電気ケトルのプラグをコンセントに挿した瞬間、「バチッ」と音がしてブレーカーが落ちた。まだ電源スイッチも入れていないのに、だ。
このケトル、普段の運転時は100Vで約12A(消費電力にして1200W前後)が流れる。抵抗にすると約8Ωしかない、ごく普通のケトルだ。それなのに、なぜプラグを挿しただけの一瞬で、ブレーカーが反応するほどの電流が流れたのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電卓を使わなくてもその場で答えられるようになっている。
種明かしは、電圧 (ボルト)・電流 (アンペア)・抵抗 (オーム)という3つの数字の関係にある。これがオームの法則だ。
3つの数字はどれか2つが分かれば、残り1つは自動的に決まる。式は3通りに変形できるが、覚えるのは最初の1つだけでいい。
- 電圧を求める:
- 電流を求める:
- 抵抗を求める:
「V=I×R」さえ頭に入れておけば、残り2つはその場で式を移項すれば出てくる。
例題
100Vの電源に20Ωの抵抗器を接続したとき、流れる電流は何Aか。
電線同士が直接触れてしまう「ショート」は、まさにこの状態だ。本来ヒーターの中を通って抵抗を受けながら流れるはずの電流が、抵抗のほとんどない道(触れ合った銅線同士)を見つけてしまう。実際には配線にごくわずかな抵抗が残るため無限大にはならないが、普段の運転時とは比較にならない電流が一瞬で流れる。だからこそ火花が飛び、ブレーカーがそれを検知する。20A程度のブレーカーであれば、ショートを検知してから遮断するまでの時間はわずか0.01〜0.02秒ほどだ。まばたきよりも速い。
接地記号は、電流には関係しない。基準点を決めているだけ
回路図に接地記号が付いていると、「そこから電流が逃げるのでは」と考えてしまう。 だが試験に出る回路では、接地点は電流の通り道にはならない。接地が1か所だけなら、 そこから出て戻る経路が無いからだ。
では何のために描かれているのか。電位の基準(0V)を決めるためだ。
「a-b間の電圧は」と2点を指定する問題で、接地記号は「aを0Vとして考えてよい」という 目印になっている。
- 電流を求める……接地は無視してよい。1本のループとして I = 全起電力 ÷ 全抵抗
- 基準点を0Vと置く……接地記号のある点を0Vにする
- 基準点から目的の点まで、たどりながら足し引きする……電源を通れば起電力を足し、 抵抗を通れば電圧降下(I×R)を引く
電流の計算と、電位の計算は別の作業だと分けておくのが要だ。 接地記号を見て電流計算を悩みはじめると、そこで止まる。 接地は電位の話にしか効かない。
測れない電流を、測れる2つの数字から言い当てる
電流を測るには回路を切って計器を割り込ませなければならないが、抵抗ならコンセントから抜いた状態で測れる。つまりこの式は、電気を流す前に電流の大きさを言い当てるための道具だ。今日試すなら、使っていない電気器具をコンセントから抜き、テスタの抵抗レンジをプラグの刃に当ててみるといい。白熱電球なら、100V・60Wから逆算した約167Ωよりずっと小さい値が出るはずだ。フィラメントは熱くなるほど抵抗が増えるので、冷えている間は何分の一かまで下がっている。電球が切れるのがたいていスイッチを入れた瞬間なのは、そのせいだ。
この式が最初に置かれているのは、計算力を試すためではない。 が小さくなるほど電流が跳ね上がるという一方向の事実を、体に入れさせるためだ。短絡も、緩んだ端子の異常発熱も、絶縁の劣化も、すべてこの式の上で起きている。現場で使う絶縁抵抗計にしても、電圧をかけて流れた微小な電流から抵抗を逆算する の装置にすぎない。裏返せば、電圧を上げれば同じ電流でより多くの電力を運べるということでもある。EV充電器やIHが200Vで作られるのはそのためで、これから増える設備ほど、この一本の式の上に立っている。
冒頭のケトルで何が起きていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。