送電線に近づくと、ジジジジという音や、AMラジオのノイズを感じることがある。それも晴れた日より雨の日のほうが酷いことがある。何が起きているのか。
これまでのトピックで、送電線がなぜ高電圧で送られ、どんな部材で支えられているかを見てきた。だが電線そのものの表面や、需要の少ない時間帯には、また別の現象が起きている。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この音や雑音の正体、そして送電線特有の別の現象も説明できるようになっている。
送電線には、電線の太さや天候、時間帯によって現れる特有の現象がいくつかある。ここでは代表的な2つの現象と、地中送電の特徴を見ていく。
まずコロナ放電。電線表面の電位の傾きがコロナ臨界電圧を超えると、周囲の空気の絶縁が破れて放電が起きる。標準状態(20℃・1013.25hPa)の平滑な導体表面という理想条件のもとでの目安として、波高値で約30kV/cm(実効値ではおよそ21.1kV/cm)とされている。ただしこれはあくまで理想条件下の目安であり、実際の電線表面の状態や天候によって発生しやすさは変わる。晴天よりも雨・雪・霧の日、また気圧の低い高地のほうが発生しやすく、電線が細いほど電位の傾きが急になるため発生しやすい。コロナ放電が起きるとコロナ損という電力損失が生じるほか、AMラジオなどへの受信障害を起こす広帯域の雑音も発生する。対策としては、外径の大きい電線(鋼心アルミより線)を使う、1相を複数の電線に分けて並べる多導体方式で電線表面の電位の傾きを緩和する、がいし装置の金具の突起をなくす、といった工夫がある。
もう1つ、送電の方式そのものにも選択肢がある。地中送電は、都市部や美観・保安を重視する区間で採用される方式で、現在はCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)が主流になっており、従来の絶縁油を使うOFケーブルを置き換えてきた。長所は、雷・風雨・氷雪の影響を受けにくく信頼度が高いこと、美観が良いこと。短所は、建設費が高いこと、故障点の発見と復旧に時間がかかること、静電容量が大きく充電電流も大きくなる(フェランチ効果の一因にもなる)ことだ。地中ケーブルの故障点測定には、ケーブル抵抗が長さに比例することを利用し健全相を使って標定するマーレーループ法(地絡事故向き)、パルスを送って反射時間で標定するパルスレーダ法(断線事故向き)、静電容量が長さに比例することを利用する静電容量法(断線事故向き)がある。
深夜の電圧上昇が、需要と供給の裏側を見せる
「電圧は電流が多いほど下がる」という単純なイメージだけでは説明できない現象が、送電線には実際に起きている。この逆転を知っていると、深夜の系統運用でなぜ調相設備が働いているのか、というニュースの見出しの意味が変わって見えてくる。
今日試せることとして、電力会社の系統運用や需給に関するニュースを見るときに、「これは重負荷の話か、軽負荷の話か」を意識して読んでみるといい。
コロナ放電もフェランチ効果も、電線や系統の「見えない性質」が引き起こす現象だ。これらへの対策が積み重なっているのは、通信障害や電圧異常が実際に問題を起こしてきたからにほかならない。そして太陽光発電の系統連系が増えると、日中の逆潮流や軽負荷時の電圧変動という形で、フェランチ効果と似た構図の課題が現れてくる。この科目で学ぶ「電圧がどう動くか」という視点は、そうした新しい電源が増える時代の電圧管理の土台になる。
冒頭の謎、送電線に近づくと感じる音やノイズの正体。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。