送電用変圧器の中性点を大地につなぐかどうか、つなぐなら何を挟むか——これだけの違いで、接地方式は4つに分かれている。しかも6.6kVの配電線は「つながない」設計なのに、500kVの超高圧送電線は「太い導体で直接つなぎ、地絡時には数万Aを流す」設計になっている。
同じ地絡という事故への備えなのに、なぜ電圧が高い系統ほど、わざと大きな電流が流れる設計を選ぶのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、4方式を1本の軸の上に並べ直し、電圧階級ごとの使い分けを理由から説明できるようになっている。
先に種明かしをすると、この4方式は「良い方式と悪い方式」の一覧ではない。地絡電流を小さく絞るか、大きく流してしまうかという1本の軸の上で、どこに立つかを選んだ結果にすぎない。
地絡電流を小さくすれば、並走する通信線への誘導障害が減り、地絡点や機器の損傷も減る。そのかわり、電流が小さいぶん地絡の検出が難しくなり、健全相(地絡していない相)の対地電圧の上昇——異常電圧——が大きくなる。
地絡電流を大きくすれば、話は正反対になる。検出は容易・確実になり、健全相の電圧上昇は小さく抑えられるので線路や機器の絶縁を軽くできる。そのかわり、誘導障害は大きくなり、大電流を切る遮断器の負担も増える。
この軸の上に、4方式を順に置いてみる。
非接地方式は、軸のいちばん「小さい」側だ。中性点を大地につながないので、地絡しても電流の帰り道は電線と大地の間の対地静電容量しかなく、流れるのはその静電容量を通る充電電流だけになる。6.6kV配電系統がすべてこの方式なのは、系統電圧が低く地絡電流の絶対値がもともと小さいこと、そして周密な市街地で通信線と並走するため、誘導障害の防止と保安の確保を優先したいことが理由だ。そのかわり、1線地絡時の健全相の電圧上昇や間欠アーク地絡による異常電圧の割合は4方式の中で最も高く、小さな地絡電流を拾うために、接地形計器用変圧器で検出した零相電圧とZCT(零相変流器)の零相電流を組み合わせた地絡方向継電器が使われる。「機器・受給電設備」の科目で見たZCTとGRの仕組みは、まさにこの非接地方式という前提の上に成り立っている。
消弧リアクトル接地方式は、電流を絞る発想をさらに徹底した方式だ。中性点に入れたリアクトルのリアクタンスを、系統の対地静電容量と並列共振させる。並列共振すると零相インピーダンスが極めて大きくなり、1線地絡が起きても地絡電流がほとんど流れない。狙いは、地絡アークを自然消滅させて、線路を遮断せずにそのまま送電を続けることにある。ただし電流が流れない以上、地絡の検出は4方式の中で最も難しく、適用はケーブルの少ない架空送電線主体の系統に限られる。
直接接地方式は、軸の反対側の端、いちばん「大きい」側だ。中性点を導体で直接大地につなぐため、1線地絡時には数万Aという最大級の地絡電流が流れる。それでも187kV以上の超高圧系統がすべてこの方式なのは、健全相の電圧上昇が最も小さく抑えられるからだ。異常電圧が低ければ、線路や機器の絶縁レベルを下げられる——変圧器では線路側端子から中性点にかけて絶縁を段階的に低減する設計も可能になり、超高圧になるほど莫大になる絶縁費用を大きく節約できる。大電流のおかげで保護継電器の動作も迅速・確実になる。そのかわり、通信線に発生する電磁誘導電圧が高くなりやすく、大電流を切る遮断器の負担は大きく、過渡安定度も他の方式より低下する。
抵抗接地方式は、この両端の中間に立つ方式だ。中性点に接地抵抗器を挟み、地絡電流を100〜500A程度に加減する。検出に必要なだけの電流は流しつつ、誘導障害と損傷は抑える——22〜154kV(66kV・77kVといった、高圧受電設備に電気を送ってくる特別高圧の階級を含む)で最も一般的に採用されているのは、この妥協点の置き方が中間の電圧階級に合っているからだ。
6.6kVの「非接地」が、高圧受電設備の設計まで決めている
この軸が頭に入ると、これまで学んできたことが1本につながって見えてくる。高圧受電設備の地絡保護にZCTと地絡方向継電器が要るのは、6.6kV配電系統が非接地方式で、地絡電流が小さく素直には検出できないからだ。B種接地抵抗の計算に出てくる1線地絡電流Igが数A程度の小さな値で済むのも、同じ理由による。キュービクルの中の見慣れた機器の背後に、配電系統全体の設計思想が透けて見えるようになる。
今日試せることとして、送電線の鉄塔を見かけたら「この電圧階級なら中性点はどうつながれているか」を考えてみるといい。超高圧の大きな鉄塔なら直接接地、66kV・77kVクラスなら抵抗接地、電柱の6.6kVなら非接地——地絡という同じ事故に対して、系統ごとに違う天秤の答えが選ばれている。
再生可能エネルギーの大量連系で系統構成が変わっていくこれからも、「地絡電流を絞るか流すか、それで何を得て何を失うか」という軸そのものは変わらない。方式名を暗記するのではなく軸で覚えておくことが、新しい系統の話を読むときの土台になる。
冒頭の謎、なぜ電圧が高い系統ほどわざと大電流が流れる設計を選ぶのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。