令和8年度の候補問題には、確認表示灯(パイロットランプ)が登場する課題が2つある。No.2とNo.10だ。
この2問、パイロットランプという器具そのものは同じで、つなぐ端子の数も同じ、支給される材料も似ている。それなのに、複線図はまったく別物になる。理由は、公表資料の(特記)欄に書かれた一行の違いだけだ。No.2は「確認表示灯(パイロットランプ)は,常時点灯とする」。No.10は「確認表示灯(パイロットランプ)は,同時点滅とする」。
文字にすればわずかな差だが、これが図の上ではどこに現れるのか。しかも、変わるのは配線の本数でも器具の位置でもない。見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、変わるのが「たった1本の線をどこから取るか」だけだと分かるようになっている。
傍記が、そのまま結線の指示書になっている
複線図でスイッチを扱うとき、最初にやるべきなのは器具どうしの対応づけだ。配線図では、点滅器にも負荷にも「イ」「ロ」「ハ」といった傍記が付いている。同じ記号どうしが1組で、スイッチ「イ」が制御するのは負荷「イ」だ。
だから複線図では、配置の段階でスイッチと負荷の両方に同じ記号を書き込んでおく。書き込んでしまえば、戻り線を引く作業は「イとイを結ぶ」「ロとロを結ぶ」という機械作業になり、判断が入る余地がなくなる。逆に、記号を書かずに記憶をたどってつなぐと、負荷が3つある課題では取り違えが起きる。
そしてこの取り違えは、作品の見た目には現れない。圧着も差し込みも完璧なまま、スイッチ「イ」を押すと「ロ」の照明が点く作品ができあがる。試験センターは、この状態をこう扱うと明記している——「電気回路が正しく構成されていない(例:スイッチを入れてもランプが点灯しない,あるいは短絡など)場合は誤接続となります」。判断基準では「3.誤接続,誤結線のもの」、つまり一発で欠陥だ。
パイロットランプは「渡り線をどこから取るか」で決まる
パイロットランプ(確認表示灯)は、スイッチの隣に並べて取り付けられることが多い。このとき、隣り合った器具どうしを短い電線でつなぐ。これが渡り線だ。
パイロットランプには端子が2つある。片方には接地側電線(白)が入る。これはどちらの結線でも変わらない。変わるのは、もう片方をスイッチのどちらの端子から取るかだけだ。
- 常時点灯……スイッチの電源側端子、つまり非接地側(黒)が来ている側から渡り線を取る。パイロットランプはスイッチをまたがずに電源と直結された形になるので、スイッチの入切に関係なく点灯し続ける。夜間に暗い廊下でスイッチの位置を示す用途がこれにあたる。
- 同時点滅……スイッチの負荷側端子、つまり負荷への戻り線が出ている側から渡り線を取る。パイロットランプが負荷と並列になるので、スイッチをONにすると負荷と一緒に点灯する。換気扇など、動いているかどうかが目で見えない機器の運転表示がこれにあたる。
3路・4路スイッチは、向きを持つ端子が1つだけ
令和8年度の候補問題では、No.6が3路スイッチ2個、No.7が3路スイッチ2個と4路スイッチ1個という構成で公表されている。3箇所以上から同じ照明を操作する回路だ。
3路スイッチは端子が3つあるが、向きを持っているのは共通端子(コモン)だけだ。2台のうち一方のコモンには電源の非接地側が入り、もう一方のコモンからは負荷への戻り線が出る。この2つを取り違えると回路が成立しない。
残りの2端子どうしを結ぶ2本が渡り線で、こちらはどちらをどちらにつないでも同じように動作する。複線図では、この2本を「入れ替え可」と割り切って描いてしまってよい。迷う対象を減らすほど、描く時間は短くなる。
4路スイッチは、2台の3路スイッチの間に挟み込む中継役だ。渡り線が4路スイッチを経由する形になり、4路を1台増やすごとに操作できる箇所が1つ増える。
対応の間違いは、作業では絶対に見つからない
ここまで見てきた3つ——傍記の対応、パイロットランプの渡り線、3路のコモン——には共通点がある。いずれも間違えても、作品の外見はまったく正常に見えるという点だ。
しかも試験会場では、テスタなどの計測器の使用が禁止されている。つないだ回路が意図どおりかどうかを、電気的に確かめる手段は最後までない。器具の結線をどれだけ丁寧に仕上げても、対応を間違えていれば「3.誤接続,誤結線のもの」で終わる。だからこそ、対応を決める作業は複線図の段階で終わらせておく必要がある。
階段の照明が2箇所で消せる理由
3路スイッチのコモンをどちらに取るか、という話は、そのまま階段や長い廊下の設計の話だ。下で点けて上で消せるのは、2台の3路スイッチが渡り線でつながっているからで、途中の踊り場にもう1箇所ほしければ4路スイッチを1台挟む。パイロットランプの2つの結線も同じで、暗い廊下でスイッチの位置を示したいなら常時点灯、換気扇が回っているかどうかを見せたいなら同時点滅。渡り線をスイッチの手前から取るか先から取るかで、住む人の使い勝手が変わる。
家の中を歩いて、2箇所から操作できる照明を探してみてほしい。階段、廊下、寝室。見つかったら、そのスイッチが小さく光っているかどうかも見る。消えているときに光るのがほたるスイッチ(異時点滅)で、ランプは点滅器と並列に入っている。器具と一緒に点いたり消えたりするのがパイロットスイッチ(同時点滅)で、こちらはランプが負荷と並列に入っている。
対応づけを間違えても作品は正常に見える、という怖さは現場でも同じだ。引き渡した後で「スイッチと照明が合っていない」と言われる工事は、電気的にはまったく問題なく動いている。人感センサや調光、スマートスイッチに置き換わっても、どの端子から電気を分けるかという判断の形は変わらない。
No.2とNo.10で結線がどう変わるのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。