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発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 ・ 3 / 11

火力発電 — 汽力発電の基本サイクルと、なぜ同じ燃料で2回発電できるのか

読み終えると、こうなる

『効率が高い』という火力発電のニュースの数字が、燃料の話ではなく仕組みの話だと見分けられるようになる。

  • 汽力発電の水の流れを、ボイラ・タービン・復水器の役割ごとに順番に並べられる
  • コンバインドサイクルが高効率になる理由を、燃料の種類にすり替えず構造から言い当てられる
  • 復水器を、蒸気を膨張させる立役者であり同時に最大の熱の捨て場でもあると仕分けられる
  • 煙突から出る排ガスの成分(SOx・NOx・ばいじん)と、それぞれを取り除く装置(脱硫・脱硝・電気集じん器)を対応づけられる
考えてみよう

最新の火力発電所は、同じ燃料で「2回」発電しているという。同じ燃料を燃やして、どうやって2回分の電気を取り出すのか。

昔ながらの火力発電のイメージは「燃料を燃やしてお湯を沸かし、蒸気でタービンを回す」という一段構えだ。それだけなら発電は1回のはずなのに、最新の設備は同じ燃焼ガスから2度目の発電をやってのける。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その仕組みを自分の言葉で説明できるようになっている。

火力発電のうち、燃料を燃やしてボイラで蒸気を作り、蒸気タービンで発電する方式を汽力発電と呼ぶ。その基本サイクルがランキンサイクルだ。

コンバインドサイクルの熱の流れ 燃料の燃焼ガス ガスタービン(発電①) 排熱回収ボイラ 蒸気タービン(発電②) 復水器(排熱を海水等で冷却) 高温域をガスタービン、低温域を蒸気タービンが受け持つ二段構え(自作の概念図)

ランキンサイクルは、給水ポンプで水を送り、ボイラで加熱して飽和蒸気にし、過熱器でさらに過熱蒸気にしたうえで蒸気タービンに送って膨張させ、発電機を回す。タービンを出た蒸気は復水器で海水などにより冷却されて水(復水)に戻り、また給水ポンプへ戻る。復水器は、タービン出口を真空近くまで下げることで蒸気を膨張しきらせる役割を持つが、その熱を海へ捨てるため、熱サイクルの中で最大の熱損失箇所でもある。

ボイラの中身 ― 節炭器はどこにあるのか

「ボイラ」と一言でまとめてしまいがちだが、中身は蒸気ドラム・蒸発管・過熱器・節炭器という役割の違う機器の集まりだ。節炭器(エコノマイザ) は、給水ポンプから送られてきた水を、蒸気ドラムに入る前にあらかじめ予熱しておく機器で、位置関係を間違えやすい。

水・蒸気の経路 燃焼ガスの経路(煙道内) 給水ポンプ 節炭器(給水を予熱) 蒸気ドラム 蒸発管(水冷壁) 過熱器 タービンへ 火炉(水冷壁で吸熱) 過熱器 節炭器 煙突へ 節炭器は同じ1つの機器。給水は早い段階(左)、燃焼ガスは煙突の直前(右)で通過する 水・蒸気は給水ポンプ→節炭器→ドラムの順に温度が上がる。燃焼ガスは火炉→過熱器→節炭器の順に温度が下がる――同じ節炭器を、互いに逆向きの順序で通過している(自作の概念図)

水・蒸気の側から見ると、節炭器は給水ポンプと蒸気ドラムの間にある。ここで給水をあらかじめ温めてからドラムに送り込むことで、ドラムでの加熱にかかる燃料を節約する――これが「節炭器」という名前の由来だ。ドラムから出た水は降水管を通って外側を下り、蒸発管(水冷壁)を通って火炉内を上りながら熱を吸収し、再びドラムに戻る。ドラムで分離された蒸気は過熱器でさらに過熱され、タービンへ送られる。

一方、燃焼ガスの側から見ると、話の向きが逆になる。火炉で燃料を燃やした高温のガスは、まず蒸発管(水冷壁)と過熱器という、もっとも高温を必要とする機器に熱を渡す。そのあと温度が下がったガスが向かう先が節炭器で、ここで給水を予熱するぶんの熱を渡してから、煙突(場合によっては空気予熱器を経て)へ抜けていく。節炭器は、煙道の中でもっとも煙突に近い位置に置かれている。

節炭器は、水・蒸気の経路で見ると「早い段階」に登場し、燃焼ガスの経路で見ると「最後の段階」に登場する。**同じ1つの機器なのに、どちらの経路で数えるかによって順番が逆転する。** これは矛盾ではなく、「まだ温度が低い給水を、すでに温度が下がった排ガスの余熱で温める」という節炭器の役割そのものが生む配置だ。もし節炭器を過熱器より火炉に近い側(高温側)に置いてしまうと、まだ高温を保っていてほしいガスの熱を早い段階で奪ってしまい、過熱器で十分な過熱蒸気が作れなくなる。

このサイクルを効率よく回すための工夫が2つある。再熱サイクルは、高圧タービンで膨張して湿り気味になった蒸気を、ボイラの再熱器でもう一度加熱してから低圧タービンへ送る方式で、熱効率が上がるだけでなく、水滴によるタービン翼の侵食も防げる。再生サイクルは、タービンの途中から蒸気の一部を抽気して給水の予熱に使う方式で、復水器で捨てる熱が減る分だけ効率が上がる。大容量の汽力発電所は、両方を組み合わせた再熱再生サイクルが標準になっている。

復水器は「蒸気を冷やして水に戻すだけの、地味な後処理装置」に見えるかもしれない。だが実際は、タービン出口を真空近くまで引き下げることで蒸気をぎりぎりまで膨張させ、発電量を引き上げている立役者でもある。**サイクルの中で一番仕事をしている機器が、同時にサイクルの中で一番熱を捨てている機器でもある。**この矛盾した二面性こそが、火力発電の効率向上の歴史を、復水器で捨てる熱をどう減らすかという方向に導いてきた。

コンバインドサイクルは、この発想をさらに一段進めたものだ。ガスタービンでまず燃焼ガスを使って発電し、本来なら捨てるはずだった高温の排気を排熱回収ボイラに導いて蒸気を作り、蒸気タービンでもう一度発電する。高温域をガスタービンが、低温域を蒸気タービンが受け持つことで、熱を使い切る二段構えになっている点が、汽力単独の発電より熱効率が高くなる理由の本質だ。具体的な効率の数値は技術の世代交代とともに年々更新されていく統計値なので、ここでは「仕組みとしてなぜ効率が上がるのか」を押さえておけば十分だ。コンバインドサイクルは起動・停止も速く、需要変動への追従にも向いている。

大気汚染防止装置 ― 何を取り除くか

火力発電所の煙道には、熱を回収する節炭器・過熱器とは別に、排ガス中の汚染物質を取り除く3つの装置が並ぶ。何を取り除く装置かで対応づけて覚えると混同しない。

排煙脱硫装置は、硫黄酸化物(SOx)を除去する。主流は湿式石灰石こう法で、石灰石スラリー(石灰石を水に溶いたもの)を排ガスに接触させ、SOxと反応させて石こうとして回収する。排煙脱硝装置は、窒素酸化物(NOx)を除去する。排ガスにアンモニアを加えて触媒に通し(アンモニア接触還元法)、NOxを窒素と水に分解する。電気集じん器は、ばいじん(煤じん・粒子状物質)を除去する。コロナ放電で粒子を帯電させ、集じん電極に吸着させたあと、槌打で落として回収する。

排ガス処理の流れ ― 何を取り除くか ボイラ 脱硝装置 電気集じん器 脱硫装置 煙突 NOx→N2+H2O ばいじん除去 SOx→石こう (空気予熱器は脱硝と電気集じん器の間に置かれることが多い) 代表的な煙道の並び。各装置が取り除く対象が異なる(自作の概念図)
「脱硫=SOx=石こうになる」「脱硝=NOx=アンモニア+触媒で窒素と水」「電気集じん=ばいじん=静電気で吸着」という3対応を、装置名の音(硫黄の硫、窒素酸化物の硝)と結びつけて覚えると取り違えにくい。アンモニアが必要になるのは脱硝装置だけ、という1点も見分けの手がかりになる。

コージェネレーションとは何で、何ではないか

コージェネレーション(熱電併給)は、発電と同時に、その排熱も利用する方式だ。 定義はこの一行に尽きる。電気と熱を併せて供給する——だからコー(共に)ジェネレーション(発生)という。

選択肢には、それらしいが**別のもの**が混ぜられる。定義に照らして1つずつ外せる。
選択肢の例なぜ違うか
受電した電気と自家発電を常時系統連系する方式連系の話であって、熱を使っていない
深夜電力を使って蓄熱する方式電力を買う時間帯の話。自分で発電していない
電気集じん装置で排ガスを処理する方式環境設備の話で、エネルギーの利用ではない

判定の物差しは「発電しているか」と「その排熱を使っているか」の2つが同時に揃うかだけだ。 どちらか一方しか無いものは、コージェネレーションではない。

総合効率が高くなるのは、捨てていた熱を回収するからで、 発電効率そのものが上がるわけではない点も、取り違えやすい。

タービンの先にある発電機は、水力のそれとは形が違う

ここまでボイラ・タービン・復水器という熱の流れを見てきたが、その先で電気を作る発電機そのものにも、火力ならではの形がある。火力の発電機をタービン発電機と呼び、水力の水車発電機と並べると違いがはっきりする。

タービン発電機(火力・原子力)水車発電機(水力)
回転速度高速(2極なら3000/3600 min⁻¹)低速(数十〜数百 min⁻¹)
回転子の形非突極形(円筒形)突極形
軸の向き横軸形が一般的縦軸形が一般的
形状直径が小さく、軸方向に長い直径が大きく、扁平
違いはすべて**回転速度**から出ている。

蒸気タービンは高速で回るので、発電機も高速で回る。高速で回るものに突起(突極)が付いていると、遠心力で壊れるうえ、風損(空気との摩擦)も大きい。だから回転子をでこぼこの無い円筒にして、その表面の溝に巻線を埋め込む——これが非突極形(円筒回転界磁形)だ。

一方、水車はゆっくり回る。同じ周波数を出すには極数を増やすしかなく、極が多ければ回転子は突起が並んだ形(突極形)になり、直径も大きくなる。縦軸にするのは、水の落差を使う構造上、水車を下に置いて軸を立てるのが自然だからだ。

「速いから円筒・横長」「遅いから突極・扁平」——形の違いは、回転速度がそのまま姿になったものだと読める。

同期速度の式 Ns=120f/pN_s = 120f/p を思い出すと、話がつながる。50Hzで2極なら3000 min⁻¹、4極なら1500 min⁻¹。タービン発電機は極数を減らして高速で回し、水車発電機は極数を増やして低速で回す——同じ周波数を作るための、2つの正反対の解き方だ。

非常用発電機の中身 — ディーゼル機関と、はずみ車

蒸気タービンを回す汽力発電に対して、燃料を機関の中で直接燃やして回すのが内燃力発電だ。ビルや病院の非常用発電設備として据えられているのは、たいていディーゼル機関である。停電したときに数十秒で立ち上がり、消防設備や非常用照明へ電気を送る。

汽力発電と決定的に違うのは、動力の出し方が連続でないことだ。

ディーゼル機関は、シリンダーの中で**吸気→圧縮→燃焼(膨張)→排気**の4行程を繰り返す。このうち軸に力を与えるのは**燃焼行程だけ**で、残りの3行程はむしろ動かしてもらう側になる。つまり回転力は**断続的**にしか発生しない。

そのままでは、力の出る瞬間だけ速く回り、他の瞬間は遅くなる——回転にむらが出る。これを均すのがはずみ車(フライホイール)だ。

軸に取り付けられた重い円盤で、燃焼行程で回転エネルギーを蓄え、力の出ない行程でそれを吐き出す。貯めて放す働きによって、断続的な力が連続した回転に変わる。

はずみ車の目的は「回転のむら(速度変動)を抑えること」。 出力を上げるためでも、始動を速くするためでもない。

回転むらは、発電機にとっては周波数の変動として現れる。50Hzで回っていてほしいものが、燃焼のたびに速くなったり遅くなったりしては、つながっている機器が困る。はずみ車は、機械の都合を電気の品質に持ち込ませないための部品だといえる。

同じ内燃力でもガスタービンは、燃焼ガスで羽根車を連続的に回すので、この問題が起きにくい。断続燃焼のディーゼルにははずみ車が要り、連続燃焼のガスタービンには要らない——構造の違いが、そのまま部品の要否になっている。

捨てるはずだった熱に、二度目の仕事をさせる発想

この仕組みが分かると、発電所の「効率が高い」というニュースの見方が変わる。数字そのものは年ごとに変わるが、その裏にある「一度捨てるはずだった熱を、もう一段の発電に回す」という発想は変わらない。

今日試せることとして、火力発電所や工場のコージェネレーション設備のニュースを見るときに、「この設備は熱を何回使い切ろうとしているのか」という視点で読んでみるといい。

この二段構えの発想が標準化されているのは、限りある燃料からできるだけ多くの電力を取り出す必要があるからだ。そしてこの「排熱を捨てずに二度目の仕事をさせる」という発想は、火力発電所だけの話ではない。家庭用燃料電池のコージェネレーションや、工場の排熱利用にも共通する考え方であり、これからのエネルギー活用の入口にもなっている。

冒頭の謎、同じ燃料でどうやって2回発電しているのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. コンバインドサイクルの『効率が高い理由』を燃料の違いにすり替える

    なぜ引っかかるガスタービンと蒸気タービンの複合という構造の話を、燃料(天然ガスだから効率が良い等)の話にすり替えられやすい

    見破り方効率が上がる理由は燃料の種類ではなく、高温域と低温域を2種類のタービンで使い切る『二段構え』の構造にあると押さえる

  2. 再熱サイクルと再生サイクルの目的を入れ替える

    なぜ引っかかる名前が似ており、両方とも『熱効率を上げる』という結果だけ覚えると混同する

    見破り方再熱=タービンとタービンの間で蒸気をもう一度加熱(タービン翼の侵食防止も兼ねる)、再生=蒸気の一部を抽気して給水を予熱、と『何に対して何をするか』で区別する

  3. 復水器を『ただの冷却装置』として軽視させる

    なぜ引っかかる復水器が熱サイクル中で最大の熱損失箇所であることを見落とし、単なる補助設備だと誤解させる

    見破り方復水器はタービン出口を真空近くまで下げて蒸気を膨張しきらせる重要な役割を持つと同時に、熱を海へ捨てる最大の損失点でもある、という二面性をセットで押さえる

  4. 節炭器の位置を、燃焼ガス側では過熱器より上流(火炉に近い側)だと誤答させる

    なぜ引っかかる『節炭器も過熱器も熱をやり取りする機器』という括りで覚えていると、煙道内の並び順を逆に記憶しやすい

    見破り方水側と煙道側は逆向きの経路であることを意識する。水は給水ポンプ→節炭器→ドラムの順に温度が上がっていくのに対し、燃焼ガスは火炉から出たあと過熱器→節炭器の順に温度が下がっていく。節炭器は煙道の中で最も煙突に近い(最も温度が下がった排ガスから熱を回収する)位置にある

  5. 排煙脱硫装置と排煙脱硝装置を、どちらも『排ガスをきれいにする装置』という括りで、取り除く対象を入れ替えて覚えさせる

    なぜ引っかかる硫黄酸化物(SOx)と窒素酸化物(NOx)はどちらも『○酸化物』という似た名前で、どちらの装置がどちらを取り除くか混同しやすい

    見破り方反応の中身で区別する。脱硫はSOxを石灰石スラリーと反応させて石こうにする(『硫』の字と石こうを結びつける)。脱硝はNOxにアンモニアを加え、触媒でNOxを窒素と水に分解する(アンモニアが必要なのは脱硝だけ)と覚える

参考文献・出典

理解度チェック(8問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、8問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 8 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 汽力発電の基本はランキンサイクル。給水ポンプ→ボイラで加熱→過熱器で過熱蒸気に→蒸気タービンで膨張させ発電→復水器で冷やして水に戻す、という循環
  2. 再熱サイクルは高圧タービンで湿り気味になった蒸気をもう一度ボイラで加熱してから低圧タービンへ送る方式。再生サイクルはタービン途中の蒸気の一部を抽気して給水の予熱に使う方式。大容量機は両方を組み合わせた再熱再生サイクルが標準
  3. 復水器はタービン出口を真空近くまで下げて蒸気を膨張しきらせる重要な役割を持つ一方、熱を海などへ捨てるため熱サイクル中で最大の熱損失箇所でもある
  4. コンバインドサイクルは、ガスタービンで発電したあとの高温の排気を排熱回収ボイラに導いて蒸気を作り、蒸気タービンでも発電する二段構え。高温域をガスタービン、低温域を蒸気タービンが受け持つため、汽力単独より熱を使い切りやすく、起動・停止も速い
  5. 自然循環ボイラの水側の経路は、給水ポンプ→節炭器(給水を予熱)→蒸気ドラム→降水管→蒸発管(水冷壁、密度差で自然循環)→ドラムに戻る→過熱器→タービンの順。燃焼ガス側の煙道では、節炭器は過熱器より下流(最も煙突に近い側)に置かれ、排ガスの余熱で給水を温める
  6. 大気汚染防止装置は取り除く対象で仕分ける。排煙脱硫装置=硫黄酸化物(SOx)を石灰石スラリーと反応させ石こうとして回収。排煙脱硝装置=窒素酸化物(NOx)にアンモニアを加え触媒で窒素と水に分解。電気集じん器=ばいじん(粒子状物質)をコロナ放電で帯電させ集じん電極に吸着。煙道の並びはボイラ→脱硝→空気予熱器→電気集じん→脱硫→煙突が代表的
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