同じ一軒の住宅の、同じ屋根の上の話だ。まず9.5kWの太陽電池発電設備を載せた。数年後、パネルを増やして12kWにした。さらに隣接する空き地にも架台を組んで、合計55kWまで増やした。
パネルの種類も、載っている屋根も、住んでいる家族も変わっていない。ところがこの設備は、出力が増えるにつれて法律上の呼び名が3回変わり、しかもどこかの時点で、第二種電気工事士では工事に従事できなくなる。
その「どこか」は9.5kWと12kWの間なのか、12kWと55kWの間なのか。それとも別の場所なのか。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、境界がどこに何本あるのか、自分で線を引けるようになっている。
電気工作物は、電気事業法第38条によって区分されている。この区分は電気工事士法にそのまま引き継がれ、「誰がどの工事をしてよいか」の土台になる。
一般用電気工作物(電気事業法第38条第1項)
構内に設置する電気工作物のうち、次のいずれかにあたるものだ。
- 電気を使用するための電気工作物であって、低圧受電電線路以外の電線路によって構内以外の電気工作物と電気的に接続されていないもの
- 一定の出力未満の小規模発電設備
ここでいう「低圧」は、同法施行規則第48条第1項により600Vと定められている。一般家庭や小規模店舗のように、電力会社から100V・200Vで受電している設備が、この典型例だ。
小規模発電設備という考え方
住宅の屋根の太陽光発電のように、需要家側に発電設備がある場合はどう扱うのか。電気事業法施行規則第48条第2項は、次のものを「小規模発電設備」としている。
| 発電設備の種類 | 小規模発電設備となる出力 |
|---|---|
| 太陽電池発電設備 | 50kW未満 |
| 風力発電設備 | 20kW未満 |
| 水力発電設備(最大使用水量が毎秒1立方メートル未満で、ダムを伴わないもの等) | 20kW未満 |
| 内燃力を原動力とする火力発電設備 | 10kW未満 |
| 燃料電池発電設備(固体高分子型・固体酸化物型など一定のもの) | 10kW未満 |
| スターリングエンジンによる発電設備 | 10kW未満 |
そして同条第4項は、この小規模発電設備のうち一般用電気工作物になる出力の上限を、さらに別に定めている。
| 発電設備の種類 | 一般用電気工作物となる出力 |
|---|---|
| 太陽電池発電設備 | 10kW(同一構内に複数を電気的に接続して設置する場合は合計で10kW) |
| 風力発電設備 | 0kW |
| 水力発電設備(第2項第3号に該当するもの) | 20kW |
| 内燃力を原動力とする火力発電設備 | 10kW |
| 燃料電池発電設備(第2項第5号に該当するもの) | 10kW |
| スターリングエンジンによる発電設備 | 10kW |
つまり太陽電池発電設備には、10kWと50kWという2本の境界線がある。10kW未満なら一般用電気工作物、10kW以上50kW未満なら小規模事業用電気工作物(電気事業法第38条第3項)、50kW以上ならもはや小規模発電設備ですらなくなる。風力発電設備の上限が0kWと書かれているのは、風力については一般用電気工作物になる余地がなく、20kW未満のものはすべて小規模事業用電気工作物として扱う、という意味だ。
一般用電気工作物以外の電気工作物は、すべて事業用電気工作物だ(電気事業法第38条第2項)。事業用電気工作物のうち、小規模発電設備で一定の出力以上のものが小規模事業用電気工作物(同条第3項)、電気事業の用に供するものと一般用電気工作物を除いた残りが自家用電気工作物(同条第4項)になる。工場やビルの高圧受電設備は、この自家用電気工作物にあたる。
低圧受電でも、一般用にならない場所がある
「低圧で受電していれば一般用電気工作物」——ここまではそのとおりだが、条文にはただし書きが付いている。電気事業法第38条第1項は、一般用電気工作物を定義したうえでこう続ける。
ただし、小規模発電設備以外の発電用の電気工作物と同一の構内に設置するもの又は爆発性若しくは引火性の物が存在するため電気工作物による事故が発生するおそれが多い場所として経済産業省令で定める場所に設置するものを除く。
- 小規模発電設備以外の発電設備と同じ構内にあるもの — 大きな発電設備を持ち込んだ時点で、低圧受電でも一般用ではなくなる
- 爆発性・引火性の物が存在する場所 — 火薬類を製造する事業場、石炭坑など。電圧が低くても、そこで起きる事故の結果が重いからだ
「低圧受電=一般用」とだけ覚えていると、この2つ目にやられる。判定は電圧だけでは終わらない——同じ構内に何があるか、そこがどんな場所かまで見る。
条文の理屈を追うと、一般用電気工作物という区分の意味が見えてくる。一般用は電気主任技術者の選任も保安規程も要らない扱いで、その代わり電線路維持運用者(電力会社側)が調査する仕組みで守られている。その軽い扱いに耐えられる範囲を定めているのが、この定義とただし書きだ。爆発性の物がある場所は、軽い扱いのままでは守りきれない。だから電圧の話とは別枠で外されている。
なお、小規模発電設備は「同一構内にあっても一般用のまま」でいられる(そのために括弧書きで除外の対象から外してある)。屋根の太陽光を載せても一般用電気工作物であり続けるのは、この書き方のおかげだ。除外されるものと、されないものを分けているのは規模——数字の線引きは次の節で見る。
過去問を解く前に — この区分は令和5年に変わっている
ここが過去問演習でいちばん事故が起きるところなので、先に断っておく。
令和5年(2023年)3月20日の法改正で、小規模な発電設備の区分が変わった。それ以前は、太陽電池発電設備は出力50kW未満まで「小出力発電設備」として一般用電気工作物に含まれていた。改正後は、10kW以上50kW未満のものが「小規模事業用電気工作物」という新しい区分になり、一般用電気工作物ではなくなった(事業用電気工作物の側に移った)。
たとえば「一般用電気工作物の適用を受けないものはどれか」という設問で、太陽電池15kWという選択肢があったとする。
- 令和4年度以前の出題 — 50kW未満なので一般用電気工作物。正解ではない
- 現在の基準 — 10kW以上なので小規模事業用電気工作物。一般用ではない
古い過去問を現在の基準で解くと、正解が2つ以上に見えてしまう。答えが割れたら、まず出題年度を確認する。 本サイトの記述は、これ以降すべて現行法(改正後)で統一している。
風力発電設備も同じ改正の対象で、20kW未満のものが小規模事業用電気工作物に区分される(それ以前は20kW未満が小出力発電設備=一般用だった)。水力・内燃力・燃料電池については、改正の前後で扱いが変わっていない。
なぜ区分が動いたのか。 太陽光発電が急速に普及し、10kWを超える設備が住宅の枠を超えて数多く設置されるようになった。一般用電気工作物は保安規程も主任技術者も要らない軽い扱いなので、その軽さのままでは事故に対応しきれない規模が現実に増えた——だから中間の区分が新設された。区分の変更は、机上の整理ではなく設備の実態が動いた結果だ。
10kWと50kW — 屋根の上の数字が、受けられる仕事を決める
住宅用の太陽光は、屋根一面に載せれば10kWを超えることが珍しくない。そうなった時点で、その設備は一般用電気工作物ではなくなる。それでも第二種の範囲に残るのは「一般用電気工作物等」の「等」があるからで、この一文字を知っているかどうかで、見積もりを出せる案件の幅が変わる。逆に50kWを超えたら手を引く判断も、勘ではなく条文を根拠にできる。
今日できるのは、身近な太陽光の出力を確かめてみることだ。自宅や実家に載っていれば、パワーコンディショナの銘板か発電モニタに出力が出ている。その数字を本文の表に当てはめれば、その設備が3つの区分のどこにいるのか、1分で判定できる。数字を1つ拾って、線のどちら側かを言う。区分の勉強はそれ以上でも以下でもない。
風力の欄に「0kW」と書かれているのを、誤植だと思った人もいるはずだ。あれは「一般用電気工作物になる余地はない」という意思表示になっている。同じ小規模発電設備でも扱いが揃えられていないのは、設備の種類ごとに想定される危険が同じではないということだ。太陽電池だけに10kWと50kWの2本が引かれているのも、それだけ設置数が多く、線を細かく引く必要があったからだと読める。蓄電池やEV充電を組み合わせた住宅が増えるほど、この境界を正確に引ける人は重宝される。
冒頭の屋根の上で、境界は何本あり、それぞれどこに引かれていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。