同じ「鉛蓄電池」という名前の製品なのに、片方は定期的に水を足さないと壊れてしまい、もう片方は寿命が来るまで一滴も水を足さなくていい。充電すれば水の電気分解は避けられないはずなのに、なぜこんな差が生まれるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この2つの鉛蓄電池が内部で何をしているかを説明できるようになっている。
鉛蓄電池は、正極活物質に二酸化鉛(PbO2)、負極活物質に海綿状鉛(Pb)を使い、電解液には希硫酸を用いる。極板には、大電流放電に適したペースト式と、寿命の長いクラッド式がある。ここまでは、これから見る2つの形式に共通する話だ。
ベント形は液口栓を持ち、充電時に発生するガスを外部へ逃がす構造になっている。放電が進むと希硫酸の比重が下がるため、比重測定が充電状態を知る手段になる。ガスが外に抜けていく以上、電解液(水分)は少しずつ減っていくので、定期的な補水が欠かせない。
これに対して制御弁式(VRLA)は、電解液をガラス繊維マット状セパレータに含浸させて密閉し、充電時に正極で発生する酸素ガスを、負極の鉛に吸収させて電解液(水)に戻す構造を持つ。内圧が規定値を超えたときだけ、制御弁からガスを外部へ放出する。
使用可能温度は、充電・放電・保存のいずれも-15〜+45℃とされ、推奨は5〜30℃の室内温度だ。高温では過充電による故障、低温では電解液の凍結のおそれがある。期待寿命は25℃を基準に推定される値であり、蓄電池温度が25℃を超えると寿命は短くなっていく。
キュービクルの奥にある「ガスの循環」を想像できるということ
蓄電池室に据置蓄電池が並んでいるのを見たとき、多くの人は「電気を貯める箱」としか見ない。だが、ベント形か制御弁式かによって、その箱の内部では今まさにガスが外へ抜けているのか、それとも内部で水に戻っているのかが違う。これが分かると、点検票に「比重測定」という項目がある蓄電池と、ない蓄電池の違いが、単なる手間の差ではなく構造の差だと理解できるようになる。
この区別が重視されるのは、補水を怠ったベント形の蓄電池が電解液不足で劣化し、非常時に電力を供給できなかったという失敗の積み重ねがあるからだ。据置蓄電池は受変電設備の遮断器操作や非常用照明の電源として使われ、いざというときに動かなければ意味がない。だからこそ、形式ごとの管理項目の違いを正しく知っておく必要がある。
据置鉛蓄電池は、太陽光発電の余剰電力を蓄える設備や、非常用電源としての役割を、これからも担い続ける。制御弁式が広く使われるようになったのも、保守の手間を減らしながら信頼性を保つための技術の積み重ねだ。
冒頭の「なぜ制御弁式は水を足さずに寿命まで使えるのか」。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。