ある受験者の作品が、採点でNo.11の欠陥と判定された。
見た目には非の打ちどころがない。IV線は管の中をきれいに通っている。管はボックスにぴったり付いていて、揺すっても外れない。絶縁ブッシングも入っている。ボンド線も、指定どおりの穴に取り付けられている。ランプレセプタクルの輪作りも美しい。電線を1本も切らずに、この作品を欠陥にした原因がある。
しかも、その原因は「締め方が足りなかった」ではない。締めすぎていなかったことだ。
技能試験では「ねじを必要以上に強く締めないでください」「ねじの頭部をねじ切ってしまったものは欠陥です」と何度も注意される。それなのに、この作品は締めが弱くて落ちた。矛盾しているように見えるはずだ。今は答えが出なくて当然で、読み終えるころには、No.11で唯一「力を入れる向きが逆になるねじ」がどれか分かるようになっている。
No.11に何が入っているか
公表された候補問題No.11の配線図には、次の要素が示されている。
- 電源:単相2線式(1φ2W)100V
- VVF 2.0-2C(電源側の幹線)
- IV 1.6(E19)
- ランプレセプタクル(Rロ)
- 点滅器(イ・ロ)
このうちNo.11を特徴づけるのが「IV 1.6(E19)」だ。E19=ねじなし電線管の19(呼び径)、その中を通す電線が絶縁電線IV1.6という意味になる。ケーブル(VVF)ではなく裸の絶縁電線を管に通す、金属管工事の区間がここにある。
そのほかの区間は、注記の「記載のない電線の種類は,VVF1.6とする」に従う。また「器具においては,端子台で代用する場合がある」ため、当日の材料表は必ず確認する。
そして——「配線図,施工条件等の詳細については,試験問題に明記します」。ねじなしボックスコネクタをボックスのどちら側に取り付けるか、ボンド線をどう扱うか、電線の色をどうするかは、当日の施工条件で確定する。試験センターの資料も、施工条件の例として「ねじなしボックスコネクタは,ジョイントボックス側に取り付けること。」という指定を挙げている。
配線図そのものは試験センターの著作物にあたるためここには載せていない。公式PDFを開いて対応する図を見ながら読み進めてほしい。
複線図を起こす順序
管が出てくると難しく感じるが、回路そのものの考え方は他の問題と変わらない。管は電線の通り道であって、回路要素ではないからだ。
- 管の区間を「ただの電線2〜3本」に読み替える。 E19の中を通るIV線が何本になるかは、その先の器具が何を要求するかで決まる。管があること自体は複線図に影響しない。
- 接地側(白)を配る。 電源の接地側から、スイッチを経由せず器具の接地側端子へ直行。
- 非接地側(黒)を配る。 電源の非接地側から各点滅器へ。
- 点滅器から各照明器具へ戻りの線を引く。 No.11は点滅器がイとロの2つあるので、戻りの線も2本になる。どの線がイ、どの線がロかを図の上で色分けしておくと、管に通したあと迷わない。
複線図が描けたら、そこで初めて「この区間は管を通る」と印を付ける。管に通す本数が確定してから電線を切ると、切りすぎのやり直しが起きにくい。
金属管の組み立てと、部品の並び順
金属管工事で使う構成部品は、判断基準9-1に列挙されている——「金属管」「ねじなしボックスコネクタ」「ボックス」「ロックナット」「絶縁ブッシング」「ねじなし絶縁ブッシング」。この6語が、そのまま正しい位置に置かれているかの採点対象になる。
手順にすると次のようになる。
- ねじなしボックスコネクタに管を差し込み、止めねじの頭部がねじ切れるまで締めて固定する
- コネクタのねじ部をボックスの穴に外側から通す
- ボックスの内側からロックナットをはめ、ウォータポンププライヤ等でしっかり締める
- ロックナットの内側に絶縁ブッシングをねじ込む
- 施工条件に従い、ボンド線をコネクタの接地用端子とボックスの接地用取付ねじ穴に取り付ける
技能試験のねじは、原則として「締めすぎるな」。ねじ山をつぶしたり頭を切断したりすれば12-5「器具を破損させたもの」で欠陥になる。ところが、ねじなしボックスコネクタの止めねじだけは違う。頭が飛ぶのが正常な完了状態であり、頭が残っていることのほうが欠陥(9-3)だ。このねじは、規定の力で締まったときに頭がちぎれるように作られている。頭部が落ちて初めて「管が正しい力で固定された」という証明になる。
この1本だけ、力の入れ方の常識が逆になる。No.11で最も落としやすいのは、電線でも輪作りでもなく、この一点だ。
踏みやすい欠陥項目
金属管工事は、欠陥の判断基準の中で最も項目数が多い分野だ。9-1から9-6まで、原文で確認しておきたい。
9-1.構成部品(「金属管」,「ねじなしボックスコネクタ」,「ボックス」,「ロックナット」,「絶縁ブッシング」,「ねじなし絶縁ブッシング」)が正しい位置に使用されていないもの
ロックナットをボックスの外側に付けてしまう、絶縁ブッシングを管の側に付けてしまう、といった取り違えが該当する。
9-2.構成部品間の接続が適切でないもの
- イ.「管」を引っ張って外れるもの
- ロ.「絶縁ブッシング」が外れているもの
- ハ.「管」と「ボックス」との接続部分を目視して隙間があるもの
「隙間があるもの」に許容寸法の記載はない。目視で見えれば欠陥だ。
9-3.「ねじなし絶縁ブッシング」又は「ねじなしボックスコネクタ」の止めねじをねじ切っていないもの
前述のとおり、No.11で最も踏みやすい欠陥。試験センターの資料でも「ロックナットなどをしっかり締め付けていたとしても,ねじなしボックスコネクタのねじをねじ切らないと欠陥となるので注意してください」と念押しされている。
9-4.ボンド工事を行っていない又は施工条件に相違してボンド線以外の電線で結線したもの
ボンド線を扱うかどうかは施工条件で示される。指示があるのに省略すれば欠陥、指示された電線以外で代用しても欠陥になる。
9-5.ボンド線のボックスへの取り付けが適切でないもの
- イ.ボンド線を引っ張って外れるもの
- ロ.巻き付けによる結線部分で,ボンド線をねじで締め付けていないもの
- ハ.接地用取付ねじ穴以外に取り付けたもの
9-6.ボンド線のねじなしボックスコネクタの接地用端子への取り付けが適切でないもの
- イ.ボンド線をねじで締め付けていないもの
- ロ.ボンド線が他端から出ていないもの
- ハ.ボンド線を正しい位置以外に取り付けたもの
ロの「他端から出ていないもの」は挿入不足のこと。端子を貫通させて反対側にボンド線の先端が顔を出している状態が正しい。
12-4.ゴムブッシングの使用が適切でないもの
管を接続しない側のボックスの穴には、ケーブルを通す際にゴムブッシングをはめる。イ「ゴムブッシングを使用していないもの」、ロ「ボックスの穴の径とゴムブッシングの大きさが相違しているもの」。管に気を取られてゴムブッシングを忘れる、というのがよくある取りこぼしだ。
時間配分の目安
試験時間はすべての候補問題について40分(公表資料)。以下は練習時の配分例で、公式に定められたものではない。
| 経過 | やること |
|---|---|
| 〜2分 | 問題文と施工条件を読む。特にねじなしボックスコネクタの取付位置とボンド線の指示に印を付ける |
| 〜7分 | 複線図を描く。管を通るIV線の本数と、イ・ロの戻り線の色をここで確定させる |
| 〜13分 | 管の組み立て(コネクタ→止めねじ→ボックス→ロックナット→絶縁ブッシング→ボンド線)。先に片づける |
| 〜18分 | ケーブル切断・外装はぎ取り・IV線の通線 |
| 〜30分 | ランプレセプタクルの輪作り、連用取付枠への器具取付 |
| 〜37分 | 電線相互の接続 |
| 〜40分 | 見直し。止めねじがねじ切れているか、絶縁ブッシングとゴムブッシングが入っているかを最初に確認 |
管の組み立てを後回しにすると、時間が押したときに絶縁ブッシングやボンド線が飛ぶ。作業の前半で片づけて、残りを純粋な配線作業にしてしまうのが安全だ。
壁の外を電気が堂々と通る工事
金属管工事は、隠す配線ではなく見せる配線だ。工場や倉庫、駐車場、機械室、屋外の壁——ケーブルがむき出しでは傷つく場所で、電線を管の中に通して物理的に守る。ねじなし電線管(E19)は、その名のとおり管の端にねじを切らずに施工できるので、現場で寸法を出しながら組んでいける。No.11 が組めるということは、住宅の内側だけでなく、この「外を通す配線」の側にも立てるということだ。
止めねじの設計は、知ると少し感心する。頭がねじ切れるまで締めれば、そこで必ず必要な締め付けが入る。締め加減という職人の勘に頼らず、部品のかたちで品質を保証している。締めすぎを戒める他のねじと逆の扱いになるのは、そういう理由だ。ボンド線も同じ発想で、金属管は電気を通してしまうからこそ、確実に大地へつないでおく。
今日できることは、駐車場や商業施設の壁を見上げて、管とボックスがどう並んでいるかを目で追うことだ。曲がり、分岐、器具の手前——現場の人がどういう順番で組んだかが全部見えてくる。屋外の太陽光や充電設備が増えるほど、外を通す配線の仕事は増えていく。
冒頭の「締めすぎていなかったせいで落ちた作品」の答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。