高圧ケーブルの端末処理で、遮へい銅テープを剥いだあと、切り口をそのまま「切りっぱなし」にしてはいけない。わざわざストレスコーンという部品で、端部を円すい状に太らせる作業が必ず入る。
見た目を整えるだけの作業には見えない。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この一手間が何を防いでいるかを説明できるようになっている。
前のトピックで見たとおり、CVケーブルの絶縁体内の電界は、接地された遮へい銅テープがあることで軸対称に均一に保たれている。遮へい銅テープが絶縁体の外周をぐるりと覆い、表面を零電位に保っているからこそ、電界は乱れずに済んでいる。
ところが、機器につなぐためにケーブルの端末で遮へい銅テープを切断・除去すると、その均一だった電界のバランスが崩れる。切断端部に電気力線(電界)が集中し、そのままでは部分放電や沿面放電から絶縁破壊に至るおそれがある。
そこで用いられるのがストレスコーンだ。遮へい端部を円すい状に広げ、等電位線をなだらかに分散させて電界集中を緩和する。市販のケーブル端末処理材(ケーブルヘッド用キット)には、このストレスコーン(応力緩和層)があらかじめ組み込まれている。
こうした端末処理を担う部分をケーブルヘッド(CH)と呼ぶ。ケーブルヘッドは、導体を機器・電線に接続するだけでなく、遮へい銅テープの端部処理(ストレスコーン)、雨水の侵入防止、沿面距離の確保までを一体で担う。屋外で使うケーブルヘッドには、雨や汚損に耐えて沿面距離を確保するための、がいし形・ゴムとう管形などの構造がある。
塩害地区では、ゴムとう管形を選ばない
高圧引込ケーブルの終端処理には、耐塩害屋外終端処理・ゴムとう管形屋外終端処理・ 屋内終端処理などがある。試験で問われるのは、塩害地区(重汚損地域)で何を選ぶかだ。
答えは耐塩害屋外終端処理で、ゴムとう管形は塩害地区には適さない。 海岸に近い地域では塩分を含んだ湿気が絶縁物の表面に付着し、表面漏れ電流が流れて 沿面放電(トラッキング)が起きやすくなる。耐塩害形はひだ(笠)を深く多く取って 沿面距離を稼ぐ構造になっていて、この表面伝いの放電を防いでいる。
太さは自分で決めない — 一般送配電事業者との協議事項
高圧引込ケーブルの電線の太さは、需要家側が計算だけで決めるものではない。 短絡電流に耐えられるかは系統側の短絡容量に左右されるため、一般送配電事業者と 協議して決めるのが実務であり、試験でもそう問われる。
使用するケーブルは、トリプレックス形6600V架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル (6600V CVT)が一般的だ。単心3本をより合わせた形で、放熱に有利で許容電流が大きく、 曲げやすいため引込に向く。
端末が「弱点」だと知っていると、点検の目が変わる
この構造が分かると、キュービクルの中でケーブルヘッドが施された端末部分を見たときに、「なぜここだけ太く、複雑な形をしているのか」が理由つきで見えてくる。ケーブル本体は均一な電界に守られているが、端末はその均一さを人為的に断ち切る場所であり、だからこそ手当てが必要になる。
ストレスコーンや端末処理が丁寧に扱われるのは、端末部の絶縁破壊事故が、現場で繰り返し起きてきた事故の記録の上に立っているからだ。目立たない一手間が、長年の失敗から生まれた対策であることが分かる。
高圧ケーブルの端末処理は、太陽光発電所や高圧受電設備の増設工事など、これから増えていく高圧設備の接続工事で必ず必要になる作業でもある。この構造を理解していることが、その現場に立つための土台になる。
冒頭の「なぜ切りっぱなしにせず、わざわざ端部を太らせるのか」。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。