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一般用電気工作物等の検査方法 ・ 3 / 9

絶縁抵抗測定の方法と基準値

読み終えると、こうなる

200Vの回路でも、対地電圧が実は100Vだと見抜いて、正しい絶縁抵抗の基準を選び直せるようになる

  • 単相3線式の200V回路と三相200Vの回路で対地電圧が違うことを見分け、0.1MΩか0.2MΩかの基準を選び直せる
  • 活線に絶縁抵抗計を当てようとする前に、それが火花や事故につながる操作だと止められる
  • 漏れ電流1mA以下という基準から、対地電圧100Vなら0.1MΩという絶縁抵抗の値をその場で逆算できる
考えてみよう

新人の電気工事士が、竣工検査で絶縁抵抗を測ろうとした。急いでいたため、ブレーカーを落とさずに絶縁抵抗計(メガー)のクリップを充電部に接続し、測定ボタンを押した。次の瞬間、「バチッ」という音とともに火花が散り、メガーの内部から焦げた匂いがした。

絶縁抵抗計は、電流を測るわけでも電圧を測るわけでもない。あくまで「絶縁性能」を確認するための測定器のはずだ。それなのに、停電状態にせず活線のまま接続しただけで、なぜ測定器が壊れかけるほどの事態になったのか。

このトピックを読み終えるころには、絶縁抵抗測定が何を、どういう仕組みで測っているのかが分かり、この火花の正体も見えてくる。

絶縁抵抗測定は、絶縁抵抗計(一般に「メガー」と呼ばれる)を使い、電線相互間・電線と大地の間の絶縁性能が基準値以上あるかを確認する試験だ。

測定の考え方と手順

絶縁抵抗計は、内蔵の電源で直流の高い電圧を測定対象にかけ、そのときにわずかに流れる漏れ電流から絶縁抵抗値(MΩ=メグオーム)を算出する測定器だ。手順の要点は次のとおり。

  • 測定は被測定回路に電源電圧が加わっていない状態(電源を遮断した停電状態)で行う。通電中(活線状態)のまま絶縁抵抗計を接続して測定してしまうと、感電や測定器の破損(アークショートによる爆発的な故障)につながる重大な事故の原因になる
  • 測定器のL端子(LINE、ライン端子)を電線(充電部)側に、E端子(EARTH、アース端子)を接地側・大地側に接続して測定する
  • 測定後は測定対象に電荷が残っているため、感電防止のためすぐには触れず、放電してから扱う

絶縁抵抗値の基準

低圧電路の絶縁抵抗値は、電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条により、使用電圧の区分ごとに次の値以上と定められている。

電路の使用電圧の区分絶縁抵抗値
対地電圧150V以下(100V回路など)0.1MΩ以上
対地電圧150Vを超え300V以下(三相200Vの電動機回路など)0.2MΩ以上
使用電圧300Vを超えるもの0.4MΩ以上

単相3線式100V/200Vのように線間電圧が200Vであっても、中性線が接地されていて対地電圧が100V(150V以下)であれば、基準は0.1MΩが適用される。「使用電圧」ではなく「対地電圧」で区分が決まる点に注意しよう。

0.1MΩという基準は、オームの法則 $R = V / I$ から来ている。対地電圧100Vの回路に流れる漏れ電流を1mA(0.001A)以下に抑えるには、絶縁抵抗が $100 / 0.001 = 100{,}000\Omega = 0.1\text{MΩ}$ 以上必要になる、という考え方だ。

冒頭の火花は、この仕組みの裏返しで説明できる。絶縁抵抗計は「電圧が加わっていない電路」に自分で直流の高電圧をかけて測る前提の測定器だ。そこにすでに電圧がかかっている活線をつないでしまうと、外部の電源電圧とメガー内部の直流電源が同じ回路上でぶつかり合う。

事故が起きる前に見つけられる、ほとんど唯一の数字

絶縁の劣化は、音も匂いも出さずに進む。照明は点き、コンセントは使え、何の不便もないまま基準を割っていく。それを数字にできるのが絶縁抵抗測定で、この検査だけが「まだ起きていない事故」を見つけられる。値を下げているものの正体は、ネズミがかじった被覆だったり、湿気を吸った古い配線だったり、ビスが1本被覆を貫いた箇所だったりする。人が気づく前に、数字のほうが先に教えてくれる。

今日できるのは、自宅の分電盤を開けて、回路ごとに基準値を当ててみることだ。100Vの分岐回路なら対地電圧150V以下だから0.1MΩ以上。200Vのエアコン専用回路も、単相3線式で中性線が接地されていれば対地電圧は100Vなので、やはり0.1MΩ以上になる。「200Vだから0.2MΩ」と反射的に答えたくなるところで踏みとどまれるか。線間電圧ではなく対地電圧で見るという一点が、そのまま実務での判定そのものになる。

この基準が漏れ電流から逆算されていると知ると、丸暗記が要らなくなる。対地電圧100Vの回路で漏れ電流を1mA以下に抑えるには 100 ÷ 0.001 = 0.1MΩ。区分が上がるほど基準値も上がるのは、電圧が高いほど同じだけしか漏らさないためにより高い絶縁が要るからだ、と方向だけ押さえておけばいい。屋根の上のパネル、壁付けの蓄電池、屋外のEV充電設備。雨と紫外線にさらされる場所の設備が増えるほど、絶縁を数字で見張る仕事は増えていく。

火花の正体、そしてそれがなぜ測定器の破損につながるのか——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 「単相3線式100/200V」と書いておいて、線間電圧の200Vで区分を判定させる

    なぜ引っかかる省令第58条の表は、使用電圧300V以下の電路をさらに「対地電圧が150V以下の場合」と「その他の場合」に分けている。判定に使うのは対地電圧であって線間電圧ではない。ところが問題文に200Vという数字が見えた瞬間、頭は0.2MΩへ飛ぶ。中性線が接地された単相3線式では、線間200Vでも対地電圧は100Vなので、当てはまる基準は0.1MΩのままだ。

    見破り方数値を選ぶ前に「この電路の対地電圧は何Vか」を口に出して確定させる。中性線が接地された単相3線式なら対地電圧100V。問題文が「対地電圧」と書いているのか「使用電圧(線間電圧)」と書いているのかを、指で押さえて読み分ける。

  2. 300Vを超える区分だけは対地電圧ではなく使用電圧で決まる、という切り替わりを見落とさせる

    なぜ引っかかる「区分は対地電圧で見る」と覚え直した人が、今度は逆側で外す。表のいちばん下の段は「300Vを超えるもの」=使用電圧そのもので0.4MΩ。対地電圧で分かれるのは、あくまで300V以下の内側だけだ。

    見破り方判定は必ず2段階の順序で行う。まず使用電圧が300Vを超えるか(超えれば0.4MΩで確定)。300V以下のときだけ、対地電圧が150V以下かどうかで0.1と0.2を分ける。

  3. 絶縁抵抗計と接地抵抗計、直流と交流の4つを組み替えて並べる

    なぜ引っかかる「メガーは直流、アーステスタは交流」は一行の知識だが、器具名と電源種別を掛け合わせた4通りが選択肢に並ぶと、覚えた向きが急に自信のないものに見えてくる。

    見破り方結論ではなく理由ごと思い出す。絶縁抵抗計は電圧の加わっていない電路に自分で高い電圧をかけて漏れ電流から抵抗を出すので直流。接地抵抗計は直流を大地に流すと分極作用で正しく測れないので交流。理由が言えれば、選択肢の並べ替えでは崩れない。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 絶縁抵抗測定は絶縁抵抗計(メガー)を使い、内蔵の直流電源から高い電圧をかけたときのわずかな漏れ電流から絶縁抵抗値(MΩ)を算出する
  2. 低圧電路の絶縁抵抗値は、対地電圧150V以下で0.1MΩ以上、150V超300V以下で0.2MΩ以上、300V超で0.4MΩ以上(電気設備技術基準省令第58条)
  3. 測定は必ず停電状態(電源を遮断した状態)で行う。活線状態のまま測定するとアークショートによる測定器破損や感電の重大事故につながる
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