自分の設備では何の異常もないのに、同じ配電系統につながる隣の需要家の設備で地絡事故が起きただけで、自分の設備の遮断器まで開いてしまう——そんな「もらい事故」が起きることがある。
自分の設備は正常なのに、なぜ他人の事故で自分の遮断器が動いてしまうのか。地絡継電器は、いったい何を見て動作を判断しているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、もらい事故がなぜ起き、それを防ぐために継電器に何を持たせればよいかを説明できるようになっている。
高圧受電設備には、事故が起きたときに設備を自動で守るための保護継電器が組み込まれている。代表的なものが過電流継電器(OCR)と地絡継電器(GR)だ。竣工検査や定期検査では、これらの継電器が正しく動作するかを、継電器試験装置で電流・電圧・位相を注入して確認する。
何につないで、何を確認するのか
継電器試験の流れは、まず継電器を実際の回路から切り離し(あるいは試験用の端子に切り替え)、継電器試験装置の出力を継電器の入力端子につなぐところから始まる。ふだんはCT(変流器)やZCT(零相変流器)を経由して届くはずの電流を、試験装置が模擬的に注入する形になる。そのうえで、試験装置が発生させる電流・電圧・位相を少しずつ変えながら、継電器が「どの値で」「どれだけの時間で」動作するかを記録していく。
この試験には大きく2つの段階がある。単体試験は、継電器そのものが整定どおりの条件で正しく動作するかどうかを確認する試験だ。継電器の内部だけを見ている。もう一方の連動試験は、継電器が動作したという信号が、実際に遮断器(CB)を開放させるところまで正しくつながっているかを確認する試験になる。単体試験だけで済ませてしまうと、「継電器自体は整定どおりに正しく動作領域を検知しているのに、遮断器への出力配線が外れている、あるいは結線を間違えている」という不具合を見逃してしまう。継電器が正常でも、その先の遮断器につながっていなければ、事故のときに設備は守られない。だからこそ検査では、継電器単体の特性と、遮断器まで含めた連動動作の両方を確認する必要がある。
OCR(過電流継電器)試験
OCR試験では、次のような項目を確認する。
- 最小動作電流試験 — 整定したタップ値の電流で、実際に動作するか
- 限時要素の動作時間特性試験 — 整定タップに対して代表的な倍率(例として300%・700%など)の電流を流し、整定したレバー(タイムダイヤル)に応じた動作時間が特性曲線どおりになっているか
- 瞬時要素試験 — 整定値を超える大きな電流を流し、瞬時(代表的な目安として数十ミリ秒程度)に動作するか
限時要素は過負荷〜中程度の短絡を、整定に応じた時間差をつけて遮断するための要素。瞬時要素は、より大きな短絡電流を即座に遮断するための要素だ。これらの試験電流の倍率や判定時間の細目は、電技解釈などの法令条文には規定がなく、JIS等に基づく代表的な試験方法として理解しておく必要がある。実際の整定値は設備ごとの試験成績書・整定計画書で確認する対象になる。連動試験では、継電器が動作してから遮断器(CB)が実際に開放するまでの一連の動作を通しで確認する。
整定がずれると、どちらの方向にも問題が起きる。整定を敏感にしすぎると、電動機を起動したときの一時的な突入電流のような、故障ではない正常な電流の変動にまで反応してしまい、意図しない停電(不必要動作)を招く。逆に整定を鈍くしすぎると、実際に過電流や短絡が起きても動作までの時間が延び、ケーブルや機器が過熱・損傷するまで遮断が間に合わなくなる。試験で動作電流・動作時間を確認する意味は、この「敏感すぎず、鈍すぎない」整定が、実際の設備でそのとおりに実現されているかを検証することにある。
GR(地絡継電器)試験
GR試験では、次のような項目を確認する。
- 動作電流試験 — 整定した地絡電流(代表的な整定例として0.2Aなど)で動作するか
- 動作時間試験 — 整定電流の一定倍における動作時間
- ZCT(零相変流器)との組合せ・遮断器又は高圧交流負荷開閉器(LBS等)との連動試験
GRの動作電流試験では、継電器試験装置からZCTが検知するはずの零相電流を模擬的に注入し、整定した電流値のところで継電器が確実に動作するかを確認する。この整定にも、敏感すぎず鈍すぎない加減が求められる。整定を敏感にしすぎると、負荷の微妙なアンバランスや、機器の対地静電容量による小さな漏れ電流にまで反応し、実際には地絡していないのに遮断してしまう。逆に整定を鈍くしすぎると、実際に地絡が発生していても検知が遅れ、地絡点でのアーク放電が長く続いて火災や機器の重大な損傷につながる恐れがある。こちらも整定値の細目は法令条文には存在せず、代表的な試験例として扱う。ここまでの試験項目を、単体試験か連動試験かという軸で整理すると次のようになる。
| 試験項目 | 確認する内容 | 単体/連動 |
|---|---|---|
| OCR 最小動作電流試験 | 整定タップ値の電流で動作するか | 単体 |
| OCR 限時要素試験 | 代表的な倍率での動作時間特性 | 単体 |
| OCR 瞬時要素試験 | 大きな電流での即時動作 | 単体 |
| OCR〜CB連動試験 | 継電器動作から遮断器開放までの一連の動作 | 連動 |
| GR 動作電流試験 | 整定した地絡電流での動作 | 単体 |
| GR〜ZCT組合せ試験 | ZCTからの信号を正しく検知するか | 単体 |
| GR〜CB/LBS連動試験 | 継電器動作から遮断・開放までの一連の動作 | 連動 |
| DGR 位相条件試験 | 零相電圧・零相電流の位相関係の判定 | 単体 |
これを防ぐには、地絡電流の大きさだけでなく、零相電圧(ZPD)と零相電流の位相関係、つまり電流がどちらの向きに流れているかを見る必要がある。三相の電圧・電流は、正常な状態であれば足し合わせるとゼロになるようバランスしている。地絡事故が起きると、このバランスが崩れ、差分として零相電圧・零相電流が現れる。この零相電圧と零相電流が同じ位相関係にあるか、逆の位相関係にあるかを見ることで、事故が自分の設備の内側で起きているのか、外側(構外)で起きているのかを判別できる。DGRはこの位相条件を試験することで、方向性が正しく機能しているかを確認する。
試験用端子CTT・VTT — 「短絡してから開く」と「開いてから挿す」
冒頭で「継電器を実際の回路から切り離し(あるいは試験用の端子に切り替え)」と書いた。この切り替えの入口になるのが、盤面に設けられるCTT(電流試験端子)とVTT(電圧試験端子)だ。名前は1文字違いだが、扱い方は正反対になる。なお、この端子の扱いは電技解釈などの法令に定められた手順ではなく、CT・VTという機器の性質から導かれる実務の作法として押さえておくものだ。
CTTは、CT(変流器)の二次回路に設けられ、OCR試験の際に試験電流を流し込む入口になる。ここで絶対の鉄則がある。CTの二次側は、開放してはならない。 一次側に電流が流れているCTの二次側を開くと、鉄心の磁気飽和によって二次側に高電圧が発生し、危険だからだ。CTの二次回路は常に短絡状態を保つ必要があり、OCR試験で継電器を回路から切り離すときも、先にCT側(電源側)を短絡してから、継電器側を切り離して試験器を接続する。CTTが短絡片(短絡プラグ)を備え、「短絡してから開く」という操作が自然に成立する構造になっているのは、この順序を人の注意力だけに委ねないためだ。
VTTは、VT(計器用変圧器)の二次回路に設けられ、不足電圧継電器(UVR)などの試験で外部から試験電圧を印加する入口になる。こちらの鉄則は逆で、VTの二次側は、短絡してはならない。 VTは電圧源であり、二次側を短絡すると大電流が流れて危険だからだ。だからVTTは、回路を開放してから試験電圧を入れる——「開いてから挿す」構造になっている。
| 端子 | 接続先 | やってはいけないこと | 試験時の操作 |
|---|---|---|---|
| CTT(電流試験端子) | CT(変流器)の二次回路 | 二次側の開放(磁気飽和で高電圧が発生) | CT側を短絡してから継電器側を切り離す |
| VTT(電圧試験端子) | VT(計器用変圧器)の二次回路 | 二次側の短絡(大電流が流れる) | 開放してから試験電圧を印加する |
CT=開放禁止(短絡して使う)、VT=短絡禁止(開放して使う)。1文字違いの端子の正反対の作法は、この対比だけ覚えておけば現場でも試験でも迷わない。端子やプラグの具体的な形状・挿抜手順の細部はメーカーや盤の仕様によって異なるため、原理のレベルで理解しておくのが確実だ。
第二種電気工事士の学習範囲には、こうした保護継電器という概念自体がほとんど登場しない。低圧の住宅・小規模店舗では、漏電遮断器やヒューズのように、単体で機能が完結する保護機器が中心だからだ。第一種で新しく求められるのは、遮断器という「実際に電気を切る機器」と、継電器という「切るべきかどうかを判断する機器」を分けて考える視点になる。継電器試験は、この「判断する機器」が正しく判断できているか、そしてその判断が実際の遮断動作までつながっているかを、単体試験と連動試験という2段階で確かめる検査だと位置づけられる。
DGRの試験項目 — 4つ揃えて、初めて「向き」が保証される
地絡方向継電器(DGR)の保護装置試験でも、出題は否定形で来る。「行わないものはどれか」。だからこそ、行う側を4つきっちり数えられるようにしておきたい。
| 試験 | 何を測るか |
|---|---|
| 最小動作電流試験 | 零相電流をゆっくり上げていき、動作した電流値を読む |
| 最小動作電圧試験 | 零相電圧をゆっくり上げていき、動作した電圧値を読む |
| 動作時間試験 | 整定値の130%・400%を加えたときに、動作までにかかる時間 |
| 位相特性試験 | 電圧と電流の位相を不動作域から動作域へ変えていき、動作した位相角 |
一方で、周波数を変えて動作を見る試験は、この一覧に入っていない。継電器が判定に使っているのは大きさと位相であって、周波数ではないからだ。選択肢に「動作周波数試験」のような、それらしいが一覧に無い名前が混ざっていたら、そこが答えになる。知らない名前が1つだけ紛れていたら、まず一覧と突き合わせる——否定形の設問はこの手順で解ける。
判定の基準も押さえておくと理解が締まる。動作電流値は整定値の±10%以内、動作電圧値は±25%以内が目安で、電圧のほうが許容幅が広い。零相電圧は系統全体の状態で決まる量で、電流ほどきれいに整定値どおりには出せない——その現実が、判定基準の緩さに表れている。
継電器の試験結果が、事故の「向き」まで語ってくれる
継電器試験の考え方が分かると、点検報告書に並ぶ「動作電流」「動作時間」という数字が、単なる合否判定の記号ではなく、「この設備はどんな事故をどう見分けているか」を表す情報として読めるようになる。
今日試せることとして、もし高圧受電設備の単線結線図や保護協調図を見る機会があれば、GRと書かれた記号のそばに「D」や「方向性」といった表記がないかを探してみるといい。方向性の有無は、その設備がもらい事故への備えを持っているかどうかを示すサインになる。
太陽光発電や蓄電池を高圧で系統に接続する設備でも、逆潮流(電気を送電線側へ送り返す状態)が起きうるぶん、保護継電器が電流の向きをどう扱うかという論点は、今後さらに重要になっていく。継電器が「大きさ」だけでなく「向き」も見ているという発想は、そうした新しい設備の保護設計を考えるときの土台になる。
冒頭の謎、隣の事故でなぜ自分の遮断器が動いてしまうのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。