作業員が高圧検電器を電路に近づけ、音も光も「停電している」と示した。それを確認したうえでケーブルに触れたにもかかわらず、感電事故が起きた。検電器は嘘をついたのか、それとも壊れていたのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、検電器という道具1つでは足りない理由を説明できるようになっている。
高圧の停電作業には、専用の道具が何種類も登場する。まず、電路が確実に停電していることを確認するのが高圧検電器だ。音響・発光で表示する非接触式が主流で、電路に触れずに停電・充電の状態を確認できる。
ここまでは前のトピックで見た「検電→放電→短絡接地」という流れの入口にすぎない。問題は、検電器が確認しているのは何かという点にある。
放電棒は、検電で停電を確認したあと、この残留電荷を接地へ安全に放電させる道具だ。コンデンサ・ケーブルは開路後も電荷が残り感電のおそれがあるため、省略できない工程になる。さらに短絡接地器具(アースフック)は、停電作業中の誤送電や他回路からの誘導による感電を防ぐため、作業箇所の電路を三相短絡して接地しておく道具で、放電棒とは目的が異なる。
現場ではこのほかにも、高圧ケーブルの太物導体を圧縮端子・圧縮スリーブで接続するための油圧式圧縮工具、太物ケーブルを切断するケーブルカッタ、端末処理でシース・遮へい・半導電層・絶縁体を所定の寸法で段むきにするケーブルストリッパ、端子や母線の締結部を規定トルクで締め付けるトルクレンチなどが使われる。ケーブルストリッパでの外部半導電層の削り残しは、前のトピックで見た電界集中の原因になるため、専用工具での確実な除去が求められる。
「電路は生きている前提」で道具を組み合わせるという発想
検電器・放電棒・短絡接地器具の役割の違いが分かると、停電作業の準備がなぜ一つの道具では終わらないのかが見えてくる。ケーブルや進相コンデンサをコンデンサとして捉える視点を持つと、目に見えない残留電荷の存在を、感覚ではなく理屈で警戒できるようになる。
この道具の組み合わせが定着しているのは、検電さえ済ませれば安全だと思い込んで作業し、残留電荷や誤送電で感電した事故の記録があるからだ。1つの道具に安全確認のすべてを託さない、という発想がここにも表れている。
高圧設備の保守・改修は、太陽光発電や蓄電池の高圧連系設備が増えるほど、これからも必要になる作業だ。検電器・放電棒・短絡接地器具をそれぞれ正しい役割で使い分けられることが、その現場に立つための最低条件になる。
冒頭の「検電器で停電を確認したのに、なぜ感電事故が起きるのか」。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。