PASもUGSも、いかにも英語の略号のような顔をしている。ローマ字3文字、大文字だけ、単線結線図の中でも堂々とその場所を占めている。
ところが、この2つは英語圏に持っていっても誰にも通じない。日本の電気設備の現場だけで使われている、いわば「日本製の英語」だ。同じアルファベット3文字の略号の中に、なぜ「本物の英語由来の略号」と「日本製の略号」が混ざっているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この2種類の略号を見分けられるようになっている。
単線結線図には、DS・CB・LBS・VT・CT・OCR・GRといったアルファベットの略号が次々に登場する。図記号の形と同じくらい、この文字の並びも覚える必要がある。だが、丸暗記の前に、略号がどこから来ているかを知っておくと、初めて見る略号にも対応しやすくなる。
正しい英語由来の略号——機能を表す言葉がそのまま略される
DS(Disconnector/Disconnecting Switch=断路器)、CB(Circuit Breaker=遮断器)、LBS(Load Break Switch=負荷電流を切れる開閉器)、PF(Power Fuse=高圧限流ヒューズ)、VT(Voltage Transformer=計器用変圧器)、CT(Current Transformer=変流器)、OCR(Overcurrent Relay=過電流継電器)、GR(Ground Relay=地絡継電器)。これらは、機器の働きを説明する英語の言葉が、そのまま頭文字に圧縮されたものだ。だから略号の意味に迷ったら、正式名称の英語を思い出せば、機能もそのまま思い出せる。
和製の略語——日本国内だけで通じる呼び方
一方で、PAS(柱上気中開閉器)・UGS(地中線用ガス開閉器)・MOF(VCTの通称)は、英語圏の標準用語ではない。日本国内の電力業界・電気工事の現場で作られ、定着した和製の略語だ。
| 略号 | 正式名称・由来 | 和名 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| DS | Disconnector/Disconnecting Switch | 断路器 | 無負荷でしか操作できない |
| CB | Circuit Breaker | 遮断器 | 短絡電流まで遮断できる |
| LBS | Load Break Switch | 高圧交流負荷開閉器 | 負荷電流の開閉ができる |
| PF | Power Fuse | 高圧限流ヒューズ | 短絡電流を限流遮断する |
| VT | Voltage Transformer | 計器用変圧器 | 二次側は短絡してはならない |
| CT | Current Transformer | 変流器 | 二次側は開放してはならない |
| ZCT | Zero-phase-sequence Current Transformer | 零相変流器 | JISに専用記号は無い(傍記で示す) |
| OCR | Overcurrent Relay | 過電流継電器 | CB引外しの検出役 |
| GR/DGR | Ground Relay/Directional Ground Relay | 地絡継電器/地絡方向継電器 | DGRは方向まで判別 |
| LA | Lightning Arrester | 避雷器 | 雷サージを大地へ逃がす |
| SC | Static Capacitor | 進相コンデンサ | 専用の図記号は持たない |
| SR | Series Reactor | 直列リアクトル | コンデンサの電源側に直列 |
| MC | Magnetic Contactor | 電磁接触器 | 制御回路の主接点 |
| THR | Thermal Relay | 熱動継電器 | MCと組んでMS(電磁開閉器)を構成 |
| VS/AS | Voltmeter/Ammeter changeover Switch | 電圧計・電流計切換開閉器 | ASはCT二次を開放しない構造 |
| PAS | Pole Air Switch(和製略語) | 柱上気中開閉器 | 架空引込の区分開閉器 |
| UGS | Underground Gas Switch(和製略語) | 地中線用ガス開閉器 | 地中引込の区分開閉器 |
| VCT/MOF | Combined Voltage and Current Transformer/Metering Out-Fit(MOFは和製略語) | 電力需給用計器用変成器 | VCTとMOFは同一機器の別名 |
組み合わせでできている略号もある
すべての略号が単独の機器を指すわけではない。MS(電磁開閉器)はMC(電磁接触器)とTHR(熱動継電器)を組み合わせた1つの機器で、MCが開閉を、THRが過負荷保護を担う。THR単体とMSを同じものとして覚えると、制御回路の記号を読むときに部品の役割を取り違えることになる。
略号の由来を知ると、初見の言葉にも動じなくなる
DS・CB・LBSのような略号は、正式名称の英語に立ち返れば意味を思い出せる。PAS・UGS・MOFのような和製の略語は、由来を説明する英語が無いぶん、名称と役割をセットで覚えるしかない。今日試せることとして、電気工事のカタログや設備の仕様書に出てくるアルファベットの略号を見つけたら、それが正式名称の頭文字なのか、和製の慣用語なのかを考えてみるといい。
この2系統の略号が混在しているのは、電気設備の技術が海外から輸入された歴史と、日本国内で独自に発達してきた慣用の両方が積み重なっているからだ。標準規格の言葉と現場の慣用語が同居しているのは、むしろこの分野の歴史そのものを映している。
冒頭の疑問、PASやUGSがなぜ英語のようで英語でないのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。