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発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 ・ 7 / 11

送電線に起きること — コロナ放電・フェランチ効果・地中送電

読み終えると、こうなる

送電線から聞こえる音や、深夜の電圧のニュースの裏で何が起きているかを言い当てられるようになる。

  • コロナ放電が、晴天より雨・雪・霧の日に起きやすいと見分けられる
  • フェランチ効果を、重負荷時ではなく軽負荷時に起きる電圧の逆転現象だと区別できる
  • 地中ケーブルの事故が地絡か断線かで、使うべき故障点測定方式を選び直せる
考えてみよう

送電線に近づくと、ジジジジという音や、AMラジオのノイズを感じることがある。それも晴れた日より雨の日のほうが酷いことがある。何が起きているのか。

これまでのトピックで、送電線がなぜ高電圧で送られ、どんな部材で支えられているかを見てきた。だが電線そのものの表面や、需要の少ない時間帯には、また別の現象が起きている。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この音や雑音の正体、そして送電線特有の別の現象も説明できるようになっている。

送電線には、電線の太さや天候、時間帯によって現れる特有の現象がいくつかある。ここでは代表的な2つの現象と、地中送電の特徴を見ていく。

昼と深夜で、電圧の高低が逆転する 昼間(負荷が大きい) 送電端電圧>受電端電圧 深夜になり負荷が減ると 深夜(軽負荷・フェランチ効果) 受電端電圧>送電端電圧 静電容量による進み電流が電圧を押し上げる 軽負荷時は線路の静電容量による進み電流で受電端電圧が送電端より高くなる(自作の概念図)

まずコロナ放電。電線表面の電位の傾きがコロナ臨界電圧を超えると、周囲の空気の絶縁が破れて放電が起きる。標準状態(20℃・1013.25hPa)の平滑な導体表面という理想条件のもとでの目安として、波高値で約30kV/cm(実効値ではおよそ21.1kV/cm)とされている。ただしこれはあくまで理想条件下の目安であり、実際の電線表面の状態や天候によって発生しやすさは変わる。晴天よりも雨・雪・霧の日、また気圧の低い高地のほうが発生しやすく、電線が細いほど電位の傾きが急になるため発生しやすい。コロナ放電が起きるとコロナ損という電力損失が生じるほか、AMラジオなどへの受信障害を起こす広帯域の雑音も発生する。対策としては、外径の大きい電線(鋼心アルミより線)を使う、1相を複数の電線に分けて並べる多導体方式で電線表面の電位の傾きを緩和する、がいし装置の金具の突起をなくす、といった工夫がある。

電圧は、電流がたくさん流れる重負荷のときに下がり、負荷が減れば単純に元に戻るだけだと思うかもしれない。だが実際には、深夜などの軽負荷・無負荷時に、線路の静電容量による進み電流(充電電流)が優位になり、**受電端の電圧が送電端の電圧を上回ってしまう**逆転現象が起きる。これがフェランチ効果で、静電容量の大きいケーブル系統や長距離線路ほど顕著になる。対策としては、分路リアクトルを接続して進み無効電力を吸収する、同期調相機を低励磁で運転する、需要家の[進相コンデンサ](/terms/phase-advance-capacitor/)を軽負荷期に開放する、といった方法がある。

もう1つ、送電の方式そのものにも選択肢がある。地中送電は、都市部や美観・保安を重視する区間で採用される方式で、現在はCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)が主流になっており、従来の絶縁油を使うOFケーブルを置き換えてきた。長所は、雷・風雨・氷雪の影響を受けにくく信頼度が高いこと、美観が良いこと。短所は、建設費が高いこと、故障点の発見と復旧に時間がかかること、静電容量が大きく充電電流も大きくなる(フェランチ効果の一因にもなる)ことだ。地中ケーブルの故障点測定には、ケーブル抵抗が長さに比例することを利用し健全相を使って標定するマーレーループ法(地絡事故向き)、パルスを送って反射時間で標定するパルスレーダ法(断線事故向き)、静電容量が長さに比例することを利用する静電容量法(断線事故向き)がある。

深夜の電圧上昇が、需要と供給の裏側を見せる

「電圧は電流が多いほど下がる」という単純なイメージだけでは説明できない現象が、送電線には実際に起きている。この逆転を知っていると、深夜の系統運用でなぜ調相設備が働いているのか、というニュースの見出しの意味が変わって見えてくる。

今日試せることとして、電力会社の系統運用や需給に関するニュースを見るときに、「これは重負荷の話か、軽負荷の話か」を意識して読んでみるといい。

コロナ放電もフェランチ効果も、電線や系統の「見えない性質」が引き起こす現象だ。これらへの対策が積み重なっているのは、通信障害や電圧異常が実際に問題を起こしてきたからにほかならない。そして太陽光発電の系統連系が増えると、日中の逆潮流や軽負荷時の電圧変動という形で、フェランチ効果と似た構図の課題が現れてくる。この科目で学ぶ「電圧がどう動くか」という視点は、そうした新しい電源が増える時代の電圧管理の土台になる。

冒頭の謎、送電線に近づくと感じる音やノイズの正体。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. フェランチ効果を『重負荷時に起きる』と逆に覚えさせる

    なぜ引っかかる電圧が上昇するという結果だけを見ると、負荷が大きい(電流が多い)ときに起きると錯覚しやすい

    見破り方フェランチ効果は軽負荷・無負荷時に線路の静電容量による進み電流が優位になって起きる現象だと、発生条件から確認する

  2. コロナ放電を晴天時の現象だと思わせる

    なぜ引っかかる『電線からの放電』というと乾燥した晴天時のイメージを持ちやすい

    見破り方コロナ放電は雨・雪・霧など湿った天候や気圧の低い高地でむしろ発生しやすいと覚える

  3. 地中送電のケーブル故障点測定方式の使い分けを混同させる

    なぜ引っかかるマーレーループ法・パルスレーダ法・静電容量法という3方式は名前が似ていて、どの事故(地絡か断線か)に向くか混同しやすい

    見破り方地絡事故(健全相が必要)=マーレーループ法、断線事故=パルスレーダ法か静電容量法、と事故の種類とセットで覚える

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. コロナ放電は電線表面の電位の傾きがコロナ臨界電圧を超えると発生する放電。標準状態(20℃・1013.25hPa)の平滑な導体表面という理想条件での目安として、波高値で約30kV/cmとされる。雨・雪・霧の日や気圧の低い高地、細い電線ほど発生しやすく、コロナ損と広帯域の雑音を起こす
  2. フェランチ効果は、深夜など軽負荷・無負荷時に、線路の静電容量による進み電流(充電電流)のせいで受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象。静電容量の大きいケーブル系統や長距離線路で顕著になる
  3. 地中送電は都市部・美観重視の区間で採用され、現在はCVケーブルが主流。雷・風雨・氷雪の影響を受けにくく信頼度が高い一方、建設費が高く、故障点の発見と復旧に時間がかかる
  4. 地中ケーブルの故障点測定には、地絡事故で健全相を利用するマーレーループ法、断線事故に向くパルスレーダ法・静電容量法がある
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