夕方の商店街。看板のネオン管、店先の蛍光灯、その奥の駐車場を照らす背の高い投光器。どれも同じ配電線から電気をもらっている。
ところが器具の中を開けると、蛍光灯には安定器という重い箱が、ネオン看板の裏にはネオン変圧器という別の箱が、投光器の根元にはまた別の安定器が収まっている。白熱電球なら電源につなぐだけで光るのに、なぜこれらの灯りは箱を1つ挟まないと光らないのか。そして、その箱はなぜ光源ごとに別物なのか。
学科試験は、この「機器と機器の組合せ」を繰り返し問うてくる。4つ並んだ組合せのうち、明らかに噛み合わない1組を選べ、という形で。年度をまたいで何度も姿を見せる、定番の設問だ。
見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、機器の名前を2つ並べられただけで、その2つが組めるかどうかを言えるようになっている。
白熱電球は、フィラメントに電流を流して熱で光らせる。だから電源につなげばそれで光る。ところが蛍光灯、HIDランプ、ネオン管はどれも放電で光る。気体や金属蒸気の中を電気が飛ぶことで発光する方式だ。この仲間には、電源とランプの間にもう1つ機器が要る。
放電で光る灯りには、点灯装置が要る
放電ランプ用の点灯装置に与えられた仕事は、2つある。1つはランプ内に放電経路を作ること。もう1つは、適正な電流を供給し、過大な電流を防ぐことだ。
前者は点灯の瞬間だけの仕事で、後者は点いている間ずっと続く仕事になる。
そう見ると、光源ごとに相棒が違う理由も見えてくる。点けるために必要な電圧も、抑えるべき電流の大きさも、ランプごとに違うのだから。
蛍光灯の相棒 — 安定器と、点灯管が要る回路・要らない回路
蛍光灯用安定器は、蛍光灯の電流を一定値に安定させる役割を担う。構造で大きく2つに分かれる。
- 磁気回路式: 銅と鉄を主材とする。グロースタータ式とラピッド式がある
- 電子式(インバータ式): 商用電源を直流に変えたうえで、20〜50kHzの高周波に変換して蛍光灯を点灯させる
そして、点灯回路の方式によって点灯管が要るかどうかが変わる。点灯管はバイメタルの働きにより、電源スイッチを入れたあとに蛍光灯の電極を数秒間予熱して、ランプを自動的に点灯させる放電管だ。グロースタータ、グローランプ、グロー球とも呼ばれる。
回路の中での居場所も、安定器とは違う。日本照明工業会のガイドブックは、グロースタータ式の回路構成を「ランプに並列に点灯管(グロースタータ)が入っています」と説明している。電源からランプへの経路に直列で挟まるのは安定器のほうで、点灯管はランプの電極間に橋を架けるように並列に入り、接点が閉じて電極を予熱し、離れる瞬間にランプ両端へ高い電圧を発生させる。相棒は1つではなく、直列に1つ・並列に1つという配置になっている。
- スタータ式: 点灯管が必須
- ラピッドスタート式: 点灯管は不要。ただし近接導体もしくは適応する器具が必要になる
- インバータ式(電子式): 点灯管は不要
同じ「蛍光灯」でも、器具の方式が違えば必要な部品が違う。なお、予熱する回路と、安定器から一定電圧の高圧パルスをタイミングよく発生する回路を内蔵した電子点灯管という製品もあり、点灯管と同じ寸法・同じ口金なのでそのまま交換できる。ただしメーカーは「一部使用できない器具がありますので適合放電管をご確認ください」と但し書きを添えている。同じ寸法だから必ず入る、とまでは言えない。
HIDランプの相棒 — 水銀灯用安定器を共用できる範囲
HIDランプの正式名称は高輝度放電ランプ(High Intensity Discharge Lamp)で、金属蒸気中の放電によって発光するメタルハライドランプ・高圧ナトリウムランプ・水銀ランプの総称だ。1灯当たりの光束が大きく、白熱電球に比べて高効率・長寿命だが、点灯には電流を制御する安定器が必要になる。
面白いのは、始動器を内蔵したメタルハライドランプや高圧ナトリウムランプには、「水銀灯用安定器」という共通の土台に乗せられるものがあることだ。
- 水銀ランプ用安定器には、チョーク形(C形・CC形・CL形)、漏れ変圧器形(T形・TC形)、定電力形(RC形)、直列2灯用定電力形(WH-RC形)、調光用(CD形・RD形)、自動調光形(CDT形・RDT形)といった種類がある
- 岩崎電気のFAQは、メタルハライドランプについて「1灯用水銀灯安定器の“一般形”“低始動電流形”であれば……点灯可能です」としている
- ただし、どの形式の安定器で点灯できるかはランプの品種やワット数によって変わる。同じシリーズでもワット数が違えば使える安定器の範囲が変わるので、最後はカタログの「使用安定器」欄を確認することになる
ただし、この土台は無条件ではない。同じ水銀灯用でも、2灯用安定器・定電力形安定器・調光形安定器はメーカーが「ご使用になれません」としており、安定器を含めた交換が必要になる。
ランプの箱に書かれたW数が合っていても、それだけでは点かないことがある——これがHIDランプの相棒選びの勘所だ。
例外がある — 相棒をランプの中に入れてしまった水銀灯
放電ランプには必ず安定器が要る、という話にはよく知られた例外がある。バラストレス水銀灯(セルフバラスト水銀ランプ)だ。
このランプは、安定器の役目をするバラストフィラメントをランプ内に内蔵している。直接電源に接続するだけで点灯するため、外付けの安定器が要らない。内蔵されたフィラメントには2つの役割があり、1つは始動時に主電極と補助電極の間で局部的な放電を開始させること、もう1つは点灯直後に増大するランプ電流を制御することだ。
点灯装置に求められる2つの仕事が、そのままフィラメント1本に割り当てられている。相棒が消えたのではなく、ランプの内側に引っ越しただけなのだ。安定器なしで済む手軽さから、投光照明、工事現場の照明、高天井照明・工場・体育館、既設の白熱電球照明の改善などに使われてきた。
ネオン管の相棒 — 桁の違う電圧をつくる
ネオン管は、ネオントランス(ネオン変圧器)を用いて6,000V〜15,000Vという極めて高い電圧に昇圧して点灯させる。ここまで見てきた蛍光灯やHIDランプとは、要求される電圧の桁がまるで違う。
つまりネオン変圧器は、電圧をとことん高くする代わりに、流す電流はごくわずかという一点に振り切った機器だ。細いガラス管の中に長い距離の放電を起こすためにそうなっている。二次側に流せる電流の大きさや、1台で点灯できるネオン管の長さといった細かい数字は、製品や周波数によって変わる。カタログの数字を1つずつ覚えるより、昇圧する機器であって、電流を抑える機器ではないという性格のほうを持っておくと、試験では効く。
ネオン管は、容易にメンテナンスができない高所のサイン照明などに使われてきた。ただし高電圧を使うため消防法の規制対象となり、近年はLEDネオンのような規制対象外の代替製品への置き換えが進んでいる。
出題のかたち — 4つ並ぶ組合せから、噛み合わない1組を抜く
学科試験には、こんな一文で始まる設問が繰り返し置かれてきた。
組み合わせて使用する機器で,その組合せとして,明らかに誤っているものは。
並ぶ選択肢のうち3つは、現場で実際に組まれる成立した組合せで埋められる。光電式自動点滅器と庭園灯(暗くなったら屋外灯を点ける)、零相変流器と漏電警報器(地絡電流を検出して知らせる)、スターデルタ始動装置と一般用低圧三相かご形誘導電動機(始動電流を抑える)といった顔ぶれだ。三相かご形誘導電動機の始動については電動機(モーター)の始動の仕組みで扱っている。
そして残る1つに、このトピックで見てきた機器が顔を出す。ネオン変圧器と、ネオン管ではない放電ランプ——という組合せだ。ここで動かされるものが2つある。1つは、その組合せに書かれる光源の名前。高圧水銀灯のこともあれば、メタルハライドランプのこともある。もう1つは、選択肢の並び順だ。成立する3つの組合せは文言こそほぼ同じでも、置かれる位置が年度によって入れ替わる。
記号で覚えていた人は、並び順が動いた瞬間に外す。文字列で覚えていた人は、光源の名前が差し替わった瞬間に手が止まる。役割で持っていた人だけが、どの年も同じ速さで解ける。
似た「箱もの」4つを、端子の形で見分ける
写真4択では、安定器・変流器・ネオン変圧器・進相コンデンサという 「金属の箱+端子」という点で似た機器が並ぶ。決め手は端子と表示にある。
| 機器 | 見た目の決め手 |
|---|---|
| ネオン変圧器 | 二次側に碍子状の高圧端子が突き出す。本体に「危険」の表示。二次はらせん状のネオン電線へ |
| 安定器(蛍光灯用) | 平たい金属箱。リード線が数本(多色)束で出るだけ。高圧端子も貫通穴も無い |
| 変流器(CT) | 中央に大きな貫通穴(窓)が開いている。二次端子は k・l の小さなねじ端子2つ |
| 進相コンデンサ | 箱の上面に端子が2〜3個並ぶ。銘板に静電容量〔μF〕と定格電圧が書かれる |
- 穴が開いていれば CT(電流を測るために導体を通す)
- 碍子状の端子+危険表示なら ネオン変圧器(高圧を作る)
- 銘板に μF とあれば 進相コンデンサ(静電容量が主役)
- どれでもなく、リード線が束で出ているだけなら 安定器
銘板の単位が、その機器の役目を語る。μFは静電容量、Aは電流、Vは電圧。 何を主役にした機器かが単位に出る。名前を思い出せなくても、ここから逆算できる。
高周波点灯専用形(インバータ式)は、何がうれしいのか
蛍光灯の点灯方式を問う設問は、インバータ式(高周波点灯専用形)が従来式より何が優れているかを聞いてくる。「20〜50kHzの高周波に変換する」「点灯管が不要」という仕組みまでは知っていても、利点を3つ言えるかが分かれ目になる。
- ちらつきが少ない — 商用周波数(50/60Hz)で点灯すると、1秒間に100〜120回の明滅が起きる。20〜50kHzまで上げると、明滅が速すぎて目が追えなくなり、ちらつきとして知覚されない
- 発光効率が高い — 同じ明るさをより少ない電力で得られる。ランプ効率そのものが高周波域で上がるうえ、銅鉄式安定器のような損失の大きい部品を使わない
- 点灯までの時間が短い(即時点灯) — 点灯管による予熱を待つ必要がなく、スイッチを入れた瞬間に点く
誤答肢に混ぜられるのは、この裏返しだ。「点灯に要する時間が長い」は、点灯管式(グロースタート式)の特徴であって、インバータ式のものではない。仕組み(高周波)と利点(ちらつき・効率・即時)を、セットで持っておきたい。
3つの利点は、どれも「周波数を上げた」という1つの操作から出ている。速く点滅させればちらつきは消え、高周波では放電が効率よく起き、電子回路で制御するから予熱の段取りが要らなくなる。ばらばらの長所ではなく、1つの設計変更が同時に3方向へ効いた結果だと見ると、覚え直す必要がなくなる。
オフィスや学校の照明がインバータ式に置き換わり、その先でLEDに移っていったのも同じ流れの上にある。ちらつきの少なさは、長時間その部屋で過ごす人の疲れに直結する——効率の話に見えて、実は使う人の体感の話でもあった。
蛍光灯と白熱電灯を、同じ消費電力で並べてみる
「同じ消費電力の蛍光灯と白熱電灯を比べたとき、蛍光灯の特徴として誤っているものはどれか」——4つの軸で比較させる出題がある。誤っているものを選ばせる形式なので、4つとも正しく言えないと消去できない。
| 比べる軸 | 蛍光灯(白熱電灯と比べて) | なぜそうなるか |
|---|---|---|
| 発光効率 | 高い(同じ消費電力なら明るい) | 白熱電灯は電力の大半を熱として捨て、その余りで光る。蛍光灯は放電と蛍光体で光を作るので、熱に回る割合が小さい |
| 寿命 | 長い | フィラメントを高温で焼き続ける白熱電灯は、蒸発でフィラメントが痩せて切れる。蛍光灯にはその消耗が無い |
| 力率 | 悪い(低い) | 安定器のコイル(インダクタンス)が入るため、電流が電圧より遅れる。白熱電灯はほぼ抵抗だけなので力率はほぼ1 |
| 雑音(ノイズ) | 出やすい | 放電と安定器のスイッチングが電気的な雑音を生む。ラジオに近づけると雑音が入るのはこのため |
理由まで押さえておくと逆転に気づける。力率が悪いのは安定器のコイルのせい——つまり「相棒の機器を必要とすること」が、そのまま短所になっている。裸のフィラメントに電気を通すだけで光る白熱電灯には、その相棒が要らない。
この比較表は、照明が白熱電灯 → 蛍光灯 → LEDと移ってきた道筋そのものでもある。効率と寿命を取りに行った結果、力率と雑音という新しい課題が生まれ、電子回路でそれを抑え込んできたのがインバータ式でありLEDだった。
「力率の最も良い機器はどれか」と問われたら、答えは電熱器(電気トースターなど)の側だ。 ニクロム線に電気を通すだけのほぼ純抵抗の負荷で、電圧と電流の位相がずれない。 モーターを持つ機器(洗濯機・冷蔵庫)はコイルのぶん遅れ、LEDや蛍光灯は内蔵回路のぶん歪む。 「新しい・高効率=力率も良い」ではない——効率と力率は別の物差しだ。
新しい光源が抱える弱点は、たいてい「光らせるために足した回路」の側にある——この見方は、次に何が来ても使える。
街の灯りの色から、器具の中の箱まで読めるようになる
夜、幹線道路を歩いてみるとわかりやすい。オレンジ色の光が並んでいれば、高圧ナトリウムランプの可能性が高い。ナトリウム蒸気中の放電による発光で、岩崎電気はこのランプを水銀ランプの約2倍のランプ効率と説明している。ただしオレンジ色なら必ずそうとは限らない。トンネルなどに使われる低圧ナトリウムランプもあれば、電球色やアンバー色のLEDへ置き換わった道路照明も増えている。色は入口の手がかりであって、答えそのものではない。それでも、高圧ナトリウムランプが置かれてきた場所を知っていれば、当たりの精度は上がる。道路照明、野球場やテニスコートなどの屋外スポーツ施設、工場や体育館の高天井照明、空港・港湾・広場の広域照明、公園・街路照明——オレンジ色の灯りが集まる場所は、だいたいこの用途に重なる。白い光で照らされたスタジアムや百貨店の売り場なら、メタルハライドランプの領分になる。金属蒸気中の放電による白色光で、水銀ランプよりランプ効率と演色性に優れる。色を見れば光源が読め、光源が読めれば器具の中に入っている箱まで想像がつく。街の景色が、そういう順番で分解できるようになる。
この読み方は、そのまま仕事になる。一般照明用の高圧水銀ランプは水俣条約により2021年から製造・輸出・輸入が禁止され、岩崎電気は2020年に水銀ランプの受注・生産を終了した。パナソニックもHIDランプの生産を2024年3月末で終了している。それでも全国の工場・倉庫・体育館の天井には、HID器具が現役で残っている。「球だけ替えられませんか」と相談されたとき、器具の中の安定器を見に行ける人と、行けない人がいる。2灯用や定電力形、調光形の安定器なら、同じW数のメタルハライドランプを持ってきてもメーカーは使用不可としており、安定器を含めた交換が要る。銘板を1枚読むかどうかで、脚立を上る回数が変わる。
置き換え先も具体的だ。パナソニックのLED高天井用照明は天井高8m以上(機種により約12mまで)を対象に、体育館・アリーナ、工場、大型・中型倉庫、屋内プールへ入っていく。ここで効いてくるのが、このトピックの見方そのものだ。LEDは直流電源で点灯するため、一般の交流電源を直流へ変換する必要があり、点灯回路がその役割を担っている。現在商品化されている電球形LEDランプのほとんどは、定電流方式を採用した点灯回路だ。放電ランプの安定器も、LEDの点灯回路も、やっていることは「そのランプに合った電気に整えて渡す」で変わらない。相棒は消えたのではなく、器具の中へ移った。だからHIDからLEDへの更新の話は、光源が入れ替わる話であると同時に、電源とランプの間に何を置くかを決め直す話でもある。詳しい進め方はLED照明のリニューアルにまとめてある。
ネオンの側には、もう1つ知っておきたい線が引かれている。最大電力500kW未満の需要設備の特殊電気工事に当たるネオン工事は、第一種電気工事士の資格では従事できず、特種電気工事資格者でなければ扱えない。取得には、電気工事士免状の交付後に5年以上のネオン工事の実務経験を積んでネオン工事資格者認定講習を修了するか、ネオン工事技術者試験に合格する必要がある。6,000V〜15,000Vという電圧は、資格の地図の上にもちゃんと線を引いている。「相棒が特別なら、扱う人も特別」——組合せの問題は、そういう世界の入口でもある。
白熱電球なら電源につなぐだけで光るのに、なぜ放電で光る灯りは箱を1つ挟まないと光らないのか。そして、その箱はなぜ光源ごとに別物なのか。4つ並んだ組合せから、噛み合わない1組を抜き出せるか——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。