激しい雷雨があった翌朝、近所のビルのキュービクルだけが壊れて停電していた。同じ地域に落ちた同じ雷なのに、隣のビルは何ともなかった。何が明暗を分けたのか。
しかも後で分かったのは、そのビルの受電電力は500kWに届いておらず、法律上は雷対策の設備を必ず付けなければならない建物ではなかった、ということだ。義務がないのに壊れる。これはどういうことなのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、義務の有無と、実際の危険の有無が別の話であることを説明できるようになっている。
雷サージ(雷による異常過電圧)は、電路を伝って機器の絶縁を破壊することがある。これを防ぐのが避雷器(LA) だ。雷サージなどの異常過電圧を制限電圧まで抑えて大地に流し、機器を守る。
この避雷器の施設には、法令上の義務がある。電技解釈第37条第1項は、高圧・特別高圧の電路の一定の箇所(またはこれに近接する箇所)への避雷器の施設を求めており、第一種の学習で重要なのは第三号だ。
高圧架空電線路から電気の供給を受ける受電電力が500kW以上の需要場所の引込口
つまり、架空の高圧配電線から受電し、かつ受電電力が500kW以上の需要場所には、避雷器の施設が法令上の義務になる。第2項には緩和規定があり、直接接続する電線が短い場合などは省略が認められる。地中引込(架空電線路から供給を受けない場合)は、そもそもこの号の義務の対象ではない。
避雷器と混同しやすいのが、建物の屋上に立つ避雷針だ。避雷針は建物への直撃雷を受け止めて大地に導く設備で、避雷器とは守る対象がまったく違う。避雷器は電路に侵入してくる雷サージから受電設備の機器を守るものであり、直撃雷そのものへの対策ではない。
避雷器の設置には、電技解釈第37条第3項によりA種接地工事が必要になる。避雷器が吸収した過電圧を確実に大地に逃がすための接地で、他の機器の接地種別(B種・C種・D種)とは区別して覚えておきたい。
E14という表記の出典は、条文が2つに分かれている
単線結線図の避雷器の接地には、たいてい「E14」という傍記が付く。E14の「E」は接地(Earth)を、「14」は接地線の太さ14mm²を表す。ここで見落としやすいのが、この2つの数字が、実は別々の根拠から来ているという点だ。
- A種接地工事という「種別」を要求しているのは電技解釈 — 第37条第3項が、高圧・特別高圧の避雷器にA種接地工事を施すよう定めている
- 14mm²という「太さ」を具体的に定めているのは電技解釈ではなく、高圧受電設備規程 — 電技解釈第17条第1項第二号ロが接地線に求めているのは「引張強さ1.04kN以上の容易に腐食し難い金属線又は直径2.6mm以上の軟銅線」という条件で、14mm²という数値はここには出てこない
なお、第17条にmm²表記がまったく無いわけではない。同じ第二号のハが、移動して使用する電気機械器具の可とう性を必要とする部分について「多心キャブタイヤケーブルの遮へいその他の金属体であって、断面積が8mm²以上のもの」と定めている。mm²が条文に無いのではなく、避雷器の接地線に使う14mm²が条文に無い、と対象を限って覚える。
避雷器の電源側に、ヒューズを入れてはいけない理由
避雷器のまわりでもう1つ押さえておきたいのが、避雷器の電源側(上位)に過電流保護のヒューズや開閉器を施設してはならないという実務上の要求だ。高圧カットアウトを介して避雷器を接続する場合も、ヒューズ筒にはヒューズではなく素通し線(銅線)を入れるのが実務になっている。
ここで例外になるのが断路器(DS)だ。断路器を介して避雷器を施設すること自体は標準的な実務であり、禁止の対象ではない。保守点検・絶縁測定のときに避雷器を電路から切り離す目的で使われ、常時は閉(投入)にしておく。ヒューズのように電流の大きさに応じて自動的に「切れて」しまう機器ではなく、人が意図的に操作しない限り開路しないという点が、禁止対象のヒューズ・開閉器との決定的な違いになる。
ここで注意したいのは、この禁止事項の出典だ。電技解釈第37条は、避雷器の施設箇所(500kW以上の需要場所の引込口など)とA種接地工事を定めるのみで、「ヒューズを施設してはならない」という明文は条文には無い。禁止の理由(溶断による保護機能の喪失)はメーカーの技術資料等で広く一致しているが、条番号を挙げて答える場面では、施設箇所・接地は電技解釈、ヒューズ禁止は実務・規程上の要求、と出典を分けて扱う必要がある。E14の出典が2階建てだったのと同じ構造が、ここにも表れている。
キュービクルの銘板の「LA内蔵」という3文字の重み
避雷器の位置づけが分かると、キュービクルのカタログや銘板にある「LA内蔵」という表示が、単なるオプションではなく、義務の有無にかかわらず建物を雷害から守る保険のような設備だと理解できるようになる。今日試せることとして、天気予報で落雷の可能性が伝えられた日には、身の回りにある高圧受電設備が架空引込かどうかを気にしてみるといい。柱上のPASから直接ケーブルが降りてきていれば架空引込、地面から立ち上がっていれば地中引込であることが多い。
500kWという数字が法令に置かれているのは、規模が大きい需要場所ほど停電の影響も損害も大きくなるため、最低限の防護を義務化する必要があったからだ。だが規模の小さい建物が雷から無縁というわけではなく、そこは需要家自身の判断に委ねられている。
太陽光発電や蓄電池を高圧で連系する設備では、パワーコンディショナなど雷サージに弱い電子機器が増える。避雷器の要否を義務の有無だけで判断せず、実際のリスクで考える視点は、これから増えるこうした設備の設計・提案でも欠かせなくなる。
冒頭のビル、なぜ義務がないのに壊れたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。