道路工事で地面を掘り返しているのを見かけた。同じ高圧ケーブルのはずなのに、車道の下では深く埋まっていて、隣の歩道の下ではそれより浅い位置に埋まっている。どちらも同じ電線・同じ電圧のはずなのに、なぜ埋まっている深さが違うのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この深さの違いを施工のばらつきではなく、条文が定めた使い分けとして説明できるようになっている。
高圧の電線を地中に敷設する地中電線路には、ケーブル使用が大前提で、3つの方式がある(第120条)。
- 管路式:車両等の重量物の圧力に耐える管(FEP等)にケーブルを通す方式
- 暗きょ式:ケーブルを収める暗きょ(トンネル状の構造物)に、耐燃措置または自動消火設備を施す方式
- 直接埋設式:ケーブルを地面に直接埋め込む方式。堅ろうなトラフ等の防護物に収めるのが基本で、重量物のおそれがない場所では上部を堅ろうな板やといで覆う方法でもよく、がい装ケーブルであれば防護そのものを省略できる場合がある
数字には逃げ道がある — ただし書の緩和
ここで条文をもう一歩だけ深く読む。第120条第4項第一号は、1.2m・0.6mという数値を定めたすぐあとに、こう続けている。「ただし、使用するケーブルの種類、施設条件等を考慮し、これに加わる圧力に耐えるよう施設する場合はこの限りでない」。
つまりこの深さの数値は、絶対の下限ではない。深く埋めるのは、上から加わる圧力からケーブルを守るためだ。だから、堅ろうなトラフその他の防護物に収めるなどして、加わる圧力にケーブル側が耐えられるように施設するのであれば、1.2m・0.6mという深さの規定によらずに施設してよい——目的(圧力からの保護)が別の手段で達成されるなら、手段(深さ)のほうは緩和される、という構造になっている。
試験ではこの構造がそのまま問われる。「重量物の圧力を受けるおそれがある場所では、いかなる場合も1.2m以上としなければならない」という選択肢は、ただし書を無いことにした誤りだ。逆に「圧力に耐えるよう施設すれば1.2m未満にできる」は正しい。数値を丸暗記しただけだと前者に違和感を持てないので、深さの規定には『圧力に耐えるなら緩和』というただし書がセットで付いている、と覚えておく。
管路式の深さは、条文の側が違う — 舗装下面から0.3m
ここまでの1.2m・0.6mは、すべて直接埋設式の数字だ。ここを混ぜると事故る。
電技解釈第120条は、管路式には埋設深さの規定を置いていない。管路式に求めているのは 「管には、車両その他の重量物の圧力に耐えるものを使用すること」——つまり深さではなく管の強度で 守る方式だからだ。ケーブルを直接土に埋める直接埋設式は、土をかぶせる厚さでしか守れないので 深さを規定する。管に収める管路式は、管が圧力を受け止めるので深さの規定が要らない。 守り方が違うから、規定の置き方も違う。
では管路式なら何cmでもよいのかというと、そうはならない。実務の基準である 高圧受電設備規程120-3が、需要場所に施設する管路について次のように定めている。 管径200mm以下で規程の表に示す管(ポリエチレン被覆鋼管・硬質ポリ塩化ビニル電線管・ 波付硬質合成樹脂管など)を使い、埋設深さを地表面(舗装がある場合は舗装下面)から 0.3m以上とすれば、車両その他の重量物の圧力に耐えるものとする、というものだ。
- 管が、車両その他の重量物の圧力に耐えるものか(=規程の表に示す管かどうか)
- 深さが、舗装下面から0.3m以上か
どちらか一方でも外れれば不適切。 深さの数字だけを見て済ませられるのは、 並んでいる管がすべて表に載るものだったときに限られる。選択肢の深さが4つとも0.3m以上なら、 答えを分けているのは管の側だ。逆に管がすべて同じ種類なら、深さの数字で決まる。 どちらが動いているかを先に見るのが、この形式の解き方になる。
規程の表に示されるのは、ポリエチレン被覆鋼管・硬質ポリ塩化ビニル電線管(VE)・ 波付硬質合成樹脂管(FEP)といった、車両の荷重を受け止められる強度を持つ管だ。 電技解釈第120条第2項第一号が求めているのも「これに加わる車両その他の重量物の圧力に耐えるもの」 という性能であって、深さではない。だから強度の足りない管は、どれだけ深く埋めても条文を満たさない。 「丈夫な管なら浅くてよいはず」という推論も、「深く埋めればどんな管でもよいはず」という推論も、 どちらも条文の読み方として外れている。
方式ごとの数字は、直接埋設式なら1.2m/0.6m、管路式なら舗装下面から0.3m。方式を先に見分け、 その方式の数字を当てはめる。方式の見分けは、ケーブルがむき出しで土に埋まっているか(直接埋設式)、 管に収まっているか(管路式)、人が入れる大きさの構造物の中か(暗きょ式)で決まる。
なお、このただし書とは別に、直接埋設式では地中電線を衝撃から防護すること自体が求められている(第4項第二号)。堅ろうなトラフその他の防護物に収めるのが基本で、重量物のおそれがない場所では上部を堅ろうな板やといで覆う方法でもよく、第6項に規定する性能のがい装を有するケーブルを使う方法もある。トラフは「深さの緩和の根拠」にも「衝撃防護の手段」にもなる、地中埋設の主役級の部材だ。
この「上を何が通るか」という基準を固定的に考えると、あとで問題が起きることがある。当初は庭や歩行スペースだった場所を、後年になって駐車スペースや車両の出入り口に用途変更するケースは珍しくない。埋設時は歩道並みの0.6m以上で施工されていたケーブルの上を、その後車両が繰り返し通るようになると、想定していなかった重量物の圧力を受け続けることになり、時間の経過とともにケーブルや防護物に損傷が生じるリスクが高まる。埋設深さは施工時点の利用状況だけでなく、将来その場所の使われ方が変わる可能性まで考慮して選ぶべき数字だ。
地中電線を収める金属製の防護装置や被覆金属体には、D種接地工事を施す(第123条。ただし管路式の金属製管路は対象外)。また、低圧地中電線と高圧地中電線が接近・交差するときの離隔は0.15m以上(第125条)と定められている。同じ地中でも、電圧が違う電線同士は一定の距離を保たなければならない。
もう1つ、実務でよく話題になるのが高圧CVケーブルの曲げ半径だ。電技解釈には「被覆を損傷しないように施設すること」という定性的な規定しかなく、具体的な倍率(仕上がり外径の何倍まで曲げてよいか)は定めていない。メーカー資料や業界資料では6〜12倍程度という数値が挙げられることがあるが、資料によって数値が食い違い、布設時と固定時、ケーブルの構造でも変わるため、特定の倍率を法令上の基準であるかのように断定することはできない。実際の施工では、その工事で使うケーブルのメーカー資料を確認するのが確実だ。
地面の下の配線を、深さと距離から読み解けるようになる
この整理が頭に入ると、道路工事や造成工事で地面が掘り返されているのを見たとき、埋まっている電線の深さから「ここは車両が通る場所として扱われている」というような情報を読み取れるようになる。今日試せることとして、近所で道路工事が行われていたら、掘削の深さや埋設標識の表示を(安全な距離から)観察してみるといい。
埋設深さや接地・離隔の規定が細かく分かれているのは、地面の下は目に見えないぶん、いったん事故が起きると発見が遅れ被害が大きくなりやすいからだ。第一種電気工事士が高圧地中電線路の敷設に関わるとき、この「見えない条件」を法令から正確に読み取れるかどうかが、安全な施工の土台になる。
冒頭の車道と歩道、埋設深さがなぜ違ったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。