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電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 ・ 5 / 21

地絡保護(ZCT・GR・DGR) — 構内の事故が街を止めてしまう波及事故

読み終えると、こうなる

街のどこかで『一軒の漏電で周辺一帯が停電した』というニュースを見たとき、その裏で何が起きたかまで想像できるようになる。

  • 電柱の構内第1号柱にPAS(区分開閉器)が付いているかどうかを見て、その建物の停電対策の水準を読み取れる
  • 『地絡を検知した』という結果だけでは、事故が構内か構外かを判定できないと見抜ける
  • 1つのビルの漏電が周辺一帯を止めた事故を、原因が高圧引込ケーブルとPAS等に集中する『波及事故』として仕分けられる
考えてみよう

ニュースで「1つのビルの漏電が原因で、周辺一帯が停電した」という報道を見たことがあるかもしれない。停電したビルだけならまだ分かる。だが、そのビルとは何の関係もない、同じ電柱の配電線につながっているだけの他の建物まで、なぜ巻き込まれて停電するのか。

1軒の家の中でブレーカーが落ちても、隣の家まで停電することは普通ない。それなのに、高圧で受電しているビルの事故は、なぜ街全体に広がってしまうのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この事故がなぜ広がるのか、そしてそれを止めるための仕組みを説明できるようになっている。

このような事故には名前がついている。波及事故 だ。工場・ビルなどの自家用電気工作物の故障が原因で、電力会社の配電線が停止し、同じ配電線につながる他の需要家まで広範囲・長時間停電させる事故を指す。損害賠償が1千万円を超える事例もある。

波及事故の原因は、統計上ある2つの場所に集中している。約7割が高圧引込ケーブル(水トリー劣化)とPAS・PGS・UGSといった区分開閉器の事故 で、その多くが地絡だ。つまり、構内で起きた小さな地絡事故を、そこで止められずに配電線側まで伝えてしまうことが、街全体を止める引き金になっている。

これを止めるのが、地絡を検出して構内だけを切り離す一連の機器だ。

  • ZCT(零相変流器 — 三相の電流をまとめて貫通させ、平常時はゼロになるはずのベクトル和(零相電流=地絡電流成分)だけを検出する。地絡電流は数A以下と小さく、通常のCTでは負荷電流に埋もれて検出できないため、地絡だけを選択的に拾う専用のセンサーになる
  • GR(地絡継電器 — ZCTが検出した零相電流が整定値(代表的な整定例として200mA整定が挙げられる)を超えたら、PASやLBS・CBを引き外す
GRともらい動作/DGRの方向判別 構内 配電線(構外) ZCT(地絡電流を検出) GR 大きさだけで判定 DGR 電流+電圧で方向判定 構外事故でも動く (もらい動作) 構内事故のときだけ 動作する ZPD(零相電圧)を追加して方向を見るのがDGR GRは大きさだけで判定し構外事故にも反応しうる。DGRは方向を見て構内事故だけに反応する(自作の概念図)
GRは「地絡が起きた」ことは検出できても、「どちら側で起きたか」までは分からない。構内の高圧ケーブルが長く対地静電容量が大きい設備では、構外(配電線側)の事故で流れ込んだ充電電流にまでGRが反応してしまうことがある。これが**「もらい動作」** だ。つまり、地絡を検出する装置が、身に覚えのない事故にまで反応してしまう。この弱点を補うのが **DGR(地絡方向継電器)** で、ZCTに加えて零相電圧(ZPD)も検出し、両者の位相から地絡が構内側か構外側かを判別して、構内事故のときだけ動作する。充電電流がGRの感度電流の半分以上になるような設備では、DGR方式が良いとされている。

地絡と短絡で、PASの挙動はまったく違う — SOG方式

GR付PAS・UGSの多くは、SOG(過電流ロック方式) と呼ばれる方式で動作する。ここで押さえておきたいのは、地絡事故と短絡事故で、PASの挙動がまったく違う という点だ。

  • 地絡事故のとき — 内蔵ZCT等が地絡(零相電流)を検出し、PASが即時にトリップして構内を切り離す
  • 短絡事故のとき — 短絡電流はPAS(負荷開閉器)の遮断能力を超えているため、PASは自分では遮断しない。ロック電流以上の過電流を検出すると、開閉器を「ロック」(開放禁止・トリップを蓄勢)し、配電用変電所側の遮断器が動作して電路が無電圧になったことを確認してから自動的に開放する
SOG方式 ― 地絡と短絡で動作が分かれる 地絡 ZCTが検出 PASが即時トリップ 構内を切離 短絡 過電流検出 PASはロック (開放せず・蓄勢) 変電所の遮断器が動作→無電圧 PASが自動開放(事故点は切離済み) 地絡は即時トリップ、短絡は自分で切らずロックして無電圧確認後に開放する(自作の概念図)
なぜ短絡だけ挙動が違うのか。理由は単純で、**PASもUGSも「負荷開閉器」であり、短絡電流のような巨大な電流を遮断する能力を持っていない。** 遮断能力のない開閉器が短絡電流を無理に切ろうとすれば、開閉器自体が損傷・爆発する危険がある。そこでSOG方式は、短絡電流を検出した瞬間に「開くのではなく、開かないようにロックする」。ロックしたまま待ち、配電用変電所側の遮断器が上位で事故を遮断して電路が無電圧になったことを確認してから、はじめて自動的に開放する。電力会社が再送電するころには、事故点はすでにPASで切り離されている――「切る」ではなく「切らずに待つ」という一見逆説的な動作が、遮断能力のない開閉器を安全に使うための工夫になっている。

こうした保護は、需要家の継電器が配電用変電所の継電器より先に動作してはじめて意味を持つ。事故点に一番近い需要家側の保護装置が上位(配電用変電所)より先に動作するように動作電流・動作時間を整定することを保護協調と呼ぶ。需要家のGR・DGRが変電所側の地絡保護より早く構内事故を切り離せば、停電は構内だけで収まる。この整定が崩れると、構内の小さな地絡が街全体を止める波及事故に発展してしまう。

受電点の負荷側電路への地絡遮断装置の施設は、電技解釈第36条第4項(36-1表)で求められている。メーカーが勧めているだけの任意設置ではなく、法令の技術的細目に根拠を持つ設備だ。

ただし36-1表の読み方には、もう一段ある。この表は三欄構造で、左欄が「地絡遮断装置を施設する箇所」、中欄が対象の電路、そして右欄が「地絡遮断装置を施設しなくても良い場合」の欄になっている。左欄「他の者から供給を受ける受電点」の行を横に読むと、中欄は「受電点の負荷側の電路」、右欄には「他の者から供給を受ける電気を全てその受電点に属する受電場所において変成し、又は使用する場合」という適用除外が置かれている。

条文の根拠を答える設問では第36条第4項(36-1表)でよいが、**36-1表には右欄=除外の欄がある**ことまで持っておく。三欄をセットで覚えれば、「どの箇所に」「どの電路へ」「どんなときは要らないか」を並べて聞かれても迷わない。実務でGR付PAS・UGSが事実上の標準になっているのは、条文の義務だけでなく、波及事故を防ぐための保安上の要求が重ねてかかっているからだ。

街の停電のニュースを、原因まで想像できるようになる

この仕組みが分かると、街のどこかで停電のニュースがあったとき、「どこかの建物の高圧設備で地絡が起きて、それがGR・DGRで止め切れなかったのかもしれない」と、原因まで想像できるようになる。今日試せることとして、自分の街や職場付近の電柱を見上げ、構内第1号柱にPAS(区分開閉器)が設置されているかどうかを確認してみるといい。GR・DGR付のPASが、街の停電を局所化する最前線になっている。

波及事故の防止が繰り返し強調されるのは、原因が高圧引込ケーブルの経年劣化とPAS等の設備の老朽化に集中しているからだ。ケーブルは製造後20年程度、PASは設置後10年を超えると事故が増える傾向にあり、計画的な設備更新がそのまま街全体の停電リスクを下げることにつながる。

太陽光発電や蓄電池を高圧で建物に連系する工事でも、この地絡保護の考え方は避けて通れない。新しく増える発電・蓄電設備が、既存のGR・DGRの整定や保護協調を崩さないようにすることも、これからの現場で求められる視点になる。

冒頭の疑問——1つのビルの事故がなぜ街を止めるのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. GRとDGRの違いを、検出する電気量の種類ではなく感度の高さの違いだと思わせる

    なぜ引っかかる『DGRのほうが高性能』という漠然としたイメージから、単に感度が良い上位版だと誤解しやすい

    見破り方GRは零相電流の大きさだけで判定し、DGRは零相電流に加えて零相電圧(ZPD)も見て方向(位相)を判別する、という検出量の違いで区別する

  2. 波及事故の主な原因を、変圧器の故障や需要家の過負荷にすり替える

    なぜ引っかかる『事故』と聞くと大きな機器の故障を連想しやすいが、実際の統計では別のところに原因が集中している

    見破り方波及事故の原因構成比は、高圧引込ケーブル(水トリー劣化)とPAS等の事故で約7割を占めるという具体的な数字を基準に置く

  3. GRの『もらい動作』を、構内の別の事故だと誤解させる

    なぜ引っかかる『動作した』という結果だけを見ると、構内で何か地絡が起きたと考えるのが自然に思える

    見破り方もらい動作は、構外(配電線側)の事故で流れた充電電流にGRが反応してしまう現象だと固定して覚える。構内か構外かを区別できるのがDGR

  4. 受電点の地絡遮断装置の施設義務を任意設置だと誤答させる

    なぜ引っかかる避雷器の施設義務(500kW以上)と混同し、地絡遮断装置も容量条件付きの任意設置だと思い込みやすい

    見破り方受電点の地絡遮断装置の根拠は電技解釈第36条第4項(36-1表)だと区別する。避雷器のような容量条件で切り分ける規定ではない。あわせて、36-1表の右欄に『施設しなくても良い場合』の欄があることも確認しておく

  5. GR付PAS(SOG)が短絡事故でも地絡と同じように自分で遮断すると誤答させる

    なぜ引っかかる『地絡を検出して開放する』という地絡時の動作を、そのまま短絡事故にも当てはめてしまいやすい。PAS・UGSは負荷開閉器であり、そもそも短絡電流を遮断する能力を持たない

    見破り方事故の種類で挙動を分けて覚える。地絡事故はZCTが検出して即時トリップ。短絡事故はPAS自身が切らずに『ロック』(開放禁止・トリップを蓄勢)し、配電用変電所の遮断器が動作して電路が無電圧になったのを確認してから自動的に開放する、という順番を守る

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. ZCT(零相変流器)は三相の電流をまとめて貫通させ、平常時ゼロになるはずのベクトル和(零相電流=地絡電流成分)だけを検出する
  2. GR(地絡継電器)はZCTが検出した零相電流の大きさだけで判定するため、構外事故の充電電流でも動く『もらい動作』がある
  3. DGR(地絡方向継電器)はZCTに加え零相電圧(ZPD)も検出し、位相から地絡が構内か構外かを判別して構内事故のときだけ動作する
  4. 受電点への地絡遮断装置の施設は電技解釈第36条第4項(36-1表)に根拠がある。36-1表は三欄構造で、右欄に『施設しなくても良い場合』(受電した電気を全てその受電場所で変成し、又は使用する場合)という適用除外が置かれている
  5. 波及事故の原因は約7割が高圧引込ケーブルとPAS等(区分開閉器)で、地絡によるものが多い
  6. GR付PAS・UGSのSOG(過電流ロック方式)動作は事故の種類で挙動が違う。地絡事故では内蔵ZCT等が検出して即時トリップし構内を切り離すが、短絡事故ではPAS自身に短絡電流を遮断する能力がないため、ロック電流以上を検出すると開閉器を『ロック』(開放禁止・トリップを蓄勢)し、配電用変電所の遮断器が動作して電路が無電圧になったのを確認してから自動的に開放する
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