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電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 ・ 20 / 21

絶縁材料の耐熱クラス — 機器の寿命は絶縁物の温度で決まる

読み終えると、こうなる

モーターや変圧器の銘板に書かれた「F」の一文字が、その機器が何度まで連続で使えるかを語っているのが読めるようになる。

  • 耐熱クラスの指定文字(Y・A・E・B・F・H・N・R)から許容最高温度を即答できる
  • 順序を答えさせる問題で、アルファベット順に並べたくなるE・Bのひっかけを見破れる
  • 「なぜ絶縁物の温度で機器の寿命が決まるのか」を、劣化の理屈から説明できる
考えてみよう

変圧器や電動機の寿命は、何で決まるのだろうか。鉄心が擦り減るわけではない。銅の巻線が溶けるわけでもない。実は、機器の中で最初に音を上げるのは、巻線に巻かれた紙やワニス、フィルムといった「絶縁物」だ。

だから電気機器の世界には、「この機器の絶縁は何度まで耐えられるか」を一文字で表す共通言語がある。銘板に書かれた「B」や「F」がそれだ。ところがこの文字の並び、Y・A・E・B・F・H・N・R——よく見るとアルファベット順になっていない。

なぜこんな不揃いな並びなのか。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この並びを順序ごと使いこなし、銘板の一文字から機器の温度の上限を読み取れるようになっている。

金属や磁性材料と違って、絶縁物の主役は有機材料だ。紙、ワニス、ポリエステルフィルム、エポキシ樹脂——これらは温度が高いほど化学的な劣化が速く進み、硬化やひび割れを経て、最後には絶縁の役目を果たせなくなる。つまり熱は、絶縁物にとって少しずつ効いてくる毒のようなものだ。電気機器の温度は、絶縁物の劣化を左右する主要な因子であり、だからこそ「絶縁物を何度以下に保てば十分な寿命が得られるか」が、そのまま機器の設計温度になる。

この「何度以下に保つか」を段階で表したものが耐熱クラスで、JIS C 4003:2010(IEC 60085に対応)が定めている。耐熱クラスの数値は、絶縁システム(絶縁材料の組合せ)に対する推奨最高連続使用温度(℃)を意味する。

耐熱クラス指定文字許容最高温度
クラス90Y90℃
クラス105A105℃
クラス120E120℃
クラス130B130℃
クラス155F155℃
クラス180H180℃
クラス200N200℃
クラス220R220℃
クラス250(文字なし)250℃

250を超える領域は25刻み(275、300…)で数値のまま呼ぶ。かつての規格で180℃超をまとめて「C種」と呼んでいた領域が、現行規格ではN・R・250などに細分された、という経緯も知っておくと古い教材を読むとき迷わない。

耐熱クラスの温度の階段 90 Y 105 A 120 E 130 B(Eと順序逆転) 155 F 180 H 200 N 220 R 250 250 上にいくほど高温に耐える(数値は許容最高温度℃) 耐熱クラスの序列(自作の概念図。JIS C 4003:2010 表1にもとづく)。E(120)とB(130)の並びだけがアルファベット順と逆転している

並びが不揃いな理由は、この体系が歴史的に積み上がってきたからだ。先にY・A・B・C種といった区分があり、後からその間を埋めるクラス(EはAとBの間)や上位のクラスが追加されていった。結果として、アルファベット順とは一致しない今の並びになっている。出題者はまさにここを突いてくる。「低い方から順に並べよ」という問題で、BとEを入れ替えた選択肢が混ざるのが定番だ。

耐熱クラスの数値は「周囲温度の上限」ではない。**周囲温度に、機器が運転して自分で発する熱による温度上昇を加えた、絶縁物そのものの到達温度の上限**だ。変圧器や電動機の温度上昇限度が細かく定められ、温度上昇試験で実測して確かめるのは、運転中の絶縁物の温度がこの上限を超えないことを保証するためにほかならない。つまり「耐熱クラス」という材料側の上限があり、「温度上昇限度」という機器側の設計値がそこから逆算されている。2つの話は同じ1本の線の上にある。

銘板の一文字が、機器の置き場所と使い方を決める

この体系を知っていると、現場での判断が変わる。たとえば盤内の温度が高くなりがちな場所に電動機や変圧器を置くとき、絶縁の耐熱クラスに対して温度の余裕がどれだけあるかという視点で機器を見られるようになる。同じ出力でもクラスB品とクラスF品では、熱に対する体力がまるで違う。

今日試せることとして、身近なモーターや変圧器の銘板・カタログで耐熱クラス(絶縁種別)の欄を探してみるといい。「F」や「155」という表示が見つかったら、それはこの機器の絶縁物が155℃まで連続使用に耐える設計だ、という宣言だ。

絶縁は熱で劣化する。だから絶縁物の温度の上限が機器の温度の上限になり、それを守るために温度上昇試験がある——この因果の一本線をつかんでしまえば、耐熱クラスは暗記表ではなく、機器の寿命設計の共通言語として読めるようになる。

冒頭の謎、Y・A・E・B・F・H・N・Rという不揃いな並びの理由と使い方は。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 耐熱クラスの順序を、アルファベット順(…B→E…)に入れ替えて出題する

    なぜ引っかかる指定文字がアルファベットなので、順序もアルファベット順だと思い込みやすい。実際にはE(120℃)よりB(130℃)の方が高温側で、この2つだけ並びが逆転している

    見破り方「Y・A・E・B・F・H・N・R」を機械的な文字列として暗記し、選択肢を見たら必ずEとBの前後関係を確認する。Eが先・Bが後が正しい

  2. 耐熱クラスの温度を『周囲温度の上限』だと思わせる

    なぜ引っかかる「この機器は40℃まで使える」といった周囲温度の話と混同しやすい。耐熱クラスの数値は、周囲温度に機器自身の温度上昇を加えた、絶縁物そのものの温度の上限を指す

    見破り方耐熱クラスの数値は『絶縁物の到達温度』。周囲温度+運転による温度上昇がこの値を超えないように機器は設計される、という構図で読む

  3. 近い数値にずらして出題する(Fを150℃、Bを120℃など)

    なぜ引っかかる90・105・120・130・155・180と刻み幅が一定でないため、キリのよい数字(150など)に置き換えられると正しく見えてしまう

    見破り方F=155、B=130のように、中途半端な数値の方が正しいクラスを先に固めておく。150や125という選択肢はまず疑う

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 耐熱クラスは、電気機器の絶縁システム(絶縁物の組合せ)に対する推奨最高連続使用温度を表す。低い方からクラス90(Y)・105(A)・120(E)・130(B)・155(F)・180(H)・200(N)・220(R)・250と並ぶ(JIS C 4003:2010)
  2. 順序の要注意点はEとB。アルファベット順ではBが先だが、耐熱クラスではE(120℃)よりB(130℃)の方が高い。Y→A→E→B→F→H→N→Rの並びで覚える
  3. 電気機器の寿命を決めるのは、鉄心や銅の巻線ではなく絶縁物。絶縁物は熱で化学的に劣化するため、絶縁物が耐えられる温度の上限が、そのまま機器として連続使用できる温度の上限になる
  4. 250を超える耐熱クラスは25刻みで増え、200以上のクラスと同様に数値そのもの(250、275…)で呼ぶ。かつて180℃超をまとめて呼んでいた「C種」は、現行規格ではN・R・250などに細分されている
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