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電気工事の施工方法 ・ 3 / 11

高圧ケーブルの地中敷設 — 埋設深さは「上を何が通るか」で決まる

読み終えると、こうなる

道路工事で地面を掘り返したとき、歩道の下と車道の下で高圧ケーブルの埋設深さが違うのを見ても、施工のばらつきではなく理由のある使い分けだと分かるようになる

  • 直接埋設式の埋設深さを、車両その他の重量物が通る場所かどうかで1.2m以上・0.6m以上に使い分けられる
  • 地中電線路の3方式(管路式・暗きょ式・直接埋設式)を、それぞれの防護の考え方の違いで仕分けられる
  • 高圧ケーブルの曲げ半径について、法令に数値規定がなく実務資料間で幅があることを踏まえ、具体的な倍率を断定せずに扱える
考えてみよう

道路工事で地面を掘り返しているのを見かけた。同じ高圧ケーブルのはずなのに、車道の下では深く埋まっていて、隣の歩道の下ではそれより浅い位置に埋まっている。どちらも同じ電線・同じ電圧のはずなのに、なぜ埋まっている深さが違うのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この深さの違いを施工のばらつきではなく、条文が定めた使い分けとして説明できるようになっている。

高圧の電線を地中に敷設する地中電線路には、ケーブル使用が大前提で、3つの方式がある(第120条)。

  • 管路式:車両等の重量物の圧力に耐える管(FEP等)にケーブルを通す方式
  • 暗きょ式:ケーブルを収める暗きょ(トンネル状の構造物)に、耐燃措置または自動消火設備を施す方式
  • 直接埋設式:ケーブルを地面に直接埋め込む方式。堅ろうなトラフ等の防護物に収めるのが基本で、重量物のおそれがない場所では上部を堅ろうな板やといで覆う方法でもよく、がい装ケーブルであれば防護そのものを省略できる場合がある
車道と歩道で埋設深さが違うのは、上を何が通るか次第 車道(重量物の圧力を受けるおそれ) 歩道(重量物のおそれが小さい) 1.2m以上 0.6m以上 同じ高圧ケーブルでも、車両その他の重量物の圧力を受けるおそれがある場所(車道等)は1.2m以上、おそれがない場所(歩道等)は0.6m以上と、埋設深さの基準が変わる
直接埋設式の埋設深さは一律ではない。車両その他の重量物の圧力を受けるおそれがある場所(車道・駐車場など)は1.2m以上、そのおそれがない場所(歩道・庭など)は0.6m以上と、深さの基準そのものが「上を何が通るか」で変わる。数字だけを覚えるのではなく、この条件とセットで頭に入れておくと、現場で深さが違っていても混乱しない。

数字には逃げ道がある — ただし書の緩和

ここで条文をもう一歩だけ深く読む。第120条第4項第一号は、1.2m・0.6mという数値を定めたすぐあとに、こう続けている。「ただし、使用するケーブルの種類、施設条件等を考慮し、これに加わる圧力に耐えるよう施設する場合はこの限りでない」。

つまりこの深さの数値は、絶対の下限ではない。深く埋めるのは、上から加わる圧力からケーブルを守るためだ。だから、堅ろうなトラフその他の防護物に収めるなどして、加わる圧力にケーブル側が耐えられるように施設するのであれば、1.2m・0.6mという深さの規定によらずに施設してよい——目的(圧力からの保護)が別の手段で達成されるなら、手段(深さ)のほうは緩和される、という構造になっている。

試験ではこの構造がそのまま問われる。「重量物の圧力を受けるおそれがある場所では、いかなる場合も1.2m以上としなければならない」という選択肢は、ただし書を無いことにした誤りだ。逆に「圧力に耐えるよう施設すれば1.2m未満にできる」は正しい。数値を丸暗記しただけだと前者に違和感を持てないので、深さの規定には『圧力に耐えるなら緩和』というただし書がセットで付いている、と覚えておく。

管路式の深さは、条文の側が違う — 舗装下面から0.3m

ここまでの1.2m・0.6mは、すべて直接埋設式の数字だ。ここを混ぜると事故る。

電技解釈第120条は、管路式には埋設深さの規定を置いていない。管路式に求めているのは 「管には、車両その他の重量物の圧力に耐えるものを使用すること」——つまり深さではなく管の強度で 守る方式だからだ。ケーブルを直接土に埋める直接埋設式は、土をかぶせる厚さでしか守れないので 深さを規定する。管に収める管路式は、管が圧力を受け止めるので深さの規定が要らない。 守り方が違うから、規定の置き方も違う。

では管路式なら何cmでもよいのかというと、そうはならない。実務の基準である 高圧受電設備規程120-3が、需要場所に施設する管路について次のように定めている。 管径200mm以下で規程の表に示す管(ポリエチレン被覆鋼管・硬質ポリ塩化ビニル電線管・ 波付硬質合成樹脂管など)を使い、埋設深さを地表面(舗装がある場合は舗装下面)から 0.3m以上とすれば、車両その他の重量物の圧力に耐えるものとする、というものだ。

試験では「**材料と埋設深さの組合せ**として不適切なものは」という形で問われる。名前のとおり、 判定する材料は**2つある**。順に見る。
  1. 管が、車両その他の重量物の圧力に耐えるものか(=規程の表に示す管かどうか)
  2. 深さが、舗装下面から0.3m以上か

どちらか一方でも外れれば不適切。 深さの数字だけを見て済ませられるのは、 並んでいる管がすべて表に載るものだったときに限られる。選択肢の深さが4つとも0.3m以上なら、 答えを分けているのは管の側だ。逆に管がすべて同じ種類なら、深さの数字で決まる。 どちらが動いているかを先に見るのが、この形式の解き方になる。

規程の表に示されるのは、ポリエチレン被覆鋼管・硬質ポリ塩化ビニル電線管(VE)・ 波付硬質合成樹脂管(FEP)といった、車両の荷重を受け止められる強度を持つ管だ。 電技解釈第120条第2項第一号が求めているのも「これに加わる車両その他の重量物の圧力に耐えるもの」 という性能であって、深さではない。だから強度の足りない管は、どれだけ深く埋めても条文を満たさない。 「丈夫な管なら浅くてよいはず」という推論も、「深く埋めればどんな管でもよいはず」という推論も、 どちらも条文の読み方として外れている。

方式ごとの数字は、直接埋設式なら1.2m/0.6m、管路式なら舗装下面から0.3m。方式を先に見分け、 その方式の数字を当てはめる。方式の見分けは、ケーブルがむき出しで土に埋まっているか(直接埋設式)、 管に収まっているか(管路式)、人が入れる大きさの構造物の中か(暗きょ式)で決まる。

なお、このただし書とは別に、直接埋設式では地中電線を衝撃から防護すること自体が求められている(第4項第二号)。堅ろうなトラフその他の防護物に収めるのが基本で、重量物のおそれがない場所では上部を堅ろうな板やといで覆う方法でもよく、第6項に規定する性能のがい装を有するケーブルを使う方法もある。トラフは「深さの緩和の根拠」にも「衝撃防護の手段」にもなる、地中埋設の主役級の部材だ。

この「上を何が通るか」という基準を固定的に考えると、あとで問題が起きることがある。当初は庭や歩行スペースだった場所を、後年になって駐車スペースや車両の出入り口に用途変更するケースは珍しくない。埋設時は歩道並みの0.6m以上で施工されていたケーブルの上を、その後車両が繰り返し通るようになると、想定していなかった重量物の圧力を受け続けることになり、時間の経過とともにケーブルや防護物に損傷が生じるリスクが高まる。埋設深さは施工時点の利用状況だけでなく、将来その場所の使われ方が変わる可能性まで考慮して選ぶべき数字だ。

地中電線を収める金属製の防護装置や被覆金属体には、D種接地工事を施す(第123条。ただし管路式の金属製管路は対象外)。また、低圧地中電線と高圧地中電線が接近・交差するときの離隔は0.15m以上(第125条)と定められている。同じ地中でも、電圧が違う電線同士は一定の距離を保たなければならない。

もう1つ、実務でよく話題になるのが高圧CVケーブルの曲げ半径だ。電技解釈には「被覆を損傷しないように施設すること」という定性的な規定しかなく、具体的な倍率(仕上がり外径の何倍まで曲げてよいか)は定めていない。メーカー資料や業界資料では6〜12倍程度という数値が挙げられることがあるが、資料によって数値が食い違い、布設時と固定時、ケーブルの構造でも変わるため、特定の倍率を法令上の基準であるかのように断定することはできない。実際の施工では、その工事で使うケーブルのメーカー資料を確認するのが確実だ。

地面の下の配線を、深さと距離から読み解けるようになる

この整理が頭に入ると、道路工事や造成工事で地面が掘り返されているのを見たとき、埋まっている電線の深さから「ここは車両が通る場所として扱われている」というような情報を読み取れるようになる。今日試せることとして、近所で道路工事が行われていたら、掘削の深さや埋設標識の表示を(安全な距離から)観察してみるといい。

埋設深さや接地・離隔の規定が細かく分かれているのは、地面の下は目に見えないぶん、いったん事故が起きると発見が遅れ被害が大きくなりやすいからだ。第一種電気工事士が高圧地中電線路の敷設に関わるとき、この「見えない条件」を法令から正確に読み取れるかどうかが、安全な施工の土台になる。

冒頭の車道と歩道、埋設深さがなぜ違ったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 埋設深さの数値(1.2m・0.6m)を、場所の条件と切り離して丸暗記させる

    なぜ引っかかる『地中電線路の埋設深さは1.2m』とだけ覚えてしまうと、その他の場所の0.6mを見落としたり、逆に軽い場所にまで1.2mを要求してしまったりする。どちらの数値も『その場所の上を何が通るか』とセットで決まる

    見破り方数値を聞かれたら先に『そこは車両その他の重量物の圧力を受けるおそれがある場所か』を確認する。車道・駐車場等なら1.2m以上、歩道や庭のように重量物の心配が薄い場所なら0.6m以上、と条件から数値を導く

  2. 『重量物の圧力を受けるおそれがある場所では、必ず1.2m以上埋めなければならない』と、ただし書の緩和を無いことにして断定させる

    なぜ引っかかる1.2m・0.6mという数値を丸暗記していると、『必ず』『いかなる場合も』という強い言い回しの選択肢に違和感を持てない。条文には『加わる圧力に耐えるよう施設する場合はこの限りでない』というただし書があり、数値は絶対ではない

    見破り方埋設深さの選択肢に『必ず』『例外なく』とあったら、ただし書を思い出す。堅ろうなトラフその他の防護物に収めるなどして加わる圧力に耐えるよう施設すれば、1.2m・0.6mの深さ規定によらずに施設できる(第120条第4項第一号ただし書)

  3. 高圧CVケーブルの曲げ半径を『◯倍』と法令の数値であるかのように断定させる

    なぜ引っかかる参考書やメーカー資料には『仕上がり外径の8倍』『10倍』のような具体的な倍率がしばしば載っているが、これは電技解釈の条文に規定された数値ではなく、資料によって6〜12倍程度まで食い違う実務上の目安にすぎない

    見破り方曲げ半径の数値を聞かれたら、それが電技解釈の条文由来か、メーカー・業界資料由来かをまず区別する。電技解釈は『被覆を損傷しないように』という定性的な規定のみで、具体的な倍率は定めていない

参考文献・出典

理解度チェック(8問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、8問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用3問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 8 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 地中電線路(第120条)はケーブル使用が大前提で、管路式・暗きょ式・直接埋設式の3方式がある
  2. 直接埋設式の埋設深さは、車両その他の重量物の圧力を受けるおそれがある場所で1.2m以上、その他の場所で0.6m以上(第120条第4項第一号)
  3. 埋設深さにはただし書の緩和がある。使用するケーブルの種類・施設条件等を考慮し、加わる圧力に耐えるよう施設する場合(堅ろうなトラフその他の防護物に収める等)は、1.2m・0.6mの深さ規定によらなくてよい(第120条第4項第一号ただし書)
  4. 直接埋設では堅ろうなトラフ等の防護物に収める。重量物のおそれがない場所は上部を堅ろうな板・といで覆う方法でもよく、がい装ケーブルなら防護を省略できる場合がある
  5. 地中電線を収める金属製防護装置・被覆金属体にはD種接地工事を施す(第123条。管路式の金属製管路は除外)。低圧地中電線と高圧地中電線の離隔は0.15m以上(第125条)
  6. 1.2m・0.6mは直接埋設式の数字。電技解釈は管路式に埋設深さの規定を置いておらず、『重量物の圧力に耐える管を使用する』という管の強度で担保している(第120条第2項)
  7. 管路式の実務上の目安は、高圧受電設備規程120-3により地表面(舗装がある場合は舗装下面)から0.3m以上。ただし判定材料は2つで、①管が車両その他の重量物の圧力に耐えるもの(規程の表に示す管)か ②深さが0.3m以上か。どちらか一方でも外れれば不適切であり、深さの数字だけを見て済ませられるのは並んだ管がすべて表に載るものだったときに限る
  8. 高圧CVケーブルの曲げ半径は電技解釈に数値規定がなく(『被覆を損傷しないように』とのみ規定)、実務資料では6〜12倍程度と資料により幅があるため、特定の倍率を法令の数値として断定できない
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