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一般用電気工作物等の保安に関する法令 ・ 4 / 8

電気工作物の区分 — 一般用・小規模事業用・自家用の境界

読み終えると、こうなる

屋根の太陽光発電の出力を見ただけで、そこから先は自分が請け負える仕事か線を引けるようになる

  • 太陽電池発電設備の出力10kW・50kWから、一般用電気工作物か小規模事業用電気工作物かを仕分けられる
  • 同一構内で電気的に接続された複数の発電設備の出力を合算し、50kWの上限を超えていないか検算できる
  • 出力が50kWを超えた設備を見て、そこから先は自分の資格範囲外だと判定できる
考えてみよう

同じ一軒の住宅の、同じ屋根の上の話だ。まず9.5kWの太陽電池発電設備を載せた。数年後、パネルを増やして12kWにした。さらに隣接する空き地にも架台を組んで、合計55kWまで増やした。

パネルの種類も、載っている屋根も、住んでいる家族も変わっていない。ところがこの設備は、出力が増えるにつれて法律上の呼び名が3回変わり、しかもどこかの時点で、第二種電気工事士では工事に従事できなくなる。

その「どこか」は9.5kWと12kWの間なのか、12kWと55kWの間なのか。それとも別の場所なのか。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、境界がどこに何本あるのか、自分で線を引けるようになっている。

電気工作物は、電気事業法第38条によって区分されている。この区分は電気工事士法にそのまま引き継がれ、「誰がどの工事をしてよいか」の土台になる。

一般用電気工作物(電気事業法第38条第1項)

構内に設置する電気工作物のうち、次のいずれかにあたるものだ。

  • 電気を使用するための電気工作物であって、低圧受電電線路以外の電線路によって構内以外の電気工作物と電気的に接続されていないもの
  • 一定の出力未満の小規模発電設備

ここでいう「低圧」は、同法施行規則第48条第1項により600Vと定められている。一般家庭や小規模店舗のように、電力会社から100V・200Vで受電している設備が、この典型例だ。

小規模発電設備という考え方

住宅の屋根の太陽光発電のように、需要家側に発電設備がある場合はどう扱うのか。電気事業法施行規則第48条第2項は、次のものを「小規模発電設備」としている。

発電設備の種類小規模発電設備となる出力
太陽電池発電設備50kW未満
風力発電設備20kW未満
水力発電設備(最大使用水量が毎秒1立方メートル未満で、ダムを伴わないもの等)20kW未満
内燃力を原動力とする火力発電設備10kW未満
燃料電池発電設備(固体高分子型・固体酸化物型など一定のもの)10kW未満
スターリングエンジンによる発電設備10kW未満

そして同条第4項は、この小規模発電設備のうち一般用電気工作物になる出力の上限を、さらに別に定めている。

発電設備の種類一般用電気工作物となる出力
太陽電池発電設備10kW(同一構内に複数を電気的に接続して設置する場合は合計で10kW)
風力発電設備0kW
水力発電設備(第2項第3号に該当するもの)20kW
内燃力を原動力とする火力発電設備10kW
燃料電池発電設備(第2項第5号に該当するもの)10kW
スターリングエンジンによる発電設備10kW

つまり太陽電池発電設備には、10kWと50kWという2本の境界線がある。10kW未満なら一般用電気工作物、10kW以上50kW未満なら小規模事業用電気工作物(電気事業法第38条第3項)、50kW以上ならもはや小規模発電設備ですらなくなる。風力発電設備の上限が0kWと書かれているのは、風力については一般用電気工作物になる余地がなく、20kW未満のものはすべて小規模事業用電気工作物として扱う、という意味だ。

電気工事士法第2条第1項は、一般用電気工作物と小規模事業用電気工作物をまとめて「一般用電気工作物等」と呼ぶ。第二種電気工事士の守備範囲は、この「等」まで含んだ範囲だ。一般用電気工作物でなくなった瞬間に資格の範囲から外れるわけではない、というのがこの区分を読むときの勘所になる。

一般用電気工作物以外の電気工作物は、すべて事業用電気工作物だ(電気事業法第38条第2項)。事業用電気工作物のうち、小規模発電設備で一定の出力以上のものが小規模事業用電気工作物(同条第3項)、電気事業の用に供するものと一般用電気工作物を除いた残りが自家用電気工作物(同条第4項)になる。工場やビルの高圧受電設備は、この自家用電気工作物にあたる。

低圧受電でも、一般用にならない場所がある

「低圧で受電していれば一般用電気工作物」——ここまではそのとおりだが、条文にはただし書きが付いている。電気事業法第38条第1項は、一般用電気工作物を定義したうえでこう続ける。

ただし、小規模発電設備以外の発電用の電気工作物と同一の構内に設置するもの又は爆発性若しくは引火性の物が存在するため電気工作物による事故が発生するおそれが多い場所として経済産業省令で定める場所に設置するものを除く

除外は2つある。
  1. 小規模発電設備以外の発電設備と同じ構内にあるもの — 大きな発電設備を持ち込んだ時点で、低圧受電でも一般用ではなくなる
  2. 爆発性・引火性の物が存在する場所 — 火薬類を製造する事業場、石炭坑など。電圧が低くても、そこで起きる事故の結果が重いからだ

「低圧受電=一般用」とだけ覚えていると、この2つ目にやられる。判定は電圧だけでは終わらない——同じ構内に何があるか、そこがどんな場所かまで見る。

条文の理屈を追うと、一般用電気工作物という区分の意味が見えてくる。一般用は電気主任技術者の選任も保安規程も要らない扱いで、その代わり電線路維持運用者(電力会社側)が調査する仕組みで守られている。その軽い扱いに耐えられる範囲を定めているのが、この定義とただし書きだ。爆発性の物がある場所は、軽い扱いのままでは守りきれない。だから電圧の話とは別枠で外されている。

なお、小規模発電設備は「同一構内にあっても一般用のまま」でいられる(そのために括弧書きで除外の対象から外してある)。屋根の太陽光を載せても一般用電気工作物であり続けるのは、この書き方のおかげだ。除外されるものと、されないものを分けているのは規模——数字の線引きは次の節で見る。

過去問を解く前に — この区分は令和5年に変わっている

ここが過去問演習でいちばん事故が起きるところなので、先に断っておく。

令和5年(2023年)3月20日の法改正で、小規模な発電設備の区分が変わった。それ以前は、太陽電池発電設備は出力50kW未満まで「小出力発電設備」として一般用電気工作物に含まれていた。改正後は、10kW以上50kW未満のものが「小規模事業用電気工作物」という新しい区分になり、一般用電気工作物ではなくなった(事業用電気工作物の側に移った)。

つまり、**令和4年度以前の過去問と、現在の基準では答えが変わる**。

たとえば「一般用電気工作物の適用を受けないものはどれか」という設問で、太陽電池15kWという選択肢があったとする。

  • 令和4年度以前の出題 — 50kW未満なので一般用電気工作物。正解ではない
  • 現在の基準 — 10kW以上なので小規模事業用電気工作物。一般用ではない

古い過去問を現在の基準で解くと、正解が2つ以上に見えてしまう。答えが割れたら、まず出題年度を確認する。 本サイトの記述は、これ以降すべて現行法(改正後)で統一している。

風力発電設備も同じ改正の対象で、20kW未満のものが小規模事業用電気工作物に区分される(それ以前は20kW未満が小出力発電設備=一般用だった)。水力・内燃力・燃料電池については、改正の前後で扱いが変わっていない。

なぜ区分が動いたのか。 太陽光発電が急速に普及し、10kWを超える設備が住宅の枠を超えて数多く設置されるようになった。一般用電気工作物は保安規程も主任技術者も要らない軽い扱いなので、その軽さのままでは事故に対応しきれない規模が現実に増えた——だから中間の区分が新設された。区分の変更は、机上の整理ではなく設備の実態が動いた結果だ。

10kWと50kW — 屋根の上の数字が、受けられる仕事を決める

住宅用の太陽光は、屋根一面に載せれば10kWを超えることが珍しくない。そうなった時点で、その設備は一般用電気工作物ではなくなる。それでも第二種の範囲に残るのは「一般用電気工作物等」の「等」があるからで、この一文字を知っているかどうかで、見積もりを出せる案件の幅が変わる。逆に50kWを超えたら手を引く判断も、勘ではなく条文を根拠にできる。

今日できるのは、身近な太陽光の出力を確かめてみることだ。自宅や実家に載っていれば、パワーコンディショナの銘板か発電モニタに出力が出ている。その数字を本文の表に当てはめれば、その設備が3つの区分のどこにいるのか、1分で判定できる。数字を1つ拾って、線のどちら側かを言う。区分の勉強はそれ以上でも以下でもない。

風力の欄に「0kW」と書かれているのを、誤植だと思った人もいるはずだ。あれは「一般用電気工作物になる余地はない」という意思表示になっている。同じ小規模発電設備でも扱いが揃えられていないのは、設備の種類ごとに想定される危険が同じではないということだ。太陽電池だけに10kWと50kWの2本が引かれているのも、それだけ設置数が多く、線を細かく引く必要があったからだと読める。蓄電池やEV充電を組み合わせた住宅が増えるほど、この境界を正確に引ける人は重宝される。

冒頭の屋根の上で、境界は何本あり、それぞれどこに引かれていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 発電設備の種類ごとに違う出力の上限を、別の種類の数字で判定させる

    なぜ引っかかる小規模発電設備の上限は種類ごとに違う。太陽電池は50kW未満、風力と水力は20kW未満、内燃力と燃料電池とスターリングエンジンは10kW未満だ。ところが試験で目立つのは太陽電池の50kWと風力の20kWなので、その数字が頭に残り、「出力20kWの非常用内燃力発電設備を備えた映画館」といった選択肢を通してしまう。内燃力の上限は10kW未満なので、これは一般用電気工作物等にならない。

    見破り方設備の種類を先に読んでから数字を見る。50kWは太陽電池だけ、20kWは風力と水力、残りは10kW。この3段だけを覚え、選択肢の設備名を指で押さえてから対応する上限を引く。

  2. 同一構内の複数の発電設備を合算させない

    なぜ引っかかる施行規則第48条第2項のただし書は、同一構内に設置された複数の設備が電気的に接続され、合計出力が50kW以上となるものを除いている。ところが出題は「出力40kWの太陽電池発電設備と、電気的に接続した出力15kWの風力発電設備を備えた農園」のように、単体では各々セーフに見える数字を並べてくる。1つずつ上限と比べていると、合計55kWで除外される点に気づかない。

    見破り方「同一構内」「電気的に接続」という語が出てきたら、必ず足し算をする。足して50kW以上になれば、個々がいくら小さくても除外される。

  3. 「小規模発電設備を同一構内に施設すると一般用電気工作物とならない」と、条件を裏返して書く

    なぜ引っかかる正しくは、小規模発電設備であれば一般用電気工作物のままでいられる。一般用でなくなるのは、小規模発電設備の枠を超えたときだ。ところが「発電設備があると自家用になる」という粗い理解でいると、この裏返しに気づけない。しかもまったく同じ文が、年によって正しい選択肢として使われることもある。

    見破り方発電設備があること自体は区分を変えない、と押さえる。区分を動かすのは出力の値だけだ。文中の「小規模発電設備」が上限内の話をしているのか、上限を超えた話をしているのかを見分ける。

  4. 高圧受電でも業種や条件によっては一般用電気工作物になる場合がある、と書く

    なぜ引っかかる「需要場所の業種によっては」「規模が小さければ」といった限定句が添えられると、例外があってもおかしくないように読めてしまう。実際には受電電圧が600Vを超えた時点で、業種にも規模にも関係なく事業用電気工作物になる。

    見破り方600V以下で受電すること、という要件は例外のない入口条件だと固定する。業種・用途・規模を持ち出す限定句が付いていたら、その時点で誤りと判断してよい。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 一般用電気工作物は「低圧(600V以下)で受電し、構内に設置するもの」が基本形(電気事業法第38条第1項、同法施行規則第48条第1項)
  2. 太陽電池発電設備は出力10kW未満なら一般用電気工作物、10kW以上50kW未満なら小規模事業用電気工作物になる(同法施行規則第48条第2項・第4項)
  3. 電気工事士法第2条第1項は、一般用電気工作物と小規模事業用電気工作物をまとめて「一般用電気工作物等」と呼ぶ。第二種電気工事士の守備範囲はこの「等」まで含む
  4. 太陽電池発電設備の出力が50kW以上になると小規模発電設備でなくなり、小規模事業用電気工作物ではない通常の自家用電気工作物になる。ここからは第二種電気工事士では従事できない
  5. 風力発電設備は出力20kW未満のものが小規模発電設備だが、一般用電気工作物になる出力の上限は0kWと定められており、実質的にすべて小規模事業用電気工作物になる
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