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電力 ・ 13 / 16

電力ケーブルの種類と特性

読み終えると、こうなる

受変電設備の見積書に並ぶケーブルの太さ・布設方式の指定を見て、なぜその仕様が選ばれているのかを構造から説明できるようになる

  • CVケーブルの断面構造(導体・半導電層・絶縁体・遮蔽層・シース)を役割とセットで説明でき、OFケーブルから主流交代した技術的な理由や、絶縁劣化(水トリー・部分放電)が起きる箇所への理解もあわせて説明できる。あわせて変圧器・コンデンサなどに使われる絶縁油の種類(鉱油系・合成・植物性)と、水分量測定・ガス分析による劣化診断の考え方、気体絶縁材料と固体絶縁材料の一般的な性質の違い(電気抵抗率・誘電率・絶縁破壊強度)、固体絶縁材料内部のボイド(空隙)でなぜ部分放電が起きやすいかを誘電率の違いによる電界集中の観点から説明できる
  • 地中送電線の布設方法(直接埋設式・管路式・暗きょ式)を、工事費・事故復旧・将来増設・放熱条件の観点から比較できる
  • マーレーループ法の原理(ホイートストンブリッジの平衡条件)を使ってケーブル線路の地絡故障点までの距離を計算でき、パルスレーダ法・静電容量測定法との原理の違いと、地絡事故・断線事故のどちらに適用できるかも説明できる
  • 電線導体の種類(軟銅線・硬銅線・鋼心アルミより線ACSR)を、可とう性・引張強度・導電率・軽量性という観点から使い分けられる
考えてみよう

受変電設備の見積もりで、同じ「100A用」のケーブルなのに、布設方式が変わると 指定される太さが変わってくることがある。管路の中を通すのか、ラックの上を 風通しよく這わせるのかで、なぜ同じ電流を流すのに必要な太さが違ってくるのか。

そしてケーブルを輪切りにした断面図を見ると、導体と絶縁体の間に、もう1層 別の材料が挟まっている。これは何のためにあるのか。

このトピックを読み終えるころには、電力ケーブルの断面構造を見て、 それぞれの層が何のためにそこにあるのかを、実務の許容電流表の数字と 結びつけて説明できるようになっている。

種明かしは、電力ケーブルが「導体を絶縁体で包んだだけの単純な棒」ではなく、 電界を制御し、熱を逃がすために設計された多層構造の部材だという点にある。

主流はCVケーブル — なぜ油を使うOFケーブルから置き換わったのか

現在、高圧・特別高圧の送配電で主流になっているのはCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁 ビニルシースケーブル)だ。絶縁体には架橋ポリエチレン(XLPE)が使われている。

以前主流だったOFケーブル(油入ケーブル)は、絶縁紙に絶縁油を含浸させ、常時ケーブル内部に 油を充填・循環させて絶縁性能を保つ方式だった。絶縁性能自体は優れていたが、油漏れのリスクと、 油圧を常時監視・維持する保守負担が大きな課題だった。

CVケーブルは架橋ポリエチレンという固体絶縁を使うため、油を使わない。油漏れのリスクがなく、 保守負担も小さい。これがOFケーブルからCVケーブルへ主流が交代した最大の理由だ。

「CVはOFより絶縁性能が高いから置き換わった」と覚えるのは不正確だ。置き換わった主因は 絶縁性能の優劣ではなく、油を使わないことによる保守性・安全性の向上にある。この違いを 混同すると、比較問題で理由を問われたときに的外れな選択肢を選んでしまう。

CVケーブルの断面構造 — なぜ絶縁体だけで済まないのか

CVケーブルを輪切りにすると、導体の外側から順に次の層が重なっている。

  1. 導体(銅またはアルミ)
  2. 内部半導電層
  3. 絶縁体(架橋ポリエチレン)
  4. 外部半導電層
  5. 遮蔽層(銅テープや銅線。事故電流の帰路や、対地静電容量を確定させる役目も持つ)
  6. シース(外装のビニル被覆)

このうち、名前に「絶縁体」と紛らわしい半導電層は、絶縁のための層ではない。 その名の通り「半分導電性を持つ」材料でできている。

なぜこの層が要るのか。導体の表面や絶縁体の表面には、製造上どうしても微小な凹凸や 空隙が残る。その凹凸の部分だけ電界が集中すると、そこから部分放電が始まり、 絶縁劣化の起点になってしまう。半導電層は、導体・絶縁体の境界にできる凹凸を電気的に なじませ、電界を面全体で均一にする役目を担っている。

半導電層の役割を一言でいえば「絶縁を強くする」ではなく「電界の集中を防ぐ」。 絶縁体そのものがどれだけ優れていても、電界が一点に集中すればそこから劣化が進む。 半導電層は、絶縁体が持つ本来の性能を発揮させるための「地ならし」の層だと考えるとよい。

許容電流は太さだけで決まらない — 布設方式が放熱条件を左右する

ケーブルに電流が流れると、導体の抵抗によってジュール熱が発生する。この熱をどれだけ 周囲に逃がせるかで、安全に流せる電流(許容電流)の上限が決まる。

同じ太さのケーブルでも、

  • 風通しのよい気中にトレイなどで単独布設する場合は放熱しやすく、許容電流は大きくなる
  • 複数本を束ねて密閉した管路や暗きょに布設する場合は、互いの発熱が干渉して放熱しにくくなり、許容電流は小さくなる

という違いが出る。実務で許容電流表を見るときは、太さの列だけでなく、 「どの布設方式の欄を見ているか」を必ず確認する必要がある。

地中送電線の布設方法 — 直接埋設式・管路式・暗きょ式

ここまではケーブル自体の構造の話だったが、地中に送電線を通す布設方法も、 工事費・保守性・将来性が方式ごとに大きく異なるため、比較して整理しておく必要がある。

  • 直接埋設式: 地面を掘った溝にケーブルを直接埋め、トラフ(保護用のコンクリート製部材) などで機械的に保護してから埋め戻す方式。工事費が安く工期も短いのが最大のメリットだが、 事故が起きた箇所を特定して掘り返す必要があるため復旧に時間がかかり、後から行われる 他工事の掘削などによる外傷を受けるリスクも高い。将来ケーブルを増設したい場合も、 そのつど掘り返す必要があり容易ではない。
  • 管路式: あらかじめ地中にヒューム管などの管路を埋設しておき、その中にケーブルを 引き入れる方式。管路さえ通してあれば、ケーブルの新設・引き替えを掘削なしで行えるため、 将来の増設は直接埋設式より容易。ただし管路の中は比較的密閉された空間に近く、複数条を 束ねて通すと互いの発熱がこもりやすいため、許容電流の面では前節の「密閉した管路」の例に 当てはまり、放熱条件は良くない。
  • 暗きょ式(共同溝・とう道): 人が内部に立ち入って点検・作業できる大きさのトンネル状 構造物の中に、ケーブルを架台に載せて敷設する方式。空間に余裕があるため多条数を布設しても 放熱しやすく、大容量・多条数の送電に強い。増設も最も容易だが、建設コストは3方式の中で 最も高い。
布設方式工事費・工期事故復旧将来の増設放熱条件(多条数時)
直接埋設式安い・短い掘り返しが必要で時間がかかる、外傷リスクも高い難しい(単独なら気中に近く良好)
管路式中程度管路内での引き替えが可能比較的容易密閉に近く悪化しやすい
暗きょ式高い内部に立ち入って点検・復旧しやすい最も容易空間に余裕があり良好
3方式は「工事費の安さ」と「保守性・将来性の高さ」がちょうど逆順になっている。 直接埋設式(安い・保守性低い)→管路式(中間)→暗きょ式(高い・保守性高い)という 一直線のトレードオフとして覚えると、比較問題でどの方式の説明かを取り違えない。

遮蔽層とシース — 電界を閉じ込め、外傷から守る

外部半導電層のさらに外側にある遮蔽層は、絶縁体の外側の電位をほぼ大地電位に固定し、 電界をケーブルの内部に閉じ込める役目を持つ。これにより、ケーブルの外側に触れても 感電しない構造になっている。一番外側のシースは、この遮蔽層を水分や外傷から 物理的に保護する被覆だ。

マーレーループ法 — 地中ケーブルの故障点を、掘らずに探す

ここまで見てきたCVケーブルの構造や布設方法は、いずれも「事故を起こさないための工夫」だった。それでも長い地中ケーブルでは、経年劣化(水トリーなど)によって導体と遮へい層の間で地絡事故が起きることがある。地中に埋まったケーブルのどこで地絡が起きているかを、掘り返さずに知る方法がマーレーループ法だ。

マーレーループ法は、ホイートストンブリッジの平衡条件を利用してケーブルの地絡故障点までの距離を標定する。手順の骨子は次のとおり。

  1. 故障が起きたケーブルと、それに並行する健全なケーブル(同一仕様・同一長)を用意する。
  2. マーレーループ装置を接続していない側の端部(遠端)で、健全ケーブルの導体と故障ケーブルの導体どうしを接続し、輪(ループ)を作る。
  3. マーレーループ装置側でブリッジの平衡をとる。ブリッジの目盛全体を1000としたとき、平衡したときの読みをaaとすると、装置を接続した端部から故障点までの距離xxは次の式で求まる。
x=a×L500x = \frac{a \times L}{500}

LLはケーブルの長さ(こう長)だ。

接続するのは「導体どうし」であって、遮へい層どうしではない。地絡事故そのものは導体と遮へい層の間で起きているが、マーレーループ法が測っているのは導体の抵抗(=ケーブル長に比例する量)であり、ブリッジを構成するのはあくまで健全ケーブル・故障ケーブルそれぞれの導体だ。

例題

こう長600mの2条のケーブル(同一仕様・同一長)のうち1条に地絡故障が発生した。遠端で導体どうしを接続してマーレーループ装置でブリッジを組み、全目盛1000のうち平衡時の読みがa=250であったとき、装置接続端から故障点までの距離は、

x=250×600500=300mx = \frac{250 \times 600}{500} = 300\text{m}

この原理上、故障点の地絡抵抗が十分低いことが良い測定精度を得るために欠かせない。地絡抵抗が高いと、ブリッジの検流計がゼロを示す平衡点そのものが不明瞭になり、標定誤差が大きくなってしまう。

マーレーループ法の3つのポイントは「①ホイートストンブリッジが原理」「②接続するのは導体どうし」「③地絡抵抗は低いほど精度が良い」の3点に集約できる。式x=aL/500は、全目盛1000のうち読みaが示す割合を、ループ全体の長さ2Lに掛け算した値(2aL/1000)と同じ形をしている、と理解しておくと丸暗記に頼らずに済む。

マーレーループ法だけじゃない — パルスレーダ法・静電容量測定法との使い分け

マーレーループ法は、地絡事故(導体は繋がったまま絶縁が破れて大地や遮へい層と短絡した状態)の 標定に適した方法だった。しかし地中ケーブルの故障には、導体そのものが物理的に切れる 断線事故もある。断線事故ではマーレーループ法のブリッジ回路(健全ケーブルと故障ケーブルの 導体をループでつなぐ)そのものが成立しないため、別の原理を使う手法が必要になる。

パルスレーダ法は、健全な部分と故障点とでケーブルのサージインピーダンスが異なることを 利用する。ケーブルの一端からパルス電圧を送り込み、故障点で反射して戻ってくるまでの時間と、 ケーブル内をパルスが伝わる速度(伝搬速度)から、故障点までの距離を計算する。パルスの反射を 利用するという原理上、導体が繋がっている地絡事故でも、導体が切れている断線事故でも使える 汎用性の高さが特徴だ。

静電容量測定法は、ケーブルの静電容量とこう長(長さ)が比例するという性質を利用する。 健全相と故障相それぞれの静電容量を測定し、その比からこう長に対する故障点の位置を求める。 断線事故が起きても、健全に残った部分の静電容量は変わらず測定できるため断線事故に有効だが、 導体は繋がったまま絶縁だけが破れる地絡事故では、静電容量の変化が読み取りにくく不向きとされる。

手法原理地絡事故断線事故
マーレーループ法導体抵抗のホイートストンブリッジ適する(導体が繋がっている)不向き(ブリッジが成立しない)
パルスレーダ法パルス反射の伝搬時間適する適する
静電容量測定法静電容量とこう長の比例関係不向き適する
3つの手法を丸暗記するより、「何を測っているか」から地絡・断線それぞれへの向き不向きを 導く方が忘れにくい。マーレーループ法は導体の抵抗(=導体が繋がっていることが前提)、 静電容量測定法は静電容量(=断線後も健全部分は測れるが、地絡では変化が読み取りにくい)、 パルスレーダ法は反射という物理現象そのもの(=導体の状態を問わない)——という土台に 立ち返れば、どの事故にどの手法が向くかを毎回導き出せる。

電線導体の材料 — 銅とアルミニウム、それぞれの使い分け

これまで見てきたのはケーブルの絶縁構造や布設方法だったが、電線・ケーブルの心臓部である 導体そのものの材料にも、用途に応じた使い分けがある。導体材料に一般に求められるのは、 電気抵抗を小さく抑えられる導電率の高さと、大量に必要となる資材として資源量が豊富で 入手性・コストに優れることの2点で、この条件を満たす代表的な材料が銅とアルミニウムだ。

銅導体は、導電率の基準(IACS=100%)とされるほど高い導電率を持つ。同じ銅でも、 焼きなまし処理をして柔らかくした軟銅線は伸びや可とう性に優れ、繰り返し曲げに強いため、 布設・接続の際に取り回しの多い地中ケーブルや制御ケーブルの導体に向く。一方、伸線したまま 焼きなましをしていない硬銅線は、軟銅線より曲げにくいものの機械的な引張強度が高く、 たるみ・強風・自重に耐える必要がある架空電線の導体としても使われている。

アルミニウム導体は、導電率こそ銅の6割程度と低いが、密度は銅の約1/3しかない。同じ 電気抵抗・同じ長さの条件にそろえようとすると、アルミニウムは断面積を銅より太くする必要が あるが(銅の抵抗率の1.6倍程度なので断面積も1.6倍程度必要)、それでも密度の低さの方が 勝るため、同じ抵抗・長さの条件では、アルミニウム線の方が銅線よりも軽くなる

「導電率が低い=性能が劣る材料」と一面的に捉えると、アルミニウムがなぜ広く使われるのかが 見えなくなる。導電率の低さは断面積を太くすれば補えるが、密度の低さ(軽さ)は太くしても 覆らない。この「軽さ」こそが、架空送電線でアルミニウムが選ばれる最大の理由だ。

この軽さを活かして、架空送電線の導体には、機械的な強度を鋼線が、電気の伝導をアルミニウムが 分担する鋼心アルミより線(ACSR: Aluminum Conductor Steel Reinforced)が広く使われている。 中心に強度の高い鋼より線を置き、その周囲を導電率の高いアルミより線で囲む構造で、同じ強度を 全て銅で確保しようとするより軽量に、また外径を太くしやすいためコロナ損失の抑制にも有利に 働く(コロナ損失と導体径の関係は、別トピックであらためて扱う)。

電力用設備の絶縁油 — コンデンサ・変圧器・ケーブルに使われる絶縁材料

CVケーブルは油を使わない固体絶縁だが、変圧器・コンデンサなど電力用設備の中には、いまも 絶縁油を使うものが多い。絶縁油は、電力用設備の内部を絶縁するだけでなく、流動性を 利用して内部で発生した熱を外部へ運び出す(冷却する)役割もあわせ持つ。

絶縁油に求められる性質には、熱膨張率・粘度が小さいこと、比熱・熱伝導率が大きいことなどが ある。粘度が小さいほど流動性が良く熱を運びやすく、比熱・熱伝導率が大きいほど熱を効率よく 吸収・伝達できる。

絶縁油の種類には、古くから使われてきた鉱油系絶縁油のほか、難燃性や低損失性など、より 優れた特性が求められる場面で使われる合成絶縁油、環境への配慮から採用が進む植物性 絶縁油がある。

絶縁油の重要な特性の一つに誘電正接(tanδ、絶縁体内部で失われるエネルギーの割合を表す 指標)がある。変圧器や電力ケーブルに使う絶縁油では誘電正接が小さいもの(損失が少ないもの)が 適するのに対し、コンデンサに使う絶縁油では、あえて誘電正接が大きめのものが使われることがある。

「絶縁油は誘電正接が小さいほど常に良い」と単純化すると、コンデンサ用絶縁油の選び方を 見誤る。変圧器・ケーブルは絶縁油自体での損失を減らしたい(誘電正接は小さい方がよい)が、 コンデンサは用途や設計思想によって求められる特性が変わりうる、という点まで踏み込んで 理解しておく。

絶縁油は、不純物や水分が混入すると絶縁性能が大きく低下し、部分放電の発生によって分解 ガスが生じることがある。このため、電力用設備から採油した絶縁油の水分量測定ガス分析を行うことで、絶縁油そのものの劣化状態だけでなく、設備内部の異常(部分放電 など)を検知する保守手法が実務で使われている。

絶縁油の劣化診断は、油そのものの性状だけを見ているのではない。分解ガスの種類や量から、 内部でどんな異常(過熱か、部分放電か)が起きているかを推定できるため、絶縁油は「設備 内部の状態を映す鏡」としての役割も持っている、と捉えると実務上の意味が見えやすい。

絶縁材料の基本性質 — 気体絶縁材料と固体絶縁材料、そしてボイドが弱点になる理由

ここまで見てきたCVケーブルの絶縁体(架橋ポリエチレン)や絶縁油は、いずれも液体・固体の 絶縁材料だった。電力設備には、SF6ガスや空気のように気体を絶縁に使う場面も多い。 気体絶縁材料は、液体・固体絶縁材料と比較すると、一般に電気抵抗率・誘電率が低いという 性質を持つ。絶縁破壊強度(どれだけの電界に耐えられるか)についても、気体絶縁材料は 液体・固体絶縁材料より一般に低いが、気圧を高める(加圧する)か、真空状態にすることで 絶縁破壊強度を高められるという性質がある。GISがSF6ガスを大気圧より高く加圧して使うのは、 この性質を利用したものだ。

もう一つ、絶縁材料の弱点として押さえておきたいのがボイド(空隙)だ。固体絶縁材料の 内部に、製造上の理由などで微小な空隙(ボイド)が生じることがある。このボイドの中は空気 などの気体で満たされており、周囲の固体絶縁材料よりも誘電率が低い。

ここで、電界がボイドと周囲の固体絶縁材料を直列に通り抜けると考えると、コンデンサを 直列接続したときと同じ関係が成り立つ。直列に配置された誘電体では、同じ電束密度に対して、 誘電率が低い部分ほど電界強度が高くなる。つまり、誘電率の低い気体で満たされたボイドの 部分には、周囲の固体絶縁材料よりも強い電界が集中してしまう。

「誘電率が低い=弱い部材」という直感から、ボイド内部は電界も弱いはずだと考えると誤る。 実際には直列配分の関係で、誘電率が低い部分ほど電界が集中する。固体絶縁材料そのものが 絶縁破壊しなくても、この電界集中によってボイド内部の気体だけが先に絶縁破壊し、**部分放電**が 発生する。部分放電が短時間で固体絶縁材料自体の絶縁破壊に直結するとは限らないが、長時間・ 断続的に部分放電が繰り返されることで、固体絶縁材料の絶縁破壊に至る場合がある——この 進行の仕方は、この章の前半で見た水トリーによる絶縁劣化とも通じる考え方だ。

制御盤・受変電設備の実務との接点

電材商社の見積もりでケーブルの太さを選定する場面では、許容電流表の数値を単独で 見るのではなく、「どの布設方式が指定されているか」「まとめて何本布設するか」まで 確認しないと、実際の現場で許容電流が不足する選定をしてしまう。CVケーブルの断面構造を 理解していれば、なぜ布設条件によって同じ太さでも許容電流が変わるのかを、 お客様にも筋道立てて説明できる。

冒頭の「同じ100A用でも太さが変わる」理由の答え合わせは、 理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 許容電流を「導体の太さ」だけで判断し、布設方式の条件を見落とす

    なぜ引っかかる許容電流表は太さと布設方式(気中・管路・暗きょ・直接埋設など)の組み合わせで決まっている。太さだけを覚えていると、同じ太さでも布設方式が変われば許容電流の数値が変わることを見落とし、問題文の布設条件を読み飛ばして誤答する。

    見破り方許容電流の問題では、まず問題文に布設方式(周囲温度・グルーピング・埋設か気中か)の条件が書かれていないかを確認する。条件が同じ太さでも、放熱しにくい環境(密閉した管路や複数条布設)ほど許容電流は小さくなる、という向きだけは先に押さえておく。

  2. 半導電層を「絶縁体の一部」あるいは「絶縁を強化する層」だと誤解する

    なぜ引っかかる名前に「絶縁体」と隣接して出てくるため、半導電層も絶縁のための層だと思い込みやすい。だが半導電層はむしろ電気を通す(半導電性の)材料であり、絶縁体とは逆の性質を持つ層だ。

    見破り方半導電層の役割は「絶縁」ではなく「電界を均一化すること」だと覚える。導体表面や絶縁体表面にわずかな凹凸や空隙があると、その部分に電界が集中して部分放電の原因になる。半導電層はこの凹凸を電気的になじませ、電界集中を防ぐためにある。

  3. OFケーブルとCVケーブルの特徴を取り違える(油を使う側・使わない側を逆に覚える)

    なぜ引っかかるどちらも高電圧の送配電に使われてきた実績のあるケーブルで、名称も似ているため、油を使う側(OF=Oil Filled)と使わない側(CV=架橋ポリエチレン)の特徴が入れ替わって記憶されやすい。

    見破り方OFケーブルは名前の通り絶縁油を内部に充填・循環させる方式で、油漏れのリスクと油圧の維持管理という保守負担がある。CVケーブルは油を使わない固体絶縁(架橋ポリエチレン)で、この保守負担がないことが主流交代の最大の理由だと覚えれば、取り違えない。

  4. 地中送電線の布設方法を「どれか一つが総合的に優れている」と単純化して覚える

    なぜ引っかかる直接埋設式・管路式・暗きょ式は、それぞれ工事費・事故復旧のしやすさ・将来の増設性・放熱条件という異なる評価軸でトレードオフの関係にあるため、一つの方式が万能だと思い込むと比較問題で誤答しやすい。

    見破り方「工事費が安い方式ほど、事故復旧や将来増設では不利になる」という向きだけを先に押さえる。直接埋設式は工事費最安だが復旧に時間がかかり増設も難しい。暗きょ式は逆に工事費が高い分、点検・復旧・増設のしやすさと放熱条件で最も有利。管路式はその中間、という順序で覚えれば取り違えない。

  5. マーレーループ法で、遠端で接続するのを「導体どうし」ではなく「遮へい層どうし」だと誤解する

    なぜ引っかかる地絡事故は導体と遮へい層の間で起きているため、事故に関係する部材である遮へい層側を接続すればよいと直感的に考えてしまう。

    見破り方マーレーループ法はホイートストンブリッジの平衡条件を使って距離を求める方法であり、ブリッジを構成するのは健全な導体と故障した導体の抵抗(=ケーブル長に比例する量)である。接続するのは遮へい層ではなく、健全ケーブルの導体と故障ケーブルの導体どうし、と覚え直す。

  6. 地絡抵抗が高いほどマーレーループ法の精度が良くなると考えてしまう

    なぜ引っかかる「抵抗が大きい方が事故電流が小さく安全そう」という漠然としたイメージから、抵抗の大小と測定精度の関係を直感で判断してしまいやすい。

    見破り方マーレーループ法はブリッジの平衡点(検流計の指針がゼロになる点)を読み取って距離を求める方法であり、地絡抵抗が高いと平衡点の検出そのものが不安定になり誤差が大きくなる。地絡抵抗は「十分低い」ことが良い測定精度の条件だと覚える。

  7. マーレーループ法・パルスレーダ法・静電容量測定法を「どれも同じように地絡・断線どちらにも使える」と一括りに考えてしまう

    なぜ引っかかる3つとも「地中ケーブルの故障点を掘らずに探す方法」という共通の目的でまとめて紹介されるため、それぞれの原理が要求する物理的な条件(導体が繋がっているか、静電容量が測れるかなど)まで踏み込まずに覚えてしまいやすい。

    見破り方各手法が何を測っているかに立ち返る。マーレーループ法は導体の抵抗(ブリッジ)を使うため導体が繋がっている地絡事故向き、静電容量測定法は静電容量を使うため断線後も残った健全部分の長さが測れる断線事故向き、パルスレーダ法は反射パルスの伝搬時間を使うため原理上どちらの事故にも対応できる、という対応をセットで覚える。

  8. 硬銅線は曲げにくいという理由から、電線の導体として使われることはないと誤解する

    なぜ引っかかる軟銅線の可とう性の高さが強調して語られることが多く、硬銅線は「使われない材料」だと極端に一般化してしまいやすい。

    見破り方硬銅線は軟銅線より曲げにくいという弱点はあるが、その分だけ機械的な引張強度が高いという長所を持つ。架空電線のようにたるみ・強風・自重に耐える必要がある用途では、この強度の高さがむしろ有利になるため、架空電線の導体として現在も使われている、という一文で覚え直す。

  9. 絶縁油は誘電正接が小さいほど、どんな用途でも常に良いと単純化して考えてしまう

    なぜ引っかかる『誘電正接が小さい=損失が少なく優れた絶縁油』という一面的なイメージだけで捉えると、機器の種類によって求められる特性が異なることを見落としやすい。

    見破り方変圧器や電力ケーブルに使う絶縁油は油自体での損失を減らしたいため誘電正接が小さいものが適するが、コンデンサに使う絶縁油では設計思想によって求められる特性が変わりうる、という用途ごとの違いまで踏み込んで確認する。

  10. 固体絶縁材料内部のボイド(空隙)は、誘電率が低い気体で満たされているから電界も弱いはずだ、と考えてしまう

    なぜ引っかかる「誘電率が低い=電気を通しにくい=弱い電界しかかからない」という直感的なイメージから、誘電率と電界強度が同じ向きに動くと誤解しやすい。

    見破り方直列に配置された誘電体(コンデンサの直列接続)を思い浮かべ、同じ電束密度がかかる状況では誘電率が低い部分ほど電界強度が高くなるという関係に立ち返る。ボイド内部の気体は周囲の固体絶縁材料より誘電率が低いため、むしろ電界が集中しやすい弱点になる、と向きを逆に覚え直す。

参考文献・出典

理解度チェック(18問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、18問で確認しよう。 内訳は基本9問・応用3問・ひっかけ6問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 18 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 現在の主流はCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)。絶縁体に架橋ポリエチレン(XLPE)を使い、油を使うOFケーブルより保守性・安全性で有利
  2. CVケーブルの断面には、導体の外側から順に「内部半導電層→絶縁体→外部半導電層→遮蔽層→シース」という層構造があり、半導電層は絶縁ではなく電界を均一化する役目を持つ
  3. 許容電流は導体の太さだけで決まらない。気中布設・管路布設・直接埋設など周囲の放熱条件によって同じ太さでも数値が変わる
  4. ケーブルの絶縁劣化は、水分と電界が同時に存在する箇所から樹木状に進む「水トリー」が主要因の一つで、絶縁体そのものより層の境界(半導電層との界面)で起きやすい
  5. 地中送電線の布設方法には直接埋設式・管路式・暗きょ式があり、工事費の安さと将来の増設・事故復旧のしやすさはトレードオフの関係にある
  6. マーレーループ法はケーブルの地絡故障点までの距離を標定する方法で、ホイートストンブリッジの平衡条件を利用する。健全なケーブルと故障ケーブルを遠端で導体同士接続してループを作り、ブリッジの目盛(全目盛1000)の読みaから、故障点までの距離x=aL/500(Lはケーブル長)で求める。地絡抵抗が十分低いほど精度よく標定できる
  7. 地中ケーブルの故障点位置標定にはマーレーループ法以外の手法もある。パルスレーダ法は健全部と故障点でのサージインピーダンスの違いを利用し、ケーブル端からパルス電圧を送り込んで故障点で反射して戻ってくるまでの時間と伝搬速度から距離を求める方法で、地絡・断線どちらの事故にも使える汎用性の高さが特徴。静電容量測定法はケーブルの静電容量とこう長が比例することを利用し、健全相と故障相の静電容量を比較して故障点を標定する方法で、断線事故(健全に残った部分の静電容量が測れる)には有効だが、導体が繋がったまま絶縁だけが破れる地絡事故には不向き。マーレーループ法は導体の抵抗を使ったブリッジ回路が原理のため、導体が繋がっている地絡事故には適するが、導体が切れる断線事故ではブリッジ自体が組めず使えない
  8. 電線の導体材料には導電率の高さと資源量の多さが求められる。銅は軟銅線(可とう性に優れ地中ケーブル等に)と硬銅線(機械的強度が高く架空電線に)に使い分けられ、アルミニウムは銅より導電率が低いが密度が約1/3と軽いため、電気抵抗と長さが同じ条件では銅線よりアルミ線の方が軽くなる。架空送電線では、鋼の芯線で強度を、外周のアルミより線で導電を分担する鋼心アルミより線(ACSR)が広く使われる
  9. 変圧器・コンデンサなどに使われる絶縁油は、絶縁だけでなく流動性を利用した冷却の役割も担う。鉱油系絶縁油のほか、難燃性・低損失性に優れる合成絶縁油、環境配慮型の植物性絶縁油があり、水分量測定やガス分析によって絶縁油自体の劣化や設備内部の異常(部分放電など)を検知できる
  10. 気体絶縁材料(空気・SF6ガスなど)は、液体・固体絶縁材料と比べて一般に電気抵抗率・誘電率が低い。絶縁破壊強度も液体・固体絶縁材料より一般に低いが、気圧を高める(加圧する)か真空状態にすることで絶縁破壊強度を高められる性質がある。固体絶縁材料の内部にボイド(空隙)が含まれると、誘電率の低い気体で満たされたボイドの部分に電界が集中しやすくなる(直列に配置された誘電体では、誘電率が低い部分ほど電界強度が高くなるため)。そのため固体絶縁材料そのものが絶縁破壊しなくても、ボイド内部の気体だけが先に絶縁破壊して部分放電が発生し、これが長時間・断続的に繰り返されることで固体絶縁材料自体の絶縁破壊に至る場合がある
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