単線結線図の主回路には、電力が流れる太い線が描かれている。だがOCR(過電流継電器)の枠から遮断器(CB)へ伸びる、もう1本の細い線がある。この線には何が流れているのか。
電力の線だとしたら、継電器が発電しているみたいでおかしい。かといって何も流れていないなら、そもそも線を描く意味がない。この細い線の正体が分かると、実は制御回路という別の図の読み方まで見えてくる。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この細い線が何を運んでいるのかを説明できるようになっている。
高圧の単線結線図の脇には、低圧の電動機を動かすための制御回路(シーケンス図)が別に描かれることがある。ここに出てくる記号と、その読み方を見ていく。
電磁接触器(MC)の主接点 は、これまで見てきた接点記号の仲間だ。固定側端子の先端に小さい半円が付く。断路器の横棒、遮断器の×、負荷開閉器の丸に続く、4つ目の印だと考えればいい。MCのコイル は、電気を流すと主接点を引き寄せて閉じる部分で、横長の長方形(作動装置一般記号)で描かれる。
THR(熱動継電器) は、横長の長方形の右辺に小さな切欠きが入り、中央を導体線が貫通する記号で描かれる。過負荷電流による発熱でブレーク接点を開き、MCを落とす役目を持つ。MC(開閉)とTHR(過負荷保護)を組み合わせた1つの機器が、電磁開閉器(MS)だ。BS(押しボタン) はコの字の操作部から破線(機械的連結)でメーク接点につながる記号、SL(表示灯) は円に×、BZ(ブザー) は伏せた半円から端子2本が下に出る記号で表される。
自己保持——ボタンから手を離しても回路が保たれる仕組み
始動ボタン(a接点)を押すとMCコイルが励磁され、主接点が閉じて電動機が回り始める。同時に、始動ボタンと並列に入っているMCの補助a接点も閉じる。だからボタンから手を離して始動ボタンの接点が開いても、並列側のMC補助接点が通電を保ち続ける。これが自己保持だ。停止するには、この保持ループに直列に入れたブレーク接点(停止ボタンやTHRのb接点)で回路を切ればよい。
インタロック——同時に入ってはいけない2つの動作を防ぐ
正転用MCと逆転用MC、あるいはスターMCとデルタMCのように、同時に投入してはいけない2つの動作がある。これを防ぐのがインタロックだ。相手側MCが動作している間は開いているブレーク接点(b接点)を、自分のコイル回路に直列に入れる。相手が入っていれば自分の回路は閉じず、自分が入っていれば相手の回路は閉じない。この電気的インタロックに加えて、押しボタン自体を機械的に連動させる機械的インタロックを併用することもある。
第一種の制御回路問題では、三相かご形誘導電動機の始動制御(じか入れ・スターデルタ始動)を題材に、接点の名称・自己保持の有無・スターデルタ切換のタイミング(限時継電器TLRの働き)・表示灯が点灯する条件・THRが動作したときに何が起きるかを読み取らせる形が定番になっている。複雑なリレー設計そのものを1から組み立てさせる出題ではなく、描かれた図を正しく読み取れるかが問われる。
制御電源回路にも、保護が要る
単線結線図の隅に、制御電源回路(自動力率調整装置や継電器を動かすための低圧電源)が 描かれることがある。そこに小さな保護装置が付いていて、「この装置の目的は」と問われる。
制御電源回路は、主回路と違って電流が小さい。だから過電流よりも、 地絡(漏電)のほうが問題になりやすい。ZCTのような零相変流器と継電器の組み合わせが 描かれていれば、それは地絡を検出して警報を出すためのものだ。
- 円を導体が貫通する記号+継電器 … 零相電流を見ている → 地絡の検出
- 「I>」の枠 … 電流の大きさを見ている → 過電流(短絡)の検出
- 温度計の記号 … 変圧器の温度異常
そして制御電源回路の保護は「遮断」ではなく「警報」であることが多い。 制御電源を切ってしまうと、保護継電器そのものが働かなくなって本末転倒だからだ。 異常を知らせて、人が対処する——この設計思想を知っていると、 「自動的に遮断する」という選択肢を外せる。
接点の記号は、開閉の向きと動きの遅れで分かれる
制御回路の図が読めるかどうかは、接点の記号を仕分けられるかで決まる。種類はそう多くない。
a接点とb接点 — 平常時に開いているか、閉じているか
- a接点(メーク接点) — 平常時は開。操作すると閉じる。始動用の押しボタンがこれ
- b接点(ブレーク接点) — 平常時は閉。操作すると開く。停止用の押しボタンがこれ
図記号は、可動接点が固定接点に載っているか、離れているかで描き分ける。離れていればa接点、載っていればb接点。 押しボタンでは、これに操作機構(押す方向を示す線)が添えられる。
「停止はb、始動はa」——ここを逆にすると、押し続けないと動かない回路や、止まらない回路になる。図記号を選ばせる設問は、この対応をそのまま聞いてくる。
接点は「時間で遅らせるもの」と「手で操作するもの」に割れる
Y-Δ始動のようにタイマ(限時継電器・TLR)を使う回路では、限時接点が出てくる。限時接点は動作するときに遅れるのか、復帰するときに遅れるのかで分かれる。これとは別系統に、手で操作する接点がある——同じ「接点の種類」を並べた設問で混ぜて出されるので、2系統だと分けて持っておく。
時間で遅れる接点(限時接点=タイマの接点)
| 名称 | 動き |
|---|---|
| 限時動作瞬時復帰接点 | 動作(入)が設定時間だけ遅れる。復帰(切)は瞬時 |
| 瞬時動作限時復帰接点 | 動作は瞬時。復帰が設定時間だけ遅れる |
手で操作する接点(限時接点ではない)
| 名称 | 動き |
|---|---|
| 手動操作自動復帰接点 | 手で操作している間だけ動作し、離すと自動で戻る(押しボタンがこれ) |
| 手動操作残留機能付き接点 | 手で操作すると、その状態が残る |
名前は長いが、前半が動作、後半が復帰と読めば意味がそのまま出る。「限時動作・瞬時復帰」=動くのは遅く、戻るのは速い。
Y-Δ始動の主回路 — Δ側は「1つずらして環にする」
Y-Δ始動の主回路には電磁接触器が3つ入る。電源用(MC)、Y結線を作るもの(MC-Y)、Δ結線を作るもの(MC-Δ)だ。
電動機の6端子を とすると、
- Y結線は、3つの巻線の片側の端()を1点にまとめて短絡する。まとめる役目がMC-Y
- Δ結線は、3つの巻線を環になるようつなぐ。、、——1つずつずらして次の相の頭に結ぶ
そしてこの結線のために、電動機の6端子すべてを盤へ引き込む必要がある。制御盤から電動機まで6本(+接地線)になるのは、この図がそのまま配線本数になっているからだ。
制御回路が読めると、保護と制御が同じ考え方でつながって見える
冒頭のOCRからCBへ伸びる細い線の正体は、電力ではなく「遮断せよ」という判断の信号だった。CT(検出)→OCR(判断)→TC(引外しコイル、実行の引き金)→CB(遮断の実行)という流れは、制御回路の自己保持・インタロックの「検出→判断→実行」とまったく同じ構造をしている。今日試せることとして、家庭や職場のエレベーター・自動ドアの操作パネルを見たとき、ボタンを押した後も動作が続く仕組み(自己保持に近い発想)がどこかに隠れていないか、考えてみるといい。
この「検出して、判断して、実行する」という設計思想は、高圧の保護回路から低圧の電動機制御まで、電気設備全体を貫く共通言語だ。単線結線図と制御回路図を、別々の図ではなく同じ文法で書かれた2つの方言として読めるようになることが、この科目の到達点になる。
冒頭の疑問、OCRからCBへ伸びる細い線が何を運んでいるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。