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電気に関する基礎理論 ・ 6 / 10

Δ結線の相電流・線電流と、1辺が断線したときの電流

読み終えると、こうなる

3つの負荷を輪につないだ装置の1つが壊れたとき、残りがどう動くかを『半分の力で我慢する』ではなく、実際の電流比で言い当てられるようになる

  • Δ結線の1本の線に集まる電流が、2つの相電流のベクトル差(√3倍)であることを図から読み取れる
  • Δ結線の1辺が断線した直後、直列になった2素子と単独で残った1素子の電流が2倍違うことを、インピーダンス込みで計算できる
  • 断線という言葉を見た瞬間に√3やΔの公式を手放し、生きている2本の線の間の回路として描き直せる
考えてみよう

線間電圧200Vの回路に、Δ結線でつないだ3台の電熱器(ヒーター)がある。そのうち1台の内部素子が断線した。電源はそのままに、残りの2台を見ていると、奇妙なことに気づく。ある2台は暗いまま(電流が小さい)なのに、もう1台だけは断線前と変わらない明るさで光り続けている。

同じ電源、同じ種類のヒーターなのに、なぜ明るさに差が出るのか。3台とも同じように電流が減ってもよさそうなものなのに。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この明るさの違いを電流の比として自分で計算できるようになっている。

Δ結線は、二種電気工事士でも「線間電圧=相電圧、線電流=√3×相電流」という関係式として登場した。一種ではこの先——相電流と線電流をどう区別するか、そして1辺が断線したときに何が起きるかまで踏み込む。

相電流と線電流、集まる場所が違う

Δ結線では、3つの負荷が輪になって並び、その輪の角からR・S・Tの3本の線が出ている。負荷の中を流れる電流(相電流)と、線を流れる電流(線電流)は、実は「別の場所」を流れている電流だ。

Δ結線の相電流と線電流 R S T 相電流Ip 相電流Ip 相電流Ip 線電流 Il = √3 × Ip 線電流は輪の角に集まる2つの相電流のベクトル差になる

線電流Ilは、輪の角(頂点)に集まる2つの相電流の「差」として現れる。Y結線の線間電圧が2つの相電圧の差だったのと、まったく同じ構造だ。だから線電流は相電流の√3倍になる。

Vl = Vp、Il = √3・Ip

Y結線のトピックで見たのと同じ計算(2つのベクトルの差を取り、大きさが等しい2辺のなす角120度の二等辺三角形を作る)を、今度は電圧ではなく電流に当てはめると、Il=2・Ip・cos30°=√3・Ipという同じ形の式が出てくる。Y結線では電圧に現れた√3が、Δ結線では電流に現れる――どちらも「2つのベクトルの差を取る」という同じ操作の結果であり、覚える式が2種類あるのではなく、同じ考え方を電圧に当てはめるか電流に当てはめるかの違いにすぎない。

負荷がインピーダンスZのとき、相電流はIp=Vl/Z(線間電圧=相電圧のため、そのまま使える)。線間電圧200V、1相あたりZ=10Ωなら、Ip=20A、Il=√3×20≒34.6A。全消費電力もP=3・Vp・Ip・cosθとP=√3・Vl・Il・cosθの両方で検算できる。負荷が純抵抗(cosθ=1)なら、P=3×200×20=12000W、あるいはP=√3×200×34.6≒12000Wと、どちらの式でも一致する。

1辺が断線すると何が起きるか

Δ結線の1つの負荷(1辺)が断線すると、その瞬間に回路の形が変わる。断線した辺の両隣にある2つの負荷は、生きている2本の線の間で直列につながった形になる。一方、断線した辺の対辺にあたる負荷は、そのまま単独で線間電圧を受け続ける。

断線後、2つの経路には同じ線間電圧200Vがかかるが、道の作りが違う。直列側は負荷が2つ分(Z+Z=2Z)なので電流はI=200/2Z、単独側は負荷が1つ分(Z)のままなのでI=200/Z。**同じ電圧を受けているのに、直列側は単独側のちょうど半分の電流しか流れない。**「3つとも均等に電流が減るはず」という直感は、この回路の作りの違いを見落としている。

たとえば1相あたりZ=10Ω、線間電圧200Vの回路で1辺が断線すると、単独側の負荷にはI=200÷10=20A(断線前と変わらない)、直列側の2つの負荷にはI=200÷20=10A(断線前の半分)が流れる。これが冒頭のヒーターの明るさの差の正体だ。

もし断線に気づかず、三相のままの公式(線電流=√3×相電流)を使い続けてしまうとどうなるか。断線後の回路はもう三相ではないので、この関係式自体が意味を失う。無理に当てはめると、たとえば単独側の20Aという電流を「相電流」だと勘違いして√3を掛け、34.6Aという実在しない値を出してしまうような誤りにつながる。断線という言葉が出た瞬間に三相の公式をいったん脇に置き、生きている2本の線の間の単相回路として描き直す、という手順を踏まなければ、どんなに計算が丁寧でも出発点から間違えることになる。

断線という言葉を見たら、公式をいったん手放す

Δ結線の断線パターンは、二種でも抵抗負荷限定で出題されていたが、一種ではインピーダンス(コイルや進相コンデンサを含む負荷)を組み込んだ形で再出題される。今日試せることとして、この記事の「断線後、単独側は変わらず・直列側は半分」という2行だけを、図なしで自分の言葉で説明できるか試してみるといい。それができれば、この論点は本番でも崩れない。

現場では、Δ結線の負荷の1相が焼損しても、残りの2相でモーターや設備が回り続けてしまうことがある。これが「単相運転」と呼ばれる故障状態で、気づかずに放置すると残りの巻線にも過大な電流が流れ、連鎖的な故障につながる。断線後の電流配分を計算で理解しておくことは、そのままこの種の故障を早期に見抜く力にもなる。電流計を3本の線すべてに当ててみて、1本だけ極端に値が違えば、それは三相のバランスが崩れているサインだと判断できる。

冒頭のヒーターの明るさの違い、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. Δ結線の断線後も、断線前の√3倍の関係をそのまま使い続けさせる

    なぜ引っかかる断線という言葉が出ても、それまで使っていた線電流=√3×相電流という関係式が習慣的に頭から離れず、そのまま数値を当てはめてしまう。断線した瞬間に回路は三相ではなくなっているため、この関係式はもう成立しない

    見破り方断線という言葉を見たら、三相の公式をいったん全部しまう。生きている2本の線の間に、どの負荷がどう繋がっているかだけを図に描き直してから計算を始める

  2. 断線後の2つの経路(直列側と単独側)を、同じ電流が流れると錯覚させる

    なぜ引っかかる断線前は3つの負荷に均等に近い電流が流れていたイメージが残るため、断線後も『残った負荷にはだいたい同じくらいの電流が流れる』と考えやすい。実際は直列になった2つの負荷と、単独で残った1つの負荷とでは、電流がちょうど2倍違う

    見破り方断線後にできる2つの経路を別々に図示する。直列側は抵抗(インピーダンス)が2つ分になるので電流は半分、単独側はそのままの抵抗なので電流はそのまま——同じ線間電圧が両方の経路にかかることを起点に、それぞれのZで別々に電流を計算する

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. Δ結線: 線間電圧=相電圧、線電流=√3×相電流。線に集まる電流は2つの相電流のベクトル差
  2. 負荷がインピーダンスZのとき、相電流Ip=Vl/Z(線間電圧=相電圧のため)
  3. Δの1辺が断線すると、断線した辺の両隣の2つの負荷が直列になり、もう1つは単独のまま線間電圧を受け続ける
  4. 断線後、直列側を流れる電流は線間電圧÷2Z、単独側は線間電圧÷Zとなり、ちょうど2倍の差が生まれる
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