線間電圧200Vの回路に、Δ結線でつないだ3台の電熱器(ヒーター)がある。そのうち1台の内部素子が断線した。電源はそのままに、残りの2台を見ていると、奇妙なことに気づく。ある2台は暗いまま(電流が小さい)なのに、もう1台だけは断線前と変わらない明るさで光り続けている。
同じ電源、同じ種類のヒーターなのに、なぜ明るさに差が出るのか。3台とも同じように電流が減ってもよさそうなものなのに。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この明るさの違いを電流の比として自分で計算できるようになっている。
Δ結線は、二種電気工事士でも「線間電圧=相電圧、線電流=√3×相電流」という関係式として登場した。一種ではこの先——相電流と線電流をどう区別するか、そして1辺が断線したときに何が起きるかまで踏み込む。
相電流と線電流、集まる場所が違う
Δ結線では、3つの負荷が輪になって並び、その輪の角からR・S・Tの3本の線が出ている。負荷の中を流れる電流(相電流)と、線を流れる電流(線電流)は、実は「別の場所」を流れている電流だ。
線電流Ilは、輪の角(頂点)に集まる2つの相電流の「差」として現れる。Y結線の線間電圧が2つの相電圧の差だったのと、まったく同じ構造だ。だから線電流は相電流の√3倍になる。
Vl = Vp、Il = √3・Ip
Y結線のトピックで見たのと同じ計算(2つのベクトルの差を取り、大きさが等しい2辺のなす角120度の二等辺三角形を作る)を、今度は電圧ではなく電流に当てはめると、Il=2・Ip・cos30°=√3・Ipという同じ形の式が出てくる。Y結線では電圧に現れた√3が、Δ結線では電流に現れる――どちらも「2つのベクトルの差を取る」という同じ操作の結果であり、覚える式が2種類あるのではなく、同じ考え方を電圧に当てはめるか電流に当てはめるかの違いにすぎない。
負荷がインピーダンスZのとき、相電流はIp=Vl/Z(線間電圧=相電圧のため、そのまま使える)。線間電圧200V、1相あたりZ=10Ωなら、Ip=20A、Il=√3×20≒34.6A。全消費電力もP=3・Vp・Ip・cosθとP=√3・Vl・Il・cosθの両方で検算できる。負荷が純抵抗(cosθ=1)なら、P=3×200×20=12000W、あるいはP=√3×200×34.6≒12000Wと、どちらの式でも一致する。
1辺が断線すると何が起きるか
Δ結線の1つの負荷(1辺)が断線すると、その瞬間に回路の形が変わる。断線した辺の両隣にある2つの負荷は、生きている2本の線の間で直列につながった形になる。一方、断線した辺の対辺にあたる負荷は、そのまま単独で線間電圧を受け続ける。
たとえば1相あたりZ=10Ω、線間電圧200Vの回路で1辺が断線すると、単独側の負荷にはI=200÷10=20A(断線前と変わらない)、直列側の2つの負荷にはI=200÷20=10A(断線前の半分)が流れる。これが冒頭のヒーターの明るさの差の正体だ。
もし断線に気づかず、三相のままの公式(線電流=√3×相電流)を使い続けてしまうとどうなるか。断線後の回路はもう三相ではないので、この関係式自体が意味を失う。無理に当てはめると、たとえば単独側の20Aという電流を「相電流」だと勘違いして√3を掛け、34.6Aという実在しない値を出してしまうような誤りにつながる。断線という言葉が出た瞬間に三相の公式をいったん脇に置き、生きている2本の線の間の単相回路として描き直す、という手順を踏まなければ、どんなに計算が丁寧でも出発点から間違えることになる。
断線という言葉を見たら、公式をいったん手放す
Δ結線の断線パターンは、二種でも抵抗負荷限定で出題されていたが、一種ではインピーダンス(コイルや進相コンデンサを含む負荷)を組み込んだ形で再出題される。今日試せることとして、この記事の「断線後、単独側は変わらず・直列側は半分」という2行だけを、図なしで自分の言葉で説明できるか試してみるといい。それができれば、この論点は本番でも崩れない。
現場では、Δ結線の負荷の1相が焼損しても、残りの2相でモーターや設備が回り続けてしまうことがある。これが「単相運転」と呼ばれる故障状態で、気づかずに放置すると残りの巻線にも過大な電流が流れ、連鎖的な故障につながる。断線後の電流配分を計算で理解しておくことは、そのままこの種の故障を早期に見抜く力にもなる。電流計を3本の線すべてに当ててみて、1本だけ極端に値が違えば、それは三相のバランスが崩れているサインだと判断できる。
冒頭のヒーターの明るさの違い、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。