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一般用電気工作物等の保安に関する法令 ・ 6 / 8

電気工事士の義務と免状の手続き

読み終えると、こうなる

引っ越し・改姓・免状の紛失が重なっても、それぞれどの手続きが必要でどれが不要か整理できるようになる

  • 免状の記載事項の3項目を思い出し、住所変更のように手続きが不要な変更を見分けられる
  • 免状を携帯せず事務所に保管したまま作業する記述を見て、それが違反だと指させる
  • 紛失した免状が後から見つかったとき、再交付を受けた都道府県知事に提出すべきだと判断できる
考えてみよう

ある電気工事士に、この春いろいろなことが重なった。結婚して姓が変わり、新居に引っ越し、その慌ただしさの中で免状をどこかに紛失してしまった。仕方なく再交付を申請し、新しい免状を受け取った。

ところが1か月後、荷ほどきの途中の段ボールから、なくしたはずの古い免状が出てきた。もう新しいのが手元にあるのだから、古いほうは要らない。捨ててしまってよいだろうか。それとも、万一に備えて予備として取っておくべきだろうか。

どちらも常識的な判断に思える。しかしこの場面には、法令が答えをはっきり用意している。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この工事士がとるべき手続きを、漏れなく挙げられるようになっている。

免状は、試験に合格して受け取ったら終わりの証書ではない。電気工事士法は、免状を持つ者に義務を課し、免状そのものにも手続きを用意している。

電気工事士等の義務(法第5条)

  • 第1項(技術基準適合義務): 電気工事士等は、電気工事の作業に従事するときは、電気事業法の技術基準に適合するようにその作業をしなければならない。一般用電気工作物に係る作業なら電気事業法第56条第1項の技術基準、小規模事業用電気工作物・自家用電気工作物に係る作業なら同法第39条第1項の技術基準が基準になる
  • 第2項(免状の携帯義務): 電気工事士等は、前項の電気工事の作業に従事するときは、電気工事士免状(特種電気工事資格者認定証、認定電気工事従事者認定証)を携帯していなければならない

第1項は「作った結果」への義務、第2項は「作っている最中」への義務だと整理すると覚えやすい。免状は事務所の引き出しではなく、身につけていなければならない。

免状の記載事項(施行令第3条)

免状に書かれる事項は、次の3項目だけだ。

  1. 免状の種類
  2. 免状の交付番号及び交付年月日
  3. 氏名及び生年月日
この一覧に**住所は入っていない**。だから引っ越しても書換えの手続きは要らない。逆に、結婚や養子縁組で氏名が変われば、記載事項が変わったことになり、書換えの申請が義務になる。「変更があったら手続き」ではなく、「記載事項に変更があったら手続き」なのだ。

免状の3つの手続き

手続ききっかけ条文と語尾
再交付免状をよごし、損じ、又は失ったとき施行令第4条第1項「申請することができる」(任意)
書換え免状の記載事項に変更を生じたとき施行令第5条「申請しなければならない」(義務)
返納都道府県知事から返納を命ぜられたとき施行令第6条第1項「遅滞なく返納しなければならない」(義務)

再交付は任意(放置しても違反ではないが、携帯義務があるため実務上は必要)、書換えは義務、という語尾の違いが問われることがある。また、よごし・損じて再交付を申請するときは、申請書にその免状を添えて提出しなければならない(施行令第4条第2項)。

返納命令の根拠は法第4条第6項だ。電気工事士法または電気用品安全法第28条第1項に違反したとき、都道府県知事は免状の返納を命ずることができる。免状は取り消されうる資格である、ということはこの科目全体を通じた通奏低音になっている。

第二種には定期講習の義務がない

法第4条の3は、第一種電気工事士に対し、免状の交付を受けた日から5年以内に自家用電気工作物の保安に関する講習を受け、その後も同様に受講することを義務づけている。この定期講習の義務は第一種電気工事士だけに課されるもので、第二種電気工事士にはない。「電気工事士免状には更新がある」という誤解が生まれやすい箇所なので、区別しておきたい。

免状は、財布に入れて初めて働く

携帯義務は、試験のための知識ではなく明日からの持ち物の話だ。免状を持たずに現場に立てば、その日は作業ができないのが原則になる。元請けや施主から提示を求められる場面もある。免状の定位置をあらかじめ決めておく。それだけで満たせる義務だが、決めていない人は必ず忘れる。

今日できるのは、記載事項の3つを声に出してみることだ。免状の種類、交付番号と交付年月日、氏名と生年月日。この3つに入っていないもの(住所、勤務先、連絡先)は、変わっても手続きが要らない。逆に氏名が変われば書換えが義務になる。手続きの要否は、この3項目を覚えているかどうかで一瞬で片がつく。

面白いのは、免状を交付するのが国ではなく都道府県知事だという点だ。試験は全国共通で行われるのに、免状は都道府県が出す。そして返納を命じるのも同じ都道府県知事になる。渡す相手と取り上げる相手が同じである、というこの対応関係が、免状は一度取れば終わりの証書ではないことを形にしている。いずれ独立して電気工事業の登録をするなら、この免状はそのまま事業を始めるための要件になる。個人の資格が、そのまま会社の看板の根拠になるということだ。

冒頭の工事士が抱えていた3つの出来事(姓の変更・住所の変更・免状の紛失と発見)は、それぞれどの手続きにつながるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 免状を「携帯していなければならない」を「事務所(営業所)に保管していなければならない」と書き換える

    なぜ引っかかるこの差し替えは、義務に関する問題でもっとも頻繁に使われる。しかも「紛失しないよう営業所に保管したまま作業に従事した」というように、丁寧で責任感のある行動として書かれるので、違反だと言われるまで気づきにくい。都道府県知事から報告を求められたら報告しなければならない、技術基準に適合するよう作業しなければならない、といった正しい記述の中に1つだけ混ぜられる。

    見破り方第5条第2項の語をそのまま「携帯」で覚える。免状は事務所の引き出しではなく身につけているもの、と物理的な場所で思い出す。保管・掲示・備付けといった語が出てきたら、その時点で誤りと判断する。

  2. 「住所を変更したときは書換えを申請しなければならない」と書く

    なぜ引っかかる免状の記載事項は、免状の種類・交付番号及び交付年月日・氏名及び生年月日の3つだけで、住所は入っていない。ところが免許証や保険証の感覚では住所も書かれていそうに思えるため、引っ越しで手続きが要るという記述が自然に読めてしまう。正しい側の「氏名を変更したとき」と、1語だけを差し替えて並べてくる。

    見破り方記載事項の3つを先に声に出す。この一覧に入っていないもの(住所・勤務先・連絡先)は、変わっても手続きが要らない。手続きの要否は記載事項かどうかだけで決まる、と入口を固定する。

  3. 手続きの相手を経済産業大臣にする/存在しない届出義務を作る

    なぜ引っかかる「氏名を変更したときは、経済産業大臣に申請して免状の書換えをしてもらわなければならない」という形で相手だけを差し替えるものと、「経済産業大臣に届け出をしないで複数の都道府県で作業に従事した」のように、そもそも条文にない義務を作って違反かどうかを迷わせるものの2種類がある。

    見破り方免状に関する手続きの相手はすべて都道府県知事、と一括で固定する。そのうえで、聞いたことのない届出制度が出てきたら「条文にない義務は義務ではない」と判断する。免状の手続きは再交付・書換え・返納の3つしかない。

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電気工事士法第5条第1項は技術基準適合義務、第2項は免状の携帯義務を定める。作業に従事するときは免状を携帯していなければならない
  2. 免状の記載事項は「免状の種類」「交付番号及び交付年月日」「氏名及び生年月日」の3項目だけ(施行令第3条)。住所は記載事項に入っていない
  3. 記載事項に変更が生じたときは書換えを申請しなければならない(施行令第5条・義務)。汚し・損じ・失ったときは再交付を申請することができる(施行令第4条・任意)
  4. 免状を失って再交付を受けた後にその免状を発見したときは、遅滞なく再交付を受けた都道府県知事に提出しなければならない(施行令第4条第3項)
  5. 第一種電気工事士には免状交付日から5年以内の定期講習が義務づけられている(法第4条の3)が、第二種電気工事士にこの義務はない
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