分電盤の中に、よく似た形のブレーカーが並んでいる。銘板を読むと、片方には「定格電流30A」、もう片方には「定格感度電流30mA」とある。同じ「30」でも、動作する電流は1,000倍違う。
同じ電路に付いている、同じ「切る」ための装置なのに、なぜ桁が3つも違う電流で動くのか。どちらか一方では駄目なのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この桁の差が「守っている相手の違い」そのものだと説明できるようになっている。
高圧側の遮断器・開閉器はすでに見てきた。このトピックでは、変圧器の二次側——低圧の幹線・分岐回路を守る2種類の遮断器を仕分ける。
配線用遮断器(MCCB) — 電流の「大きさ」を見張る
配線用遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)は、過負荷と短絡、まとめて言えば過電流を検出して電路を遮断する。負荷をつなぎすぎて定格を超える電流がじわじわ流れ続ける過負荷に対しては時間をかけて動作し、短絡のような大電流に対しては瞬時に動作する。小さい過電流ほどゆっくり、大きい過電流ほど速く切る、という反限時の動作特性を持つ。
守っている相手は電線と機器だ。許容電流を超えた電流が流れ続ければ、電線は過熱し、絶縁被覆が劣化して最後は焼損・火災に至る。それを電流の大きさで見張って、危険な発熱に至る前に切る。
かつてこの役割はヒューズが担っていた。ヒューズは可溶体が過電流のジュール熱で溶けて切れる、単純で確実な保護装置だが、一度動作したら交換するまで回路は使えない。配線用遮断器は、検出と開閉を機構で行うため、原因を取り除けばレバーを上げて再投入できる。「溶けて切れる使い切り」と「機構で開く再使用可能」——この対比は、低圧・高圧を問わずヒューズと遮断器を分ける軸になる。
漏電遮断器(ELCB) — 行きと帰りの「差」を見張る
漏電遮断器(ELCB:Earth Leakage Circuit Breaker)が検出するのは地絡だ。仕組みの核心は、内蔵された零相変流器にある。電路の行きの線と帰りの線をまとめて零相変流器に通すと、健全な回路では行きと帰りの電流が等しいため、磁束が打ち消し合って出力は零になる。ところが機器の絶縁が破れて電流の一部が大地へ逃げると、行きと帰りに差が生じ、その差——地絡電流——だけが検出される。高圧の地絡保護で見たZCTと同じ原理が、1台のブレーカーの中に収まっている形だ。
漏電遮断器に付いているテストボタンは、この検出回路が生きているかを確かめるためのもので、押すと擬似的に行きと帰りの不平衡を作って動作を確認できる。なお、市販の漏電遮断器の多くは過電流保護の機能も併せ持っており、その場合は1台でMCCBの役割と地絡保護の両方を受け持つ。
法令はどこまで求めているか — 電技解釈第36条と第29条
この「人を守る側」の遮断器は、法令上も施設が義務づけられている。電技解釈第36条は、金属製外箱を有する使用電圧が60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路には、地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設することを原則として求める。例外として省略できるのは、機械器具を乾燥した場所に施設する場合、対地電圧150V以下の機械器具を水気のある場所以外に施設する場合、二重絶縁構造の機器、機械器具のC種・D種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下の場合など——いずれも「地絡が起きても人が危険になりにくい」状況が挙げられている。義務と例外が同じ一つの目的(感電からの人の保護)を向いていることが読み取れる条文だ。
感度電流の数字も、人の保護と直結している。電技解釈第29条第2項第五号は、水気のある場所以外に施設する低圧機器について、定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の漏電遮断器を施設した場合に外箱の接地を省略できると定めている。感度が十分に高く動作が十分に速い漏電遮断器は、接地の代役を務められるほど人の保護に効く、と法令自身が認めている形だ。市販の漏電遮断器で広く使われる定格感度電流30mAといった高感度形の数字も、同じ発想——人体に危険が及ぶ前に切る——から来ている。
高圧側と対応づける — 同じ「切る」の分業と同居
この科目の前半で見た高圧側の機器と並べると、役割の対応がきれいに見えてくる。
| 役割 | 高圧側 | 低圧側 |
|---|---|---|
| 過負荷・短絡の遮断 | CB(VCB)+OCR(過電流継電器) | MCCB |
| 地絡の検出と遮断 | ZCT+GR/DGR+CB(またはLBS) | ELCB |
| 溶断による短絡保護 | PF(高圧限流ヒューズ)、PC(高圧カットアウト)内のヒューズ | 低圧ヒューズ |
見比べると、高圧側では検出する機器(OCR・GR)と遮断する機器(CB)が分業しているのに対し、低圧のMCCB・ELCBは検出と遮断が1台の中に同居している。電圧階級が上がるほど遮断は大掛かりな仕事になり、検出は精密な仕事になるため、それぞれ専用の機器に分かれていく——PF・S形が「短絡はPF、地絡はGR+LBS」と機能を分散させていたのも、同じ文脈の中にある。低圧では事故エネルギーが小さい分、全部を1つの箱に収められる。同じ「切る」でも、電圧階級と検出対象で機器の姿が変わるという見方を持っておくと、高圧・低圧の機器を横断する出題で迷わなくなる。
分電盤の前で、守られている相手を言えるようになる
ブレーカーを「電気を入り切りするスイッチ」としてしか見ていないと、MCCBとELCBの区別は形の違いにしか見えない。検出対象で仕分けられるようになると、分電盤の中の1台1台が「これは電線の過熱を見張っている」「これは人の感電を見張っている」という役割の配置図として読めるようになる。
今日試せることとして、自宅や職場の分電盤を開けて(触らずに見るだけでよい)、テストボタンの付いたブレーカーを探してみるといい。そこに書かれた定格感度電流のミリアンペアの数字が、この回路で守られているのが人だという印になっている。
漏電遮断器の感度・速度は年々向上し、EV充電設備や屋外コンセントのように水気と人が近い設備が増えるほど、地絡保護の設計はますます重要になっていく。「何を検出して、誰を守る遮断器か」という仕分けの軸は、新しい設備の保護方式を考えるときにもそのまま通用する。
冒頭の謎、30Aと30mAの桁の差。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。