キュービクルの中には、見た目のよく似た金属の箱やレバーがいくつも並んでいる。断路器、遮断器、負荷開閉器——どれも「電気を切る」ための機器のように見える。
ところが、この3つには「電流が流れたまま操作してよいかどうか」という、命に関わる決定的な違いがある。同じように見えるレバーの1つを、通電中に操作してしまうと、接点の間に火花が飛び、機器が焼け焦げる事故につながることがある。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この3つを見分ける1つの基準を説明できるようになっている。
見分ける基準はただ1つ、「どれだけの大きさの電流まで切れるか」 だ。
- 断路器(DS) — 消弧能力(アークを消す装置)を持たない。JIS C 4606の定義は「単に充電された電路を開閉分離するために用いる開閉機器で、負荷電流の開閉を目的としないもの」。負荷電流すら切れない
- 高圧交流負荷開閉器(LBS) — 負荷電流が流れている回路を開閉できる。ただし短絡電流のような大きな故障電流は遮断できない
- 遮断器(CB・実務ではほぼ真空遮断器VCB) — 負荷電流はもちろん、短絡電流のような故障電流まで安全に遮断できる
DSが負荷電流すら切れないのは、消弧能力を持たないからだ。電流が流れたままDSを開くと、接点間にアークが生じて短絡・焼損に至る。だからDSは、必ず主遮断装置(CBまたはLBS)で先に電流を止めた無負荷の状態でしか操作してはいけない。この操作順序が固定される理由そのものが、DSの構造にある。
この役割分担は、PF・S形という別の主遮断装置の構成にも表れている。LBSは負荷電流の開閉はできるが短絡電流は遮断できないため、そこに限流ヒューズ(PF)を組み合わせ、短絡はPFの溶断で、地絡はGR・DGRの信号でLBSをトリップさせる、という形で役割を分け合う。PFにはストライカ(溶断表示棒)が付いており、1相だけ溶断したときにLBSを三相一括で引き外して、欠相運転を防ぐ仕組みになっている。
「事故のとき切れるか」と「何万回も入り切りできるか」は別の性能 — 真空電磁接触器
ここまでの3機器は「どれだけ大きな電流を切れるか」という1本の軸で並んでいた。だが開閉機器にはもう1本、見落としやすい軸がある。何回入り切りできるか——開閉の耐久性だ。
遮断器(CB)は短絡電流まで切れる最上位の機器だが、その役割はあくまで事故という非常時の一撃にある。ところが現場には、高圧の三相誘導電動機や進相コンデンサのように、運転のたびに1日何度も入り切りを繰り返す負荷がある。この「日常の頻繁なスイッチ」を受け持つのが真空電磁接触器(高圧交流電磁接触器)だ。操作機構が電磁石で簡単に構成されているため多回数・多頻度の開閉に向いており、メーカーカタログでは電気的開閉耐久性25万回・機械的開閉耐久性250万回・開閉頻度600回/時といった、遮断器とは桁の違う数値が示されている。
ただし、頻繁に切れることと大電流を切れることは両立しない。真空電磁接触器の短絡遮断電流は小さく(カタログ例で4kA)、短絡保護は組み合わせた限流ヒューズが担う。ヒューズと組み合わせたコンビネーションユニットにすることで、40kAの短絡回路まで適用できるようになる。気づいただろうか——これはLBS+PFで見たPF・S形とまったく同じ役割分担の再演だ。日常の開閉は開閉器(LBS・接触器)が受け持ち、短絡の一撃はヒューズが受け持つ。「頻繁に入り切りする」用途と「事故電流を切る」用途は、機器の世界でははっきり別物として設計されている。
高調波を「出す」機器と「出される」機器 — コンデンサは被害者の側
開閉機器の写真鑑別とあわせて問われるのが、高調波の発生源の見分けだ。ここにも「登場するから犯人に見える」というワナがある。
高調波を出すのは、半導体のスイッチングで正弦波の波形を刻む機器——整流装置(整流器)、インバータ、サイリスタ応用装置(無停電電源装置の変換部など)だ。きれいな正弦波を高速で切り刻んで直流や別の周波数を作るため、電流波形がひずみ、基本波の整数倍の周波数成分(高調波)が系統に流れ出す。
キュービクルの中で、どのレバーに触れてよいかが分かるようになる
この3機器の違いが分かると、キュービクルの扉を開けたときに見える無数のレバーやハンドルが、ただの部品ではなく「役割の違う道具」に見えてくる。今日試せることとして、家庭の分電盤の主開閉器(ブレーカー)を思い浮かべてほしい。あれは負荷電流はもちろん、ある程度の故障電流まで遮断できる、つまりCBに近い役割の機器だ。一方で電力量計の横にある検針用の端子台のような、電流を切る目的を持たない部品もある。「これは電流を切るためのものか」を意識するだけで、身の回りの機器の見え方が変わる。
この区別が厳格に決められているのは、過去に操作順序を誤って起きた事故の積み重ねがあるからだ。断路器を無負荷以外で操作してはいけないというルールは、規則のための規則ではなく、消弧能力を持たないという物理的な事実そのものから来ている。
そして受電設備の保守・改修に関わる仕事では、この3機器の見分けが最初の一歩になる。太陽光発電や蓄電池を高圧で連系する設備でも、どこかに必ずこの3種類の開閉機器が使われており、どれが「切れる」機器で、どれが「切り離すだけ」の機器かを見誤ると、作業そのものが危険になる。
冒頭の停電作業の朝、先輩が止めたのは何だったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。