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技能試験の基礎(複線図・欠陥・工具) ・ 5 / 8

欠陥の判断基準を「試験官の視点」で読む

読み終えると、こうなる

作品の印象がどれだけ良くても、12大項目のどれかに触れていれば不合格になる仕組みを読み解けるようになる

  • 見直しの視線を『印象』ではなく『未完成→配置→誤結線→色別』という判断基準の順に切り替えられる
  • 施工条件にない作業を、良かれと思っても足さずに済ませられる
  • 判断基準の数値を、試験環境での最低ラインであって現場の目標値ではないと踏まえて練習できる
考えてみよう

技能試験の会場で、隣の受験者の作品が視界に入った。電線はところどころ波打ち、器具の並びもわずかに傾いている。自分の作品は違った。線はまっすぐ、寸法もきれいに揃え、余った電線の処理まで丁寧に仕上げてある。時間内に完成し、見た目では明らかに自分のほうが上だと思った。

結果は、隣の受験者が合格、自分は不合格だった。どちらの作品も、電気的には配線図どおりにつながっている。

見当がつかなくて当然だ。この試験が「どこを見て」合否を決めているかを知らないまま練習すると、丁寧さを注ぐ方向を間違える。読み終えるころには、試験官が作品の前で何をしているのかが具体的に見えるようになっている。

技能試験の採点は、学科試験とはまったく違う仕組みで動いている。試験センターの説明はこうだ。「合否は,作品の欠陥の有無の判定結果に基づき決定されます」「欠陥のない作品が合格となります」。

つまり、部分点という概念がない。10箇所を完璧に仕上げても、11箇所目に欠陥がひとつあれば不合格になる。逆に、判断基準のどこにも該当しなければ、多少不格好でも合格だ。

作品 欠陥の判断基準 12大項目に 1つずつ照合 該当がひとつもない → 合格 ひとつでも該当 → 不合格 採点は点数の積み上げではない。12大項目のどれかに該当した時点で不合格になる

12大項目の全体像

公表されている判断基準は、次の12の大項目でできている。ほぼ作業の順に並んでいるので、そのまま自分の手順書として読める。

項目何を見る項目か
1.未完成のもの時間内に作り終わったか
2.配置,寸法,接続方法等の相違配線図どおりの配置・電線の種類・寸法・接続方法か
3.誤接続,誤結線のもの回路が電気的に正しくつながっているか
4.電線の色別,配線器具の極性が施工条件に相違したもの白黒の使い分け、コンセントのW側などの極性
5.電線の損傷外装・絶縁被覆・心線を傷めていないか
6.リングスリーブ(E形)による圧着接続部分スリーブの選択、圧着マーク、心線の端末処理
7.差込形コネクタによる差込接続部分心線の差し込み深さ(先端と下端の見え方)
8.器具への結線部分ねじ締め端子・ねじなし端子それぞれの結線の仕上がり
9.金属管工事部分構成部品の位置、接続の確実さ、ボンド線
10.合成樹脂製可とう電線管工事部分構成部品の位置と接続の確実さ
11.取付枠部分取付枠の向き・位置、器具の取り付け位置
12.その他支給品以外の材料、不要な工事、ゴムブッシング、器具の破損

1・3は複線図と作業の完了に、4〜8は電線をさわる作業そのものに、9〜11は器具や管の固定に対応する。12はそれ以外の落とし穴をまとめた項目だ。

試験官は作品全体の印象を採点しているのではない。12項目のチェックリストを、1箇所ずつ当てはめているだけだ。だから「全体としてよくできている」は、判定に一切影響しない。

このことは、試験センター自身の言葉でも確認できる。配置について「試験としては,多少曲がっていたとしても欠陥とは判断されませんが,可能な限り美しい作品作りを心がけてください」と書かれている。美しさは推奨であって、判定項目ではない。

試験が測ろうとしている3つの能力

判断基準の背後には、試験センターが「技能試験で重視する3つの能力」として挙げているものがある。

  1. 回路を的確に構成する能力 — 指定時間内に、与えられた配線図に基づき、電気的に正しく回路が構成されていること
  2. 配線図や施工条件を理解し遵守する能力 — 指定された配線図および施工条件に従っていない作品は、回路が電気的に正しく結線されていたとしても欠陥と判断される
  3. 接続等の作業を的確に行う能力 — 電線の被覆を剥くといった基本的な作業一つ一つを、定められた順序と方法によって完全に仕上げること

2番目が重い。電気的に正しくても、施工条件と違えば欠陥だ。たとえば「この接続はリングスリーブを使うこと」と条件に書かれていれば、差込形コネクタでつないだ作品は、たとえ完璧に光る回路であっても不合格になる。

数値の許容には但し書きがある

判断基準には「20mm 以上」「5mm 以上」といった数値が何箇所も出てくる。この数値について、試験センターは重要な注意を添えている。

判断基準は「試験環境や代用品の使用からくる制約等を勘案して設定したものであり,実際の現場ではより厳密な施工が求められます」。そして「判断基準の内容には,数カ所で数値[mm]の許容についての記載がありますが,実際の工事では限りなく 0mm に近い施工が求められていることを十分理解した上で」参照してほしい、と書かれている。

つまり「5mm未満ならセーフ」は試験の便宜であって、目標値ではない。練習でも0mmを目指して手を動かし、5mmは非常時の逃げ道として頭の隅に置いておく——この順序で覚えるほうが、本番で余裕が生まれる。

0mmを目指す、という言葉の意味

この但し書きは、試験と現場の関係をそのまま言い表している。判断基準の数値は現場の目標値ではなく、試験環境という制約の中で引かれた最低ラインだ。つまり技能試験の合格は「現場で許される最低限の仕事ができる」という証明であって、上手い工事の証明ではない。そう読めた瞬間から、練習の目的が「基準に触れないこと」から「基準に触れる余地をなくすこと」に変わる。

12項目に並んでいるのは、どれも放っておけば事故につながる状態ばかりだ。接続部の発熱、被覆の破れによる短絡、極性の取り違え。丸暗記の対象というより、先に失敗を見てきた側からの申し送りだと思って読むほうが頭に入る。

今日できることがひとつある。家のスイッチやコンセントのプレートを、正面からまっすぐ見てみる。枠が傾いていないか、壁との間に隙間がないか。「多少曲がっていたとしても欠陥とは判断されませんが,可能な限り美しい作品作りを心がけてください」という一文の温度が、他人の仕事を見た瞬間に分かるようになる。

冒頭の2人の作品で何が合否を分けたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 見た目の丁寧さが、欠陥の有無と関係があるかのように見せる

    なぜ引っかかる作品を並べれば整っているほうがよく見えるが、判定は12大項目への該当の有無だけで行われる。試験センターは配置について「多少曲がっていたとしても欠陥とは判断されません」と明記している。整えることに時間を使うほど、確認に回す時間が減っていく。

    見破り方見直しの対象を「印象」ではなく「項目」にする。未完成→配置・寸法→誤結線→色別→電線の損傷→接続部→器具への結線、と判断基準の順に辿れば、目が勝手に見た目へ流れなくなる。

  2. 欠陥を「減点」だと読み替えさせ、1つや2つなら通ると思わせる

    なぜ引っかかる他の試験の感覚では、部分点や合格ラインがあるのが普通だ。だが技能試験は「欠陥のない作品が合格」で、該当が1つあればそこで終わる。頭では知っていても、時間に追われると「これくらいは」という判断が顔を出す。

    見破り方作業中に「これくらいなら」と思った瞬間を合図にする。迷いが生まれた箇所は、たいてい判断基準のどれかにすでに触れている。

  3. 「やっていないこと」だけを欠陥だと思わせ、やりすぎを見逃させる

    なぜ引っかかる12-2は「不要な工事,余分な工事又は用途外の工事を行ったもの」、12-4イは「ゴムブッシングを使用していないもの」。前者は足しすぎ、後者は付け忘れで、判定は両方向から入る。丁寧に仕上げようとする善意が、そのまま12-2に化けることがある。

    見破り方施工条件と配線図に書かれていない作業は、良かれと思っても足さない。逆に、支給されたのに使っていない部材が残っていないかも見直しで数える。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 合否は「作品の欠陥の有無の判定結果」だけで決まる。部分点も減点の積み上げもなく、判断基準に該当する箇所が1つでもあれば不合格になる
  2. 判断基準は1.未完成のもの から 12.その他 までの12大項目。ほぼ作業の順に並んでいるので、自分の作業手順とひもづけて覚える
  3. 見た目の美しさは判定項目に入っていない。試験センターも「多少曲がっていたとしても欠陥とは判断されません」と明記している
  4. 判断基準の数値[mm]の許容は「試験環境や代用品の使用からくる制約等を勘案して設定したもの」であり、実際の工事では限りなく0mmに近い施工が求められる
  5. 技能試験が見ているのは、回路を的確に構成する能力・配線図や施工条件を理解し遵守する能力・接続等の作業を的確に行う能力の3つ
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