最新の火力発電所は、同じ燃料で「2回」発電しているという。同じ燃料を燃やして、どうやって2回分の電気を取り出すのか。
昔ながらの火力発電のイメージは「燃料を燃やしてお湯を沸かし、蒸気でタービンを回す」という一段構えだ。それだけなら発電は1回のはずなのに、最新の設備は同じ燃焼ガスから2度目の発電をやってのける。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その仕組みを自分の言葉で説明できるようになっている。
火力発電のうち、燃料を燃やしてボイラで蒸気を作り、蒸気タービンで発電する方式を汽力発電と呼ぶ。その基本サイクルがランキンサイクルだ。
ランキンサイクルは、給水ポンプで水を送り、ボイラで加熱して飽和蒸気にし、過熱器でさらに過熱蒸気にしたうえで蒸気タービンに送って膨張させ、発電機を回す。タービンを出た蒸気は復水器で海水などにより冷却されて水(復水)に戻り、また給水ポンプへ戻る。復水器は、タービン出口を真空近くまで下げることで蒸気を膨張しきらせる役割を持つが、その熱を海へ捨てるため、熱サイクルの中で最大の熱損失箇所でもある。
ボイラの中身 ― 節炭器はどこにあるのか
「ボイラ」と一言でまとめてしまいがちだが、中身は蒸気ドラム・蒸発管・過熱器・節炭器という役割の違う機器の集まりだ。節炭器(エコノマイザ) は、給水ポンプから送られてきた水を、蒸気ドラムに入る前にあらかじめ予熱しておく機器で、位置関係を間違えやすい。
水・蒸気の側から見ると、節炭器は給水ポンプと蒸気ドラムの間にある。ここで給水をあらかじめ温めてからドラムに送り込むことで、ドラムでの加熱にかかる燃料を節約する――これが「節炭器」という名前の由来だ。ドラムから出た水は降水管を通って外側を下り、蒸発管(水冷壁)を通って火炉内を上りながら熱を吸収し、再びドラムに戻る。ドラムで分離された蒸気は過熱器でさらに過熱され、タービンへ送られる。
一方、燃焼ガスの側から見ると、話の向きが逆になる。火炉で燃料を燃やした高温のガスは、まず蒸発管(水冷壁)と過熱器という、もっとも高温を必要とする機器に熱を渡す。そのあと温度が下がったガスが向かう先が節炭器で、ここで給水を予熱するぶんの熱を渡してから、煙突(場合によっては空気予熱器を経て)へ抜けていく。節炭器は、煙道の中でもっとも煙突に近い位置に置かれている。
このサイクルを効率よく回すための工夫が2つある。再熱サイクルは、高圧タービンで膨張して湿り気味になった蒸気を、ボイラの再熱器でもう一度加熱してから低圧タービンへ送る方式で、熱効率が上がるだけでなく、水滴によるタービン翼の侵食も防げる。再生サイクルは、タービンの途中から蒸気の一部を抽気して給水の予熱に使う方式で、復水器で捨てる熱が減る分だけ効率が上がる。大容量の汽力発電所は、両方を組み合わせた再熱再生サイクルが標準になっている。
コンバインドサイクルは、この発想をさらに一段進めたものだ。ガスタービンでまず燃焼ガスを使って発電し、本来なら捨てるはずだった高温の排気を排熱回収ボイラに導いて蒸気を作り、蒸気タービンでもう一度発電する。高温域をガスタービンが、低温域を蒸気タービンが受け持つことで、熱を使い切る二段構えになっている点が、汽力単独の発電より熱効率が高くなる理由の本質だ。具体的な効率の数値は技術の世代交代とともに年々更新されていく統計値なので、ここでは「仕組みとしてなぜ効率が上がるのか」を押さえておけば十分だ。コンバインドサイクルは起動・停止も速く、需要変動への追従にも向いている。
大気汚染防止装置 ― 何を取り除くか
火力発電所の煙道には、熱を回収する節炭器・過熱器とは別に、排ガス中の汚染物質を取り除く3つの装置が並ぶ。何を取り除く装置かで対応づけて覚えると混同しない。
排煙脱硫装置は、硫黄酸化物(SOx)を除去する。主流は湿式石灰石こう法で、石灰石スラリー(石灰石を水に溶いたもの)を排ガスに接触させ、SOxと反応させて石こうとして回収する。排煙脱硝装置は、窒素酸化物(NOx)を除去する。排ガスにアンモニアを加えて触媒に通し(アンモニア接触還元法)、NOxを窒素と水に分解する。電気集じん器は、ばいじん(煤じん・粒子状物質)を除去する。コロナ放電で粒子を帯電させ、集じん電極に吸着させたあと、槌打で落として回収する。
コージェネレーションとは何で、何ではないか
コージェネレーション(熱電併給)は、発電と同時に、その排熱も利用する方式だ。 定義はこの一行に尽きる。電気と熱を併せて供給する——だからコー(共に)ジェネレーション(発生)という。
| 選択肢の例 | なぜ違うか |
|---|---|
| 受電した電気と自家発電を常時系統連系する方式 | 連系の話であって、熱を使っていない |
| 深夜電力を使って蓄熱する方式 | 電力を買う時間帯の話。自分で発電していない |
| 電気集じん装置で排ガスを処理する方式 | 環境設備の話で、エネルギーの利用ではない |
判定の物差しは「発電しているか」と「その排熱を使っているか」の2つが同時に揃うかだけだ。 どちらか一方しか無いものは、コージェネレーションではない。
総合効率が高くなるのは、捨てていた熱を回収するからで、 発電効率そのものが上がるわけではない点も、取り違えやすい。
タービンの先にある発電機は、水力のそれとは形が違う
ここまでボイラ・タービン・復水器という熱の流れを見てきたが、その先で電気を作る発電機そのものにも、火力ならではの形がある。火力の発電機をタービン発電機と呼び、水力の水車発電機と並べると違いがはっきりする。
| タービン発電機(火力・原子力) | 水車発電機(水力) | |
|---|---|---|
| 回転速度 | 高速(2極なら3000/3600 min⁻¹) | 低速(数十〜数百 min⁻¹) |
| 回転子の形 | 非突極形(円筒形) | 突極形 |
| 軸の向き | 横軸形が一般的 | 縦軸形が一般的 |
| 形状 | 直径が小さく、軸方向に長い | 直径が大きく、扁平 |
蒸気タービンは高速で回るので、発電機も高速で回る。高速で回るものに突起(突極)が付いていると、遠心力で壊れるうえ、風損(空気との摩擦)も大きい。だから回転子をでこぼこの無い円筒にして、その表面の溝に巻線を埋め込む——これが非突極形(円筒回転界磁形)だ。
一方、水車はゆっくり回る。同じ周波数を出すには極数を増やすしかなく、極が多ければ回転子は突起が並んだ形(突極形)になり、直径も大きくなる。縦軸にするのは、水の落差を使う構造上、水車を下に置いて軸を立てるのが自然だからだ。
「速いから円筒・横長」「遅いから突極・扁平」——形の違いは、回転速度がそのまま姿になったものだと読める。
同期速度の式 を思い出すと、話がつながる。50Hzで2極なら3000 min⁻¹、4極なら1500 min⁻¹。タービン発電機は極数を減らして高速で回し、水車発電機は極数を増やして低速で回す——同じ周波数を作るための、2つの正反対の解き方だ。
非常用発電機の中身 — ディーゼル機関と、はずみ車
蒸気タービンを回す汽力発電に対して、燃料を機関の中で直接燃やして回すのが内燃力発電だ。ビルや病院の非常用発電設備として据えられているのは、たいていディーゼル機関である。停電したときに数十秒で立ち上がり、消防設備や非常用照明へ電気を送る。
汽力発電と決定的に違うのは、動力の出し方が連続でないことだ。
そのままでは、力の出る瞬間だけ速く回り、他の瞬間は遅くなる——回転にむらが出る。これを均すのがはずみ車(フライホイール)だ。
軸に取り付けられた重い円盤で、燃焼行程で回転エネルギーを蓄え、力の出ない行程でそれを吐き出す。貯めて放す働きによって、断続的な力が連続した回転に変わる。
はずみ車の目的は「回転のむら(速度変動)を抑えること」。 出力を上げるためでも、始動を速くするためでもない。
回転むらは、発電機にとっては周波数の変動として現れる。50Hzで回っていてほしいものが、燃焼のたびに速くなったり遅くなったりしては、つながっている機器が困る。はずみ車は、機械の都合を電気の品質に持ち込ませないための部品だといえる。
同じ内燃力でもガスタービンは、燃焼ガスで羽根車を連続的に回すので、この問題が起きにくい。断続燃焼のディーゼルにははずみ車が要り、連続燃焼のガスタービンには要らない——構造の違いが、そのまま部品の要否になっている。
捨てるはずだった熱に、二度目の仕事をさせる発想
この仕組みが分かると、発電所の「効率が高い」というニュースの見方が変わる。数字そのものは年ごとに変わるが、その裏にある「一度捨てるはずだった熱を、もう一段の発電に回す」という発想は変わらない。
今日試せることとして、火力発電所や工場のコージェネレーション設備のニュースを見るときに、「この設備は熱を何回使い切ろうとしているのか」という視点で読んでみるといい。
この二段構えの発想が標準化されているのは、限りある燃料からできるだけ多くの電力を取り出す必要があるからだ。そしてこの「排熱を捨てずに二度目の仕事をさせる」という発想は、火力発電所だけの話ではない。家庭用燃料電池のコージェネレーションや、工場の排熱利用にも共通する考え方であり、これからのエネルギー活用の入口にもなっている。
冒頭の謎、同じ燃料でどうやって2回発電しているのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。