試験官がリングスリーブの接続部を判定するとき、まずスリーブを真上から覗き込む。次に真横から見る。最後に、スリーブの根元に目を落とす。
ある受験者の接続部は、上から覗くと3本の心線の先端がきちんと見えていた。スリーブの選択も正しい。圧着マークも正しく刻印され、スリーブは壊れていない。上端から出た心線も短く切りそろえてある。それでも欠陥と判定された。
見当がつかなくて当然だ。判定される項目は、ひとつの接続部の中に何個も並んでいる。読み終えるころには、試験官が根元で何を測っていたのかが分かるようになっている。
判断基準12大項目のうち、5・6・7・8の4項目は「電線をさわる作業そのもの」に対応している。ここが不合格の大半を生む区間だ。試験センターが挙げる「よくある欠陥事例」にも、リングスリーブ用圧着工具の使用方法、引掛シーリングローゼットへの結線、ランプレセプタクルの巻き付け処理が並んでいる。
数字を丸暗記しようとすると必ず混乱する。数値は「どこから測るか」とセットで覚えるのが唯一の攻略法だ。
5.電線の損傷
被覆を剥く段階で、すでに判定は始まっている。
- ケーブル外装を損傷したもの。ケーブルを折り曲げたときに絶縁被覆が露出するもの、外装縦われが 20mm 以上のもの、VVR・CVV の介在物が抜けたもの
- 絶縁被覆の損傷で、電線を折り曲げたときに心線が露出するもの。ただし、リングスリーブの下端から 10mm 以内の絶縁被覆の傷は欠陥としない
- 心線を折り曲げたときに心線が折れる程度の傷があるもの
- より線を減線したもの
「折り曲げたときに」という条件が2回出てくる。表面に傷がついている程度なら欠陥にはならないが、曲げて中身が出るなら欠陥、という線引きだ。VVFストリッパで剥けないケーブル(EM-EEF、VVRなど)を無理に剥こうとして心線を傷めるのが典型的な事故なので、ケーブルの種類に応じて電工ナイフに持ち替える判断を練習段階で身につけておく。
6.リングスリーブによる圧着接続部分
ここは「工具の使い方」と「心線の端末処理」の2群に分かれている。
工具の使い方(6-1) — リングスリーブの選択を誤ったもの、圧着マークが不適正のもの、リングスリーブを破損したもの、先端または末端で圧着マークの一部が欠けたもの、1つのリングスリーブに2つ以上の圧着マークがあるもの、1箇所の接続に2個以上のリングスリーブを使用したもの。
握り部分が黄色のリングスリーブ用圧着工具を使うこと、刻印が○・小・中・大とはっきり出る工具を用意することが前提になる。圧着端子用の工具(持ち手が赤色)で圧着すると数字が刻印されてしまい、これも欠陥だ。
心線の端末処理(6-2) — こちらが冒頭の話につながる。
原文はこうなっている。
- リングスリーブを上から目視して、接続する心線の先端が一本でも見えないもの
- リングスリーブの上端から心線が 5mm 以上露出したもの
- 絶縁被覆のむき過ぎで、リングスリーブの下端から心線が 10mm 以上露出したもの
- ケーブル外装のはぎ取り不足で、絶縁被覆が 20mm 以下のもの
- 絶縁被覆の上から圧着したもの
- より線の素線の一部がリングスリーブに挿入されていないもの
さらに注意すべきは、20mmだけ不等号の向きが逆だという点だ。5mmと10mmは「以上」でアウト、つまり出しすぎがダメ。20mmは「以下」でアウト、つまりケーブル外装を剥き足りないことがダメ。剥きすぎと剥かなさすぎの両方が挟み撃ちで判定されている。
7.差込形コネクタによる差込接続部分
項目はたった2つだが、方向が正反対を向いている。
- コネクタの先端部分を真横から目視して心線が見えないもの(差し込みが浅い)
- コネクタの下端部分を真横から目視して心線が見えるもの(絶縁被覆を剥きすぎ)
コネクタにはストリップゲージがあるので、心線をそのゲージどおりの長さにすれば適切に接続できる。やり直すときは、引き抜いて再使用せず、コネクタの下部から切断して新しいコネクタで接続し直す。引き抜くと心線が傷つき、折れる可能性があるためだ。なお差込形コネクタは追加支給を受けても欠陥の対象にはならない。
8.器具への結線部分
ここは器具の種類ごとに基準が違う。第二種で出てくる主なものを整理する。
| 結線先 | 欠陥になる心線の露出 |
|---|---|
| 端子台の低圧側 | 端子台の端から心線が 5mm 以上露出 |
| 配線用遮断器、押しボタンスイッチ等 | 器具の端から心線が 5mm 以上露出 |
| ランプレセプタクル、露出形コンセント | ねじの端から心線が 5mm 以上露出 |
| ねじなし端子(タンブラスイッチ、コンセント、パイロットランプ等) | 差込口から心線が 2mm 以上露出 |
| 引掛シーリングローゼット(心線) | 差込口から心線が 1mm 以上露出 |
| 引掛シーリングローゼット(絶縁被覆) | 台座の下端から絶縁被覆が 5mm 以上露出 |
ねじ締め端子系はおおむね5mm、ねじなし端子は2mm、引掛シーリングローゼットだけ1mmと厳しい。この3段階が頭に入っていれば、器具を見た瞬間に許容の厳しさが切り替わる。
輪作りによる結線(ランプレセプタクル・露出形コンセント)には、専用の項目がある。
- 心線の巻き付けが不足(3/4周以下)、または重ね巻きしたもの
- 心線を左巻きにしたもの
- 心線がねじの端から 5mm 以上はみ出したもの
- カバーが締まらないもの
輪はねじの締め付け方向と同じ右回りにする。左巻きだと、ねじを締めるときに輪が広がってしまうからだ。カバーが締まらない原因はほぼ「絶縁被覆を長く残しすぎた」ことなので、剥く段階で仕上がりを見越しておく。
このほか、ランプレセプタクル・露出形コンセントでは、ケーブルを台座のケーブル引込口を通さずに結線したもの、ケーブル外装が台座の中に入っていないものも欠陥になる。台座の下から入れる、外装は台座の中まで入れる。この2つは形で覚えられる。
1mm・2mm・5mm——器具が小さいほど厳しくなる
露出した心線が何mmまで許されるかを器具ごとに並べ替えると、順序に意味が見えてくる。引掛シーリングローゼットが1mm、ねじなし端子が2mm、ねじ締め端子が5mm。器具が小さく、端子どうしの距離が近いものほど許容が狭い。数字を6つ丸暗記するより、「この器具の中はどれくらい詰まっているか」を思い浮かべるほうが早いし、間違えにくい。
そしてこの数字が守っているのは、カバーの内側だ。閉めてしまえば誰にも見えないが、そこには電圧のかかった導体が絶縁されないまま残る。ねじの端から5mm出た心線は、器具の中の金属部分に届きうる距離だということでもある。
天井を見上げて、照明を吊っている丸い座を探してみるといい。あれが引掛シーリングローゼットで、あの中の結線が1mmで判定される部分にあたる。照明がLEDに置き換わって器具は薄く軽くなったが、天井側の受け口はこの形のまま残っている。ここで覚える1mmは、器具が何度入れ替わっても使い続けられる数字だ。
冒頭の受験者の接続部で試験官が根元に何を見たのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。