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電気に関する基礎理論 ・ 3 / 10

並列回路の合成抵抗

読み終えると、こうなる

分電盤に並ぶ「主幹50A・分岐20A×12」という一見足し算の合わない数字の並びが、ちゃんと考えられた設計だと分かるようになる

  • 6Ωと3Ωの並列のような計算のあと「答えは小さいほうの抵抗より小さいか」の一手で検算し、足し算や積の取り違えに気づける
  • 3個以上の抵抗が並列にあるとき、2個ずつ和分の積で段階的にまとめる手順に組み立て直せる
  • スイッチが1つ描かれた回路図を見たら、開閉の状態どおりに線を引き直してから合成抵抗を求められる
考えてみよう

前のトピックで見た豆電球の直列回路は、電球を1個抜くだけで電流の道が途切れ、残りの電球も全部消えてしまった。

では、自宅の配線はどうだろう。1階の洗面所にある60Wの照明(100Vで使うので、通常運転時の抵抗にして約167Ω)が球切れを起こし、フィラメントが断線して抵抗が事実上無限大になった。それなのに、2階の寝室の照明も、リビングのコンセントに挿さったテレビも、何ひとつ変わらず動き続けている。

同じ「負荷が1つ壊れる」という出来事なのに、なぜ結果がこんなに変わるのか。もし家中の配線が、あの豆電球の実験と同じ直列つなぎだったらどうなっていたか、想像してみてほしい。洗面所の電球1個が切れただけで、家中の照明とコンセントが一斉に使えなくなっていたはずだ。

電流が複数の道に分かれる「並列回路」では、合成抵抗は各抵抗の逆数の和の逆数になる。

1R合成=1R1+1R2+\frac{1}{R_{合成}} = \frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_2} + \cdots

抵抗が2個だけなら、次の「和分の積」の形が計算しやすい。

R合成=R1×R2R1+R2R_{合成} = \frac{R_1 \times R_2}{R_1 + R_2}
並列に抵抗を増やすほど電流の抜け道が増えるため、合成抵抗は必ず一番小さい抵抗値よりもさらに小さくなる。

例題

10Ωと15Ωの抵抗を並列に接続したときの合成抵抗は何Ωか。

R合成=10×1510+15=15025=6ΩR_{合成} = \frac{10 \times 15}{10 + 15} = \frac{150}{25} = 6\Omega

(6Ωは、どちらの抵抗(10Ω・15Ω)よりも小さくなっている=直感と一致)

この並列という接続方法には、計算上のクセ以上に大事な意味がある。電流の道が複数に分かれているということは、そのうちの1本が塞がれても、残りの道はそのまま生きているということだ。

一般家庭のコンセントや照明は、分電盤から伸びる分岐回路の中で、基本的にこの並列接続でつながっている。だから、1つの照明が球切れを起こしたり、1つの家電が故障したりして、その部分の抵抗が実質無限大(回路が切れた状態)になっても、それは並列に並んだ道の1本が塞がれるだけで済む。電流は残りの並列な道を通って、他の照明・家電には変わらず流れ続ける。

直列と並列が混ざったら、内側からほどく

試験に出る回路は、たいてい直列と並列が混ざっている。公式を2つ知っていても、 どちらから手をつけるかが決まっていないと止まる。順序は1つだけだ。

内側(並列になっている塊)から先にまとめて、1本の抵抗に置き換える。 置き換えたら、あとは直列の足し算になる。

:3Ω と 6Ω が並列になった塊と、6Ω と 3Ω が並列になった塊が、直列につながっている。

  1. 1つ目の並列:3Ωと6Ω → 積÷和で (3×6)/(3+6) = 18/9 = 2Ω
  2. 2つ目の並列:6Ωと3Ω → 同じく
  3. 直列にする:2 + 2 =
迷わないための見分け方は、**「枝分かれしているか」**の1点だ。
  • 枝分かれして、また合流している並列。先にまとめる
  • 1本道で数珠つなぎ直列。あとで足す

並列2本だけなら 積÷和(掛けて割る)が速い。3本以上なら 1/R の和を取って逆数にする。

内側から外側へという順序さえ守れば、抵抗が5個でも6個でも同じ手順で解ける。 図が複雑に見えるのは、まとめる前の姿を見ているからだ。1段まとめるたびに図は単純になる。

枝の電流1つから、回路全体へ戻る

計器の指示値が1つだけ与えられ、そこから別の場所の値を問われることがある。「電流計が1Aを指している。このとき電圧計は何Vを指すか」といった形だ。与えられているのは枝1本の電流で、聞かれているのは別の場所——この行き来には、決まった足場がある。

**並列に並んだ枝には、どれも同じ電圧がかかる。** これが渡り廊下になる。

1本の枝の電流が分かれば、その枝の V=IRV = IR並列部の電圧が出る。並列部の電圧が出れば、他の枝の電流もそれぞれ I=V/RI = V/R で出る。全部足せば全電流になり、全電流が出れば直列部分の電圧降下も計算できる。

手順にすると、枝 → 並列部の電圧 → 他の枝 → 全電流 → 直列部という一方通行の道になる。

たとえば、8Ωと2Ωが並列に並び、8Ωの枝の電流計が1Aを指しているとする。

  1. 並列部の電圧1×8=81 \times 8 = 8〔V〕
  2. 2Ωの枝の電流8÷2=48 \div 2 = 4〔A〕
  3. 全電流1+4=51 + 4 = 5〔A〕
  4. この5Aが、直列に入っている抵抗にそのまま流れる

逆に、全電流から枝の電流を出したいときは同じ道を逆にたどる。どちらの向きでも、通るのは「並列部の電圧」という同じ一点だ。並列回路の問題で行き詰まったら、まずこの電圧を出せないかを探す——それが解けるかどうかの分かれ目になる。

行き止まりの枝には、電流が流れない

回路図に「端子a-b間の電圧はいくらか」と書かれた問題がある。a・bは測定端子で、その先には何もつながっていない。ここで手が止まる人が多い。

思い出したいのは、電流が流れるには一周する道が要るということだ。端子aへ伸びた線の先が開放(行き止まり)なら、その枝には電流が流れようがない。そして——

**電流が流れない抵抗には、電圧降下も生じない。** オームの法則 $V=IR$ に $I=0$ を入れれば $V=0$。抵抗が何Ωであろうと関係ない。行き止まりの枝に直列で入っている抵抗は、**あってもなくても同じ**として消してよい。

だから、端子a-b間の電圧を問われたら、まず電流が実際に流れている経路だけを取り出す。開放端へ伸びる枝の抵抗を消すと、図は見慣れた直並列回路に戻る。あとはそこで分圧を計算し、その値がそのまま端子間に現れる。

同じ考え方は、開いたスイッチにも使える。スイッチが開いていれば、その先の枝は行き止まりと同じ。逆にスイッチを閉じると、そのスイッチと並列にあった抵抗は短絡されて消える。「開けばその先が消える」「閉じればそれと並列のものが消える」——この2つで、スイッチ付き回路の見た目はぐっと単純になる。

実務でこの感覚が効くのは、テスタを当てるときだ。テスタの内部抵抗はきわめて大きいので、電圧を測っている間、テスタ側にはほとんど電流が流れない。測ること自体が回路をほとんど乱さない——測定端子が回路に与える影響が無視できるのは、この「行き止まりには電流が流れない」の延長にある。

コンセントを1つ増やすと、家全体では何が起きるのか

並列に負荷を足すたび、合成抵抗は下がり、幹線を流れる電流の合計は増えていく。だから機器を増やすときの判断はいつも二段構えになる。その分岐回路の容量に収まるか、そして家全体を守る主幹ブレーカーに収まるか。並列の計算は、この二段目を考えるための道具だ。

今日できるのは、分電盤の扉を開けて数字を読むことだけでいい(触る必要はない。見るだけだ)。主幹に「50A」、その下に「20A」と書かれた分岐ブレーカーが十数個並んでいるはずだ。20A×十数個が50Aに収まるわけがない、と思うだろうか。それでいい。すべての回路を同時に上限まで使うことはない、という前提で設計されているからだ。

この「必要なときだけ道が使われる」という並列の性質が、家の中の電気を成り立たせている。一方で、EV充電のように何時間も上限近くを使い続ける負荷が加わると、その前提は少し変わってくる。EV充電器や蓄電池、V2Hの設置工事は、分電盤に新しい並列の道を1本足す作業であり、そのたびに「主幹にまだ余裕があるか」が問われる。これから電気工事の現場で最も頻繁に求められる判断のひとつが、この足し算だ。

冒頭の疑問について、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. スイッチを1つ描き込み、開いているか閉じているかで回路の形そのものを変える

    なぜ引っかかる回路図にスイッチを描き込み、開閉の指定を添えて端子間の合成抵抗を答えさせる設問は繰り返し出題されている。閉じたスイッチは抵抗0Ωの導線と同じなので、それと並列に入っている抵抗は短絡されて計算から消える。逆に、開いたスイッチの先にある抵抗には電流が流れないので、これも消える。抵抗の値だけを見て機械的に合成すると必ず外れる。

    見破り方計算を始める前に、スイッチの状態どおりに回路を描き直す。閉じたスイッチは1本の線に、開いたスイッチは切れた跡に置き換えて、残った抵抗だけで合成する。描き直しさえすれば、あとは足し算か和分の積で終わる。

  2. 選択肢に「単純な足し算の値」「積の値」「平均値」を並べ、和分の積の分子と分母を取り違えさせる

    なぜ引っかかる6Ωと3Ωの並列という問題の選択肢は、正解の2Ωのほかに9Ω(足し算)・18Ω(積)・4.5Ω(平均)で構成される。式をうろ覚えのまま解くと、必ずどれかの選択肢に着地してしまい、外したことに気づけない。

    見破り方答えを出したら「一番小さい抵抗より小さいか」を必ず確かめる。6Ωと3Ωの並列なら、答えは3Ωより小さくなければならない。この1回の検算だけで、足し算・積・平均の3つは同時に落ちる。

  3. 抵抗が3個以上並列に並んだ回路に、2個専用の「和分の積」を持ち込ませる

    なぜ引っかかる和分の積 R=(R1×R2)/(R1+R2) は抵抗が2個のときだけ成り立つ式で、3個へそのまま拡張することはできない。2個の問題を何問も解いた直後ほど、個数を数えずに式へ飛びついてしまう。

    見破り方並列の抵抗の個数を数えてから式を選ぶ。3個以上なら、まず2個を和分の積でまとめ、その結果と3個目をもう一度和分の積でまとめる、と二段階に分ける。同じ値どうしの並列なら「値÷個数」で一気に出せる。

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 並列2個なら「和分の積」:R合成 = (R1×R2)÷(R1+R2)
  2. 並列合成抵抗は、接続した抵抗の中で最も小さい値よりも、さらに小さくなる
  3. この方向性を覚えておけば、計算結果が並列なのに大きくなっていたら計算ミスだとすぐ気づける
  4. 家庭内の配線は基本的に並列接続。だから1つの照明や家電が故障して抵抗が無限大(断線)になっても、電流は他の並列な道を通って残りの照明・家電に流れ続ける
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