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発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 ・ 10 / 11

地熱発電 — 地面の下に、燃料のいらないボイラがある

読み終えると、こうなる

温泉地の湯けむりが、地下に眠る「燃料のいらないボイラ」の気配に見えてくる。

  • フラッシュ方式とバイナリー方式を、蒸気の温度と「何を沸かすか」で仕分けられる
  • 地熱発電が太陽光・風力と違って昼夜・天候に左右されない理由を説明できる
  • 資源豊富な日本で地熱がなかなか増えない理由を、立地・調整・開発期間の3点で挙げられる
考えてみよう

火力発電は、燃料を燃やして水を沸かし、蒸気でタービンを回す。つまり発電所の心臓部は「蒸気をつくるボイラ」だ。では、もし地面に井戸を掘るだけで、高温高圧の蒸気がそのまま噴き上がってくる場所があったら——ボイラも燃料もいらない発電所ができることになる。

日本には実際、その条件がそろった場所がいくつもある。温泉地の湯けむりが、その気配だ。ところが、この「世界有数」とされる地下の恵みを持ちながら、日本の地熱発電はなかなか増えていない。

資源はあるのに、なぜ使えないのか。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、地熱発電の2つの方式と、この「増えない理由」を説明できるようになっている。

地熱発電は、火山地帯の地下深くにある地熱貯留層から、マグマの熱で温められた高温高圧の蒸気・熱水を取り出してタービンを回す発電方式だ。蒸気・熱水を汲み上げる井戸を生産井、使い終えた蒸気・熱水を地下へ戻す井戸を還元井と呼ぶ。地下から借りた熱水を地下へ返す——この循環があるから、資源を汲み尽くさずに長期間発電を続けられる。

フラッシュ方式の流れ 生産井(蒸気+熱水) 気水分離器 蒸気 タービン・発電機 復水器・冷却塔 還元井(地下へ戻す) 熱水 分離した熱水は 還元井へ (ダブルフラッシュ では減圧して 二次蒸気も利用) フラッシュ方式の構成(自作の概念図。資源エネルギー庁エネこれの解説にもとづく)。実線が蒸気の流れ、点線が熱水の流れ

フラッシュとバイナリー — 何を沸かしてタービンを回すか

発電方式は、地熱資源の温度と状態で使い分けられる。

フラッシュ方式は、高温の蒸気・熱水が豊富に得られる資源向けだ。生産井から噴き上がる蒸気・熱水を気水分離器で分け、蒸気をそのままタービンへ送る。分離した熱水をさらに減圧気化器で減圧すると、圧力が下がったぶん熱水の一部が沸騰して二次蒸気が得られる。この二次蒸気もタービンに送って使うのがダブルフラッシュ方式で、同じ資源からより多くの電気を取り出せる。

バイナリー方式は、蒸気が少なく、比較的温度の低い熱水が主体の資源向けだ。水のままでは十分な蒸気を得られないので、熱水の熱でペンタンなど水より沸点の低い媒体を沸かし、その媒体の蒸気でタービンを回す。地熱流体の系統と媒体の系統、2つの系統(binary)を持つのでこの名前がある。温泉の熱を利用した小規模な発電にも使われている。

地熱発電の際立った強みは、エネルギー源が天候と無関係なことだ。太陽光は夜に発電できず、風力は風まかせだが、地下の熱は昼夜も季節も関係なく供給され続ける。**地熱は再生可能エネルギーでありながら、昼夜・天候に左右されず発電し続けられる純国産のエネルギーだ。** 燃料を輸入に頼らず、CO2の排出もほとんどない。火山国の日本は、この資源を世界有数の規模で持つとされている。

それなのに、なぜ増えないのか

これだけの好条件がそろっていながら、日本の地熱発電の導入はゆっくりとしか進んでいない。理由は資源の少なさではなく、開発の難しさにある。

第一に、立地の重なり。日本の地熱資源の約8割は国立・国定公園の中にあるとされ、有望な場所の多くは温泉地とも重なる。景観の保護や、温泉への影響を心配する地元との丁寧な調整が欠かせない。第二に、探査リスク。地熱貯留層は地下1,000〜3,000mにあり、調査を重ねて掘削しても、商業的に十分な貯留層に当たらないことがある。井戸を1本掘るだけでも大きな費用がかかるため、この「掘ってみないと分からない」性質が投資をためらわせる。第三に、時間。広域調査から掘削調査、環境アセスメント、建設までを積み上げると、運転開始まで10年以上かかることがある。

つまり地熱発電は、「燃料費のかからない安定電源」という大きな見返りと引き換えに、開発の入口に時間とリスクの壁がある電源だ。試験でこの分野が問われるときは、方式の仕組みと並んで、この「資源は豊富、開発は大変」という構図そのものが問われる。

今日試せることとして、温泉地を訪れる機会があれば、源泉の温度表示を見てみるといい。100℃に満たない熱水でも、沸点の低い媒体を沸かすには十分——バイナリー方式の発想が、その温度表示の中にある。

冒頭の謎、資源大国なのに地熱発電が増えない理由は。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. バイナリー方式でも「地下の蒸気が直接タービンを回している」と思わせる

    なぜ引っかかる地熱発電=蒸気でタービン、というイメージが強く、バイナリーの「熱水で別の媒体を沸かし、媒体の蒸気で回す」という二段構えを読み飛ばしやすい

    見破り方バイナリー(binary=2つの)という名前の通り、地熱流体の系統と媒体の系統の2系統がある。タービンを回すのは水より沸点の低い媒体の蒸気だ、と名前から思い出す

  2. 地熱発電を太陽光・風力と同じ「出力が変動する電源」の仲間に入れてくる

    なぜ引っかかる再生可能エネルギーとひとくくりにされるため、天候まかせで不安定という性質まで共通だと思い込みやすい

    見破り方エネルギー源は地下の熱であり、昼夜も天候も関係ない。再エネの中でも安定して発電し続けられる電源だ、という位置づけを他の再エネとの対比で押さえる

  3. 日本で地熱発電が少ない理由を「資源が乏しいから」だと思わせる

    なぜ引っかかる導入量が少ない=資源がない、と短絡しやすい。実際は資源量は世界有数で、足りないのは資源ではなく開発を進めやすい条件の方

    見破り方資源の多くが国立・国定公園や温泉地と重なること、探査リスク、10年以上の開発期間という「開発側の事情」を理由として挙げられるか確認する

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 地熱発電は、地下深くの地熱貯留層からマグマの熱で温められた高温高圧の蒸気・熱水を生産井で取り出し、タービンを回して発電する。使い終えた蒸気・熱水は還元井から地下へ戻す
  2. フラッシュ方式は、気水分離器で蒸気と熱水を分け、蒸気で直接タービンを回す(分離した熱水をさらに減圧して二次蒸気も使うのがダブルフラッシュ)。バイナリー方式は、温度の低い熱水で水より沸点の低い媒体(ペンタンなど)を沸かし、その媒体の蒸気でタービンを回す
  3. 地熱は昼夜・天候によらず安定して発電できる純国産エネルギーで、火山国の日本は世界有数の地熱資源量を持つとされる
  4. それでも増えにくい理由は、資源の多くが国立・国定公園や温泉地と重なり地元との調整が必要なこと、掘っても貯留層に当たらない探査リスクがあること、運転開始まで10年以上かかる長い開発期間
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