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電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 ・ 16 / 21

電動機の始動方式 — スターデルタ・リアクトル・コンドルファ・インバータ

読み終えると、こうなる

大型モータが動き出す一瞬、照明がちらついたり他の設備が止まったりする現象の原因を言い当てられるようになる。

  • 全電圧始動の始動電流が定格の6〜10倍になると知ったうえで、母線電圧の低下を防ぐ始動方式を選び直せる
  • スターデルタ始動で電流とトルクがともに1/3になる原因が、電圧を1/√3に下げたことの結果だと順序立てて言い当てられる
  • 約1000kW以上の大容量高圧モータに、スターデルタではなく始動補償器(コンドルファ)が適すると判断できる
  • 結線図の交差の数を数えるだけで、モータが正転のままか逆回転になるかを判定できる
考えてみよう

大型のモータを動かすとき、いきなり全電圧をかけてはいけないと教わる。モータ自体は丈夫に作られているはずなのに、なぜそこまで慎重に始動方式を選び分けるのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、何を守るために始動方式が使い分けられているかを説明できるようになっている。

電動機を全電圧(直入れ)でそのまま始動すると、始動電流は定格電流のおよそ6〜10倍にもなる。この倍率は資料によって幅がある。ここで挙げた6〜10倍は大形の高圧モータを扱うメーカー資料の値で、小形機を中心に扱う第二種向けの教材では全負荷電流の4〜8倍程度と書かれることも多い。同じ「じか入れ始動の始動電流」を指していても、対象とする機の大きさで数字の置き方が変わる、と押さえておけばよい。この大きな電流が流れている間、電源系統の電圧は大きく下がる。守られているのはモータの丈夫さではなく、同じ母線につながる照明や他の機器の側だ。だからこそ、電源事情に応じて始動電流を抑える方式が選ばれる。

主な始動方式と始動電流・トルクの目安 全電圧(直入れ) 始動電流:定格の6〜10倍 スターデルタ始動(低圧向け) 電圧1/√3→電流・トルクともに全電圧の1/3 リアクトル始動 タップ65〜80%:電流65〜80%・トルク42〜64% 始動補償器(コンドルファ)始動 タップ65〜80%:電流・トルクとも42〜64%/大容量向け インバータ始動 始動電流:定格の1.5〜2倍程度 始動方式ごとの始動電流・トルクの目安(TMEIC・三菱電機・東芝の資料をもとにした自作の比較図)

スターデルタ始動(Y-Δ始動) は、始動時に固定子巻線をY(スター)結線にして各相巻線への電圧を1/√3に下げて始動し、加速後にΔ(デルタ)結線へ切り替えて全電圧運転に移る方式だ。

ここで順番を取り違えやすい。**原因は電圧を1/√3に下げること** であり、電流もトルクも電圧の2乗に比例するため、その結果として**どちらも同時に**[全電圧始動](/terms/direct-on-line-starting/)の1/3にまで下がる。トルクが先に落ちて、それが電流を下げているわけではない。電圧低下という1つの原因から、電流とトルクという2つの結果が並んで生まれている。

始動トルクが1/3まで下がるため、スターデルタ始動は重負荷の始動には向かない。またY→Δ切替時には突入電流・サージが生じ、高圧モータでは切替時のサージ電圧が大きくなるため、低圧モータ向けの方式とされる。モータ側もY-Δ切替ができるようリード線6本(オープンデルタ結線)とする必要がある。

リアクトル始動は、始動時に電源と電動機の間に直列にリアクトルを入れて電圧を下げ、加速後にリアクトルを短絡(バイパス)して全電圧に切り替える方式だ。タップ切替で始動電流を調整でき、タップ65〜80%のとき始動電流はタップ値に比例して65〜80%になるのに対し、始動トルクはタップ値の二乗に比例して42〜64%まで下がる。電流の下がり方に比べてトルクの下がり方が大きい点が弱点になる。

始動補償器(コンドルファ)始動は、電源と電動機の間に単巻変圧器を挿入して減圧始動する方式で、リアクトル始動と同様に始動電流・始動トルクともタップ値の二乗に比例する。全電圧への切替時の突入電流が小さくなるよう回路が組まれており、同じ始動トルクならリアクトル始動より始動電流を小さくできる。単巻変圧器を必要とする分、設備コストは最も高価になるが、約1000kW以上の大容量高圧機など、大きなモータに適する。

インバータ始動は、インバータで周波数と電圧を低い値から徐々に上げて(V/f制御)加速する方式だ。低周波数・低電圧からのスタートと電流抑制機能(ストール防止)により、始動電流をモータ定格電流の1.5〜2倍程度にまで抑えられる。始動後はそのまま回転速度制御・省エネ運転にも使えるが、装置コストが高く、高調波やノイズへの対策が必要になる場合がある。

かご形には使えない始動法もある — 二次抵抗始動

ここまで見てきた全電圧・スターデルタ・リアクトル・コンドルファ・インバータの5方式は、いずれもかご形誘導電動機に使える始動法だ。だが、始動法にはもう1つ、かご形にはそもそも適用できない方式がある。二次抵抗始動だ。

二次抵抗始動は、回転子(二次側)巻線の端子をスリップリング経由で外部に引き出し、そこに外部抵抗を接続する方式だ。比例推移という現象を利用し、始動電流を抑えながら始動トルクを大きくできるという利点があるが、これは回転子巻線に外部からアクセスできる巻線形誘導電動機専用の方式になる。

かご形の回転子は、導体バーを端絡環で短絡した「かご」構造をしており、外部に端子そのものが存在しない。だから二次抵抗始動のように「二次側に何かをつなぐ」始動法は、性能の優劣以前に、**構造上つなぐ場所が無いために実現できない。** 「かご形に使えない理由」を丸暗記するのではなく、「回転子に端子が無い→二次側に接続する始動法は全部不可」という構造からの理由づけで押さえておくと、二次抵抗始動以外の似た方式が出てきても対応できる。

電動機の回転方向を逆にする方法 — 交差の数を数える

三相誘導電動機の回転方向は、電源の相順(相回転の順序)で決まる。3線のうち任意の2線を入れ替えると、相順が反転して逆回転になる。一方、3本すべてを1つずつずらして接続し直す(R→S、S→T、T→R というサイクリックな入替)と、相順はR→S→Tのまま保たれるため、回転方向は変わらない。

2線交換は逆回転/3線のサイクリックな入替は正転のまま 2線交換(逆回転) R S T R S T 交差1組(奇数回)→逆回転 3線サイクリック(正転のまま) R S T S T R 交換2回分(偶数回)→相順不変 見た目の変化の大小ではなく、交差の本数の偶奇で判定する 2線交換(交差1組)は逆回転、3線のサイクリックな入替(交換2回分)は正転のまま(自作の概念図)
判定のコツは、入替を「2線交換の繰り返し」に分解して考えることだ。**交換の回数が奇数回なら逆転、偶数回なら不変。** サイクリックな3線入替は、数学的には2回の2線交換に等しいので偶数回になり、相順が保たれる。図の問題では、見た目の変化の大きさに惑わされず、「交差している組の数」を機械的に数えるとよい。

動力制御盤から電動機までの配線本数

始動方式が変わると、制御盤から電動機までの配線本数も変わる。直入れ始動では、制御盤から電動機へは主回路3本(+接地線1本)。正逆転回路は、正逆の切替を制御盤内の電磁接触器2台が2相を入れ替えて行うため、盤から電動機への配線は直入れと同じ3本(+接地線)のままで、電動機側の本数は増えない。

一方、スターデルタ始動は例外だ。電動機の巻線両端(U・V・W とX・Y・Z)の6端子すべてを盤内の始動器に引き込む必要があるため、配線本数は6本(+接地線)になる。

正逆転回路とスターデルタ始動は、どちらも「盤の中で何かを切り替える」という点では似ているが、配線本数への影響はまったく違う。**正逆転の切替は盤内の電磁接触器だけで完結するため電動機側の配線は増えない一方、スターデルタは電動機の巻線そのものの結線を外部で切り替える必要があるため、配線を6本に増やさざるを得ない。** 「盤内で完結する切替か、電動機の巻線構造にアクセスする切替か」という視点で見分けると覚えやすい。

始動方式の選び方が、電源設計の視点そのものになる

この4つの方式の違いが分かると、モータの銘板や制御盤の仕様書に書かれた始動方式の欄が、単なる型式の違いではなく、「その現場の電源事情にどう配慮したか」を示す記録に見えてくる。

始動方式がこれだけ細かく使い分けられているのは、大型モータの直入れ始動が原因で母線電圧が落ち込み、他の設備が止まったり照明がちらついたりした波及事故の教訓があるからだ。守っているのはモータではなく、同じ電源を共有する周囲の設備だという視点がここに表れている。

太陽光発電のポンプ設備や工場の大型モータなど、これから増えていく高圧の動力設備でも、始動方式の選定は電源設計の要になる。この基本を理解していることが、そうした設備に関わる仕事の土台になる。

冒頭の「なぜいきなり全電圧をかけてはいけないのか」。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. スターデルタ始動で『始動トルクが先に1/3になるから、その結果として電流も1/3になる』という順番で因果を組み立てさせる

    なぜ引っかかる電流とトルクのどちらも1/3という同じ数字になるため、どちらが原因でどちらが結果かをあいまいなまま覚えてしまいやすい

    見破り方原因は始動時に電圧を1/√3に下げることであり、電流もトルクも電圧の2乗に比例するため、その結果としてどちらも同時に1/3になる、という順番で理解する。トルクと電流の間に直接の因果関係はない

  2. スターデルタ始動が高圧モータにも一般的に使えると誤答させる

    なぜ引っかかる減圧始動の代表例として真っ先に思い浮かぶため、電圧クラスを問わず適用できると思い込みやすい

    見破り方スターデルタ始動は低圧モータ向けで、高圧モータでは切替時のサージ電圧が大きくなるため推奨されないという制約を確認する

  3. リアクトル始動とコンドルファ始動のタップと始動電流・トルクの比例関係を混同させる

    なぜ引っかかるどちらも『タップで調整する減圧始動』という括りで似て見える

    見破り方どちらの方式でも、始動電流はタップ値に比例し、始動トルクはタップ値の二乗に比例するという関係は共通。違いは、コンドルファ始動が全電圧への切替時の突入電流を小さく抑えられ、より大容量の高圧機に適する点にあると整理する

  4. インバータ始動の利点だけを覚え、装置コストや高調波対策の必要という代償を見落とさせる

    なぜ引っかかる始動電流を抑えられる利点ばかりが強調されると、導入の負担面を見落としやすい

    見破り方インバータ始動は始動電流を定格電流の1.5〜2倍程度に抑えられる一方、装置コストが高く、高調波やノイズへの対策が必要になる場合があるという両面を確認する

  5. 二次抵抗始動を、かご形誘導電動機にも使える始動法の1つだと誤答させる

    なぜ引っかかる二次抵抗始動も『比例推移で始動電流を抑えつつトルクを高める』という、他の減圧始動と似た効果を持つ方式のため、区別なく並べて覚えてしまいやすい

    見破り方二次抵抗始動は、回転子(二次側)巻線をスリップリング経由で外部に引き出し、外部抵抗を接続する方式だと確認する。かご形誘導電動機の回転子は導体バーを端絡環で短絡した『かご』構造で外部に端子が無いため、二次側に何かをつなぐ始動法(二次抵抗始動)はそもそも物理的に不可能だと判断する

  6. 電動機の回転方向を逆にする配線図で、3本すべてがずれている図を『逆回転』の図だと誤判定させる

    なぜ引っかかる3本の接続先が変わっている図を見ると、『何かが入れ替わっている=逆回転』と反射的に判断しやすい

    見破り方交差の数を数える。2本だけが交差して入れ替わっていれば逆回転(交換1回=奇数回)、3本ともサイクリックにずれているだけなら回転方向は変わらない(交換2回分=偶数回)。見た目の変化の大小ではなく、交差の本数の偶奇で判定する

  7. 始動方式が変わっても、制御盤から電動機までの配線本数は常に3本のままだと思い込ませる

    なぜ引っかかる直入れ・正逆転回路がどちらも3本(+接地線)であるため、始動方式によらず本数は変わらないと一般化してしまいやすい

    見破り方スターデルタ始動だけは例外だと確認する。電動機の巻線両端(両方の端子)を盤内の始動器まで引き込む必要があるため、配線本数は6本(+接地線)になる。正逆転の切替は盤内の電磁接触器が担うため電動機側の本数は増えないが、スターデルタは巻線構造そのものにアクセスする必要がある点が違う

参考文献・出典

理解度チェック(8問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、8問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 8 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 全電圧(直入れ)始動の始動電流は定格電流の6〜10倍にもなる。この倍率は資料によって幅があり、小形機を中心に扱う第二種向けの教材では全負荷電流の4〜8倍程度とされることも多い。試験では桁の離れた選択肢から選ぶ形なので、数倍から10倍程度に収まる値を選べばよい
  2. スターデルタ始動は、始動時に電圧を1/√3に下げることで、電流・トルクとも電圧の2乗に比例してともに全電圧始動の1/3になる。始動トルクも1/3に下がるため重負荷の始動には不向きで、高圧モータへの適用は推奨されない
  3. リアクトル始動は、始動時にリアクトルを直列に入れて電圧を下げる方式。タップ65〜80%のとき始動電流はタップ値に比例して65〜80%、始動トルクはタップ値の二乗に比例して42〜64%まで下がる
  4. 始動補償器(コンドルファ)始動は単巻変圧器で減圧し、リアクトル始動と同様に電流・トルクがタップ値の二乗に比例する。全電圧への切替時の突入電流が小さく、約1000kW以上の大容量高圧機にも適する
  5. インバータ始動は周波数と電圧を低い値から徐々に上げて加速し、始動電流をモータ定格電流の1.5〜2倍程度に抑えられる
  6. 三相誘導電動機の回転方向は相順で決まる。3線のうち任意の2線を入れ替えると相順が反転して逆回転する。3本すべてをサイクリックに(R→S、S→T、T→Rと)ずらす入替は交換2回分に相当し、相順が保たれるため回転方向は変わらない。制御盤から電動機までの配線本数は、直入れ・正逆転回路が3本(+接地線)、スターデルタ始動は電動機の巻線両端6端子すべてを引き込むため6本(+接地線)になる
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