IV、OW、DV、VVF、VVR、CV、CVT、VCT、CT、MI——電線とケーブルの記号は、初めて見ると意味のないアルファベットの羅列にしか見えない。しかもCVTとVCTのように、同じ3文字を並べ替えただけにしか見えないペアまである。
これを1つずつ丸暗記するのは苦行だし、本番で並べ替えのワナにかかる。だが実は、この記号たちは暗記するものではない。読むものだ。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、初見の記号でも前から順に分解して、構造と用途を推定できるようになっている。
種明かしはこうだ。記号には2つの流儀がある。
1つめはケーブル(絶縁体の外にシース=外装を持つもの)の流儀で、記号は前から「絶縁体→シース→形状」の順に、材料と形の頭文字を綴っている。使う文字はごくわずかで、V=ビニル、先頭のC=架橋ポリエチレン、F=平形(Flat)、R=丸形(Round)、T=3本より合わせ(トリプレックス)。これだけでVVF・VVR・CV・CVTがぜんぶ読める。
2つめは絶縁電線(シースを持たず、導体に絶縁被覆1層だけのもの)の流儀で、こちらは構造ではなく用途で名前が付く。JISの規格名を見ると、そのまま使いどころが書いてある。
| 記号 | 正式名称(JIS) | 使いどころ |
|---|---|---|
| IV | 600Vビニル絶縁電線 | 屋内配線(電線管に入れる・がいし引き) |
| OW | 屋外用ビニル絶縁電線 | 低圧架空電線 |
| DV | 引込用ビニル絶縁電線 | 低圧架空引込線 |
| VVF / VVR | 600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル(平形/丸形) | 低圧屋内配線の定番 |
| CV / CVT | 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVTは単心3本より合わせ) | 低圧幹線〜高圧引込 |
| CT | 600Vゴムキャブタイヤケーブル | 移動して使う機器の電線 |
| VCT | 600Vビニル絶縁ビニルキャブタイヤケーブル | 移動して使う機器の電線 |
| MI | MIケーブル(無機絶縁ケーブル) | 耐熱が要る場所の配線 |
架空の側にも同じ縛りがある。低圧架空電線には絶縁電線が使えるが、300Vを超える場合は引込用ビニル絶縁電線(DV)系が除外される(第65条の65-1表)。低圧架空引込線(第116条)では、電線がOWの場合は「人が通る場所から手を伸ばしても触れることのない範囲」、OW以外の絶縁電線なら「容易に触れることのない範囲」と、OWにだけ一段厳しい離隔が課されている。同じ絶縁電線でも、法令は記号ごとに扱いを変えている。
キャブタイヤケーブルは、造営材に固定せず移動して使う機器への電線——移動電線(第171条)——のためのケーブルで、外装が丈夫に作られている。ここで冒頭の並べ替え問題に答えが出る。VCTは「V(ビニル絶縁)+CT(キャブタイヤ)」であって、CVT(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースのトリプレックス)とはまったくの別物だ。先頭の文字が絶縁体、という読み順さえ守れば、この2つを取り違えることはない。同じ理屈で、CVの先頭のCは架橋ポリエチレンであって、キャブタイヤのCではない。位置が意味を決めている。
最後にMIケーブル。これは他の記号と毛色が違い、銅管の中に粉末状の酸化マグネシウムなど絶縁性のある無機物を充てんした構造をしている(電技解釈第9条)。ビニルもポリエチレンも有機物だから燃えるが、酸化マグネシウムは無機物だから燃えない。だから耐熱・防災用途の配線に使われる。低圧配線に使う電線は直径1.6mmの軟銅線と同等以上が原則のところ、MIケーブルだけは断面積1mm2以上から認められている(第146条)のも、この構造の頑丈さを法令が織り込んでいる例だ。
初見の記号が、その場で「読める」ようになる
この読み方が身につくと、試験で見たことのない記号に出会っても慌てなくなる。EV(ポリエチレン絶縁ビニルシース)のような記号でも、位置の規則から構造を推定できる。丸暗記した10個の記号は10個のままだが、読み方を覚えた人には、記号の数だけ応用が利く。
今日試せることとして、ホームセンターの電材コーナーか、手近にある延長コードの刻印を見てみるといい。VVFの束、VCTのコード——刻印された記号を前から分解して、絶縁体とシースの材料を言い当ててみる。電材商社のカタログがそのまま読み物になる。
そしてこの読み分けは、実務ではそのまま安全に直結する。屋外用のOWを屋内に流用しない、移動電線にVVFを使わない——記号が読めるということは、法令が決めた使い先の線引きが読めるということでもある。
冒頭のCVTとVCT、並べ替えただけに見える2つの正体。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。