工場の天井を見上げると、太い金属のダクトが3mおきに支持金物でつり下げられている。すぐ隣には、照明器具を差し込めるもっと細いダクトが、2mおきに支持されている。同じ「天井を這うダクト」なのに、支持する間隔の数字がなぜ違うのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、支持間隔の数字1つ1つに、ダクトの重さと役割が反映されていることを説明できるようになっている。
天井や壁を這うダクト・線ぴ工事には、バスダクト・金属線ぴ・ライティングダクトという3種類がある。名前も見た目も似ているが、条文の数字を並べてみると、それぞれが「何を通す配線か」によって数字が変わっていることが見えてくる。
バスダクト工事 — 大電流を流す、太くて重いダクト
バスダクトは、金属製のダクトの中に太い導体(バー)を絶縁して収めた配線方式で、大きな工場やビルの幹線のように、大電流を流す配線に使われる。電技解釈第163条第1項第二号は、バスダクトを造営材に取り付ける場合の支持点間の距離を3m以下と定めている。ただし、取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所において、垂直に取り付ける場合は、支持点間の距離を6m以下まで緩和できる。
その他の要件として、終端部は換気型を除き閉そくすること、使用電圧300V以下はD種接地・300V超はC種接地(接触防護措置を施せばD種に緩和可)とすること、使用するバスダクトはJIS C 8364に適合するものであることが定められている(電技解釈第163条)。金属ダクト工事(第162条)も、支持間隔の基準は同じく3m・垂直6mだ。
写真で問われる — 金属ダクト・バスダクト・トロリーバスダクトの見分け
このダクト類は、条文だけでなく写真の鑑別でも出る。天井から吊られた金属の樋のような ものが1枚写っていて、「写真に示すものの名称は」と聞かれる形式だ。似た4つが並ぶので、 決め手を1つずつ持っておく。
| 名称 | 中に入っているもの | 外観の決め手 |
|---|---|---|
| 金属ダクト | 電線(絶縁電線を何本も収める) | 幅5cm超の長い箱で、蓋がねじ留め。蓋を外して電線を入れる構造 |
| バスダクト | 導体(ブスバー) | 箱と導体が一体。継ぎ目にボルト締めのジョイント部があり、断面は扁平。蓋を開けて配線する構造ではない |
| トロリーバスダクト | 導体(ブスバー) | 下面(または側面)に長手方向のスリット(開口)が走る。ここに移動体の集電子が入って走行する |
| 銅帯(ブスバー単体) | — | ダクトに入っていないむき出しの平たい銅の板。がいしで支持する |
ここで引っかかるのが、天井から下りてくる吊りボルトだ。棒が何本も垂直に立っているように 見えるので、これを集電子と読み違えると、閉じたバスダクトをトロリーバスダクトと答えてしまう。 吊りボルトはダクトの上から天井へ伸びる、集電子はダクトの下面の開口に差し込まれる。 棒がどちら側に付いているかを見れば、取り違えない。
金属ダクトとバスダクトの見分けは、蓋があるかが早い。金属ダクトは電線を後から入れる箱なので、 長辺に沿ってねじ留めの蓋が付く。バスダクトは導体が中に組み込まれた製品なので開ける蓋が無く、 代わりにユニット同士をつなぐジョイント部(ボルトが数本まとまって出ている箇所)が周期的に現れる。
金属線ぴ工事 — 電線を細い樋(とい)で覆う配線
金属線ぴ工事は、電線を細い金属の樋(線ぴ)で覆って施設する工事方式で、露出配線を保護したいがバスダクトほどの大電流は流さない場所に使われる。電技解釈第161条が定める要件は次のとおりだ。
- 電線:絶縁電線(屋外用ビニル絶縁電線=OWを除く)
- 接続点:線ぴ内には原則として設けない。例外は、分岐のために2種金属製線ぴを使い、点検が容易にでき、D種接地工事を施す場合
- D種接地:原則として施すが、次のいずれかで省略できる
- (イ) 線ぴの長さ(接続して使う場合は全長)が4m以下
- (ロ) 使用電圧が直流300V又は交流対地電圧150V以下で、線ぴの長さが8m以下のものに、簡易接触防護措置を施すとき、または乾燥した場所に施設するとき
1種と2種の見分け ― 決め手は「幅」
第161条には「2種金属製線ぴ」という言葉が出てくる(線ぴ内の分岐接続が条件付きで認められるのは2種だけだった)。では1種と2種は何が違うのか。写真鑑別で問われたときの決め手は、幅の寸法だ。
そもそも金属製線ぴとして扱われるのは、幅5cm以下のものに限られる(電気用品安全法施行令別表第二第2号)。5cmを超えると、それはもう線ぴではなく金属ダクトで、電技解釈第162条も金属ダクトを「幅が5cmを超え、かつ、厚さが1.2mm以上の鉄板等」と定義している。つまり幅5cmが、線ぴとダクトを分ける境界線になる。
その5cm以下の世界の中で、1種と2種が分かれる。
- 1種金属製線ぴ(通称メタルモール):幅4cm未満。規格上の寸法はベースの幅23.2mm(A型)・37.0mm(B型)の2種類で、ベースにキャップをかん合させる構造。壁面に沿わせてスイッチやコンセントの増設配線を保護する、細い成形モールとして使われる
- 2種金属製線ぴ(通称レースウェイ):幅4cm以上5cm以下。規格上の外のりの幅は40mm・45mmで、本体にカバーをビス等で取り付ける構造。天井から吊りボルトで支持し、照明器具の支持を兼ねながら配線を通す使い方が典型だ
ライティングダクト工事 — 照明器具を差し替える前提のダクト
ライティングダクトは、店舗やショールームなどで照明器具の位置を自由に差し替えられるようにした配線ダクトだ。電技解釈第165条第3項が定める要件は次のとおり。
- 支持点間の距離:2m以下
- 終端部:閉そくする(エンドキャップ)
- 開口部:原則として下向きに施設する。横向きにできるのは、簡易接触防護措置を施しじんあいが侵入し難い場合、またはJIS C 8366の固定II形ダクトを使用する場合に限る
- 造営材:貫通させない
- D種接地工事:施す。ただし絶縁物で金属製部分を被覆したダクトの場合、または対地電圧150V以下かつダクト全長4m以下の場合は省略できる
- 地絡遮断装置:電路に施設する。簡易接触防護措置を施す場合は省略できる
開口部を下向きにするのは、上向きや横向きだと、ダクトの中にほこりが積もりやすくなるからだ。ほこりが導体近くに堆積すると、湿気を含んだときに絶縁性能を落とし、トラッキング(絶縁物表面を伝う微小な放電の繰り返しによる劣化)の原因になりうる。下向きであれば、ほこりは自然に落ち、堆積しにくい。横向きが認められる例外(簡易接触防護措置+じんあいが侵入し難い場合、またはJIS C 8366固定II形)は、いずれもほこりの侵入・堆積という同じリスクに別の方法で対処している場合に限られている。
3つの数字を、ダクトの重さと役割から並べ直す
バスダクト3m(垂直6m)、金属線ぴは長さ基準(4m/8m)、ライティングダクト2m――これらの数字を丸暗記しようとすると、似た響きの数字同士で混同しやすい。だが、それぞれのダクトが「何を通し、どう使われるか」から考え直すと、数字の大小関係にも理由が見えてくる。
| 工事 | 支持間隔 | 電線・想定用途 | 接地(D種の省略条件) |
|---|---|---|---|
| バスダクト | 3m以下(垂直・出入制限区画で6m以下) | 太い導体を収めた大電流用の幹線 | 300V以下D種・300V超C種(接触防護措置でD種可) |
| 金属線ぴ | (線ぴ自体の支持間隔規定は無く、長さで接地省略を判定) | 絶縁電線(OWを除く)を通す細い樋 | 長さ4m以下で省略可/対地電圧150V以下かつ8m以下+簡易接触防護措置か乾燥した場所で省略可 |
| ライティングダクト | 2m以下 | 照明器具を差し替える軽量な配線ダクト | 絶縁物被覆または対地電圧150V以下かつ全長4m以下で省略可 |
工事の種類は、場所が決める — 電技解釈第156条の表
ここまでダクト・線ぴの構造を見てきたが、実際にその工事を採用できるかどうかは、どんな場所に施設するかで先に決まっている。電技解釈第156条は、低圧屋内配線について「施設場所の区分 × 工事の種類」の可否を1枚の表(156-1表)にまとめている。
場所の区分は、次の2軸の掛け合わせだ。
- 展開した場所 / 点検できる隠ぺい場所 / 点検できない隠ぺい場所
- 乾燥した場所 / 湿気の多い場所又は水気のある場所
表を丸暗記する必要はない。両端だけ覚えれば、真ん中は挟み撃ちで決まる。
ただしケーブル工事には、電線の側の制限が別にある。 156-1表が可否を決めているのは「工事の種類」までで、その工事でどの電線を使えるかは第164条の164-1表が別に定めている。使用電圧300V以下を展開した場所・点検できる隠ぺい場所に施設する場合しか使えない電線があり、2種キャブタイヤケーブル、ビニルキャブタイヤケーブル、耐燃性ポリオレフィンキャブタイヤケーブルなどがこれにあたる。つまりキャブタイヤケーブルを使うケーブル工事は、点検できない隠ぺい場所には施設できない(3種・4種など一部を除く)。「ケーブル工事だから場所は自由」と読むと、この肢を取りこぼす。
乾燥した場所にしか使えないもの — 金属線ぴ工事・金属ダクト工事・ライティングダクト工事・平形保護層工事(このほかフロアダクト工事・セルラダクト工事も乾燥した場所に限られる)。156-1表で、湿気の多い場所又は水気のある場所の行に○が1つも付かない工事がこれだ。このうち金属線ぴ・ライティングダクト・平形保護層は300V以下にも限られ、金属ダクトだけは300Vを超えても使える。開口があったり、床や壁に貼り付ける構造だったりして、水に弱い工事がここに集まる。
点検できない隠ぺい場所に使えないもの — がいし引き工事・金属線ぴ工事・金属ダクト工事・バスダクト工事・ライティングダクト工事・平形保護層工事。あとから見に行けない場所には、露出して初めて成り立つ工事は置けない、という理屈だ。逆にフロアダクト工事・セルラダクト工事は、点検できない隠ぺい場所(乾燥・300V以下)にこそ○が付く。
出題は「点検できる隠ぺい場所で、かつ湿気の多い場所に施設できない工事はどれか」という形で来る。選択肢に金属管・合成樹脂管・ケーブルが並んでいたらそれらは○なので、残る1つが答えになる。金属線ぴ工事や金属ダクト工事が混じっていれば、それだ——どちらも乾燥した場所専用だからだ。
この観点で見ると、線ぴやライティングダクトの「幅5cm以下」「開口部は下向き」といった構造の規定が、そのまま場所の制限とつながっていることが分かる。開口があるということは、水やほこりが入るということで、だから乾燥した場所に限られ、だから見に行ける場所にしか置けない。構造が場所を決めている。
平形保護層工事 — 床に貼る配線という、特殊な一種
156-1表の右端にある平形保護層工事は、名前だけ見ても中身が想像しにくい。これは、平たい導体を持つ電線(平形導体合成樹脂絶縁電線)を、保護層で挟んで床面や壁面に貼り付ける工事だ。カーペットの下を通して、後からOA機器の配線を足す——そういう用途で生まれた工法である。
電技解釈第165条第4項が、住宅以外の場所について次の条件を並べている。
- 施設できない場所:旅館・ホテル・宿泊所等の宿泊室、小中学校・幼稚園等の教室、病院・診療所等の病室、フロアヒーティング等の発熱線を施設した床面、第175〜178条の特殊場所
- 造営物の床面又は壁面に施設し、造営材を貫通しないこと
- 電線は電気用品安全法の適用を受ける平形導体合成樹脂絶縁電線で、20A用又は30A用、かつアース線を有するもの
- 電路の対地電圧は150V以下
- 定格電流30A以下の過電流遮断器で保護される分岐回路であること
- 地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること
- 平形保護層内の電線を外部に引き出す部分は、ジョイントボックスを使用すること
- 上部保護層・上部接地用保護層、ジョイントボックス・差込み接続器の金属製外箱にはD種接地工事
だから、寝ている人が逃げ遅れる宿泊室、子どもが走り回る教室、動けない人がいる病室は外され、造営材の貫通は禁じられ(貫通すれば見えないところを通ることになる)、対地電圧は150V以下に抑えられ、地絡遮断装置まで要求される。禁止されている場所の顔ぶれを「そこにいる人」で読むと、条件はひとまとまりの理屈になる。
PF管とCD管 — 見た目が似た2つの管が、置ける場所で分かれる
合成樹脂製の可とう電線管には、PF管(合成樹脂製可とう電線管)とCD管(Combined Duct)がある。どちらも蛇腹状の樹脂管で、写真だけでは色(CD管はオレンジ色が一般的)くらいしか手がかりがない。ところが施設できる場所がまったく違う。
電技解釈第158条第3項第七号は、CD管についてこう定めている。
CD管は、次のいずれかにより施設すること。 イ 直接コンクリートに埋め込んで施設すること。 ロ 専用の不燃性又は自消性のある難燃性の管又はダクトに収めて施設すること。
理由は材質にある。CD管には自消性が無い——燃え広がりを自分で止める性質を持っていない。だから、火が回りうる空間にむき出しで置くことを規格が認めていない。コンクリートの中なら周りに燃えるものが無く、不燃性のダクトに収めればその外側が守ってくれる。「燃えない場所に閉じ込めて使う管」がCD管だと考えると、条文の2択がそのまま腑に落ちる。
一方のPF管は耐燃性(自消性)を持つので、この制限が掛からない。露出でも隠ぺいでも、コンクリート埋設でも使える。現場でオレンジ色の管が二重天井の中を這っていたら、それは不適切、という判断ができる。
もう1つ、同条第八号に見落としやすい規定がある。合成樹脂製可とう管相互、CD管相互、そして合成樹脂製可とう管とCD管とは、直接接続しないこと。 管どうしを直につながず、必ずカップリング等の附属品を介せ、という意味だ。性質の違う管を安易につなぐことも、ここで封じられている。
天井のダクトを、支持間隔から読み解けるようになる
この数字の違いが頭に入ると、天井を這うダクトを見上げたとき、支持金物の間隔から「これは大電流の幹線か、照明用の軽いダクトか」をおおよそ見分けられるようになる。今日試せることとして、工場やショッピングモールの天井を見上げる機会があれば、ダクトの太さと支持金物の間隔を目測してみるといい。太くて支持間隔が広ければバスダクト、細くて2mおきに支持され照明器具がぶら下がっていればライティングダクトだと、数字と実物が結びついてくる。
支持間隔という地味な数字が条文に定められているのは、ダクトのたわみや落下が、その下を歩く人や動く設備にそのまま危険として跳ね返るからだ。3m・2m・4m・8mという数字は、暗記のための羅列ではなく、それぞれのダクトの重さ・剛性・想定される使われ方から逆算された、安全のための境界線になっている。
冒頭の謎、支持間隔の数字がなぜ違うのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。