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発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 ・ 8 / 11

送電用変圧器の中性点接地方式 — 地絡電流を絞るか、流すか

読み終えると、こうなる

4つの接地方式を、バラバラの暗記項目ではなく『地絡電流の大小で何を得て何を失うか』という1つの天秤の上の選択として見分けられるようになる。

  • 超高圧(187kV以上)=直接接地、66kV・77kV=抵抗接地、6.6kV配電=非接地という対応を、理由とセットで言い当てられる
  • 地絡電流を小さくすると何が良くなり(誘導障害・損傷)、何が悪くなるか(検出・異常電圧)を両面から説明できる
  • 消弧リアクトル接地を『電流を切る方式』ではなく『地絡電流を流さずアークを自然消滅させて送電を続ける方式』だと区別できる
考えてみよう

送電用変圧器の中性点を大地につなぐかどうか、つなぐなら何を挟むか——これだけの違いで、接地方式は4つに分かれている。しかも6.6kVの配電線は「つながない」設計なのに、500kVの超高圧送電線は「太い導体で直接つなぎ、地絡時には数万Aを流す」設計になっている。

同じ地絡という事故への備えなのに、なぜ電圧が高い系統ほど、わざと大きな電流が流れる設計を選ぶのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、4方式を1本の軸の上に並べ直し、電圧階級ごとの使い分けを理由から説明できるようになっている。

先に種明かしをすると、この4方式は「良い方式と悪い方式」の一覧ではない。地絡電流を小さく絞るか、大きく流してしまうかという1本の軸の上で、どこに立つかを選んだ結果にすぎない。

地絡電流を小さくすれば、並走する通信線への誘導障害が減り、地絡点や機器の損傷も減る。そのかわり、電流が小さいぶん地絡の検出が難しくなり、健全相(地絡していない相)の対地電圧の上昇——異常電圧——が大きくなる。

地絡電流を大きくすれば、話は正反対になる。検出は容易・確実になり、健全相の電圧上昇は小さく抑えられるので線路や機器の絶縁を軽くできる。そのかわり、誘導障害は大きくなり、大電流を切る遮断器の負担も増える。

4方式は「地絡電流の大小」の軸に並ぶ 地絡電流 小さい 非接地方式 6.6kV配電系統 電流は充電電流だけ・検出が難しい 消弧リアクトル接地方式 架空送電線主体の系統(適用は限定的) 共振で電流を流さずアークを自然消滅 抵抗接地方式 22〜154kV(66kV・77kVなど) 抵抗で電流を100〜500A程度に加減 直接接地方式 187kV以上の超高圧 電流は数万A・検出確実・異常電圧最小 地絡電流 大きい 上ほど地絡電流が小さく(誘導障害・損傷は小、検出は難・異常電圧は大)、下ほど大きい(検出は確実・異常電圧は小、誘導障害・遮断器の負担は大)。自作の概念図

この軸の上に、4方式を順に置いてみる。

非接地方式は、軸のいちばん「小さい」側だ。中性点を大地につながないので、地絡しても電流の帰り道は電線と大地の間の対地静電容量しかなく、流れるのはその静電容量を通る充電電流だけになる。6.6kV配電系統がすべてこの方式なのは、系統電圧が低く地絡電流の絶対値がもともと小さいこと、そして周密な市街地で通信線と並走するため、誘導障害の防止と保安の確保を優先したいことが理由だ。そのかわり、1線地絡時の健全相の電圧上昇や間欠アーク地絡による異常電圧の割合は4方式の中で最も高く、小さな地絡電流を拾うために、接地形計器用変圧器で検出した零相電圧とZCT(零相変流器)の零相電流を組み合わせた地絡方向継電器が使われる。「機器・受給電設備」の科目で見たZCTとGRの仕組みは、まさにこの非接地方式という前提の上に成り立っている。

消弧リアクトル接地方式は、電流を絞る発想をさらに徹底した方式だ。中性点に入れたリアクトルのリアクタンスを、系統の対地静電容量と並列共振させる。並列共振すると零相インピーダンスが極めて大きくなり、1線地絡が起きても地絡電流がほとんど流れない。狙いは、地絡アークを自然消滅させて、線路を遮断せずにそのまま送電を続けることにある。ただし電流が流れない以上、地絡の検出は4方式の中で最も難しく、適用はケーブルの少ない架空送電線主体の系統に限られる。

直接接地方式は、軸の反対側の端、いちばん「大きい」側だ。中性点を導体で直接大地につなぐため、1線地絡時には数万Aという最大級の地絡電流が流れる。それでも187kV以上の超高圧系統がすべてこの方式なのは、健全相の電圧上昇が最も小さく抑えられるからだ。異常電圧が低ければ、線路や機器の絶縁レベルを下げられる——変圧器では線路側端子から中性点にかけて絶縁を段階的に低減する設計も可能になり、超高圧になるほど莫大になる絶縁費用を大きく節約できる。大電流のおかげで保護継電器の動作も迅速・確実になる。そのかわり、通信線に発生する電磁誘導電圧が高くなりやすく、大電流を切る遮断器の負担は大きく、過渡安定度も他の方式より低下する。

抵抗接地方式は、この両端の中間に立つ方式だ。中性点に接地抵抗器を挟み、地絡電流を100〜500A程度に加減する。検出に必要なだけの電流は流しつつ、誘導障害と損傷は抑える——22〜154kV(66kV・77kVといった、高圧受電設備に電気を送ってくる特別高圧の階級を含む)で最も一般的に採用されているのは、この妥協点の置き方が中間の電圧階級に合っているからだ。

つまり電圧階級ごとの使い分けは、丸暗記の対応表ではない。**電圧が高いほど絶縁費用が支配的になるから、異常電圧を抑えられる直接接地側へ。電圧が低く市街地に張り巡らされる配電系統ほど、誘導障害と保安が支配的になるから、電流を絞る非接地側へ。**その中間の電圧階級が抵抗接地。1本の軸のどこに立つかは、その系統で何がいちばん高くつくかで決まっている。

6.6kVの「非接地」が、高圧受電設備の設計まで決めている

この軸が頭に入ると、これまで学んできたことが1本につながって見えてくる。高圧受電設備の地絡保護にZCTと地絡方向継電器が要るのは、6.6kV配電系統が非接地方式で、地絡電流が小さく素直には検出できないからだ。B種接地抵抗の計算に出てくる1線地絡電流Igが数A程度の小さな値で済むのも、同じ理由による。キュービクルの中の見慣れた機器の背後に、配電系統全体の設計思想が透けて見えるようになる。

今日試せることとして、送電線の鉄塔を見かけたら「この電圧階級なら中性点はどうつながれているか」を考えてみるといい。超高圧の大きな鉄塔なら直接接地、66kV・77kVクラスなら抵抗接地、電柱の6.6kVなら非接地——地絡という同じ事故に対して、系統ごとに違う天秤の答えが選ばれている。

再生可能エネルギーの大量連系で系統構成が変わっていくこれからも、「地絡電流を絞るか流すか、それで何を得て何を失うか」という軸そのものは変わらない。方式名を暗記するのではなく軸で覚えておくことが、新しい系統の話を読むときの土台になる。

冒頭の謎、なぜ電圧が高い系統ほどわざと大電流が流れる設計を選ぶのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 「地絡電流が大きいほど危険だから、直接接地方式は使われない」と思わせる

    なぜ引っかかる地絡電流の大きさだけを危険度の物差しにすると、電流最大の直接接地が最悪の方式に見えてしまう

    見破り方187kV以上の超高圧系統は直接接地が使われる。目的は健全相の電圧上昇を最小に抑えて線路・機器の絶縁を低減することと、確実な地絡検出。電流の大きさは、それと引き換えに受け入れている負担だと整理する

  2. 非接地方式なら地絡しても電流はまったく流れない、と思わせる

    なぜ引っかかる「接地していない=地絡電流の帰り道が無い」という素朴なイメージで、電流ゼロと錯覚しやすい

    見破り方電線と大地の間には対地静電容量があり、非接地系統でも地絡時にはこの静電容量を通る充電電流が流れる。だからこそ零相電圧・零相電流による検出が成り立つ、と仕組みから確認する

  3. 消弧リアクトル接地の目的を『地絡電流を検出しやすくするため』と入れ替える

    なぜ引っかかるリアクトルという機器の名前だけ覚えると、直列リアクトルなど他のリアクトルの役割と混ざりやすい

    見破り方消弧リアクトルは対地静電容量と並列共振させて地絡電流を流さないようにする方式。狙いはアークの自然消滅と送電の継続で、地絡検出はむしろ4方式の中で最も難しくなる、と正反対の性質を押さえる

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 中性点接地方式は、地絡電流を小さくすれば通信線への誘導障害と地絡点の損傷が減るが、地絡の検出が難しくなり健全相の電圧上昇(異常電圧)が大きくなる。大きくすれば検出は容易で異常電圧は抑えられるが、誘導障害と遮断器の負担が増える——この1本の軸の上に4方式が並ぶ
  2. 直接接地方式は187kV以上の超高圧系統で採用。地絡電流は数万Aと最大だが、健全相の電圧上昇が最も小さいため線路・機器の絶縁を低減でき、地絡の検出・遮断も確実。反面、通信線への電磁誘導電圧が高くなりやすく、過渡安定度も低下する
  3. 抵抗接地方式は22〜154kV(66kV・77kVなど)で最も一般的。中性点に接地抵抗器を入れ、地絡電流を100〜500A程度に加減した中間の方式
  4. 非接地方式は6.6kV配電系統で採用。地絡電流は対地静電容量による充電電流だけで小さく、市街地の通信線への誘導障害防止に有利。ただし健全相の電圧上昇は最も大きく、地絡検出には接地形計器用変圧器の零相電圧とZCTの零相電流による地絡方向継電器が使われる
  5. 消弧リアクトル接地方式は、中性点のリアクタンスを系統の対地静電容量と並列共振させて地絡電流を流さないようにし、地絡アークを自然消滅させて送電を続ける方式。架空送電線主体の系統に適用が限られ、地絡検出は最も難しい
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