電力量計を取り付ける工事は、電気工事士の免状がなくてもできる。ところが、壁にコンセントを取り付けて電線を接続する作業は、免状がなければできない。どちらも配線まわりの小さな取付けに見えるのに、なぜ片方だけ資格が要るのか。しかも法令を開くと、「軽微な工事」と「軽微な作業」という、そっくりな名前の言葉が別々の場所に置かれている。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この2つの「軽微」がまったく別の制度だと見分けられるようになっている。
最初に結論の骨格を渡しておく。「軽微な工事」は工事の種類の話で、そもそも『電気工事』に当たらない。「軽微な作業」は作業の内容の話で、電気工事ではあるが免状がなくても従事できる。 前者は電気工事士法の適用対象の外側、後者は適用対象の内側にある例外だ。名前は似ていても、立っている場所が違う。この軸を先に持ってから、それぞれの中身を見ていこう。
軽微な工事 — 「電気工事」の定義から除かれる6種類
電気工事士法2条3項は「電気工事」を、一般用電気工作物等または自家用電気工作物を設置し、または変更する工事と定義したうえで、ただし書で「政令で定める軽微な工事を除く」としている。この政令が施行令1条で、次の6種類を挙げている。
- 600V以下で使用する接続器・開閉器にコードまたはキャブタイヤケーブルを接続する工事(差込み接続器・ねじ込み接続器・ソケット・ローゼットなどの接続器、ナイフスイッチ・カットアウトスイッチ・スナップスイッチなどの開閉器が対象)
- 600V以下で使用する電気機器(配線器具を除く)や600V以下で使用する蓄電池の端子に、電線をねじ止めする工事
- 600V以下で使用する電力量計・電流制限器またはヒューズを取り付け、または取り外す工事
- 電鈴・インターホーン・火災感知器・豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が36V以下のものに限る)の二次側の配線工事
- 電線を支持する柱・腕木その他これらに類する工作物を設置し、または変更する工事
- 地中電線用の暗渠または管を設置し、または変更する工事
共通しているのは、電圧が低い・電路の器具側や支持物側にとどまるなど、感電や火災につながる配線の本体には踏み込まない工事だということだ。これらは「電気工事」に当たらないのだから、免状の有無を論じる以前に、電気工事士法の資格規制がそもそも及ばない。
軽微な作業 — 条文は「逆リスト」で書かれている
一方の「軽微な作業」の根拠は、電気工事士法3条のかっこ書だ。3条1項・2項は、電気工事の「作業」のうち「保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く」として、免状が要らない作業の存在を認めている。この省令が施行規則2条で、条文タイトルも(軽微な作業)となっている。
ところが、ここに読み方の落とし穴がある。施行規則2条が列挙しているのは、軽微な作業ではない。 条文は「次に掲げる作業以外の作業」という書き出しで、並んでいるのはむしろ「電気工事士でなければできない作業」の側だ。自家用電気工作物(3条1項)については、次のイ〜ヲが列挙されている。
- 電線相互を接続する作業
- がいしに電線を取り付け、または取り外す作業
- 電線を直接造営材その他の物件に取り付け、または取り外す作業
- 電線管・線樋・ダクトその他これらに類する物に電線を収める作業
- 配線器具を造営材その他の物件に取り付け、もしくは取り外し、またはこれに電線を接続する作業(露出型点滅器・露出型コンセントを取り換える作業を除く)
- 電線管を曲げ、もしくはねじ切りし、または電線管相互・電線管とボックスその他の附属品とを接続する作業
- 金属製のボックスを造営材その他の物件に取り付け、または取り外す作業
- 電線・電線管等が造営材を貫通する部分に金属製の防護装置を取り付け、または取り外す作業
- 金属製の電線管・線樋・ダクト等やその附属品を、建造物のメタルラス張り・ワイヤラス張り・金属板張りの部分に取り付け、または取り外す作業
- 配電盤を造営材に取り付け、または取り外す作業
- 接地線を自家用電気工作物に取り付け・取り外しし、接地線相互・接地線と接地極とを接続し、または接地極を地面に埋設する作業(500kW未満の需要設備で600V以下で使用する電気機器に係るものなどの除外あり)
- 600Vを超えて使用する電気機器に電線を接続する作業
(このうち電線相互の接続とがいし・接地線まわりには、感電のおそれがない低圧の電気さくに関する細かい除外がかっこ書で定められている。)
この列挙に当たらない作業、そして第一種電気工事士が従事するこれらの作業を補助する作業が、軽微な作業=免状がなくても従事できる作業になる(施行規則2条1項)。一般用電気工作物等(3条2項)についても2条2項がほぼ同じ構造で定めており、上のリストのうち接地線関係を「一般用電気工作物等(600V以下で使用する電気機器を除く)」向けに読み替えた内容と、電気工事士が従事するそれらの作業の補助作業が、同じように仕分けられている。
なぜこの線引きなのかも見ておきたい。電気工事の事故は、電線の接続不良や施工不良が壁の中・配線の奥に隠れたまま、後から火災や感電として表面化するところに怖さがある。だから資格の網は「配線の本体に手を入れる作業」に集中してかけられている。逆に、器具にコードをつなぐ・計器を付け替える・柱を立てるといった、配線本体の外側で完結する工事や、資格者の目の前で行う補助作業は、網の外に置いても保安上支障がない。「軽微」という言葉の実体は、作業が簡単かどうかではなく、隠れた施工不良として住人の安全を脅かす余地があるかどうかの線なのだ。
「これは免状が要る仕事か」を2段階で即答できるようになる
この構造が頭に入ると、現場や試験で迷ったときの判断が2段階の手順になる。まず「その工事は施行令1条の6種類に当たるか」を見る。当たれば電気工事ではないので、資格の話はそこで終わりだ。当たらなければ次に「その作業は施行規則2条の列挙(電線相互の接続、配線器具への電線接続など)に当たるか」を見る。当たれば免状が要り、当たらなければ軽微な作業として免状は要らない。
今日試せることとして、自宅の分電盤や玄関まわりを眺めて、電力量計・インターホン・照明器具のソケットが、それぞれ2つの「軽微」のどちらの制度に守られて無資格交換が許されているのかを当てはめてみるといい。
第一種電気工事士として現場を管理する立場になると、この区別は「無資格の作業員にどこまで任せてよいか」という日々の采配の根拠になる。補助作業として任せられる範囲と、自分が手を動かさなければならない範囲を、条文を根拠に線引きできることが、現場の保安と効率の両方を支える。
電力量計とコンセントで免状の要否が分かれるのは、結局どういう仕組みだったか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。