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電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 ・ 21 / 21

配線用遮断器と漏電遮断器 — 30Aと30mA、桁が3つ違う理由

読み終えると、こうなる

分電盤のブレーカーを見たとき、どれが電線を守り、どれが人を守っているのかを、定格の数字の桁から読み分けられるようになる。

  • 配線用遮断器(MCCB)と漏電遮断器(ELCB)を、検出対象(過負荷・短絡/地絡)で仕分けられる
  • 定格電流30Aと定格感度電流30mAという桁違いの数字を、守る相手(電線/人)の違いとして説明できる
  • ヒューズと遮断器を『溶けて切れる・交換が必要/機構で開く・再投入できる』の対比で区別できる
  • 高圧側のVCB・LBS・PF・PCと低圧側のMCCB・ELCB・ヒューズを、同じ役割の対応関係として並べられる
考えてみよう

分電盤の中に、よく似た形のブレーカーが並んでいる。銘板を読むと、片方には「定格電流30A」、もう片方には「定格感度電流30mA」とある。同じ「30」でも、動作する電流は1,000倍違う。

同じ電路に付いている、同じ「切る」ための装置なのに、なぜ桁が3つも違う電流で動くのか。どちらか一方では駄目なのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この桁の差が「守っている相手の違い」そのものだと説明できるようになっている。

高圧側の遮断器・開閉器はすでに見てきた。このトピックでは、変圧器の二次側——低圧の幹線分岐回路を守る2種類の遮断器を仕分ける。

配線用遮断器(MCCB) — 電流の「大きさ」を見張る

配線用遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)は、過負荷と短絡、まとめて言えば過電流を検出して電路を遮断する。負荷をつなぎすぎて定格を超える電流がじわじわ流れ続ける過負荷に対しては時間をかけて動作し、短絡のような大電流に対しては瞬時に動作する。小さい過電流ほどゆっくり、大きい過電流ほど速く切る、という反限時の動作特性を持つ。

守っている相手は電線と機器だ。許容電流を超えた電流が流れ続ければ、電線は過熱し、絶縁被覆が劣化して最後は焼損・火災に至る。それを電流の大きさで見張って、危険な発熱に至る前に切る。

かつてこの役割はヒューズが担っていた。ヒューズは可溶体が過電流のジュール熱で溶けて切れる、単純で確実な保護装置だが、一度動作したら交換するまで回路は使えない。配線用遮断器は、検出と開閉を機構で行うため、原因を取り除けばレバーを上げて再投入できる。「溶けて切れる使い切り」と「機構で開く再使用可能」——この対比は、低圧・高圧を問わずヒューズと遮断器を分ける軸になる。

漏電遮断器(ELCB) — 行きと帰りの「差」を見張る

漏電遮断器(ELCB:Earth Leakage Circuit Breaker)が検出するのは地絡だ。仕組みの核心は、内蔵された零相変流器にある。電路の行きの線と帰りの線をまとめて零相変流器に通すと、健全な回路では行きと帰りの電流が等しいため、磁束が打ち消し合って出力は零になる。ところが機器の絶縁が破れて電流の一部が大地へ逃げると、行きと帰りに差が生じ、その差——地絡電流——だけが検出される。高圧の地絡保護で見たZCTと同じ原理が、1台のブレーカーの中に収まっている形だ。

漏電遮断器に付いているテストボタンは、この検出回路が生きているかを確かめるためのもので、押すと擬似的に行きと帰りの不平衡を作って動作を確認できる。なお、市販の漏電遮断器の多くは過電流保護の機能も併せ持っており、その場合は1台でMCCBの役割と地絡保護の両方を受け持つ。

MCCBとELCBは、見ているものが違う 配線用遮断器(MCCB) 見ているもの:電路を流れる電流の大きさ 過負荷・短絡(アンペアの桁)で遮断 守る相手:電線・機器(過熱・焼損の防止) 漏電遮断器(ELCB) 見ているもの:行きと帰りの電流の差 地絡(ミリアンペアの桁)で遮断 守る相手:人(感電)と地絡による火災 30mAの地絡は、MCCBから見れば定格30Aの0.1%。 MCCBには見えない事故を切るために、 2種類の遮断器が並んでいる 配線用遮断器と漏電遮断器の検出対象の違い(自作の概念図)
冒頭の桁の謎はここで解ける。**MCCBの定格電流(アンペアの桁)は、電線が過熱せずに流せる電流から決まる数字。ELCBの定格感度電流(ミリアンペアの桁)は、人体に危険が及ぶ電流から決まる数字だ。** 30mAの地絡電流は、定格30AのMCCBから見ればわずか0.1%——正常な負荷変動と区別がつかず、まったく気付けない。逆にELCBの感度で負荷電流そのものを見張ることはできない。**見ているものが違うから、どちらか一方では代わりが利かず、2種類が並んで初めて電線と人の両方が守られる。**

法令はどこまで求めているか — 電技解釈第36条と第29条

この「人を守る側」の遮断器は、法令上も施設が義務づけられている。電技解釈第36条は、金属製外箱を有する使用電圧が60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路には、地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設することを原則として求める。例外として省略できるのは、機械器具を乾燥した場所に施設する場合、対地電圧150V以下の機械器具を水気のある場所以外に施設する場合、二重絶縁構造の機器、機械器具のC種・D種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下の場合など——いずれも「地絡が起きても人が危険になりにくい」状況が挙げられている。義務と例外が同じ一つの目的(感電からの人の保護)を向いていることが読み取れる条文だ。

感度電流の数字も、人の保護と直結している。電技解釈第29条第2項第五号は、水気のある場所以外に施設する低圧機器について、定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の漏電遮断器を施設した場合に外箱の接地を省略できると定めている。感度が十分に高く動作が十分に速い漏電遮断器は、接地の代役を務められるほど人の保護に効く、と法令自身が認めている形だ。市販の漏電遮断器で広く使われる定格感度電流30mAといった高感度形の数字も、同じ発想——人体に危険が及ぶ前に切る——から来ている。

高圧側と対応づける — 同じ「切る」の分業と同居

この科目の前半で見た高圧側の機器と並べると、役割の対応がきれいに見えてくる。

役割高圧側低圧側
過負荷・短絡の遮断CB(VCB)+OCR(過電流継電器)MCCB
地絡の検出と遮断ZCT+GR/DGR+CB(またはLBS)ELCB
溶断による短絡保護PF(高圧限流ヒューズ)、PC(高圧カットアウト)内のヒューズ低圧ヒューズ

見比べると、高圧側では検出する機器(OCR・GR)と遮断する機器(CB)が分業しているのに対し、低圧のMCCB・ELCBは検出と遮断が1台の中に同居している。電圧階級が上がるほど遮断は大掛かりな仕事になり、検出は精密な仕事になるため、それぞれ専用の機器に分かれていく——PF・S形が「短絡はPF、地絡はGR+LBS」と機能を分散させていたのも、同じ文脈の中にある。低圧では事故エネルギーが小さい分、全部を1つの箱に収められる。同じ「切る」でも、電圧階級と検出対象で機器の姿が変わるという見方を持っておくと、高圧・低圧の機器を横断する出題で迷わなくなる。

分電盤の前で、守られている相手を言えるようになる

ブレーカーを「電気を入り切りするスイッチ」としてしか見ていないと、MCCBとELCBの区別は形の違いにしか見えない。検出対象で仕分けられるようになると、分電盤の中の1台1台が「これは電線の過熱を見張っている」「これは人の感電を見張っている」という役割の配置図として読めるようになる。

今日試せることとして、自宅や職場の分電盤を開けて(触らずに見るだけでよい)、テストボタンの付いたブレーカーを探してみるといい。そこに書かれた定格感度電流のミリアンペアの数字が、この回路で守られているのが人だという印になっている。

漏電遮断器の感度・速度は年々向上し、EV充電設備や屋外コンセントのように水気と人が近い設備が増えるほど、地絡保護の設計はますます重要になっていく。「何を検出して、誰を守る遮断器か」という仕分けの軸は、新しい設備の保護方式を考えるときにもそのまま通用する。

冒頭の謎、30Aと30mAの桁の差。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 配線用遮断器(MCCB)が漏電(地絡)も検出できると思わせる

    なぜ引っかかるどちらも同じ形のブレーカーとして分電盤に並んでいるため、『ブレーカーなら異常は何でも切ってくれる』と一括りにしやすい

    見破り方MCCBが見ているのは電流の大きさだけ。30mAの地絡電流は定格30Aの0.1%にすぎず、MCCBには正常な変動と区別がつかない。地絡を検出できるのは、行きと帰りの電流の差を監視する零相変流器を内蔵した漏電遮断器だけだと確認する

  2. 定格電流30A(MCCB)と定格感度電流30mA(ELCB)を混同させる

    なぜ引っかかる同じ『30』という数字が並ぶうえ、どちらも『これを超えたら動く』値なので、単位の桁を読み飛ばすと入れ替えに気付けない

    見破り方守る相手で桁を思い出す。電線の過熱を防ぐ数字はアンペアの桁(負荷電流そのもの)、人の感電を防ぐ数字はミリアンペアの桁(人体に危険が及ぶ電流)。3桁の差は、守っている相手の違いそのもの

  3. 地絡遮断装置の施設義務(電技解釈第36条)を『低圧機器なら例外なく必要』と思わせる、または例外条件を組み替える

    なぜ引っかかる義務の原則だけ覚えていると例外で迷い、例外を覚えていると『乾燥した場所』『3Ω以下』などの条件がどの規定のものか混ざりやすい

    見破り方原則は『金属製外箱を有する使用電圧60V超の低圧機械器具に接続する電路』。例外は感電の危険が小さい状況(乾燥した場所、対地電圧150V以下で水気のある場所以外、二重絶縁構造、C種・D種接地抵抗3Ω以下など)として整理する。条件はいずれも『地絡しても人が危なくなりにくい』方向を向いている

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本2問・応用1問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 配線用遮断器(MCCB)は過負荷と短絡(過電流)を検出して電路を遮断する。守っているのは電線・機器で、過熱・焼損を防ぐ
  2. 漏電遮断器(ELCB)は零相変流器を内蔵し、行きと帰りの電流の差(地絡電流)を検出して遮断する。守っているのは主に人(感電)と地絡による火災
  3. ヒューズは過電流で溶断して切れる使い切りの保護装置。遮断器は機構で開くため、原因を取り除けば再投入できる
  4. 金属製外箱を有する使用電圧60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路には、原則として地絡遮断装置を施設する(電技解釈第36条。乾燥した場所、対地電圧150V以下で水気のある場所以外、C種・D種接地抵抗3Ω以下などの例外あり)
  5. 定格感度電流15mA以下・動作時間0.1秒以下の漏電遮断器の施設は、機械器具の接地を省略できる条件の1つになっている(電技解釈第29条第2項第五号)。感度電流の小ささは人の保護に直結する数字
  6. 高圧では検出(OCR・GR)と遮断(CB)が別の機器に分業されるが、低圧のMCCB・ELCBは検出と遮断が1台に同居している
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