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発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 ・ 1 / 11

発電所から家まで — 電気が通ってきた道

読み終えると、こうなる

電柱や鉄塔に取り付けられた設備を見て、それが発電所からの旅のどの区間の姿かを位置づけられるようになる。

  • 『高圧』『特別高圧』を、600V・7,000Vという境界値で正確に仕分けられる
  • 送電と配電を、区間の役割の違いで言い分けられる
  • 電力会社のニュースに出てくる設備を、旅のどの区間の話かで整理できる
考えてみよう

通勤・通学路で、鉄塔からぶら下がる白い陶器のヒダヒダ(がいし)や、電柱の上に載っている灰色の入れ物を、数えきれないほど目にしているはずだ。だが、それぞれが電気の長い旅のどの段階の道具なのか、説明できる人は少ない。

発電所で作られた電気は、そのまま送られてくるわけではない。何段階も電圧を変えながら、姿を変えて届く。その全体の道のりが分かっていないと、これから見ていく発電・送電・変電・配電の各トピックが、バラバラの暗記項目にしか見えなくなる。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電気が発電所を出てから家庭に届くまでの道のりを、電圧の変化とともに順を追って説明できるようになっている。

第一種電気工事士のこの科目は、電力会社が「電気をどう作り、どう届けているか」という上流の仕組みを扱う。まずは全体の地図を頭に入れてから、各区間を1つずつ拡大していく。

電気が発電所から家庭に届くまで 発電所(水力・火力・原子力・再エネ) 送電線(特別高圧で送る) 変電所(段階的に降圧) 配電用変電所(6.6kV) 柱上変圧器 家庭(100V/200V) 発電所から家庭までの電圧段階の一例(自作の概念図。電圧の刻みは電力会社や地域により異なる)

発電所で作られた電気は、まず特別高圧まで一気に電圧を上げてから送電線に乗る。理由は次のトピックで詳しく扱うが、ひとことで言えば「電圧を高くするほど、送電中に電線の熱として失う電力が急激に減る」からだ。

送電線を通ってきた電気は、変電所を経るごとに段階的に電圧を下げられていく。ある電力会社の公表例では、500kV/275kV級の超高圧変電所から始まり、154kV→77kV→33kV(配電用へ)→6.6kVという順に下げていくとされている。ただしこの途中段階の具体的な数値は電力会社や地域によって異なり、全国共通の規格ではない。全国で確実に共通しているのは、電気設備に関する技術基準を定める省令 第2条が定める、低圧(交流600V以下)・高圧(600V超7,000V以下)・特別高圧(7,000V超)という3つの区分だけだ。

発電所から家庭までの旅は、電圧を少しずつ「使える値に近づけていく」旅だと思うかもしれない。だが実際は逆で、発電所を出た直後は誰も触れられないほど電圧を高くし、そこから何段階もかけてようやく人が使える100V/200Vまで下げてくる。**電気の旅は、使える形に近づく旅ではなく、一度あえて「使えない」高さまで飛び上がってから、何段階もかけて舞い降りてくる旅だ。**

配電用変電所で6.6kVまで下がった電気は、高圧配電線を通って街を巡り、最後は電柱の上の柱上変圧器で100V/200Vに落とされて家庭に届く。この「発電→送電→変電→配電」という4つの区間の名前と役割の違いは、後のトピックを読み解く土台になる。送電=高い電圧で長距離を運ぶ区間、配電=需要家近くまで電圧を下げて振り分ける区間、という線引きをまず押さえておきたい。

電柱の見慣れた景色が、旅程表に変わる

ここから先のトピックは、この全体地図の各区間を1つずつ拡大して見ていく。水力・火力・原子力・再エネという発電の方式の違い、送電線がなぜ高電圧を選ぶのかという理屈、架空送電線を支える鉄塔とがいしの構造、送電線の途中で起きる現象、変電所の役割、そして配電の方式——すべてがこの1枚の地図のどこかに位置づけられる。

今日試せることとして、通勤・通学路で見かける鉄塔や電柱を、ただの構造物ではなく「電圧を下げていく旅の1区間」として眺めてみるといい。鉄塔の高さや電線の太さ、がいしの連結枚数が、そこを流れている電圧のヒントになっている。

この全体像を知ることは、単なる暗記の準備ではない。電力会社が発電・送電・変電・配電という区間ごとに設備と責任を分けているのは、どこかで事故が起きたときに原因を素早く特定し、影響範囲を絞り込むためでもある。太陽光発電や蓄電池、EV充電設備を系統に接続する仕事も、結局はこの1本の電気の道のりのどこかに新しい設備をつなぎ込む作業であり、この全体地図を持っていることが、そうした仕事に足を踏み入れる出発点になる。

冒頭のがいしのヒダヒダ、その連結枚数から何が読み取れるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 法令上の電圧区分の境界値をあいまいに覚えさせる

    なぜ引っかかる低圧・高圧・特別高圧の境界である600Vと7,000Vという数値を、似た他の数値と混同させたり「約」の目安だと思わせたりする

    見破り方電技省令第2条の定義そのものを、以上・超の使い分けまで含めて正確に覚える。低圧=600V以下、高圧=600V超7,000V以下、特別高圧=7,000V超

  2. 特定の電力会社の電圧階級(154kVなど)を全国共通の規格だと思わせる

    なぜ引っかかる教材や解説記事に具体的な電圧の数字が出てくると、それが全国どこでも同じ規格だと錯覚しやすい

    見破り方「ある電力会社の例では」という限定が付いているかを確認する。全国で確実に共通なのは法令上の3区分だけで、送電・変電の途中段階の電圧は電力会社ごとに異なる

  3. 送電と配電の呼び分けを逆にする、または同じ意味だと思わせる

    なぜ引っかかるどちらも『電気を運ぶ』という点で似ているため、区間の違いを意識せず同じ言葉として扱ってしまう

    見破り方送電=高い電圧で長距離を運ぶ区間、配電=6.6kV程度まで下げてから需要家近くまで振り分ける区間、と区間の役割で線引きする

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電気は発電所→送電線→変電所→配電用変電所→柱上変圧器→家庭、という順で届く。送電は高い電圧で長距離を運ぶ区間、配電は6.6kV程度まで下げてから需要家近くに振り分ける区間を指す
  2. 法令上の電圧区分(電気設備に関する技術基準を定める省令 第2条)は、低圧=交流600V以下、高圧=600V超7,000V以下、特別高圧=7,000V超の3区分のみ。これは全国共通
  3. 発電所を出た電気は特別高圧まで昇圧され、変電所を経るごとに段階的に降圧されて需要家に近づいていく。段階の具体的な数値(154kVなど)は電力会社ごとに異なる
  4. この科目の後続トピックは、この全体地図の各区間(発電の方式、送電線の構造、変電所の役割、配電の方式)を1つずつ拡大して見ていく構成になっている
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