エアコンには100Vのものと200Vのものがある。200Vの機種は、たいてい壁の200V用コンセントに差し込んで使う。ところが同じ「200Vのエアコン」でも、条文上コンセントで接続してはいけない場合がある。差し込まずに、屋内配線と直接つながなければならない。
機種のカタログ性能が違うわけでも、設置する部屋が違うわけでもない。違うのは電源の側だけだ。同じ200Vなのに、なぜ片方はコンセントでよく、もう片方は直結を求められるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、どこを見れば見分けられるかが分かるようになっている。
手がかりは、電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)第143条にある。見出しは【電路の対地電圧の制限】。条文の脇には、根拠となる省令として第15条、第56条第1項、第59条、第63条第1項、第64条が並んでいる。順に、地絡に対する保護対策、配線の感電又は火災の防止、電気使用場所に施設する電気機械器具の感電・火災等の防止、過電流からの低圧幹線等の保護措置、地絡に対する保護措置——感電と火災の条文ばかりが並ぶ。電圧の制限が、どの引き出しから出てきたルールなのかが分かる。
第1項の本文はこうだ。
住宅の屋内電路(電気機械器具内の電路を除く。以下この項において同じ。)の対地電圧は、150V以下であること。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
150Vである。300Vではない。ここを300Vと覚えていると、このトピックの問題はほぼ全部落ちる。
「線間」ではなく「対地」で線が引かれている
見落としやすいのは、条文が制限しているのが対地電圧だという点だ。線間電圧ではない。電線と電線の間で測った値ではなく、電線と大地の間で測った値のほうに、150Vという上限が掛かっている。
人は大地の上に立っているからだ。濡れた床、コンクリート、水道管、鉄骨。人体が電線に触れたとき、体を通る電流を押し出すのは線間電圧ではなく、その電線が大地に対して持っている電圧のほうだ。つまりこの条文は、機器の都合ではなく、触れてしまった人の体に何Vが掛かるかを見て線を引いている。150Vという数字の理由は条文に書かれていない。書かれているのは、どこで測るか、である。
例外は5つ、そのうち試験に出るのは第一号
本文が原則を決め、ただし書が例外を開く。第143条第1項の例外は第一号から第五号までの5つだ。
| 号 | 例外にあたる場合 |
|---|---|
| 一 | 定格消費電力が2kW以上の電気機械器具及びこれに電気を供給する屋内配線を、次により施設する場合 |
| 二 | 当該住宅以外の場所に電気を供給するための屋内配線を、次により施設する場合(対地電圧300V以下、かつ人が触れるおそれがない隠ぺい場所に合成樹脂管工事・金属管工事又はケーブル工事) |
| 三 | 太陽電池モジュールに接続する負荷側の屋内配線を、次により施設する場合(対地電圧は直流450V以下、地絡遮断装置、隠ぺい場所での管工事又はケーブル工事ほか) |
| 四 | 燃料電池発電設備又は常用電源として用いる蓄電池に接続する負荷側の屋内配線を、次により施設する場合(個々の出力10kW未満、対地電圧は直流450V以下、地絡遮断装置ほか) |
| 五 | 第132条第3項の規定により屋内に電線路を施設する場合 |
表の一から四までは、どれも「次により施設する場合」で終わっている。号の見出しだけを覚えると無条件の例外に見えるが、実際はそれぞれが自前の条件を持つ。とくに三・四の上限は直流450V以下で、第一号ロの300V以下とは別の数字だ。太陽電池も蓄電池も直流の世界なので、交流を前提にした300Vとは物差しが違う。
学科試験が繰り返し問うのは第一号だ。柱書の「定格消費電力が2kW以上」に注意したい。条文は2kW以上であって、2kWを超える、ではない。2kWちょうどは例外の側に入る。
イからトまで、7つの条件
第一号は「次により施設する場合」と続け、イからトまで7つの条件を並べる。原文の要点はこうだ。
| 号 | 条件 |
|---|---|
| イ | 屋内配線は、当該電気機械器具のみに電気を供給するものであること(専用回路) |
| ロ | 電気機械器具の使用電圧及びこれに電気を供給する屋内配線の対地電圧は、300V以下であること |
| ハ | 屋内配線には、簡易接触防護措置を施すこと |
| ニ | 電気機械器具には、簡易接触防護措置を施すこと(ただし書による除外あり) |
| ホ | 電気機械器具は、屋内配線と直接接続して施設すること |
| ヘ | 電気機械器具に電気を供給する電路には、専用の開閉器及び過電流遮断器を施設すること(過電流遮断器が開閉機能を有するものである場合は、過電流遮断器のみとすることができる) |
| ト | 電気機械器具に電気を供給する電路には、電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること(ただし書による除外あり) |
7つを眺めて気づいてほしいことが3つある。
1つめ。ロの300V以下は、機器の使用電圧と屋内配線の対地電圧の両方に掛かっている。片方だけではない。
2つめ。簡易接触防護措置が、ハ(屋内配線)とニ(電気機械器具)の2つの号に分けて書かれている。同じ措置を2度求めているのではなく、守る対象が別々なのだ。しかも、ただし書で免除があるのは電気機械器具側(ニ)だけで、絶縁性のある材料で堅ろうに作られた部分である場合と、乾燥した木製の床その他これに類する絶縁性のものの上でのみ取り扱うように施設する場合の2つが挙げられている。配線側(ハ)には、この逃げ道がない。
3つめ。ホの条文には「コンセント」という語が一度も出てこない。書かれているのは「屋内配線と直接接続して施設すること」だけだ。コンセントで挿してはいけない、というのは、この一文から導かれる帰結にすぎない。だからこそ試験は、コンセントという語を選択肢の側に置いて、条文のどの一文に反しているかを読ませてくる。
トも同じ読み方が要る。条文の文言は「漏電遮断器」ではなく「電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置」だ。ただし書は、電源側に絶縁変圧器(定格容量3kVA以下、1次電圧は低圧かつ2次電圧300V以下)を施設し、その変圧器に簡易接触防護措置を施し、変圧器の負荷側の電路を非接地とする——この3つをすべて満たす場合に限って免除している。
そして、この7つのどこにも工事の種類は書かれていない。ケーブル工事でなければならない、金属管工事に限る、といった規定は第一号に一切ない。試験の選択肢に工事の種類が並んでいたら、それは判断材料ではなく背景だと思ってよい。
簡易接触防護措置と、接触防護措置
ハ・ニに出てきた「簡易接触防護措置」は、解釈第1条第三十七号に定義がある。設備を屋内にあっては床上1.8m以上、屋外にあっては地表上2m以上の高さに、かつ人が通る場所から容易に触れることのない範囲に施設するか、さく・へい等を設けるか設備を金属管に収める等の防護措置を施すか、そのいずれかに適合させることをいう。
紛らわしいのが、1つ手前の第三十六号にある「接触防護措置」だ。こちらは屋内で床上2.3m以上、屋外で地表上2.5m以上、しかも「人が通る場所から手を伸ばしても触れることのない範囲」と、高さも文言も一段厳しい。名前が似ているだけで、要求される数字は別物だ。
この2つは、同じ第143条の中でも使い分けられている。第1項第一号のハ・ニは簡易接触防護措置。ところが第3項——白熱電灯に電気を供給する電路について、住宅以外の場所で300V以下にできる条件——では、第一号が求めるのは接触防護措置のほうだ。あわせて、白熱電灯(機械装置に附属するものを除く)は屋内配線と直接接続すること、電球受口はキーその他の点滅機構のないものであることが定められている。人が電球を交換するために手を伸ばす設備だから、より厳しい側が選ばれている、と読める。
住宅以外なら、条件も一部だけになる
第2項は、住宅以外の場所の屋内に施設する家庭用電気機械器具の話だ。原則は同じく対地電圧150V以下。ここで面白いのは、ただし書の書き方だ。
家庭用電気機械器具並びにこれに電気を供給する屋内配線及びこれに施設する配線器具を、次の各号のいずれかにより施設する場合は、300V以下とすることができる。
いずれか、である。第一号と第二号は択一で、両方そろえる必要はない。
第一号は「前項第一号ロからホまでの規定に準じて施設すること」。つまり300V以下(ロ)、屋内配線の簡易接触防護措置(ハ)、機器の簡易接触防護措置(ニ)、直接接続(ホ)の4つだけを持ってきている。専用の開閉器及び過電流遮断器(ヘ)と、地絡遮断装置(ト)は準用の範囲に入っていない。第二号にいたっては、簡易接触防護措置を施すこと(取扱者以外の者が立ち入らない場所ではこの限りでない)の1つだけだ。
住宅ならイからトまで7つ全部。住宅以外なら、4つ組か1つか、どちらか片方。同じ機器でも、そこに誰がいるかで求められる条件の数が変わる。条文はイからトまでを一括で扱っているのではなく、必要なぶんだけ切り出して使っている。
「うちに200V、入れられますか」に答える順序は、機器ではなく電源から
IHクッキングヒーター、エコキュート、EV用の充電設備。住宅に200Vの大物を入れる相談は、これから増えることはあっても減らない。このとき最初に確かめるのは、機器の定格消費電力ではない。その200Vが、大地に対して何Vを持っているかのほうだ。順番を逆にすると、条文の読み方ごと間違える。
一般の住宅に来ている電気は、ほとんどが中性線を接地した単相3線式100/200Vだ。線と線の間は200Vでも、1本ずつの電線が大地に対して持っているのは100Vにとどまる。150V以下なので、この200V回路は第143条第1項本文の原則にそのまま収まる。例外を使う必要がないのだから、イからトまでの7条件は1つも掛からない。機器が2kWを超えていようが5kWだろうが、対地電圧の条文が専用回路や直結を要求してくることはない(機器メーカーの施工要領が直結を指定していることはあるが、それは第143条の要求とは別の話だ)。
7条件の出番は、対地電圧が150Vを超えたときだけだ。住宅にそれが現れるのは、たとえば三相200Vを引き込んで大きな機器を回すような場合。1線を接地した三相200Vなら、電線の対地電圧はそのまま200Vになる。学科試験が、住宅の屋内に三相200Vの機器を施設する問題で「三相電源の対地電圧は200V」とわざわざ断ってくるのは、そこで初めて第一号の世界に入るからだ。この世界に入って初めて、専用回路・300V以下・配線と機器の簡易接触防護措置・直接接続・専用の開閉器と過電流遮断器・地絡遮断装置という7項目が、そのまま材料の拾い出しと段取りの順番になる。「うちに200Vの機器を入れられますか」と聞かれて、盤の空きの前に電源の素性を確かめる人は、見積の前に現地で答えを出せる。
今日試せることが1つある。自宅の分電盤の扉を開けて、200Vの子ブレーカーを探してみてほしい。エアコン、IH、給湯——名前が書かれているなら、それは専用回路だ。そのうえで、目の前のその「200V」を口の中で「線間200V、対地100V」と言い直してみる。先に見たとおり一般の住宅はほとんどが中性線を接地した単相3線式なので、それで合っている。言い直せた時点で、その回路は第143条第1項の本文の側で片づいていて、イからトまでの7条件は1つも掛かっていない。機器が何kWかを数える必要さえない。数えるべきときは、対地電圧が150Vを超えたときだけ——この順番を体で覚えることが、第143条を使えるようにするということそのものだ。
覚える意味は、根拠省令の並びが語っている。第15条と第64条は地絡、第56条と第59条は感電と火災、第63条は過電流。対地電圧の制限は、人が触れたときに何Vが体に掛かるかを、電圧の側から先に縛る仕組みだ。太い電線や丈夫な遮断器で「起きたあと」に備えるのではなく、起きうる大きさそのものを小さくしておく。150V以下という原則は住宅にも、住宅以外の家庭用電気機械器具にも同じように置かれていて、違うのは原則の有無ではなく、例外に乗るために求められる条件の数のほうだった。住宅にいちばん多くの条件が課されているのは、そこで暮らすのが電気の専門家ではないからだと読める。条文自体に理由は書かれていないが、条件の重さの並び方はそう読める形をしている。
そして、例外の並びをもう一度見てほしい。第三号は太陽電池モジュールに接続する負荷側の屋内配線、第四号は燃料電池発電設備又は常用電源として用いる蓄電池に接続する負荷側の屋内配線。住宅が電気を「使うだけの場所」から「作って貯める場所」に変わったことが、例外の条文としてもう刻まれている。屋根で作り、蓄電池に貯め、200Vの大物を回す家——その配線を任される資格の入口が、この150Vという1つの数字だ。
冒頭の問い——同じ200Vのエアコンで、なぜコンセントでよい場合と直結が要る場合があるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。