キュービクルの点検写真が4枚並んでいる。磁器の筒、ひだ状の傘が連なる円筒、厚いガラスと金網に覆われた無骨な照明器具、そして病院の壁にある色違いのコンセント。どれも「見たことがある気がする」のに、名前が出てこない。
第二種電気工事士の写真鑑別では、リモコンリレーや進相コンデンサ、可とう電線管の附属品を1点の決め手で見分ける練習をした。高圧の世界に入ると、機器の見た目はもっと無骨で、もっと似て見える。磁器の筒はどれも白っぽく、ひだ状の傘が付いた機器も似たような円筒形だ。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、これらの機器を「他のどれにも無い1点」から見分けられるようになっている。
第二種の作法を、高圧機器に広げる
写真鑑別の基本作法は、第二種電気工事士の写真鑑別で扱ったとおりだ。決め手は「共通点」ではなく「他のどれにも絶対に無いもの」の側にある。 高圧の機器は見た目が地味で無骨な分、共通点(磁器製である、金属の箱である、円筒形である)ばかりが目に入りやすい。だからこそ、1点だけの決め手を先に言葉にしておく必要がある。
高圧カットアウト(PC)— 磁器の筒と、壊れたときの赤い印
高圧カットアウトは、高圧磁器製の絶縁容器にヒューズを組み込んだ、変圧器一次側などの保護に使う小型の開閉器だ。形には大きく2種類がある。
箱型カットアウトは、磁器製の本体と蓋で構成され、蓋の内側にヒューズ筒を装着する。ヒューズが溶断すると、下部から赤色の溶断表示が飛び出す。 この赤い印が見えている写真は、「ヒューズが切れた後の高圧カットアウト」だと判断できる。
筒型カットアウトは、縦に長い円筒状で屋外用に特化した形だ。円筒形のため雪が積もりにくく、耐震性にも優れる。ヒューズが溶断すると、筒自体が下がるため、夜間でも遠目に判断しやすい。
似た見た目の断路器(DS)と混同しないよう注意したい。DSはヒューズを持たず、単に電路を開閉するだけの機器なので、こうした溶断表示という「壊れたときの変化」自体が現れない。断路器・遮断器・負荷開閉器の役割の違いは断路器・遮断器・負荷開閉器で扱っている。
避雷器(LA)— ひだ状の傘が連なる円筒
避雷器は、酸化亜鉛素子などを磁器(またはポリマー)のがい管に収めた機器で、外形はひだ状の傘(スカート)が連なる円筒形になる。傘の並びは、がい管の表面を伝う漏れ電流を減らし、汚損(塩分・ほこりの付着)による性能低下を防ぐための構造だ。上下には接続端子があり、電路側と接地側につながる。避雷器そのものの役割・接地の太さは避雷器(LA)で扱っている。
ここで混同しやすいのが避雷針だ。避雷針は建物の屋上に立つ、先端が尖った棒状の設備で、建物への直撃雷を受け止めて大地に導く。避雷器は電路に侵入した雷サージから機器を守るもので、守る対象も設置場所(受電設備の中か、屋上の先端か)もまったく違う。「雷」という言葉に引きずられず、傘の並ぶ円筒か、尖った棒かという外形で区別する。
柱上変圧器 — 放熱ヒダのある円筒が見えたら、もう決まっている
電柱の上で6600Vを210-105Vに下げ、低圧線へ送り出すのが柱上変圧器だ。機能はよく知られているのに、写真の選択肢になると外してしまう——柱の上の機器はどれも灰色で無骨に見えるからだ。だから、変圧器にしか無いものを先に言葉にしておく。
メーカーカタログの外形図と製品写真で確認できる決め手は3点ある。円筒形のタンク(外箱は溶融亜鉛めっき処理の鋼板)、タンクの周囲に並ぶ縦の放熱ヒダ、そして上部の磁器製の一次ブッシング2本だ。一次ブッシングが2本なのは、柱上変圧器が単相(単三専用)だからで、二次ブッシングはその下に付く。正面の銘板には「30」のように容量(kVA)の数字が入る。
混同しやすい相手も柱の上にいる。柱上気中開閉器(PAS)は鋼板製(またはステンレス製)の箱形の開閉器で、円筒タンクも放熱ヒダももたない。高圧カットアウトは磁器の筒そのものだ。「放熱ヒダのある円筒」が見えた時点で、変圧器に決まる。
開閉器の見分け — 付いているものの有無で3段に切る
高圧の開閉器は、健全な姿がどれも「フレームと碍子の集まり」に見える。ここも、付いているものの有無で切っていく。
GR付PASは、柱上に付く箱形の気中開閉器に地絡継電装置(SOG制御装置)を組み合わせたもので、構内の地絡事故が配電線全体へ波及するのを防ぐ。写真上の決め手は、開閉器本体に直付けされた制御ケーブルが垂れ下がり、電柱の下方に別箱の制御装置が付いていることだ。メーカー標準で制御ケーブルは本体直付けの10m(最大50mまで延長可)とされており、この「本体からぶら下がるケーブルと別箱」が、制御装置をもたないただの開閉器との違いになる。方向性・無方向性の別や、VT・LA内蔵タイプがあることも製品ラインナップから読み取れる。地絡継電器とZCTの仕組みは地絡保護(ZCTとGR)で扱っている。
LBS(高圧交流負荷開閉器)はキュービクル内の機器で、フレームに3相分の開閉部が並び、相間・側面に絶縁バリヤ(仕切り板)が付く。バリヤは小動物の侵入による短絡事故を防ぐためのものだ。限流ヒューズ付のLBSでは、各相に筒形の限流ヒューズが取り付けられ、ヒューズが溶断するとストライカ(溶断表示棒)が飛び出してリンク機構を突き、三相すべてを開放する——1相だけ切れて欠相運転になる事故を防ぐ仕掛けだ。つまりLBSの写真では「バリヤ」「ヒューズ筒」「ストライカ」という付属物が次々に決め手になる。
DS(断路器)は、その反対に「何も付いていない」ことが決め手になる。刃(ブレード)と接触子だけの単純な構造で、ヒューズも消弧装置ももたず、無負荷の電路を切り離すためだけの機器だ。LBSと並んだ写真では、バリヤもヒューズ筒も無い、いちばん素朴な刃を探せばよい。役割の違い——なぜDSでは負荷電流を切れないのか——は断路器・遮断器・負荷開閉器で扱っている。
高圧限流ヒューズ(PF)が単体で出題されることもある。筒形のヒューズで、ストライカ(動作表示棒)付きのものは、ヒューズ付負荷開閉器に組み込むと動作時に開閉器を自動的に引き外せる。LBSの各相にぶら下がる筒がこれで、高圧カットアウトに入るヒューズ筒とは別物だ。
VTとCT — 穴があいているほうがCT
キュービクルの計器まわりには、エポキシ樹脂でモールドされたよく似た小箱が2種類ある。VT(計器用変圧器)は高電圧を110V(標準)に変成して計器・継電器へ渡す機器で、一次側に限流ヒューズの付くヒューズ付タイプがある。CT(変流器)は大電流を5Aに変成する機器で、丸窓貫通形は中央に丸い貫通穴があき、そこに一次導体(母線・電線)を通して使う。貫通形の定格電流はAT(アンペアターン=電流×貫通回数)で表示される。
決め手は1点だけ。中央に貫通穴があればCT、貫通穴が無くヒューズが付いていればVT。 二次定格(110Vと5A)も対で覚えておくと、銘板からも確認できる。VT・CTの結線と役割は計器用変成器(VT・CT)で扱っている。
モールド変圧器と油入変圧器 — コイルが見えるか、タンクに入っているか
キュービクル内の変圧器には、外観のまったく違う2系統がある。モールド変圧器は、巻線をエポキシ樹脂で注型(モールド)した構造で絶縁油を使わず、円筒形のコイルがむき出しに見える。油入変圧器は、絶縁油で満たした鋼板タンクの中にコイルが収まり、外からは放熱フィンの付いたタンクしか見えない。柱上変圧器も油入変圧器の仲間で、だからこそ放熱ヒダのある円筒タンクという姿をしている。
写真での決め手は「コイルが見えるか、タンクに入っているか」の1点だ。樹脂の円筒が3つ並んでむき出しならモールド、ひだ付きの密閉タンクなら油入と、迷いようがない。
電力量計とVCT — 取引の計量は2つで1組
受電点の電力量を電力会社との取引用に計量する場所には、VCT(電力需給用計器用変圧変流器)と電力量計が1組で付く。VCTは、高電圧・大電流を計量できる電圧・電流に変成する機器で、VTとCTの働きを1台にまとめた箱形の変成器だ。取引用メータ(電力量計)と接続して使われ、取引用の計量に使うため計量法に基づく検定を受ける。電力量計はkWhを表示する計器で、VCTからの二次配線がここへつながる。
写真上の決め手はこうなる。電力量計と二次配線でつながる箱形の変成器がVCT。単体のVT・CTと違い、電圧と電流の両方を1台で変成する「取引専用」の機器だ。
耐圧防爆形照明器具 — 重さと厚みがそのまま安全の証
爆発性ガスや可燃性ガスが存在するおそれのある場所(化学工場、燃料タンク周辺など)で使う照明器具は、内部で万一小さな火花が生じても、その炎が外部の爆発性ガスに燃え移らないよう、頑丈に密閉された構造を持つ。これが耐圧防爆形照明器具だ。
写真上の決め手は、厚い硬質ガラスと、それを覆う金属製のガードネット(金網)、肉厚な金属ボディという「重厚さ」そのものだ。ガラス部分は硬質ガラスパイプの内側に樹脂パイプを重ねた二重補強構造になっている製品もあり、一般的な照明器具の薄く軽いカバーとは、写真から伝わる質感がまったく違う。縦吊り・横吊りの両方に対応できる頑丈なフックが付いていることも多い。
圧縮端子 — 断面が六角形になる工具の跡
太い高圧ケーブルや大電流の電線の端末には、圧縮端子が使われることが多い。圧着端子と名前が似ているが、施工方法がまったく違う。
圧着端子は、手動の圧着工具でダイスを押し付け、部分的に電線をかしめる。これに対して圧縮端子は、油圧式圧縮工具に装着したダイス2組で、電線サイズごとに定められた圧力を均一にかけ、端子を6角形に圧縮する。 力が全周に均一にかかるため素線切れが起きにくく、端子の先端部分がふさがれているぶん水の浸入もしにくい。
高圧ケーブルの端末処理という文脈では、圧縮端子は油圧式圧縮工具とセットで登場する。手動油圧式圧着器・カッタ・ノックアウトパンチャ・パイプベンダのヘッド形状の見分け方は、第二種電気工事士の写真鑑別で扱った内容がそのまま使える。圧縮端子の場合はさらに一歩進んで、施工後の跡が丸か六角形かまで見れば、圧着端子と圧縮端子のどちらが使われたかまで判断できる。
医用コンセント — 形ではなく色で読む
病院の壁にあるコンセントは、一般のコンセントと形状自体は大きく変わらない。決め手は色だ。JIS T 1021に基づき、供給される電源系統によって色分けされている。
白(ミルキーホワイト)は商用電源のみから供給されるコンセント。赤は一般非常電源・特別非常電源から供給されるコンセントに使われ、輸液ポンプやシリンジポンプなどの医療機器が接続される。緑は瞬時特別非常電源で、交流無停電電源装置(UPS)から供給されるコンセントに使われ、生命維持装置や麻酔器のように、停電時に一瞬たりとも電源が途切れては困る機器が接続される。色は電圧や電流の大きさを表しているのではなく、どの電源系統につながっているかを表している。
見た目の1点を、言葉にして持ち帰る
ここまでの機器を、決め手だけ並べておく。
| 機器 | 写真上の決め手(1点) | 混同しやすい相手 |
|---|---|---|
| 柱上変圧器 | 円筒形タンク+縦の放熱ヒダ+上部の磁器製一次ブッシング2本(単相)。銘板の数字が容量kVA | PAS(箱形で放熱ヒダが無い)/高圧カットアウト(磁器の筒そのもの) |
| GR付PAS | 柱上の箱形開閉器に、本体直付けの制御ケーブルと別箱のSOG制御装置が付く | 制御装置をもたないただの開閉器/柱上変圧器(円筒タンク+放熱ヒダ) |
| LBS(限流ヒューズ付) | 相間・側面の絶縁バリヤ+各相の筒形ヒューズ。溶断時はストライカが飛び出す | DS(バリヤもヒューズも無い) |
| DS(断路器) | 刃と接触子だけで、ヒューズも消弧装置も付いていない | LBS(バリヤとヒューズ筒が付く) |
| 高圧限流ヒューズ(PF) | 筒形のヒューズ。ストライカ(動作表示棒)付きは動作時に開閉器を引き外す | 高圧カットアウトのヒューズ筒(磁器容器に収める別物) |
| VT(計器用変圧器) | 貫通穴が無く、一次側に限流ヒューズの付くタイプがある。二次110V | CT(中央に貫通穴) |
| CT(変流器・貫通形) | 中央の丸い貫通穴に一次導体を通す。二次5A・定格はAT表示 | VT(穴が無くヒューズ付き) |
| モールド変圧器 | エポキシ樹脂で注型した円筒コイルがむき出しに見える | 油入変圧器(タンクに収まりコイルが見えない) |
| 油入変圧器 | 絶縁油入りの鋼板タンク+放熱フィン。コイルは見えない | モールド変圧器(コイルが露出) |
| VCT | 電力量計と二次配線でつながる箱形の変成器。電圧・電流の両方を変成する | 単体のVT・CT(片方しか変成しない) |
| 高圧カットアウト(PC) | 磁器製の筒。ヒューズ溶断時に赤色表示が飛び出す(箱型)か筒が下がる(筒型) | 断路器(DS。溶断表示という変化が現れない) |
| 避雷器(LA) | ひだ状の傘(スカート)が連なる磁器・ポリマーの円筒形 | 避雷針(屋上の尖った棒。守る対象が違う) |
| 耐圧防爆形照明器具 | 厚い硬質ガラス+金属製のガードネット+肉厚な金属ボディという重厚さ | 一般的な照明器具(薄く軽いカバー) |
| 圧縮端子 | 施工跡の断面が六角形(ダイス2組で全周を圧縮) | 圧着端子(丸・半月状の圧痕) |
| 医用コンセント | 形状は同じで、色(白・赤・緑)が電源系統を表す | 電圧・電流の区分だと誤読しやすい一般の色分けコンセント |
箱に入った高圧機器を、3つの問いで仕分ける
キュービクルの写真は「灰色の箱」が並んでいて、名前が出てこない。 だが箱の外に何が付いているかを3つ確認すれば、たいてい1つに絞れる。
問い1 — 操作するハンドル(レバー)が付いているか
付いていれば、それは人が入り切りする機器だ。LBS・DS・VCBなどの開閉器系になる。 VCT・変圧器・直列リアクトルには操作ハンドルが無い。これらは「切り換える」機器ではないからだ。
問い2 — 高圧側のブッシング(がい管)は何本か
箱の上や側面から突き出す磁器の筒がブッシングだ。本数が機器を語る。
| 本数 | 想定される機器 |
|---|---|
| 一次3本+二次3本など、上下(前後)に分かれて出る | VCT(一次を受けて二次を計器へ渡す) |
| 一次3本・二次側は端子箱 | 三相変圧器 |
| 3本が横一列で、それぞれに開閉部が付く | LBS・DS |
問い3 — 銘板・表示に何と書いてあるか
写真問題では「受電」「電源」「OFF/入」などの表示や、計器用の端子が写り込む。 VCTは取引計量用なので、電力量計へ向かう二次側の小さな端子箱・端子カバーを持つ。
「箱形だからVCT」「ハンドルがあるからVCT」と決めると外す。 ハンドルの有無 → ブッシングの出方 → 二次側が何につながるか、 この順に3つ確かめれば、名前を思い出せなくても消去法で残る。
現場の写真を、名前で読めるようになる
キュービクルの点検写真や工事現場の記録写真は、慣れないうちはどれも同じような灰色・白色の機器の集まりに見える。だが「壊れたときにどう変化するか」「他のどれにも無い1点はどこか」という見方を持っていると、同じ写真が急に情報を持ち始める。
今日試せることとして、もし高圧受電設備の点検写真や、工事現場の記録写真を見る機会があれば、まず「この機器にしか無い部品・色・形はどこか」と1つだけ問うてみるといい。磁器の筒に赤い印があれば高圧カットアウトの溶断、ひだ状の傘が連なる円筒があれば避雷器、というように、写真が現場の状態を語り始める。
この「決め手を1点だけ探す」という作法は、機器が新しくなっても使い回せる。太陽光発電や蓄電池設備が増えても、写真から機器を特定する基本のやり方は変わらない。むしろ新しい機器が増えるほど、名前を丸暗記するのではなく、外形の決め手から入る習慣のほうが長く役立つ。
冒頭の4枚の写真、それぞれ何を見れば名前が言えたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。