電気便座は特定電気用品。電気こたつは特定以外。どちらもヒーターを内蔵した家電なのに、扱いが分かれる。ケーブルはもっと不思議だ。同じ600Vのビニル外装ケーブルでも、公称断面積22mm²以下なら特定電気用品、22mm²を超えると特定以外になる。太い方が電流も大きくて危なそうなのに、厳しい検査を受けるのは細い方だ。
この線は、誰が、何を基準に引いたのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この線引きの考え方と、試験で問われる品目・数値を自分の言葉で説明できるようになっている。
電気用品安全法は、電気用品のうち「構造・使用方法その他の使用状況からみて特に危険又は障害の発生するおそれが多い」ものを特定電気用品として政令で指定する(2条2項)。区分の実益ははっきりしている。特定電気用品だけは、メーカー(届出事業者)の自己確認に加えて、国の登録を受けた検査機関による適合性検査(9条)を受けなければならない。事故が起きたときの被害が大きく、しかも使う側が欠陥に気づきにくいものほど、第三者の目を通してから世に出す——この設計思想が、2つの別表の線引きに表れている。
では、どこに線があるのか。試験で問われる範囲を、しきい値の数値ごと整理する。
| 区分 | 主な品目(試験頻出) | 数値の線引き |
|---|---|---|
| 特定電気用品(別表第一) | 絶縁電線・ケーブル・コード・キャブタイヤケーブル | 定格電圧100V以上600V以下。絶縁電線・キャブタイヤケーブルは100mm²以下、ケーブルは22mm²以下・線心7本以下 |
| 〃 | 温度ヒューズ・その他のヒューズ | ヒューズは1A以上200A以下(100V以上300V以下の交流用) |
| 〃 | 点滅器(タンブラースイッチ・タイムスイッチ等) | 定格電流30A以下 |
| 〃 | 配線用遮断器・漏電遮断器・箱開閉器・フロートスイッチ | 定格電流100A以下 |
| 〃 | 差込み接続器・ねじ込み接続器・ソケット・ローゼット | 定格電流50A以下・極数5以下 |
| 〃 | 電流制限器 | 定格電流100A以下 |
| 〃 | 小形単相変圧器・放電灯用安定器 | 変圧器は定格容量500VA以下、安定器は放電管の定格消費電力合計500W以下 |
| 〃 | 電気便座・電気温水器・電気温蔵庫・水道凍結防止器・観賞魚用ヒーター | 電熱器具は定格消費電力10kW以下 |
| 〃 | 電気ポンプ・電気マッサージ器・自動販売機 | 電気ポンプは定格消費電力1.5kW以下 |
| 〃 | 直流電源装置・携帯発電機 | 直流電源装置は定格容量1kVA以下、携帯発電機は定格電圧30V以上300V以下 |
| 特定以外(別表第二) | ケーブル(太い側) | 22mm²超100mm²以下 |
| 〃 | 電線管類・附属品、ケーブル配線用スイッチボックス | — |
| 〃 | カバー付ナイフスイッチ・電磁開閉器・ライティングダクト | — |
| 〃 | 単相電動機・かご形三相誘導電動機 | — |
| 〃 | 電気こたつ・電気ストーブ・電気トースター・電気カーペット等 | — |
| 〃 | 白熱電球・LEDランプ・電気スタンド等の電灯器具 | — |
| 〃 | リチウムイオン蓄電池 | — |
この表は施行令の別表を試験向けに要約したもので、実際の別表には品目ごとにさらに細かい限定が付いている。だが試験で問われるのは、この表にある代表品目としきい値がほとんどだ。
表示の記号も区分に対応している。特定電気用品にはひし形のPSEマーク、特定以外の電気用品には丸形のPSEマークが付される。電線・ヒューズ・配線器具のように表示スペースの確保が難しいものは、記号に代えて特定電気用品は<PS>E、特定以外は(PS)Eという文字表記でよいとされている(施行規則17条・別表第六・第七)。現場で電線の被覆に印字されているのは、この代替表記の方だ。
なお、この区分が製造・販売・施工それぞれの場面でどんな義務(表示・販売の制限・使用の制限)につながるかは、電気用品安全法の全体像のトピックで扱っている。このトピックはその手前、「そもそもどれが特定なのか」という線引きの地図にあたる。
資材の発注書が、法律の別表とつながって見える
この線引きが頭に入ると、実務の風景が変わる。電材の発注や検収でCVケーブルのサイズを見るとき、22mm²と38mm²の間には単なる太さの違いだけでなく、適合性検査の有無という制度上の段差があると分かる。分電盤に並ぶ配線用遮断器や漏電遮断器が、100A以下という枠で特定電気用品として検査を通ってきた部品だということも読み取れる。
今日試せることとして、手近な延長コードと、LED電球のパッケージを見比べてみるといい。コード側には<PS>E(特定)、LEDランプ側には丸形PSEまたは(PS)E(特定以外)——2種類のマークが、この線引きの実物だ。
冒頭の謎、細いケーブルの方が厳しい検査を受ける理由は。答え合わせは理解度チェックの問題でしてみよう。