クランプメータで電線を1本挟めば、負荷電流が読める。ではその同じクランプメータで、往復の電線を「まとめて」挟むと、今度は漏れ電流だけが表示される。
同じ測定器、同じ原理のはずなのに、挟み方を変えただけで、まったく違う量が読めてしまう。1本挟むのと2本まとめて挟むのとで、いったい何が変わっているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この不思議な挟み方の仕組みを説明できるようになっている。
自家用電気工作物の検査では、目的に応じて何種類もの測定器を使い分ける。まずは代表的な測定器と、それぞれが何を測るのかを整理する。
| 測定器 | 測るもの | 使い方の要点 |
|---|---|---|
| 絶縁抵抗計(メガー) | 絶縁抵抗(MΩ) | 直流の高電圧を印加。低圧は125/250/500Vなど回路電圧に応じて、高圧機器・高圧ケーブルには1,000V以上の高圧用メガーを使い分ける(実務上の慣行)。必ず停電して使用する |
| 接地抵抗計(アーステスタ) | 接地抵抗 | 補助接地極2本(P・C)を使う3電極法。電源は交流 |
| クランプメータ | 負荷電流/漏えい電流 | 回路を切らずに挟むだけで測れる。挟み方によって読める量が変わる |
| 検相器(相回転計) | 三相回路の相順 | 三相電動機の逆転防止に、受電時・改修時に確認する |
| 検電器 | 電路の充電の有無 | 停電作業の前に必ず無電圧を確認する。検電後も残留電荷があるため放電棒で放電し、短絡接地器具を取り付けてから作業する |
| 電力計・電力量計 | 電力・電力量 | 高圧回路では計器用変圧器(VT)と変流器(CT)を介して測定する |
| 絶縁耐力試験装置 | 絶縁耐力 | 試験用変圧器で高電圧を発生させ10分間印加する。ケーブルの直流試験には直流耐圧試験器を使う |
| 継電器試験装置 | OCR・GRの動作電流・動作時間・位相特性 | 電流・電圧・位相を注入して保護継電器を単体・連動で試験する |
| 絶縁油試験装置(絶縁破壊電圧試験器・油中ガス分析装置等) | 油入変圧器の絶縁油の劣化度 | 絶縁破壊電圧・全酸価・油中ガス・水分などを測定する。対象は変圧器の絶縁油であり、遮断器の真空バルブではない |
電力計・電力量計がVT(計器用変圧器)・CT(変流器)を介して測定する理由も、原理から見ると単純だ。高圧回路の電圧・電流はそのまま計器に入力できるほど小さくない。VTは高圧の電圧を計器が扱える低い電圧に、CTは大きな電流を計器が扱える小さい電流に、それぞれ決まった比率で変換する。計器はこの変換後の小さな値を読み取り、変換比率を掛け戻すことで、実際の高圧側の電力・電力量を算出している。絶縁耐力試験装置も考え方は同じで、内部の試験用変圧器で商用電源の電圧を必要な試験電圧まで昇圧し、タイマーで連続10分間という印加時間を管理する。継電器試験装置は、この逆に「大きな電流や電圧を模擬する」役割を持ち、実際の事故時と同じ条件を安全に再現して継電器の反応を確認する測定器になる。
絶縁抵抗計と接地抵抗計は、どちらも「抵抗を測る」測定器に見えるが、電源の種類が違う。絶縁抵抗計は、電圧のかかっていない電路に自分で直流の高電圧をかけ、そのとき流れるわずかな漏れ電流から絶縁抵抗を算出する。一方の接地抵抗計は交流を使う。もし直流を大地に流すと、土の中で電気分解・分極という反応が起きて測定値に誤差が生じるため、あえて交流を使っている。
検相器を省略したときに何が起きるかを考えると、この測定器の重みが分かる。三相電動機は、3本の電線のうちどの2本を入れ替えるかで回転方向が変わる。改修工事などで一度外した電線を配線し直したとき、相順を確認しないまま電源を入れると、電動機が逆回転する可能性がある。ポンプなら送るはずの水を逆に引き込もうとして配管や軸受けに無理な力がかかり、換気扇なら空気を逆方向に送ろうとして風量が出ないばかりか異音や過負荷につながることがある。コンベアのような搬送設備であれば、逆回転はそのまま製品の落下や設備破損に直結しかねない。検相器で相順を確認するのは、単なる形式的な手順ではなく、「電源を入れた瞬間に何が起こるか」を先に知っておくための検査だ。
この原理のおかげで、工場や店舗を止めることなく、絶縁の健全性を日常的に監視できる。電技解釈第14条が認める「絶縁抵抗測定が困難な場合の漏えい電流1mA以下」という代替基準も、このクランプ形漏れ電流計による測定が実務上の裏付けになっている。ちなみに漏電遮断器の内部にあるZCT(零相変流器)も、往復の電線をまとめて通すという同じ原理を使っており、測定器と保護装置が1つの物理現象でつながっている。
この2通りの挟み方を取り違えると、測定結果の意味がまるごと入れ替わってしまう。負荷電流を測るつもりで往復の電線をまとめて挟んでしまうと、行きと帰りが打ち消し合ってほぼゼロが表示され、「今この回路には負荷がかかっていない」と誤診断してしまう。逆に漏れ電流を測るつもりで電線を1本だけ挟んでしまうと、負荷電流そのものを漏れ電流と勘違いし、実際には何の異常もない回路を「大きく漏電している」と誤って判断しかねない。挟む本数を変えているだけなのに、読んでいる物理量そのものが変わっている、という自覚が測定の前提になる。
「先月の平均力率」は、どの計器で測るのか
電力会社との契約では、1か月といった期間の平均力率が基本料金の割引・割増に関わってくる。ではその平均力率は、何を取り付ければ測れるのか。名前だけ見れば「力率計」がいかにも正解らしい。だが力率計が示すのは、指針を読んだその瞬間の力率だ。工場の負荷は電動機が起動したり止まったりするたびに刻々と変わるから、瞬間の値を月末に1回読んでも、その月の平均にはならない。
期間全体をまとめて知りたければ、期間を通して積算する計器を使うしかない。それが電力量計だ。有効電力量計が積算した有効電力量W[kWh]と、無効電力量計が積算した無効電力量Q[kvarh]の2つがそろえば、その期間の平均力率は次の式で算出できる。
cosθ = W / √(W² + Q²)
有効電力・無効電力・皮相電力の直角三角形の関係(S²=P²+Q²)を、瞬時の電力ではなく期間の積算量に当てはめた形だ。たとえばある月の有効電力量が100,000kWh、無効電力量が60,000kvarhなら、√(100,000²+60,000²)≒116,600だから、平均力率は100,000÷116,600≒0.86。この「電力量計2つの組合せで平均力率を出す」計算は、実際の電気料金の力率割引の算定にも使われている。1つの計器で直接読む量と、2つの計器の積算値から計算で導く量——測定にはこの2段構えがあると知っておくと、計器の組合せを問う問題で迷わなくなる。
絶縁油の劣化診断 ― 「油」と「真空」を混同しない
油入変圧器は、内部の絶縁油が長年の通電・加熱・湿気の影響で少しずつ劣化していく。この劣化の進み具合を数値で確認するのが、絶縁油試験装置による定期的な診断だ。
- 絶縁破壊電圧試験(絶縁油耐圧試験)— 絶縁油に電圧をかけ、放電が起きる電圧を測る。新油はおおむね30kV以上が目安で、20kV未満になると要注意とされる
- 全酸価試験(酸価度試験)— 油の劣化にともなって酸価が上昇していくため、その値を追跡する
- 油中ガス分析 — 内部の異常発熱・部分放電があると特有のガスが油中に溶け込むため、その成分・量から内部異常を診断する
- 水分試験・体積抵抗率測定 — 絶縁油に混入した水分や、油そのものの絶縁性能の変化を確認する
検電器についても、使い方の順序に注意が要る。検電器がゼロを示したからといって、対象がただちに完全に無害になるわけではない。ケーブルなどには残留電荷が残っていることがあるため、検電のあとに放電棒で放電し、短絡接地器具を取り付けてから、初めて安心して作業に入れる状態になる。もう1つ見落とされやすいのが、検電器自体が壊れていたり電池が切れていたりする可能性だ。検電器が「無電圧」を示しても、それが本当に無電圧だからなのか、検電器が反応しなくなっているだけなのかは、その表示だけでは区別できない。実務では、まだ電圧がかかっていると分かっている別の場所(あるいは検電器チェッカー)で検電器そのものが正しく反応することを確認してから、対象の検電に臨む、という手順が使われている。
測定器の名前を、原理から選べるようになる
測定器を「絶縁抵抗計=メガー」「接地抵抗計=アーステスタ」という名前だけで暗記していると、少し違う場面(漏れ電流を測りたいときにどの測定器を使うか、など)で応用が利かない。だが原理から理解していれば、目的に応じて適切な測定器と使い方を自分で選べるようになる。
第二種電気工事士でも、絶縁抵抗計・接地抵抗計・クランプメータ・検電器という顔ぶれはすでに登場している。低圧の住宅・小規模店舗を対象にした、いわば「小さいサイズの道具箱」だ。第一種になると、同じ道具箱の中身が高圧版に置き換わる(高圧用の絶縁抵抗計、高圧用の検電器、放電棒や短絡接地器具)のに加えて、検相器・電力計とVT/CT・絶縁耐力試験装置・継電器試験装置という、低圧の住宅点検では出番のなかった道具がまるごと新しく加わる。同じ「測定器を使い分ける」という土台の上に、高圧受電設備ならではの新しい道具立てが積み上がっている、というのがこの科目での位置づけになる。
今日試せることとして、もしクランプメータの実物を見る機会があれば、挟み口の大きさを確認してみるといい。太い挟み口は往復の電線をまとめて挟むことを想定した漏れ電流測定用であることが多く、単に「電流を測る道具」ではなく「何を挟むかで違う量を読む道具」だと分かる。
太陽光発電や蓄電池、EV充電設備が増えると、直流回路の絶縁監視や、活線状態での漏れ電流監視の重要性はさらに増していく。これらの設備は交流と直流が混在し、系統への逆潮流という従来の住宅設備にはなかった電流の向きも扱うため、測定器を「名前」ではなく「原理」で選べることが、これまで以上に問われる場面になっていく。測定器を原理から理解していることは、こうした新しい設備の点検計画を考えるときの土台になる。
冒頭の謎、挟み方でなぜ読める量が変わるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。