回路のテスタ(回路計)で抵抗を測るときは、2本のリード線を対象に当てるだけでいい。ところが接地抵抗を測るときは、わざわざ補助の杭を2本も地面に打ち込む。
同じ「抵抗を測る」という作業なのに、なぜ接地抵抗だけこんな手間のかかる方法を取るのか。杭を1本、あるいは0本で済ませられない理由はどこにあるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、接地抵抗計に補助極が2本必要な理由を、電流と電圧の役割分担から説明できるようになっている。
接地抵抗の測定には、接地抵抗計(アーステスタ)を使う3電極法(電位降下法)という方法が一般に用いられる。使うのは3つの電極だ。
- E … 被測定接地極(抵抗を知りたい、実際に施設された接地極)
- P … 電圧用補助極
- C … 電流用補助極
E-C間に交流電流を流し、そのときE-P間に生じる電位差を測定して、電位差÷電流=抵抗という形でE極の接地抵抗を求める。実務では、E極からP極、さらにC極までを、ほぼ一直線になるよう、適切な間隔(目安として約10m)を空けて配置する。この間隔や一直線という配置は、電技解釈などの条文に規定された数値ではなく、測定器メーカーの取扱説明資料などに基づく実務上の標準として押さえておく。
さらに交流を使うことにも理由がある。もし直流を大地に流すと、土の中の水分やミネラル分によって電気分解・分極という反応が起き、測定値に誤差が生じてしまう。これを避けるため、接地抵抗計はわざわざ交流を電流源に使っている。
補助極をほぼ一直線に、間隔を空けて配置するのも、電極どうしがつくる電位分布が近すぎると重なり合ってしまい、正しい電位差が測れなくなるためだ。地味に見える測定作業の裏に、電流と電圧の役割を分ける、電気分解を避ける、電位分布を重ねない、という3つの工夫が詰まっている。
地味な測定器に、電気計測の考え方が詰まっている
接地抵抗計の仕組みが分かると、他の測定器を見るときの視点も変わってくる。たとえば電圧を測る回路と電流を流す回路をあえて分離する、という考え方は、精密な電気計測の世界ではしばしば使われる発想だ。
今日試せることとして、もし接地抵抗計(アーステスタ)の実物や写真を見る機会があれば、本体から出ているリード線が何本あるかを数えてみるといい。E・P・Cの3本の端子があることを確認できれば、この3電極法の仕組みがそのまま形になっていると分かる。
太陽光発電のパネル架台や、EV充電設備の接地工事でも、竣工時にはこの3電極法で接地抵抗を確認することになる。杭を2本打つ手間の意味を理解していれば、測定結果に疑問を持ったときに「配置が近すぎたのではないか」といった原因の見当も自分でつけられるようになる。
冒頭の謎、なぜ杭を2本も打つ必要があるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。