第一種電気工事士は、第二種にはできない自家用電気工作物の工事にも従事できる、法令上いちばん範囲の広い電気工事士の資格だ。ところがその第一種でも、手を出せない電気工事が2つだけある。免状のランクでいえば最上位のはずなのに、なぜその2つだけは別扱いなのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その2つの正体と、なぜそこだけ資格が切り分けられているのかを説明できるようになっている。
前のトピックで、第一種電気工事士は一般用電気工作物等に加えて自家用電気工作物(500kW未満の需要設備)の工事に従事できると見た。だがこの範囲には、実は2つの重要な補足がある。1つは「第一種でなくても自家用の一部に従事できる道」、もう1つは「第一種でも従事できない工事」だ。
まず、第一種でなくても自家用電気工作物の一部に従事できる道から見ていく。認定電気工事従事者認定証(経済産業大臣交付。電気工事士法4条の2第1項)を受けた者は、自家用電気工作物のうち「簡易電気工事」に従事できる(3条4項)。簡易電気工事とは、電圧600V以下で使用する自家用電気工作物の工事のことで、電線路に係るものは除かれる(施行規則2条の3)。この資格は、第二種電気工事士が高圧受電ビル内の低圧部分だけを施工するための現実的な選択肢として位置づけられている。
もう1つが「特殊電気工事」だ。特種電気工事資格者認定証(同じく経済産業大臣交付)を受けた者でなければ、特殊電気工事に従事できない(3条3項)。特殊電気工事は①ネオン工事(ネオン用の分電盤・主開閉器・タイムスイッチ・点滅器・ネオン変圧器・ネオン管等)②非常用予備発電装置工事(原動機・発電機・配電盤等)の2種類だけと定められている(施行規則2条の2)。そして第一種電気工事士であっても、この2つには従事できない。
なお、認定電気工事従事者・特種電気工事資格者になるための具体的な要件(必要な講習や実務経験の年数)は細目にわたるため、ここでは扱わない。押さえておくべきは、交付するのが経済産業大臣であること、そしてそれぞれが対象とする工事の範囲だ。
「この資格で足りるか」を、危険の種類から逆算できるようになる
この2つの別資格を知っていると、依頼を受けたときに「自分の免状だけで足りるか、追加の認定証が必要か」を最初に確認する癖がつく。第二種の免状しかない状態で高圧ビルの低圧部分の依頼が来たとき、認定電気工事従事者認定証の取得を検討するという選択肢が頭に浮かぶようになる。
今日試せることとして、街で見かけるネオンサインや、ビルの地下・屋上にある非常用発電機の設置状況を眺めてみるといい。これらは電気工事士の資格の階層のさらに外側で、別の専門資格者が扱っている設備だと分かる。
この切り分けが生まれた背景には、危険の種類が違う工事を同じ資格でまとめてしまうと、その資格者がどちらの危険にも十分に習熟しているとは限らない、という反省がある。資格を細分化することで、それぞれの危険に特化した知識を担保している。
将来、太陽光や蓄電池、EV充電設備を高圧で自家用電気工作物に連系する仕事が増えていくなかでも、「この工事は自分の資格の範囲内か」を最初に見極める姿勢は変わらず必要になる。独立して仕事を請け負う立場になるほど、この線引きを自分で判断できることが信用に直結する。
第一種電気工事士でも手を出せない2つの電気工事、その正体は何だったか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。