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一般用電気工作物等の保安に関する法令 ・ 5 / 8

軽微な工事と軽微な作業 — 資格がなくてもできる範囲

読み終えると、こうなる

事務員がやった3つの作業を見て、直感の『いかにも電気工事らしさ』とは逆に、どれが資格なしでできる作業か見分けられるようになる

  • 差込み接続器へのコード接続や電力量計の取付けを見て、そもそも法律上の電気工事に当たらないと判定できる
  • 露出型点滅器・露出型コンセントの『取り換え』だけがかっこ書きで例外になっていることを踏まえ、他の配線器具の作業と仕分けられる
  • 接地極の埋設のような地味な作業を見て、それが有資格者でなければできない作業だと先回りして判断できる
考えてみよう

電気工事士の資格を持たない事務員が、ある日の事務所で3つのことをした。

1つ目。デスクライトのプラグ(差込み接続器)の中でコードが抜けかけていたので、ねじを緩めて接続し直した。2つ目。分電盤の中で切れていたヒューズを、同じ規格の新品に取り替えた。3つ目。長年使って黄ばんでいた壁の露出型コンセントを、新品に取り換えた。

どう見ても3つ目がいちばん「電気工事らしい」。壁の器具を外し、電線を外して、新しい器具につなぎ直したのだから。ならば、この3つのうち電気工事士法違反になるのはどれで、いくつあるのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、3つそれぞれについて、根拠となる条文まで挙げて説明できるようになっている。

電気工事士法には、資格がなくても手を出してよい範囲が2種類ある。よく混同されるが、法律上の成り立ちがまったく違う。

軽微な工事 — そもそも「電気工事」ではない

電気工事士法第2条第3項は、「電気工事」を「一般用電気工作物等又は自家用電気工作物を設置し、又は変更する工事」と定義したうえで、ただし書きで「政令で定める軽微な工事を除く」としている。つまり軽微な工事は、法律上の電気工事の定義から最初から外れている。電気工事ではないのだから、電気工事士でなければ従事できないという第3条の規制も、そもそも及ばない。

同法施行令第1条は、軽微な工事を6つ挙げている。

  1. 電圧600V以下で使用する差込み接続器、ねじ込み接続器、ソケット、ローゼットその他の接続器、または電圧600V以下で使用するナイフスイッチ、カットアウトスイッチ、スナップスイッチその他の開閉器に、コード又はキャブタイヤケーブルを接続する工事
  2. 電圧600V以下で使用する電気機器(配線器具を除く)又は電圧600V以下で使用する蓄電池の端子に、電線をねじ止めする工事
  3. 電圧600V以下で使用する電力量計・電流制限器・ヒューズを取り付け、又は取り外す工事
  4. 電鈴、インターホーン、火災感知器、豆電球その他これらに類する施設に使用する小型変圧器(二次電圧が36V以下のものに限る)の二次側の配線工事
  5. 電線を支持する柱、腕木その他これらに類する工作物を設置し、又は変更する工事
  6. 地中電線用の暗渠又は管を設置し、又は変更する工事

軽微な作業 — 電気工事だが資格が要らない作業

一方、電気工事士法第3条第2項は「一般用電気工作物等に係る電気工事の作業(一般用電気工作物等の保安上支障がないと認められる作業であつて、経済産業省令で定めるものを除く。)」という書き方をしている。こちらは電気工事であることを認めたうえで、省令が定める一部の作業だけを規制から外している

同法施行規則第2条第2項の書き方は少し独特で、「次に掲げる作業以外の作業」を軽微な作業とする、という裏返しの定義になっている。裏返す前の「次に掲げる作業」=電気工事士でなければできない作業は、同条第1項第1号のイからヌまでとヲ、および第2項第1号ロだ。

  • イ 電線相互を接続する作業
  • ロ がいしに電線を取り付け、又はこれを取り外す作業
  • ハ 電線を直接造営材その他の物件(がいしを除く)に取り付け、又はこれを取り外す作業
  • ニ 電線管、線ぴ、ダクトその他これらに類する物に電線を収める作業
  • ホ 配線器具を造営材その他の物件に取り付け、若しくはこれを取り外し、又はこれに電線を接続する作業(露出型点滅器又は露出型コンセントを取り換える作業を除く
  • ヘ 電線管を曲げ、若しくはねじ切りし、又は電線管相互若しくは電線管とボックスその他の附属品とを接続する作業
  • ト 金属製のボックスを造営材その他の物件に取り付け、又はこれを取り外す作業
  • チ 電線、電線管、線ぴ、ダクト等が造営材を貫通する部分に、金属製の防護装置を取り付け、又はこれを取り外す作業
  • リ 金属製の電線管、線ぴ、ダクト等又はこれらの附属品を、建造物のメタルラス張り・ワイヤラス張り・金属板張りの部分に取り付け、又は取り外す作業
  • ヌ 配電盤を造営材に取り付け、又はこれを取り外す作業
  • ヲ 電圧600Vを超えて使用する電気機器に電線を接続する作業
  • (第2項第1号ロ)接地線を一般用電気工作物等(電圧600V以下で使用する電気機器を除く)に取り付け・取り外し、接地線相互若しくは接地線と接地極とを接続し、又は接地極を地面に埋設する作業

そして施行規則第2条第2項第2号は、電気工事士が従事するこれらの作業を「補助する作業」も軽微な作業としている。有資格者の指示のもとで材料を渡す、電線を押さえるといった補助は、無資格でも行える。

ホのかっこ書きに注目したい。「配線器具を造営材に取り付け、取り外し、又はこれに電線を接続する作業」は原則として有資格者しかできない。ところが、そこから「露出型点滅器又は露出型コンセントを取り換える作業」だけが、わざわざ除かれている。つまり露出型のスイッチ・コンセントの取換えは、無資格でも法律上は行える。見た目がいちばん「電気工事らしい」作業が、条文上は例外側に置かれている。

軽微な工事と軽微な作業は、どちらも「資格なしでできる」という結論は同じだが、たどり着く道が違う。前者は電気工事の定義から外れることで、後者は電気工事であることを認めたうえで規制から外れることで、資格を免れている。試験でも「軽微な工事はどれか」「電気工事士でなければ従事できない作業はどれか」という形で、両方の側から問われる。

例外の側を知っている人が、現場の段取りを任される

原則を言えるより、例外を正確に押さえている人のほうが現場では頼りにされる。無資格の応援を1人つけた日に、その人に何を任せられるかを即答できるかどうかは、そのまま段取りに直結するからだ。電線を押さえてもらう、材料を渡してもらうといった補助作業は資格が要らない。一方で、電線管を曲げる、電線管に電線を収める、ボックスを造営材に取り付けるといった作業は任せられない。この線を引けるのは、裏返しの条文構造まで読んだ人だけだ。

今日できるのは、身のまわりで露出型のスイッチやコンセントを探してみることだ。壁に埋め込まれておらず、面に出ている四角い器具。物置、古い納屋、屋外の軒下などに残っていることが多い。無数にある配線器具の中で、あれの「取り換え」だけが条文のかっこ書きで名指しされて例外になっている、と知ったうえで眺めると、印象がまるで変わる。

なぜ露出型だけが除かれたのか。壁の中に手を入れる必要がなく、器具の裏側が見える状態で作業が完結するからだ、と読める。危険の大きさに応じて規制の網目を変える。法令はこういう細かい調整の積み重ねでできている。丸暗記させるための例外ではなく、事故の記録を反映して線を引き直してきた結果だと思うと、かっこ書き1つが急に面白くなる。

冒頭の3つの作業は、それぞれどちらの入口を通っていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 「電気工事士でなければ従事できない作業はどれか」の囮を、すべて施行令第1条の軽微な工事から取ってくる

    なぜ引っかかるこの形式の出題では、囮の3つが必ず軽微な工事から選ばれる。差込み接続器にコードを接続する、電力量計を取り付ける、火災感知器の小型変圧器(二次電圧36V以下)の二次側配線、電線を支持する柱を設置する、地中電線用の暗渠を設置する——どれも「電気工事らしい」語感があるので、いかにも資格が要りそうに見える。正解のほうは配電盤を造営材に取り付ける、電線管とボックスを接続する、電線管に電線を収めるといった、地味な作業に置かれている。

    見破り方施行令第1条の6項目を、先に自分の側から言えるようにしておく。コードやキャブタイヤケーブルの接続、機器・蓄電池の端子への電線のねじ止め、電力量計・電流制限器・ヒューズの取付け取外し、36V以下の小型変圧器の二次側配線、電線を支持する柱や腕木、地中電線用の暗渠や管。この6つに当てはまらないものが答えになる。

  2. 接地極を地面に埋設する作業を、軽微な工事の側に紛れ込ませる

    なぜ引っかかる地面に棒を打つだけの作業に見えるうえ、選択肢では「定格電圧125Vの差込み接続器にコードを接続する作業」のような明らかに軽微な工事とペアで組まされる。しかし接地線の取付け・接地線相互の接続・接地極の地面埋設は、施行規則第2条が掲げる制限対象で、電気工事士でなければ従事できない。

    見破り方接地に関する作業はまとめて有資格者の側、と一括で覚える。接地は事故のときに人を守る最後の経路なので、施工の良否が直接安全に響く。地味な作業ほど条文で名指しされている、と考えると迷わない。

  3. aとbの2つの作業を組み合わせ、片方だけ正しい選択肢を混ぜる

    なぜ引っかかる「a・bともに電気工事士でなければ従事できない作業はどれか」という形式では、4つの組合せのうち3つが「片方は制限対象、もう片方は軽微」になっている。片方だけを見て正解と判断すると必ず外れる。地中電線用の管の設置(軽微)と電力量計の取付け(軽微)、電線を支持する柱の設置(軽微)と電線管に電線を収める作業(制限対象)、といった組み方だ。

    見破り方aとbを別々に判定し、両方に○が付いたものだけを残す。片方を読んで納得した時点で選ばない、と手順を決めておく。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 「軽微な工事」は電気工事士法第2条第3項ただし書の例外で、政令(施行令第1条)が定める6項目。そもそも法律上の「電気工事」に当たらないため、資格は要らない
  2. 「軽微な作業」は法第3条第2項のかっこ書きの例外で、省令(施行規則第2条第2項)が定める。電気工事ではあるが、保安上支障がないとして資格が要らない作業
  3. 軽微な工事の代表例は、コードやキャブタイヤケーブルを差込み接続器・ソケット・開閉器などに接続する工事、電力量計・電流制限器・ヒューズの取付け取外し、二次電圧36V以下の小型変圧器の二次側配線工事
  4. 露出型点滅器・露出型コンセントを「取り換える」作業は、施行規則第2条第1項第1号ホのかっこ書きで制限対象から明示的に除かれており、資格がなくてもできる
  5. 電気工事士が従事する制限対象の作業を「補助する作業」も、軽微な作業として資格が要らない
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