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自家用電気工作物の検査方法 ・ 4 / 9

接地工事の種類と抵抗値 — B種だけが計算式である理由

読み終えると、こうなる

接地工事の抵抗値を見たとき、それが人を守るためのものか、変圧器の中の事故から低圧側全体を守るためのものかを仕分けられるようになる。

  • A・C・D種の抵抗値を、対象電圧が上がるほど厳しくなる並びとして並べ直せる
  • B種の150/Igという式を見て、分子の150が何を表しているかを言い当てられる
  • 現場の機器がどの接地工事の対象かを、電圧区分から仕分けられる
  • 金属管工事でD種接地を省略できるかどうかを、管の長さ・場所・対地電圧のセットで判定できる
考えてみよう

A種接地工事は10Ω以下、C種も10Ω以下、D種は100Ω以下——どれも「何Ω以下」とはっきり数値で言い切れる。ところがB種だけ、条文には「150/Ig」という分数の式が書かれている。

なぜB種だけ、他の3種のように固定の数値で決められないのか。Igという見慣れない記号は何を表しているのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、B種だけが式になっている理由を、他の3種との違いから説明できるようになっている。

接地工事には4種類あり、対象となる電圧区分・機器ごとに使い分けが決まっている。

種類接地抵抗値主な適用箇所
A種10Ω以下高圧又は特別高圧用の機械器具の金属製外箱等、避雷器など
B種150/Ig Ω以下が原則(自動遮断1秒超2秒以下で300/Ig、1秒以下で600/Ig)高圧・特別高圧電路と低圧電路を結合する変圧器の低圧側中性点等
C種10Ω以下(0.5秒以内自動遮断で500Ω以下)300Vを超える低圧用の機械器具の金属製外箱等
D種100Ω以下(0.5秒以内自動遮断で500Ω以下)300V以下の低圧用の機械器具の金属製外箱等

(電技解釈第17条・29条。A種の接地極は原則地下75cm以上の深さに埋設する)

接地工事A〜D種の位置関係 高圧機器の金属製外箱・避雷器 A種:10Ω以下 変圧器の低圧側中性点 B種:150/IgΩ以下 300Vを超える低圧機器の外箱 C種:10Ω以下 300V以下の低圧機器の外箱 D種:100Ω以下 高圧側から低圧側への位置関係でA〜D種を並べた概念図(実際の系統は分岐・並列を含むため簡略化している)

A種・C種・D種を並べてみると、対象の電圧が上がるほど数字が厳しくなる(Ωの数値が小さくなる)という素直な並びになっている。高圧・特別高圧の機器はA種10Ω、300Vを超える低圧機器はC種10Ω、300V以下の低圧機器はD種100Ω。ここまではすべて「何Ω以下」と一言で言える。

A種の接地極を地下75cm以上の深さに埋設するという規定にも理由がある。地表に近い浅い場所は、季節や天候によって土の乾湿が大きく変わり、接地抵抗の値が不安定になりやすい。深く埋めるほど土中の水分状態が安定し、接地抵抗の値も安定する。加えて、深く埋めることで工事や車両の通行などによる物理的な損傷からも接地極を守れる。高圧・特別高圧という、事故時の危険度が特に高い設備を守るA種だからこそ、こうした埋設条件まで含めて規定されている。

だがB種だけは違う。**A・C・D種が守っているのは「漏電した機器に触れた人」だ。守る相手が人間であれば、対象がどんな設備でも一律の値でよい。ところがB種の役割はまったく別で、変圧器の内部で高圧側(例えば6,600V)と低圧側(100V)が接触してしまう「混触」が起きたときに、低圧側につながる家庭やビルの対地電圧が150Vを超えないように抑え込む接地だ。**

このとき低圧側に流れ込む電流の大きさ(1線地絡電流Ig)は、変圧器や系統の規模によって設備ごとに違う。だから「10Ω以下」のような固定値では対応できず、150(守りたい電圧そのもの)÷Ig(設備ごとの地絡電流)という式にせざるを得ない。式の分子の150は、暗記のための数字ではなく、そのまま「対地電圧150Vを超えさせない」という目的を表している。

自動遮断装置があれば、事故を短時間で止められる分、必要な接地抵抗の厳しさは緩和される。混触時に高圧側を自動遮断する装置がある場合、遮断時間が1秒を超え2秒以下なら300/Ig、1秒以下ならさらに緩い600/Igまで許される。この関係は、「対地電圧150Vを超えた状態がどれだけ長く続くか」という時間の長さと、「接地抵抗をどこまで厳しくするか」という2つの手段が、互いに補い合っていることを示している。事故を素早く遮断できるなら接地抵抗は多少緩くてよく、逆に自動遮断に頼れないなら接地抵抗をより厳しくして電圧上昇そのものを抑える必要がある、という考え方だ。なお、計算した1線地絡電流が2A未満になる場合は2Aとして計算する、という下限のルールもある。

ここで実際に計算例を1つ確認しておく。ある変圧器の1線地絡電流Igを計算した結果、1.2Aだったとする。この値は2A未満のため、計算上は下限の2Aを使う。自動遮断装置がない場合、必要な接地抵抗は150÷2=75Ω以下になる。もし1秒以内に自動遮断する装置があれば、600÷2=300Ω以下まで緩和される。同じ設備でも、自動遮断の有無・速さによって必要な接地抵抗の基準がまったく変わる、という点をこの数字で確認しておきたい。

B種は「変圧器の接地」ではない — 低圧側にしか付かない

ここで、単線結線図の問題で実際に点を落とす取り違えを潰しておく。「変圧器の中性点の接地=B種」 と覚えてしまうことだ。これは半分しか合っていない。

B種の目的をもう一度見れば分かる。B種が抑え込みたいのは、混触したときに低圧側の対地電圧が 150Vを超えることだった。守っている相手は低圧側の電路だ。だから接地を施す場所も 低圧側でなければ意味がない。条文(電技解釈第24条)も「高圧又は特別高圧と低圧を結合する 変圧器の低圧側の中性点」と、はっきり側を指定している。中性点が無い場合は低圧側の1端子だ。

では高圧側の中性点に接地を施す場合はどうなるか。そこは低圧側ではないので、B種ではない。 ここまでは第24条の条文どおりで動かない。高圧設備に施す接地としてA種(E_A)で整理する資料が 多く、単線結線図の設問でもそう扱われる。ただし条文の側を見ると、電路の中性点への接地そのものを 扱っているのは電技解釈第19条で、接地線は直径4mm以上(引張強さ2.46kN以上)といったA〜D種とは 別建ての要件が置かれている。確実に言えるのは「B種ではない」ほうで、そこを軸に判断する。

接地する場所種別記号
変圧器の低圧側中性点(または低圧側の1端子)B種E_B
変圧器の高圧側中性点A種E_A
高圧機器の金属製外箱・鉄台、避雷器A種E_A
高圧計器用変成器(VT・CT)の二次側電路D種E_D
単線結線図でY-Δ結線の変圧器が出てきたら、**Yがどちら側かを先に確かめる**。6.6kV受電の 変圧器なら、一次側(電源側・上)が高圧だ。**Yが一次側にあるなら、その中性点は高圧側なので B種は消え、E_A(A種)の側で扱う**。Δ側は二次の低圧なので、そこに中性点は無い。「変圧器+中性点=B種」で 反射的に答えると、ここで外す。見るのは「変圧器かどうか」ではなく、**高圧側か低圧側か**だ。

事故のとき、B種とD種は1本の直列回路になる — 外箱の電圧は分圧で決まる

ここまでB種とD種を別々の接地として見てきたが、実はこの2つ、事故の瞬間には1本の回路としてつながる。低圧機器の内部で絶縁が破れ、充電部が金属製外箱に完全に触れてしまった(完全地絡)としよう。このとき電流の通り道を指でなぞると——電源の変圧器から機器へ、外箱へ、D種接地線を通って大地へ、大地の中を通って変圧器のB種接地極へ、そして変圧器に帰る。つまり地絡電流は、機器のD種接地抵抗RDR_Dと変圧器のB種接地抵抗RBR_Bの直列回路を流れる。

直列回路なら、話はオームの法則だけで進められる。電源の対地電圧をVVとすると、地絡電流は

Ig=VRB+RDI_g = \frac{V}{R_B + R_D}

人が触れるのは外箱だから、危険なのは外箱の対地電圧、つまりD種接地抵抗での電圧降下だ。

VD=Ig×RD=V×RDRB+RDV_D = I_g \times R_D = V \times \frac{R_D}{R_B + R_D}

この式が、**なぜD種接地抵抗を小さくすると人が助かるのか**をそのまま見せてくれる。電源の対地電圧$V$は、事故の間、$R_B$と$R_D$の2つの抵抗に分圧されて配分される。**D種を小さくするほど、外箱(=人が触れる場所)に割り当てられる電圧の取り分が減る。** 地絡電流そのものは増えるが、その電流が流れるのは接地線のルートであって人ではない。むしろ電流が大きいほど、漏電遮断器や過電流遮断器が確実に動作してくれる。接地抵抗を下げることは「電流を減らす」ためではなく「人にかかる電圧を減らす」ための工事だ。

数値で最後まで追ってみる。対地電圧100Vの低圧電路につながる機器で完全地絡が起き、RBR_B=10Ω、RDR_D=40Ωだったとする。

  1. 地絡電流:Ig=100÷(10+40)=2AI_g = 100 \div (10 + 40) = 2\,\mathrm{A}
  2. 外箱の対地電圧:VD=2×40=80VV_D = 2 \times 40 = 80\,\mathrm{V}(分圧で書けば 100×40/50=80V100 \times 40/50 = 80\,\mathrm{V}

もしこの機器のD種接地を10Ωまで下げられたら、Ig=100÷20=5AI_g = 100 \div 20 = 5\,\mathrm{A}VD=5×10=50VV_D = 5 \times 10 = 50\,\mathrm{V}。電流は2.5倍になったのに、外箱の電圧は80Vから50Vへ下がった。人にとっての危険は電流の総量ではなく自分の触れる場所の電圧だから、この向きの変化が「安全になった」ということになる。

この見方に立つと、D種の条文の作りも読み直せる。原則100Ω以下という上限は、この分圧の分子RDR_Dを野放しにしないための歯止めだ。ただし式を見れば分かるとおり、外箱の電圧はRDR_D単独では決まらず、相手方のRBR_Bとの比で決まる。だからD種の規定は抵抗値だけで完結せず、0.5秒以内に自動遮断する装置があれば500Ω以下でよいという緩和とセットになっている。電圧をどこまで下げるか(抵抗で守る)と、危険な状態をどれだけ短時間で断ち切るか(時間で守る)の2本立て——B種の150/Ig・300/Ig・600/Igとまったく同じ設計思想が、D種の側にも流れている。

接地を「省略してよい」場合がある — 金属管工事のD種

接地工事には、施さなければならない場合だけでなく、条件がそろえば省略してよい場合も定められている。代表例が、使用電圧300V以下の低圧屋内配線を金属管工事で施工するときの、管のD種接地工事だ。原則は接地必須だが、第159条第3項第四号は省略できる場合を2本立てで定めている。

  • 管の長さ(2本以上の管を接続して使う場合は全長)が4m以下のものを乾燥した場所に施設する場合
  • 使用電圧が直流300V又は交流対地電圧150V以下で、管の長さが8m以下のものに簡易接触防護措置を施すとき、又は乾燥した場所に施設するとき

条件の作りを見ると、省略が許される理屈が読み取れる。接地は「漏電した金属に人が触れたとき」の備えだから、管が短いほど、人が触れにくいほど、そして乾燥していて電気が人体へ流れにくいほど、備えを省く余地が生まれる。8mまで延ばせる第二の条件では、そのかわり電圧に上限(直流300V・交流対地電圧150V以下)が付き、さらに簡易接触防護措置か乾燥した場所かのどちらかが要る。「4m以下ならどこでも省略できる」わけではない(乾燥した場所という条件が必須)し、8m条件から対地電圧の限定を落とすと条文と食い違う。長さの数字だけを切り出して覚えないことが肝心だ。

なお、使用電圧が300Vを超える低圧の金属管工事ではC種接地工事が原則で、接触防護措置を施した場合はD種接地工事に緩和できる。ここでも「人が触れにくくなるほど要求が緩む」という同じ理屈が流れている。

外箱が無いなら、どこに接地するのか — 乾式変圧器の鉄心

この科目で見てきた接地の原則は「機械器具の金属製の台及び外箱に施す」だった。では、接地すべき外箱そのものが無い機器はどうするのか。キュービクル内に据えられる乾式変圧器には、金属製の外箱を持たない構造のものがある。

答えは条文そのものに書き込まれている。第29条第1項の本文には括弧書きがあり、「外箱のない変圧器又は計器用変成器にあっては、鉄心」に接地を施すと定めている。接地の目的は、絶縁が破れたときに電位が現れる金属部分を大地につなぎとめることだ。外箱があれば外箱が「人が触れるかもしれない金属」だが、外箱が無ければ、その役割は機器の中心にある鉄心が担う。だから接地の対象が外箱から鉄心に置き換わるだけで、種別の決め方(300V以下D種・300V超C種・高圧はA種)は外箱の場合とまったく同じ。高圧の外箱のない乾式変圧器なら、鉄心にA種接地工事となる。独立した特別ルールではなく、原則の条文の括弧書きが受け皿になっている、という位置づけごと覚えておくと崩れない。

土の中で大地と握手しているのは何か — 接地極の材料と寸法

ここまで見てきたのは「何Ω以下にするか」と、機器から地面まで電流を運ぶ接地「線」の話だった。では、その先端で実際に大地と接している金属——接地極——は、何でできていて、どれくらいの大きさが要るのか。

まず規定の出どころを書き分けておきたい。電技解釈第17条が定めているのは、接地抵抗値、接地線の太さ(A種は引張強さ1.04kN以上の容易に腐食し難い金属線又は直径2.6mm以上の軟銅線、B種は原則直径4mm以上——高圧電路と低圧電路を結合する変圧器なら2.6mm以上——の軟銅線等、C種・D種は直径1.6mm以上の軟銅線等)、そしてA種・B種の接地極の埋設深さ(地下75cm以上)などだ。接地極そのものの材料と寸法の一覧は、電技解釈には出てこない。 その部分の目安を実務で示しているのが、民間自主規程である内線規程になる。

内線規程が接地極として掲げているのは、おおよそ次のような材料と最小寸法だ(要旨。正確な条件は内線規程本文で確認する)。

材料最小寸法の目安
銅板厚さ0.7mm以上・片面の面積900cm²以上
銅棒・銅覆鋼棒直径8mm以上・長さ0.9m以上
亜鉛めっきした鉄管外径25mm以上・長さ0.9m以上
亜鉛めっきした鉄棒直径12mm以上・長さ0.9m以上

並べてみると、材料の顔ぶれに共通点があることに気付く。銅そのものか、鋼の芯に銅を被せたもの(銅覆鋼棒)か、鉄に亜鉛めっきの防食を施したものか——どれも「土の中で腐食に耐えながら、長期にわたって導通を保つ」ことに向けて選ばれている。 寸法の下限も、大地との接触面積を確保して接地抵抗を安定させるためのものだ。板なら面積、棒や管なら太さと長さ、と形ごとに「大地との接触の量」を確保する向きで数字が付いている。

ここで気になるのがアルミだ。アルミは銅に次ぐ導電性を持ち、送電線には普通に使われている。ところが**内線規程が接地極として列挙する材料に、アルミは含まれていない。** 理由は電気ではなく化学の側にある。アルミは土中では表面の腐食が速く進み、接地極に求められる「何十年も土の中に埋まったまま低い抵抗で導通を保つ」という仕事に向かないのだ。注意したいのは、これが**「法令で禁止されている」という話ではない**こと。アルミを接地極に使ってはならないと定めた条文があるわけではなく、内線規程の列挙に含まれない——採用する理由のない材料だ、という位置づけである。試験では「接地極として不適当な材料」を選ばせる形で問われるが、根拠を「禁止条文」に求めると足をすくわれる。列挙と材料の性質から答えるのが正しい筋になる。

接地線の側に戻ると、電技解釈第17条の「容易に腐食し難い金属線又は軟銅線」という言い回しにも、同じ思想が流れていることが分かる。接地は、施工した瞬間だけ導通していればよいものではない。事故はいつ起きるか分からず、そのとき確実に電流を大地へ逃がせるように、線も極も「腐食に耐えて導通を保ち続ける」ことが素材選びの軸になっている。抵抗値・線の太さ・極の材料という3つの規定は、別々の暗記項目ではなく、この1つの目的でつながっている。

接地工事の種類を取り違えると、検査の意味そのものが変わってしまう。たとえば300Vを超える動力機器の外箱に、本来必要なC種(10Ω以下)ではなく、より緩いD種(100Ω以下)の基準で接地抵抗を確認してしまうと、実際には人を感電から守るのに足りない抵抗値のまま「合格」と判断してしまう恐れがある。逆にB種の接地をA種と同じ固定値の発想で「10Ω以下あればよい」と判断してしまうと、変圧器の規模によっては150/Igで求まる本来の基準より緩い値で済ませてしまい、混触時に低圧側の対地電圧が150Vを超える事態を見逃しかねない。接地工事は種類ごとに守っている対象が違うため、種類を取り違えることは、単なる数値の間違いではなく「誰を守るための検査だったか」を見失うことに直結する。

第二種電気工事士でも接地工事は学ぶが、扱うのはC種とD種——低圧の機器を人の感電から守る接地までだ。第一種になると、高圧・特別高圧の機器を守るA種と、変圧器内部の事故から低圧側全体を守るB種が新たに加わり、4種類を横断した使い分けや、B種の計算問題が出題範囲に入ってくる。低圧の2種類で学んだ「機器の外箱を人から見て安全にする」という発想の外側に、「高圧の設備そのものを守る」「変圧器の中の事故から系統全体を守る」という新しい役割が広がっている、というのがこの科目でのA種・B種の位置づけになる。

接地線の太さ — 直径で書かれるか、断面積で書かれるかで見え方が変わる

電技解釈第17条は接地線の太さも定めている。系統は3つだ。

種類接地線(軟銅線)引張強さで規定する場合
A種直径2.6mm以上1.04kN以上の容易に腐食し難い金属線
B種(高圧・15,000V以下の特別高圧架空電線路と低圧を結合する変圧器)直径2.6mm以上1.04kN以上の容易に腐食し難い金属線
B種(上記以外)直径4mm以上2.46kN以上の容易に腐食し難い金属線
C種・D種直径1.6mm以上0.39kN以上の容易に腐食し難い金属線

高圧を相手にするA種が2.6mm、低圧のC種・D種が1.6mm。ここまでは素直だ。B種だけが2段になっているのは、17-3表が「結合する相手の電路」で切っているからで、高圧または第108条の特別高圧架空電線路と低圧を結ぶ変圧器なら2.6mm、それ以外(=より高い特別高圧を相手にする場合)は4mmに上がる。高圧受電のキュービクルで出てくるB種は、ほぼ前者だ。ところがキュービクル内の機器の接地を問う設問では、選択肢が直径ではなく「◯mm²」という公称断面積で書かれていることがある。単位が変わると、覚えた数字がそのままでは使えない。

対応させるのは、単線の直径と、より線の公称断面積の慣用の組合せだ。計算式から導く値ではなく、市販の電線サイズとして対で使われている並びを覚える。

単線の直径対応する公称断面積(参考)πD2/4\pi D^2/4 による幾何面積
1.6mm2mm²約2.0mm²
2.0mm3.5mm²約3.1mm²
2.6mm5.5mm²約5.3mm²

右端の幾何面積とぴったり一致しないのは、より線が同じ直径の単線を下回らないよう、公称断面積が少し上に取られているためだ。円の面積の式で3.5や5.5が出てくるわけではないので、電卓で確かめようとして合わずに混乱しないこと。

「3.5mm²」という選択肢を見たとき、対応する単線は2.0mm。C種・D種の1.6mm以上は満たすが、A種の2.6mm以上には足りない。断面積で書かれていても、この対応表で直径に戻せば同じ土俵で比べられる。

この基準には例外がある。移動して使用する機器の金属製外箱等に接地工事を施す場合で、可とう性を必要とする部分には、別の基準が置かれている(第17条)。

種類移動して使用する場合の接地線
A種3種クロロプレンキャブタイヤケーブル等の1心又は多心キャブタイヤケーブルの遮へいその他の金属体で、断面積8mm²以上
C種・D種多心コード又は多心キャブタイヤケーブルの1心で0.75mm²以上、又は可とう性を有する軟銅より線で1.25mm²以上

「0.75mm²」という数字は、それだけでは不適切と決められない。 据え置きの機器なら1.6mm(約2.0mm²)以上が必要だが、移動して使う機器のコードの1心なら条文どおりだ。設問に「移動して使用する」「可とう性を必要とする」とあるかどうかを先に読む。

細くてよいのは、強度を譲っているからではない。移動する機器のコードは曲げられ引きずられるので、太い単線を入れればそこで折れて断線する。 接地線が切れてしまえば太さの意味そのものが消える——使われ方に耐える形を選ばせている、という規定だ。

なぜ太さに下限があるのか。接地線は平常時は電流の流れない線だが、地絡の瞬間だけ故障電流の全部を引き受ける。細すぎれば接地線自身が溶断し、いちばん必要な瞬間に逃げ道が消える。第17条が接地線に最初に求めている条件が「故障の際に流れる電流を安全に通じることができるものであること」なのは、そのためだ。接地抵抗値は「どれだけうまく逃がせるか」、太さは「逃がしている間、線が持ちこたえられるか」を見ている。役割が違うから、両方に基準がある。

4種類の接地工事を「誰を、何から守るか」で読み直せるようになる

抵抗値の数字だけを暗記していると、A種10Ω・C種10Ω・D種100Ωという似た数字にすぐ混乱してしまう。だが「誰を守っているか」という視点を持つと、A・C・D種は人を感電から守る接地としてひとまとめに理解でき、B種だけが変圧器内部の事故から低圧側全体を守る、まったく別の役割の接地だと整理できる。

今日試せることとして、自分の職場やよく行く建物のキュービクルの銘板や配線図があれば、そこに書かれている接地工事の種類(A種・B種・C種・D種)を探してみるといい。高圧機器にはA種、変圧器の中性点付近にはB種、という対応が、単なる記号ではなく「誰を守っているか」という機能の違いとして見えてくる。

太陽光発電の高圧連系設備や、蓄電池・EV充電設備を高圧で受け入れる工事でも、新しく設置する機器がどの電圧区分・どの役割を持つかによって、必要な接地工事の種類が変わってくる。抵抗値を丸暗記するのではなく、その接地が「誰を、何から守っているか」から考える習慣は、そうした新しい設備の接地計画を立てるときにそのまま生きてくる。

冒頭の謎、B種だけが式になっている理由。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. A種・C種・D種の抵抗値(10Ω・10Ω・100Ω)を入れ替える

    なぜ引っかかるA種とC種がどちらも10Ωで紛らわしいうえ、D種だけ桁が違う100Ωなので、組み合わせを問われると混同しやすい

    見破り方電圧区分とセットで覚える。高圧・特別高圧用の機器=A種=10Ω、300Vを超える低圧用の機器=C種=10Ω、300V以下の低圧用の機器=D種=100Ω、という『対象電圧が上がるほど数字が厳しくなる(Ωの数値が小さくなる)』という向きで整理する

  2. B種接地工事の抵抗値を、A種のような固定の『○Ω以下』だと思わせる

    なぜ引っかかるA・C・D種が固定値(10Ω・10Ω・100Ω)であるのに対し、B種だけが150/Igという計算式であることを見落としやすい

    見破り方B種は変圧器ごとに変わる1線地絡電流Igに依存する計算値であり、固定のΩ数ではないと確認する。自動遮断装置の有無・遮断時間によって150/Ig・300/Ig・600/Igと変わる点もセットで押さえる

  3. 0.5秒以内の自動遮断による500Ω以下への緩和を、A種・B種にも適用できると思わせる

    なぜ引っかかる緩和規定があることは覚えていても、どの種類に適用されるのかを混同しやすい

    見破り方0.5秒以内の自動遮断による500Ω以下への緩和は、C種とD種にのみ規定されている。A種・B種にはこの緩和規定は無い、と適用範囲を区別する

  4. 『D種接地抵抗を小さくすると地絡電流が増えるのだから、かえって危険になる』と思わせる

    なぜ引っかかる地絡電流の大きさだけに目を向けると、抵抗を下げる=電流が増える=危険、という向きに錯覚しやすい

    見破り方人が触れる外箱の対地電圧はV×RD/(RB+RD)という分圧で決まる。RDを小さくするほど外箱の電圧は下がり、増えた地絡電流は人ではなくB種→D種の接地線のルートを流れて遮断装置を動作させやすくする。守りたいのは電流の小ささではなく、人にかかる電圧の低さだと目的に立ち返る

  5. 接地極の材料の選択肢にアルミ板を混ぜ込み、使えると思わせる

    なぜ引っかかるアルミは銅と並ぶ導電性の高い金属で、電線には普通に使われている。導電率だけで考えると、接地極にアルミを使えない理由が思い付かない

    見破り方内線規程が接地極として掲げる材料(銅板・銅棒・銅覆鋼棒・亜鉛めっきした鉄管・鉄棒など)にアルミは含まれない、と列挙の側から確認する。理由は電気ではなく化学——アルミは土中で腐食が速く進み、接地極に求められる『何十年も土の中で導通を保つ』役に向かないから。『法令で禁止されている』からではない点も混同しない

  6. 接地極の寸法(銅板の厚さ・鉄棒の直径など)が電技解釈に書かれていると思わせる

    なぜ引っかかる接地抵抗値も接地線の太さも電技解釈第17条に書かれているため、接地極の寸法まで同じ条文にあると思い込みやすい

    見破り方電技解釈が定めるのは接地抵抗値・接地線・埋設深さまで。接地極そのものの材料・寸法の一覧は電技解釈には無く、民間規程である内線規程が目安を示している、と規定の出どころを書き分けて覚える

  7. 金属管工事のD種接地の省略条件を『4m以下なら省略できる』と単純化させる

    なぜ引っかかる省略条件は2本立てで、4m条件には『乾燥した場所』が必須。もう一方の8m条件には『直流300V又は交流対地電圧150V以下』という電圧の限定と『簡易接触防護措置又は乾燥した場所』が付く。長さの数字だけ覚えると、セットになっている条件を落とす

    見破り方省略の可否を判定するときは、長さ(4m・8m)とセットの条件がそろっているかを必ず確認する。4mなら乾燥した場所が必須、8mなら対地電圧の上限(交流150V以下等)+簡易接触防護措置か乾燥した場所、と対で思い出す

参考文献・出典

  • 電気設備の技術基準の解釈(経済産業省・令和7年11月20日改正) (第17条(接地工事A〜D種・17-1表・接地線の太さ・埋設深さほか)、第24条(B種の施設箇所)、第29条(外箱の接地・29-1表・第1項括弧書き)、第159条第3項(金属管工事の接地と省略条件))
  • 内線規程(JEAC 8001・一般社団法人日本電気協会) (接地極に使用する材料・最小寸法の目安(民間自主規程。有償規格のため逐語引用はせず要旨のみ参照))

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本5問・応用4問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. A種接地工事は10Ω以下。高圧又は特別高圧用の機械器具の金属製外箱等、避雷器などに施す(電技解釈第17条第1項・第29条)
  2. B種接地工事は150/Ig Ω以下が原則(自動遮断装置の遮断時間に応じて300/Ig・600/Ig)。高圧・特別高圧電路と低圧電路を結合する変圧器の低圧側中性点等に施す(電技解釈第17条第2項・第24条)
  3. B種は『低圧側』と条文で側が指定されている(電技解釈第24条)。同じ変圧器でも高圧側の中性点に施す接地はB種ではなく、高圧設備の接地としてA種(E_A)で扱われる。条文上、中性点への接地自体は第19条が別建てで規定している点に注意。『変圧器の中性点=B種』と覚えると単線結線図で外す
  4. C種接地工事は10Ω以下(0.5秒以内の自動遮断装置があれば500Ω以下)。300Vを超える低圧用の機械器具の金属製外箱等に施す
  5. D種接地工事は100Ω以下(0.5秒以内の自動遮断装置があれば500Ω以下)。300V以下の低圧用の機械器具の金属製外箱等に施す
  6. 使用電圧300V以下の金属管工事のD種接地は、①管の長さ4m以下+乾燥した場所、②直流300V又は交流対地電圧150V以下で管の長さ8m以下+(簡易接触防護措置又は乾燥した場所)のいずれかで省略できる(第159条第3項第四号)
  7. 外箱のない変圧器・計器用変成器は、外箱の代わりに鉄心に接地を施す(第29条第1項の括弧書き)。高圧の外箱のない乾式変圧器なら鉄心にA種接地工事
  8. 低圧機器の外箱で完全地絡が起きると、地絡電流は変圧器のB種接地抵抗と機器のD種接地抵抗の直列回路を流れる。外箱の対地電圧は電源の対地電圧をRDとRBで分圧したV×RD/(RB+RD)になり、D種をB種より小さくするほど、人が触れる外箱の電圧は下がる
  9. 電技解釈第17条が定めるのは接地抵抗値・接地線の太さ(A種は直径2.6mm以上の軟銅線等)・埋設深さなど。接地『極』そのものの材料・寸法は電技解釈には無く、民間規程の内線規程が目安を示している
  10. 内線規程が接地極として掲げる材料は銅板・銅棒・銅覆鋼棒・亜鉛めっきした鉄管・鉄棒など。アルミ板はこの列挙に含まれない(法令で禁止されているのではなく、土中で腐食が速く進み長期の導通を保てない材料だから使われない)
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