2台V結線・三相1台)、開閉器、電磁開閉器、計器類などがどこにあるか
  3. 施工省略の範囲 — 破線や注記で示された、当日結線しなくてよい部分
  4. 器具の記号と役割 — イ・ロ・ハといった記号、R(ランプレセプタクル)・MS(電磁開閉器)といった注記された略号

これ以外——電線の種類・太さ、寸法、色別、リングスリーブか差込形コネクタか、端子台がどの機器を代用しているか——は、すべて当日の試験問題で確定する。

端子台代用という「もう1つの空白」

注6の「機器・器具においては,端子台で代用するものもある」も、同じ構造を持つ。実際に令和7年度上期に出題された試験問題(候補No.1の構成)では、変圧器が「変圧器は端子台で代用する」と明記され、代用の内部結線図まで別途配られた。だが、これは1回分の実例であり、変圧器以外の機器(開閉器・電磁開閉器・タイムスイッチ・継電器など)が端子台で代用されるかどうかは、公表資料からは確定できない。候補問題の図に端子台らしき記号を見つけても、「これは○○の代用だ」と先読みしないことが大切だ。

なぜこの構造なのか

第二種の候補問題にデフォルト規定があるのは、住宅や小規模店舗という比較的画一的な現場を想定しているからだと考えられる。一方、第一種が対象にするビル・工場の受変電設備は、電線の種類も接続方法も現場ごとに事情が変わる。候補問題の図があえて骨格だけを示しているのは、当日配られる施工条件を正確に読み取る力そのものを、技能試験で問おうとしているからだ、と読むことができる。

つまり、練習で鍛えるべきは「No.5はこの色」という記憶力ではなく、「電源はこの系統、機器はこの配置、あとは当日の施工条件次第」という骨格の把握力になる。この視点を持って次のトピック以降——変圧器の端子台結線、KIPの処理、第一種固有の欠陥、制御回路——を読んでいくと、どの候補問題にも共通する読み方が見えてくる。

一歩先の使い道

現場に出れば、配線図と施工条件が別々の書類として渡されることは珍しくない。図面だけを見て「分かったつもり」にならず、指示書や仕様書と突き合わせて初めて確定させる癖は、この読み方の延長線上にある。

今日試せる行動

候補問題のPDFを1問開き、「これは図に書かれている」「これは書かれていない」と実際に線を引き分けてみるといい。線を引く作業そのものが、丸暗記への逃げ道を塞ぐ。

覚える意味

図に情報を詰め込みすぎないことは、試験センターなりの配慮でもある。電線種や色別といった、年度や現場事情で変わりうる要素を候補問題という共通の土台に固定してしまうと、逆に応用が利かなくなる。

面白さ

「不親切に見える図ほど、実は読み手の力を信頼している」という見方は、候補問題以外の設計図やマニュアルを読むときにも使える視点になる。

ワクワクする未来

当日の施工条件を読み解く力は、そのまま現場での図面読解力に直結する。第一種の技能試験は、その最初の訓練の場になっている。

冒頭の「なぜこの問題だけ、電線の種類がひとつも書かれていないのか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 第一種にも『記載のない電線はこれ』という規定があるはずだと思い込ませる

    なぜ引っかかる第二種の学習経験があると、候補問題の図だけである程度回路が組めた感覚が残る。だが第一種の公表資料にはデフォルト規定の注記自体が存在せず、この感覚をそのまま持ち込むと、電線種を勝手に決めてしまう。

    見破り方候補問題の公表資料の注記1〜7を実際に読み、『記載のない電線の種類は』という文言が第一種の資料に存在しないことを確認する。存在しない以上、電線種は当日の施工条件を読むまで確定させない。

  2. 『候補問題を覚える』を『完成形を覚える』とすり替えさせる

    なぜ引っかかる13問→10問と数が減った分、1問ずつ丸暗記できそうに見える。しかし第一種の骨格は当日、色・接続方法・寸法・施工省略の位置という4方向から肉付けされるため、完成形は当日まで確定しない。

    見破り方練習のときに『この問題はこう作る』と手が覚える前に、まず『この図から確定していることは何か』を声に出して分ける作業をはさむ。

  3. 端子台の代用を『変圧器だけ』と決め打ちさせる

    なぜ引っかかる注6は『機器・器具においては,端子台で代用するものもある』としか書いておらず、対象を限定していない。過去に変圧器が代用された実例を知ると、それが唯一の対象だと錯覚しやすい。

    見破り方候補問題の図で端子台らしき記号を見たら、それが何を代用しているかは当日の材料表で確定すると考え、名称を先読みしない。

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 第一種の候補問題公表資料(P_R08P.pdf)には、電線の種類・寸法・特記が一切書かれていない
  2. 第二種の候補問題には『記載のない電線の種類は,VVF1.6とする』というデフォルト規定があるが、第一種の資料にはこの規定自体が存在しない
  3. 電線種・寸法・接続方法・色別は、すべて当日の試験問題(配線図+施工条件)で初めて確定する
  4. 注6により『機器・器具においては,端子台で代用するものもある』。どの機器が代用されるかも公表資料からは分からない
  5. 注7により『接地端子に係る接地工事及びA・Vに至る工事については出題時に明記する』。計器・接地の詳細も当日確定する
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