前のトピックで見た豆電球の直列回路は、電球を1個抜くだけで電流の道が途切れ、残りの電球も全部消えてしまった。
では、自宅の配線はどうだろう。1階の洗面所にある60Wの照明(100Vで使うので、通常運転時の抵抗にして約167Ω)が球切れを起こし、フィラメントが断線して抵抗が事実上無限大になった。それなのに、2階の寝室の照明も、リビングのコンセントに挿さったテレビも、何ひとつ変わらず動き続けている。
同じ「負荷が1つ壊れる」という出来事なのに、なぜ結果がこんなに変わるのか。もし家中の配線が、あの豆電球の実験と同じ直列つなぎだったらどうなっていたか、想像してみてほしい。洗面所の電球1個が切れただけで、家中の照明とコンセントが一斉に使えなくなっていたはずだ。
電流が複数の道に分かれる「並列回路」では、合成抵抗は各抵抗の逆数の和の逆数になる。
抵抗が2個だけなら、次の「和分の積」の形が計算しやすい。
例題
10Ωと15Ωの抵抗を並列に接続したときの合成抵抗は何Ωか。
(6Ωは、どちらの抵抗(10Ω・15Ω)よりも小さくなっている=直感と一致)
この並列という接続方法には、計算上のクセ以上に大事な意味がある。電流の道が複数に分かれているということは、そのうちの1本が塞がれても、残りの道はそのまま生きているということだ。
一般家庭のコンセントや照明は、分電盤から伸びる分岐回路の中で、基本的にこの並列接続でつながっている。だから、1つの照明が球切れを起こしたり、1つの家電が故障したりして、その部分の抵抗が実質無限大(回路が切れた状態)になっても、それは並列に並んだ道の1本が塞がれるだけで済む。電流は残りの並列な道を通って、他の照明・家電には変わらず流れ続ける。
直列と並列が混ざったら、内側からほどく
試験に出る回路は、たいてい直列と並列が混ざっている。公式を2つ知っていても、 どちらから手をつけるかが決まっていないと止まる。順序は1つだけだ。
内側(並列になっている塊)から先にまとめて、1本の抵抗に置き換える。 置き換えたら、あとは直列の足し算になる。
例:3Ω と 6Ω が並列になった塊と、6Ω と 3Ω が並列になった塊が、直列につながっている。
- 1つ目の並列:3Ωと6Ω → 積÷和で (3×6)/(3+6) = 18/9 = 2Ω
- 2つ目の並列:6Ωと3Ω → 同じく 2Ω
- 直列にする:2 + 2 = 4Ω
- 枝分かれして、また合流している → 並列。先にまとめる
- 1本道で数珠つなぎ → 直列。あとで足す
並列2本だけなら 積÷和(掛けて割る)が速い。3本以上なら 1/R の和を取って逆数にする。
内側から外側へという順序さえ守れば、抵抗が5個でも6個でも同じ手順で解ける。 図が複雑に見えるのは、まとめる前の姿を見ているからだ。1段まとめるたびに図は単純になる。
枝の電流1つから、回路全体へ戻る
計器の指示値が1つだけ与えられ、そこから別の場所の値を問われることがある。「電流計が1Aを指している。このとき電圧計は何Vを指すか」といった形だ。与えられているのは枝1本の電流で、聞かれているのは別の場所——この行き来には、決まった足場がある。
1本の枝の電流が分かれば、その枝の で並列部の電圧が出る。並列部の電圧が出れば、他の枝の電流もそれぞれ で出る。全部足せば全電流になり、全電流が出れば直列部分の電圧降下も計算できる。
手順にすると、枝 → 並列部の電圧 → 他の枝 → 全電流 → 直列部という一方通行の道になる。
たとえば、8Ωと2Ωが並列に並び、8Ωの枝の電流計が1Aを指しているとする。
- 並列部の電圧:〔V〕
- 2Ωの枝の電流:〔A〕
- 全電流:〔A〕
- この5Aが、直列に入っている抵抗にそのまま流れる
逆に、全電流から枝の電流を出したいときは同じ道を逆にたどる。どちらの向きでも、通るのは「並列部の電圧」という同じ一点だ。並列回路の問題で行き詰まったら、まずこの電圧を出せないかを探す——それが解けるかどうかの分かれ目になる。
行き止まりの枝には、電流が流れない
回路図に「端子a-b間の電圧はいくらか」と書かれた問題がある。a・bは測定端子で、その先には何もつながっていない。ここで手が止まる人が多い。
思い出したいのは、電流が流れるには一周する道が要るということだ。端子aへ伸びた線の先が開放(行き止まり)なら、その枝には電流が流れようがない。そして——
だから、端子a-b間の電圧を問われたら、まず電流が実際に流れている経路だけを取り出す。開放端へ伸びる枝の抵抗を消すと、図は見慣れた直並列回路に戻る。あとはそこで分圧を計算し、その値がそのまま端子間に現れる。
同じ考え方は、開いたスイッチにも使える。スイッチが開いていれば、その先の枝は行き止まりと同じ。逆にスイッチを閉じると、そのスイッチと並列にあった抵抗は短絡されて消える。「開けばその先が消える」「閉じればそれと並列のものが消える」——この2つで、スイッチ付き回路の見た目はぐっと単純になる。
実務でこの感覚が効くのは、テスタを当てるときだ。テスタの内部抵抗はきわめて大きいので、電圧を測っている間、テスタ側にはほとんど電流が流れない。測ること自体が回路をほとんど乱さない——測定端子が回路に与える影響が無視できるのは、この「行き止まりには電流が流れない」の延長にある。
コンセントを1つ増やすと、家全体では何が起きるのか
並列に負荷を足すたび、合成抵抗は下がり、幹線を流れる電流の合計は増えていく。だから機器を増やすときの判断はいつも二段構えになる。その分岐回路の容量に収まるか、そして家全体を守る主幹ブレーカーに収まるか。並列の計算は、この二段目を考えるための道具だ。
今日できるのは、分電盤の扉を開けて数字を読むことだけでいい(触る必要はない。見るだけだ)。主幹に「50A」、その下に「20A」と書かれた分岐ブレーカーが十数個並んでいるはずだ。20A×十数個が50Aに収まるわけがない、と思うだろうか。それでいい。すべての回路を同時に上限まで使うことはない、という前提で設計されているからだ。
この「必要なときだけ道が使われる」という並列の性質が、家の中の電気を成り立たせている。一方で、EV充電のように何時間も上限近くを使い続ける負荷が加わると、その前提は少し変わってくる。EV充電器や蓄電池、V2Hの設置工事は、分電盤に新しい並列の道を1本足す作業であり、そのたびに「主幹にまだ余裕があるか」が問われる。これから電気工事の現場で最も頻繁に求められる判断のひとつが、この足し算だ。
冒頭の疑問について、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。