毎月届く検針票を見て、ふと思う。キュービクルの中には計器盤らしきものが見えるのに、6600Vという高い電圧をどうやって普通の電圧計や電力量計で測っているのだろうか。
家庭用のテスタを高圧線に直接当てれば、テスタはもちろん人間も壊れてしまう。それなのに、計器盤には見慣れた形の針や数字がある。高圧と、計器という繊細な機械との間には、何があるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、高圧をどうやって計器で扱える大きさに変えているかを説明できるようになっている。
答えは、電圧と電流をそれぞれ小さく変成する専用の機器にある。
- VT(計器用変圧器) — 6600Vのような高圧を、計器・継電器が扱える小さな電圧に変成する。二次電圧は110Vが標準
- CT(変流器) — 数百Aにもなる大電流を、小さな電流に変成する。二次電流は5Aが標準
VT・CTはどちらも、二次側を一次回路から電気的に絶縁したうえで、比例した小さな値を取り出す仕組みだ。6600Vや大電流をそのまま電圧計・電流計・OCR(過電流継電器)につなぐことはできないため、測るため、そして保護継電器を働かせるために、まずこの2つで値を落とす。
ここでもう1つ、混同しやすい機器がある。VCT(電力需給用計器用変成器) だ。VT・CTが需要家自身の計測・保護のための機器であるのに対し、VCTはVTとCTを1つの箱にまとめ、取引用電力量計と組み合わせて、電力会社との料金取引の根拠となる受電電力量を計量する専用機器になる。所有・封印は電力会社側にあり、需要家は触れない。同じ「高圧を小さくする変成器」でも、VT・CTは需要家が読む値、VCTは電力会社が読む値、という違いがある。
もう1点、実務でも試験でも定番の注意点がある。CTの二次側は、通電中に開放してはならない。CTは一次側の電流に応じた磁束を発生させ続ける機器で、二次側を開放すると二次側に高電圧が発生し、危険な状態になる。点検で電流計を外すときは、必ず先に短絡片(ショートバー)で二次側を短絡してから作業する。
CTの端子記号 — K・Lは電源側と負荷側、短絡するのはCT側
CTの一次側・二次側には、それぞれ決まった端子記号が付く。一次側はK・L、二次側はk・l(JIS C 1731-1)。Kが電源側、Lが負荷側に接続する端子で、Kに対応する小文字のkが二次側でも同じ極性の端子になる。
覚え方はシンプルだ。大文字(K・L)が一次側、小文字(k・l)が二次側。KとLはアルファベット順のまま「電源→負荷」の向きに対応している。K・L逆接続でも単純な電流計の指示自体は変わらないが、電力計・力率計・方向性を持つ継電器(DGRなど)は極性を取り違えると誤動作する。
配線図でこの記号の組合せを問う出題もあるが、実務でより重要なのは試験時の作業手順だ。過電流継電器(OCR)などの単体試験でCT二次回路を切り離すときは、継電器側ではなくCT側の端子(k-l間)を短絡してから作業する。継電器側を短絡してもCT二次回路そのものは開放されたままで、CTの保護にはならない。守るべきはCTであり、短絡すべきもCT側だ、という対応関係を崩さないようにする。
VTの定格負担は、たった100VA程度しかない
VTを「変圧器」という名前だけで捉えると、一般の変圧器のように電力を供給できる機器だと錯覚しやすい。だが、VTの定格負担(二次側に接続してよい負荷の容量)は、一般に15・50・100・200VA程度と、電球1個分にも満たないほど小さい。これは、VTがそもそも計器・継電器を動かすためだけの機器であり、電力を送るための変圧器ではないからだ。
VTの一次(電源)側には、限流ヒューズを施設する。この目的は、VT内部で短絡故障が起きたときに、高圧電路からVTを速やかに切り離し、停電や短絡事故の拡大を高圧電路側に波及させないためだ。消防庁告示第7号の別図備考にも「VTに取り付けるヒューズは限流ヒューズを使用すること」という記述があり、実務上もこの一次側ヒューズは標準構成になっている。
本数は「2本×台数」で数える
試験で問われるのは、この限流ヒューズが何本要るかだ。数え方は難しくない。
VTは1台あたり2本。VTの一次巻線には両端があり、その両方を高圧電路から切り離せなければ 保護にならないので、各VTに2本ずつ入る。したがって——
| VTの構成 | 限流ヒューズの本数 |
|---|---|
| VT1台(単相) | 2本 |
| VT2台(V結線=V2V) | 4本 |
6.6kV三相3線式受電の標準構成はV結線のVT2台なので、一次側の限流ヒューズは計4本になる。 単線結線図では2台のVTが「V2V」と傍記された1つのだるま形にまとめて描かれ、その一次側に ヒューズの記号が1つだけ描かれることが多い。図の上でヒューズ記号が1つに見えても、実物は 4本——ここが引っかけどころだ。「図に1つだから2本」と数えると外す。
同じ数え方はCT側には使えない。CTの一次側にヒューズは入れない。CTは主回路の電流を そのまま測る機器で、一次側にヒューズを入れれば主回路を切ることになってしまうからだ。 ヒューズが要るのはVT側だけ、と対で覚えておくと混同しない。
本数と形は別々に問われる — VT用ヒューズは「細い」
配線図では「④の部分に施設する機器と使用する本数は」という聞かれ方をする。 選択肢にはヒューズの写真が2種類×本数2通りの計4つが並ぶ。つまり本数を当てても、 形を間違えれば点にならない。本数と形は別々の判断だと分けて構えておく。
見分けは、そのヒューズがどれだけの電流を流すために作られているかで決まる。
| 用途 | 流れる電流 | 外観 |
|---|---|---|
| VT(計器用変圧器)の一次側 | ごくわずか | 細身の筒。両端は小さなキャップ |
| 変圧器・コンデンサの保護(LBSに付くPF) | 数A〜数十A | 太い筒。端子が平たい板(タブ・刃形)になっているものが多い |
理由は単純だ。VTの定格負担は100VA程度しかない。6.6kV側から見れば一次電流はごく小さく、 そこに入れるヒューズも細くて済む。一方、変圧器やコンデンサを守るPFは負荷電流そのものを 流し続けるので、太くなり、端子も大きな電流を通せる板状になる。
VT・CT・VCTの台数と接地種別
6.6kV三相3線式で受電する設備の標準構成は、VTがV結線で2台1組(2台で三相の線間電圧をすべて測定できる)、CTが2台1組(R相・T相に設置し、2台で三相電流を測定できる)、そして取引用計量のために両者をまとめたVCT(電力需給用計器用変成器)が1台(電力量計と組み合わせ、一般に電力会社の財産)。
接地種別は、電技解釈第28条・第29条にはっきり定めがある。高圧計器用変成器の二次側電路はD種接地工事(特別高圧計器用変成器の二次側はA種接地工事)。機器の金属製外箱(外箱がない計器用変成器は鉄心)は、29-1表によりA種接地工事。つまり「6.6kVのVT・CTの二次側はD種、外箱・ケースはA種」という2段構えの接地になる。二次側は人が直接触れる可能性がある低圧側の保護、外箱は高圧機器そのものの保護、と目的が違う点まで押さえておくと、接地種別を取り違えにくい。
変圧器とCTが直列に並ぶと、比が2段になる
配電理論と受電設備がつながる場所がここだ。変圧器で電圧を落とし、その回路にCTを入れて 電流を測る——この構成では、変圧比と変流比が2段でかかる。
たとえば 6300/210V の変圧器の二次側に負荷があり、その二次回路に 20/5A のCTが 入っているとする。二次側の負荷電流が分かっているとき、CTの二次に流れる電流は 次の順で出す。
- 負荷電流(変圧器二次側) をそのままCTの一次電流とみなす
- CT二次電流 = 一次電流 × (5/20) … 変流比の逆数を掛ける
逆に、変圧器の一次側電流を知りたければ、変圧比を使う。 変圧器は電力が保存されるので、一次電流 : 二次電流 = 二次電圧 : 一次電圧 (=巻数比の逆)になる。6300/210V なら比は30なので、一次電流は二次電流の 1/30だ。
- 電圧は変圧比のとおり(6300→210 は 1/30 に下がる)
- 電流は逆(二次で30倍に増える)
- CTは「大きな電流を小さくする」ので、二次電流は一次の 5/20 に減る
どちらに掛けるか迷ったら、CTの二次は必ず5A前後という標準値を思い出せばいい。 計算結果が数十Aになったら、比を逆に掛けている。
検針票の数字が、どの機器を通ってきたかが分かるようになる
VT・CT・VCTの違いが分かると、キュービクルの計器盤に並ぶメーターやランプが、それぞれ誰のための値なのかを見分けられるようになる。今日試せることとして、自宅や職場の電力量計(スマートメーター含む)を眺めてみるといい。低圧の需要家では変成器なしで直接計量しているが、高圧受電の建物ではその手前に必ずVCTが挟まっている、という構造の違いを意識できるようになる。
この仕組みが標準化されているのは、高圧をそのまま計測機器に触れさせないという安全上の要求と、電力会社との取引を公平に計量するという2つの目的を、別々の機器に分けて確実に果たすためだ。
太陽光発電や蓄電池を高圧で建物に連系する設備でも、発電した電力を正しく計量するために、この変成器の仕組みがそのまま使われる。これから増えていく高圧連系の設備を扱うときも、まずVT・CT・VCTのどれが、誰のために、何を測っているのかを整理するところから始めることになる。
冒頭の疑問——高圧をどうやって計器盤のメーターに変えているのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。