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電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 ・ 7 / 21

高圧進相コンデンサと直列リアクトル — 力率改善と高調波

読み終えると、こうなる

電気料金の明細にある『力率割引』が、キュービクルの中の静かな箱の働きそのものだと言い当てられるようになる。

  • 動いていないように見える進相コンデンサ(SC)が、遅れ力率を改善して電気代に関係していると言い当てられる
  • 進相コンデンサを単体で設置してよいか判断するとき、直列リアクトル(SR)の併用が原則だと確認できる
  • 直列リアクトルの容量表示(6%・13%)を、料金の割引率ではなくリアクタンスの割合として読み取れる
  • 三相の進相コンデンサの無効電力を求めるとき、1相分を切り出してから3倍するという手順を、Δ結線・Y結線どちらでも踏み外さずに計算できる
考えてみよう

キュービクルの中に、モーターのように回るわけでも、変圧器のように熱を持つわけでもない、静かな箱がある。高圧進相コンデンサだ。電気を「使っている」様子がまったくない。

それなのに、この箱を設置すると電気代が下がると言われる。何もしていないように見える箱が、なぜ料金に効くのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この静かな箱が電気代のどこに効いているのかを説明できるようになっている。

答えは、電力の質、正確には力率にある。誘導電動機のような負荷は、電圧に対して電流の位相が遅れる「遅れ力率」の状態で電気を使う。この遅れの分だけ、実際に仕事をしない無効電力が電線を余分に流れ、電力損失を増やし、契約上の基本料金にも不利に働く。

高圧進相コンデンサ(SC) は、この遅れ力率を進み方向に補償する。誘導電動機などの遅れ負荷が生む無効電力を打ち消すことで力率を改善し、電力損失を減らし、力率割引という形で基本料金にも良い影響を与える。開閉装置(LBSやPCなど)を介して高圧母線に接続される。

コンデンサ単体では、この話は終わらない。力率改善という主役に見えるコンデンサだが、実はその隣に置かれる小さな部品がないと、安全には成立しない。**主役に見える箱を守っているのは、脇役に見える小さなコイルのほうだ。**

その小さなコイルが 直列リアクトル(SR) だ。SCに直列に入れることで、次の2つの問題を防ぐ。

  • コンデンサをスイッチで投入する瞬間に流れる突入電流の抑制
  • 電源に含まれる第5高調波に対して回路を誘導性にし、高調波が拡大するのを防ぐ
SCとSRは必ずセットで入れる 母線 SR SC 突入電流の抑制 高調波拡大の防止 力率を進み方向に 改善(電気代に関係) JIS C4902:SCにはSRを直列に付けるのが原則 直列リアクトル(SR)は必ずコンデンサ(SC)の電源側に直列で入り、コンデンサ単体設置のリスクを防ぐ(自作の概念図)

JIS C4902は、コンデンサに直列リアクトルを付けて使うことを原則としている。SRの容量は、コンデンサ容量の6%または13%を原則として施設する。6%の意味は、コンデンサ容量の6%に相当するリアクタンスを持たせることで、第5高調波に対して合成回路を誘導性にする、というものだ。SCだけを設置すると、この抑制がないまま突入電流や高調波の問題を抱え込むことになる。

この6%・13%という数値の出典は、JIS C 4902-2(高圧及び特別高圧進相コンデンサ並びに附属機器―第2部:直列リアクトル)だ。同規格は「%リアクタンス」(リアクトルのリアクタンスの、コンデンサのリアクタンスに対する比)という考え方を定義し、6%と13%の2種類を規定している。使い分けは、回路に含まれる高調波の種類による。第5次高調波が主体になる一般的な回路では6%、第3次高調波が有意に含まれる回路では13%を選ぶ、という整理だ。つまり「6%」は単なる実務上の慣行ではなく、規格が2種類の値を規定したうえでの選択だと理解しておく。

三相の無効電力 Q=V²/X ― Δ結線とY結線で係数が変わる

進相コンデンサの容量を計算するとき、単相回路なら無効電力はQ=V²/X(Vは電圧、Xはリアクタンス)で求まる。だが、これを三相の進相コンデンサにそのまま当てはめると、結線方式によっては答えが3倍ずれる。

三相の計算で踏み外さない手順は1つだけだ。**まず1相分を切り出して、その相にかかる電圧(相電圧Ep)でQ1=Ep²/Xを求め、最後に3倍する。** ここで、Δ結線かY結線かによって、相電圧Epと線間電圧Vの関係が変わる。

Δ結線では、コンデンサの各相(各素子)に線間電圧Vがそのままかかる(Ep=V)。1相分の無効電力はQ1=V²/Xで、三相合計はQ=3V²/X

Y結線では、各相にかかる電圧は線間電圧の1/√3(Ep=V/√3)になる。1相分はQ1=(V/√3)²/X=V²/(3X)で、三相合計はQ=3×V²/(3X)=V²/X

つまり、見慣れた「Q=V²/X」という式は、**Y結線(または単相)の場合の答えの形**であって、Δ結線の三相コンデンサに使うと3倍の差が出る。コンデンサならX=1/(2πfC)なので、Δ結線ではQ=3×2πfC×V²=6πfCV²とまで書き換えられる。落とし穴は2つ、**「三相でも係数の3を付け忘れる」ことと、「Δ結線かY結線かの前提を確認しない」こと**だ。必ず1相を切り出してから3倍する、という順番を崩さないようにする。

SRがやらないこと — 残留電荷の放電は別の部品の仕事

直列リアクトル(SR)の役割は2つだった。投入時の突入電流を抑えることと、 第5調波などの高調波の拡大を防ぐことだ。試験では「誤っているもの」を選ばせる形で、 ここにSRの仕事ではないものが混ぜられる。

いちばんよく混ぜられるのが「コンデンサの残留電荷を放電する」だ。これはSRの役割ではない。

コンデンサは電源を切ったあとも電荷を蓄えたままで、そのまま触れば感電する。 だからこれを抜く専用の部品が別に付いている。放電コイルまたは放電抵抗だ。

部品役割
直列リアクトル(SR)突入電流の抑制、高調波(第5調波等)の拡大防止
放電コイル/放電抵抗電源開放後に残留電荷を放電し、感電を防ぐ
SRは**コンデンサと直列**に入り、放電コイルは**コンデンサと並列**に入る。 つなぎ方が違うので役割も違う、と形で覚えておくといい。

直列に入るものは電流の通り道に立ちはだかるので、流れを抑える仕事(突入電流・高調波)。 並列に入るものは電荷の逃げ道を作るので、抜く仕事(放電)。 「SRが放電もしてくれる」という選択肢は、この構造から見て成り立たない。

電気料金の明細から、力率という言葉が見えてくる

この仕組みが分かると、電気料金の請求内訳にある「力率割引」や「力率割増」といった項目が、単なる料金の一項目ではなく、キュービクルの中にあるあの静かな箱の働きそのものだと分かるようになる。今日試せることとして、職場や取引先の電気料金の明細を目にする機会があれば、力率に関する項目がどう表示されているかを確認してみるといい。

この仕組みが標準化されているのは、無効電力が増えるほど発電所から需要家までの電線に余分な電流が流れ、社会全体の送電ロスが増えるからだ。1つの需要家が力率を改善することが、電力系統全体の効率にもつながっている。

太陽光発電のパワーコンディショナやEV充電設備、蓄電池のインバータは、いずれも高調波を発生させる電子機器だ。これらが増えるこれからの受電設備では、進相コンデンサと直列リアクトルの組合せがもともと持っていた「高調波を拡大させない」という視点が、単なる力率改善以上に重要な意味を持つようになっていく。

冒頭の疑問——何もしていないように見える箱が、なぜ電気代に効くのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. コンデンサ(SC)単体を設置すれば力率改善として十分だと誤答させる

    なぜ引っかかる力率改善という目的だけを見ると、コンデンサさえあれば成立すると思い込みやすい

    見破り方SC単体設置は、コンデンサ投入時の突入電流や高調波拡大という問題を残す。JIS C4902はSRとの併用を原則としている、という前提とセットで覚える

  2. 直列リアクトル(SR)の役割を『力率改善』そのものだと誤答させる

    なぜ引っかかるSCとSRが常にセットで語られるため、両方が力率改善の主役だと誤解しやすい

    見破り方力率を改善するのはSC、突入電流の抑制と高調波拡大の防止を担うのはSRと役割を分けて覚える

  3. SRの6%・13%という数字を、コンデンサ容量そのものの単位だと誤読させる

    なぜ引っかかるパーセントという表記だけを見ると、コンデンサ全体に対する割引率のような別の意味に読めてしまう

    見破り方6%・13%は、コンデンサ容量に対する直列リアクトルのリアクタンスの割合だと確認する。リアクトルの大きさを決める数値であり、料金の割引率ではない

  4. 6%と13%のどちらを選ぶべきかを、回路の大きさや電圧の高さで判断させる

    なぜ引っかかる数値が大きい13%のほうが『より強力な回路』『より高圧の回路』向けだと連想しやすい

    見破り方6%・13%の使い分けは、回路の規模や電圧ではなく、その回路に含まれる高調波の種類で決まるとJIS C 4902-2が規定している。第5次高調波が主体の一般的な回路では6%、第3次高調波が有意に含まれる回路では13%を選ぶ、という基準に立ち返る

  5. 三相の進相コンデンサの無効電力を、結線(Δ・Y)を確認せずQ=V²/Xの式にそのまま線間電圧Vを代入させる

    なぜ引っかかる単相回路のQ=V²/Xという式を、そのまま三相にも当てはめられると思い込みやすく、Δ結線とY結線で係数が違うことを見落とす

    見破り方必ず1相分を切り出す手順を踏む。Δ結線は各相に線間電圧Vがそのままかかる(Ep=V)ためQ=3V²/X、Y結線は相電圧がEp=V/√3になるためQ=V²/X。『Q=V²/X』という式が使えるのはY結線(または単相)の場合だけで、Δ結線には3倍の係数が付くと確認してから計算する

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用2問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 高圧進相コンデンサ(SC)は遅れ力率を進み方向に補償して力率を改善し、電力損失と基本料金(力率割引)を改善する
  2. 誘導電動機など遅れ負荷の無効電力を打ち消すのがSCの役割。開閉装置(LBS/PCなど)を介して母線に接続する
  3. SCだけを設置すると、コンデンサ投入時の突入電流や高調波の拡大という問題が起こる
  4. 直列リアクトル(SR)はSCに直列に入れ、突入電流を抑制し、第5高調波に対して回路を誘導性にして高調波拡大を防ぐ。JIS C4902はSRとの併用を原則とする
  5. SRの容量は、コンデンサ容量の6%または13%を原則として施設する。出典はJIS C 4902-2(高圧及び特別高圧進相コンデンサ並びに附属機器―第2部:直列リアクトル)。回路に含まれる高調波が第5次中心なら6%、第3次高調波が有意な回路では13%を選ぶ
  6. 三相のコンデンサの無効電力は、1相分を切り出してQ1=Ep²/X(Epは相電圧)を求め、3倍して全体のQ=3Ep²/Xとするのが基本の手順。Δ結線は各相に線間電圧Vがそのままかかる(Ep=V)ためQ=3V²/X、Y結線はEp=V/√3のためQ=V²/X。『Q=V²/X』という式はY結線(または単相)の形であり、Δ結線の三相コンデンサにそのまま使うと3倍の差が出る
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