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発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 ・ 4 / 11

原子力と再生可能エネルギー — BWR・PWRの構造の違いと、系統をだます装置

読み終えると、こうなる

原子力発電所の内部が2系統に分かれている理由も、太陽光発電が常に系統の生死を確かめている理由も、両方言い当てられるようになる。

  • BWRとPWRの違いを、蒸気発生器の有無とタービンに送る蒸気の由来という構造だけで仕分けられる
  • 太陽光のパワーコンディショナが担う3つの役割を見分けられる
  • 太陽電池モジュールから系統までの電気の道のり(モジュール→接続箱→パワーコンディショナ→交流側→変圧器→系統連系)を順番どおりに並べられる
  • 風車の出力が風速のどのくらいの割合で変わるかを暗算できる
考えてみよう

原子力発電所には、原子炉の中で発生した水蒸気をそのままタービンに送るタイプと、いったん別の水に熱を渡してから蒸気を作るタイプがある。同じ「原子力発電」という括りなのに、なぜ構造が違うのか。

火力発電のランキンサイクルは、燃料をボイラで燃やして蒸気を作るだけの一段構えだった。原子力発電も「炉で熱を作ってタービンを回す」という点は同じはずなのに、内部の作りが2系統に分かれている理由は何なのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この2つの方式の違いを、蒸気の作り方から説明できるようになっている。

原子力発電は、核分裂反応で生じる熱を使って蒸気を作り、タービンを回して発電する。火力発電と同じくランキンサイクルの仲間だが、蒸気の作り方によって沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類に分かれる。

沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR) 沸騰水型(BWR) 加圧水型(PWR) 原子炉圧力容器で直接沸騰 原子炉で一次冷却水を加圧 蒸気はそのままタービンへ 蒸気発生器で二次系へ熱を渡す タービン側にも放射線管理が必要 二次系の蒸気がタービンへ → どちらも最終的にタービン・発電機を回す 沸騰水型と加圧水型の蒸気の作り方の違い(自作の概念図。安全性の優劣は比較しない)

沸騰水型(BWR)は、原子炉圧力容器の中で冷却水を直接沸騰させて蒸気を作り、その蒸気をそのままタービンへ送る。蒸気発生器を持たない分、系統の構成は単純になる。ただし、タービンを回す蒸気は炉心を通った水そのものなので、タービン側にも放射線管理が必要になる。制御棒は炉の下から挿入する構造だ。

加圧水型(PWR)は、一次冷却水を加圧器で加圧し、高温でも沸騰しない状態のまま炉心の熱を運び、蒸気発生器で別系統(二次系)の水に熱を渡して蒸気を発生させる。タービンを回すのは、放射性物質を含まない二次系の蒸気になる。制御棒は炉の上から挿入する。

部品が少ない方式のほうが、扱いやすく単純だと思うかもしれない。BWRは蒸気発生器という機器そのものを持たない分、構成はPWRよりシンプルに見える。**だが構成がシンプルなことと、管理の手間が少ないことはイコールではない。**BWRはタービンに送る蒸気が炉心を通った水そのものであるため、タービン側にも放射線管理という別の負担が生じる。試験の急所は「蒸気発生器の有無」と「タービンに行く蒸気が炉水由来か別系統由来か」という構造の対比であって、どちらが優れているかではない。

再生可能エネルギーの側にも、それぞれ固有の仕組みがある。太陽電池は、半導体のpn接合に光が当たると起電力が生じる光起電力効果で直流を発電する。この直流を家庭や系統で使える交流に変えるのがパワーコンディショナ(PCS)で、①直流→交流変換(インバータ)②最大電力点追従制御(MPPT。日射に応じて最も電力を取り出せる動作点を追う)③系統連系保護、の3つの役割を担う。系統連系保護の中でも重要なのが単独運転検出だ。配電線側が停電したのに太陽光側だけで送電線に電気を送り続けてしまう「単独運転」状態は、保守作業者の感電などの危険につながるため、検出して解列する必要がある。系統喪失時の電気的変化を監視する受動的方式(電圧位相跳躍検出など)と、常に小さな変動を系統に与えて有無を確かめる能動的方式(周波数シフト・無効電力変動・次数間高調波注入など)に大別される。

太陽光発電システムの構成 ― 電気の道のりを一本道でたどる

パワーコンディショナの役割が分かったところで、システム全体の中でそれがどこに居るのかを、電気の流れる順にたどっておく。試験では機器の並び順そのものが問われるからだ。

太陽光発電システムの電気の道のり ストリング ストリング ストリング 接続箱(直流) 直流をまとめる・逆流防止・開放 パワーコンディショナ(PCS) 直流→交流変換・MPPT 単独運転を検出して切り離す 交流集電箱・分電盤(交流側) パワコンからの交流をまとめる 変圧器 系統に連系する電圧へ昇圧 電力系統(系統連系) 接続箱まで直流、パワコンから先は交流という一本道 太陽光発電システムの構成(自作の概念図)。複数のストリングが接続箱で1つにまとまり、パワーコンディショナで交流に変わって、変圧器を経て系統につながる

太陽電池モジュールを何枚か直列につないだ1列をストリングと呼ぶ。ストリングが作るのは直流で、これが何列も屋根や架台に並ぶ。接続箱は、この複数のストリングからの直流を1つにまとめてパワーコンディショナへ送る直流側の機器だ。中には逆流防止素子(ダイオード)と開閉器が入っていて、影がかかるなどして電圧の下がったストリングへ他の回路から電流が逆流するのを防ぎ、点検のときはストリング単位で回路を切り離せるようになっている。

まとまった直流はパワーコンディショナで交流に変わる。ここが直流と交流の境目で、先に見た3つの役割(変換・MPPT・単独運転検出を含む系統連系保護)はすべてこの境目だからこそ担える仕事だ。パワコンから先は交流の世界になり、複数のパワコンの出力を交流集電箱・分電盤でまとめ、高圧・特別高圧で連系する設備では変圧器で系統に合わせた電圧へ昇圧して、電力系統へつながる。

並び順の問題は、暗記ではなく「直流と交流の境目」から解くのが確実だ。直流をまとめる接続箱はパワコンより前にしか置けないし、交流の電圧を変える変圧器はパワコンより後にしか置けない。この1点を押さえれば、機器を入れ替えた選択肢は自動的に消える。

風力発電は、風の運動エネルギーで風車を回して発電する。風車が受け取る風のパワーは、単位時間に通過する空気の運動エネルギー(質量×速度²/2)から導くことができる。単位時間に通過する空気の質量自体が風速に比例するため、全体のパワーは風速の2乗×風速、つまり風速の3乗に比例する関係になる。だからこそ風の強い立地の選定が発電量を大きく左右する。

風車の形式 ― 回転軸の向きで2つに分かれる

風車には、回転軸が地面に対して水平か垂直かで、大きく2つの系統がある。

風車の形式 ― 水平軸と垂直軸 水平軸(回転面が風向きに垂直) プロペラ形(大型風力の主流・揚力形) 垂直軸(回転軸が地面に垂直) ダリウス形・ジャイロミル形(揚力形) サボニウス形(抗力形・低速高トルク) クロスフロー形(貫流水車) 主に小水力発電の水車として使われる形式 水平軸(プロペラ形)と垂直軸(ダリウス形・ジャイロミル形・サボニウス形)が風車の形式。クロスフロー形は破線枠=別カテゴリ(主に水車)として区別している(自作の概念図)

水平軸の代表がプロペラ形で、大型の風力発電所ではこの形式が主流になっている。風を受けて揚力で回る揚力形で、回転面が風向きに正対する。垂直軸には、揚力形のダリウス形・ジャイロミル形(どちらも風向きを選ばず発電できる利点がある)と、風の抗力を利用して低速でも大きなトルクを出すサボニウス形(静音性に優れる)がある。

なお、似た名前で紛らわしいクロスフロー形は、発電の実務でよく知られているのは主に小水力発電の水車(貫流水車) としての用途だ。風車の分類を扱う文献の中にはクロスフロー形風車を挙げるものもあるが、試験で問われる文脈では「風車ではなく水車の形式」として扱われることが多い。プロペラ形・ダリウス形・サボニウス形が風車として確実に実在するという事実を先に固めておけば、紛れ込んだ選択肢に振り回されずに済む。

燃料電池は、水素と酸素を電気化学反応させて(水の電気分解の逆)化学エネルギーから直接電気を取り出す方式で、燃焼→熱→運動→電気という熱機関の経路を通らない。発電と同時に出る熱を給湯などに使うコージェネレーションにすれば総合効率を高められる。バイオマス発電は、間伐材や廃材などの有機資源を燃焼またはガス化して発電する方式で、天候に左右されず安定的に発電できる点が太陽光・風力と異なる。

りん酸形燃料電池の原理図 — どちらの極に何が入るか

燃料電池は「水素と酸素で発電する」とだけ覚えていると、原理図の穴埋めで止まる。 試験で問われるのは、どちらの電極に何が入り、水がどちら側に出るかだ。

りん酸形燃料電池(PAFC)は、電解質にりん酸水溶液を使い、水素イオン(H⁺)が 電解質の中を移動するタイプだ。この「何が動くか」が分かれば、図の向きは自然に決まる。

電極呼び方供給されるもの起きること
負極(燃料極・アノード)マイナス側水素 H₂H₂ → 2H⁺ + 2e⁻。電子を外部回路へ送り出す
正極(空気極・カソード)プラス側空気(酸素 O₂)2H⁺ + ½O₂ + 2e⁻ → H₂O。水ができる
図の向きを決める鍵は2つだけだ。
  1. 水素が入る側が負極(電子を出す側がマイナス)
  2. 水ができるのは正極側(H⁺ が移動してきた先で、酸素と結びつく)

つまり生成した水は空気極から出ていく。「水素を入れた側から水が出る」と考えると 反対になる。移動しているのは H⁺ なので、水素は電解質を渡って正極側へ行き、 そこで酸素と出会って水になる——この道筋を1本たどれば、未反応ガスや排出物の 矢印の向きもすべて決まる。

全体の反応は H₂ + ½O₂ → H₂O で、燃焼と同じ反応を「燃やさずに」電気として取り出している。 燃焼を経由しないのでカルノー効率の制約を受けず、発電効率が高いのはこのためだ。 排熱も給湯などに使えば、総合効率をさらに上げられる。

系統に電気を送り込む前に、まず系統の有無を確かめる作法

太陽光発電の設備が「今、系統は生きているか」を常に確かめながら電気を送っているという事実は、意外と知られていない。この確認の仕組みがあるからこそ、停電時に保守作業者が安全に作業できる。

今日試せることとして、自宅や近所の太陽光発電設備のパワーコンディショナの表示を眺めてみるといい。多くは発電量とあわせて、系統との連系状態を示すランプや表示を持っている。

BWRとPWRという2つの構造が並立しているのも、単独運転検出という保護の仕組みが整備されているのも、事故や停電を防ぐための積み重ねの結果だ。そして、太陽光や蓄電池が電力システムに占める割合が増えるほど、この「系統の有無を確かめながら電気を送る」という発想は、これからの電気工事の現場でますます重要になっていく。

冒頭の謎、原子力発電所の構造がなぜ2系統に分かれているのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. BWRとPWRの安全性を比較させる選択肢を混ぜる

    なぜ引っかかる構造の違いを説明したあと、つい『だからどちらが安全か』という結論に飛びつきたくなる

    見破り方問われているのは構造の違い(蒸気発生器の有無、タービンに行く蒸気が炉水由来か別系統か)だけだと割り切る。安全性の優劣という論点自体、教材や試験で扱うべきものではない

  2. BWRの方が構成要素が少ないから『単純=安全』と短絡させる

    なぜ引っかかる蒸気発生器がない分シンプルに見えるBWRは、逆にタービン側にも放射線管理区域が必要になるという別の負担が生じる

    見破り方『部品点数の少なさ』と『管理の手間』は別の軸だと意識し、両方式それぞれの構造上の特徴だけを対で覚える

  3. 単独運転検出の方式名をすべて暗記させようとする

    なぜ引っかかる実際の系統連系規程の方式は細かく分かれるが、全リストを覚えても本質的な理解にはつながらない

    見破り方『受動的方式=系統喪失時の電気的変化を監視』『能動的方式=常に微小な変動を与えて確認』という2分類の考え方を押さえ、代表例(電圧位相跳躍検出、周波数シフトなど)は例として扱う

  4. 太陽光発電システムの機器を、接続箱とパワーコンディショナの順序を入れ替えるなど、実際とは違う並び順で示して選ばせる

    なぜ引っかかる機器の名前を個別に覚えていても、『電気がどの順で流れるか』という道のりで覚えていないと、並べ替えの選択肢に対抗できない。特に接続箱は交流側の分電盤と混同されやすく、パワコンの後ろに置かれた誤りに気づきにくい

    見破り方直流と交流の境目を先に固定する。直流→交流に変えるのはパワーコンディショナだから、接続箱(直流をまとめる機器)は必ずパワコンより前、変圧器(交流の電圧を変える機器)は必ずパワコンより後にしか置けない。順序問題は暗記ではなく、この境目からの消去法で解く

  5. 『クロスフロー形は風力発電には存在しない』と断定させる、または風車の形式を水平軸・垂直軸の区別なく並べる

    なぜ引っかかるクロスフロー形は小水力発電の水車(貫流水車)としてよく知られるため、風車の選択肢に紛れ込むと『風力には無いはず』と即断してしまいやすいが、風車分類の文献にはクロスフロー形風車を挙げるものも実在する

    見破り方断定を避け、確実な事実だけで消去法を組み立てる。プロペラ形(水平軸・主流)、ダリウス形・ジャイロミル形・サボニウス形(垂直軸)は風車として確実に実在すると先に固め、クロスフロー形は『主に小水力発電の水車として使われる形式』という一歩引いた言い方に留める

参考文献・出典

理解度チェック(8問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、8問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 8 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 沸騰水型(BWR)は原子炉圧力容器の中で冷却水を直接沸騰させ、その蒸気をそのままタービンへ送る。蒸気発生器を持たない分、系統構成は単純だが、タービン側にも放射線管理が必要になる
  2. 加圧水型(PWR)は一次冷却水を加圧して沸騰させずに炉心の熱を運び、蒸気発生器で別系統(二次系)の水に熱を渡して蒸気を作る。タービンを回すのは放射性物質を含まない二次系の蒸気
  3. 太陽電池は光起電力効果で直流を発電する。パワーコンディショナ(PCS)は直流→交流変換、最大電力点追従制御(MPPT)、系統連系保護(単独運転検出)を担う
  4. 太陽光発電システムの構成は、太陽電池モジュール(ストリング)→接続箱→パワーコンディショナ→交流側(交流集電箱・分電盤)→変圧器→系統連系、という一本道。接続箱は複数のストリングの直流を1つにまとめ、逆流防止と回路ごとの開放(開閉器)ができるようにする直流側の機器
  5. 単独運転検出には、系統喪失時の電気的変化を監視する受動的方式(電圧位相跳躍検出など)と、常に微小な変動を与えて系統の有無を確かめる能動的方式(周波数シフト・無効電力変動・次数間高調波注入など)がある
  6. 風車が受け取る風のパワーは、運動エネルギーの関係から風速の3乗に比例する。燃料電池は燃焼を経ずに水素と酸素の電気化学反応から直接電気を取り出す
  7. 風車の形式は、水平軸のプロペラ形(大型風力発電の主流・揚力形)と、垂直軸のダリウス形・ジャイロミル形(揚力形)・サボニウス形(抗力形・低速高トルク)に大別される。クロスフロー形は主に小水力発電の水車(貫流水車)として使われる形式であり、『風力には存在しない』と断定はしない
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