受変電設備の見積もりで、同じ「100A用」のケーブルなのに、布設方式が変わると 指定される太さが変わってくることがある。管路の中を通すのか、ラックの上を 風通しよく這わせるのかで、なぜ同じ電流を流すのに必要な太さが違ってくるのか。
そしてケーブルを輪切りにした断面図を見ると、導体と絶縁体の間に、もう1層 別の材料が挟まっている。これは何のためにあるのか。
このトピックを読み終えるころには、電力ケーブルの断面構造を見て、 それぞれの層が何のためにそこにあるのかを、実務の許容電流表の数字と 結びつけて説明できるようになっている。
種明かしは、電力ケーブルが「導体を絶縁体で包んだだけの単純な棒」ではなく、 電界を制御し、熱を逃がすために設計された多層構造の部材だという点にある。
主流はCVケーブル — なぜ油を使うOFケーブルから置き換わったのか
現在、高圧・特別高圧の送配電で主流になっているのはCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁 ビニルシースケーブル)だ。絶縁体には架橋ポリエチレン(XLPE)が使われている。
以前主流だったOFケーブル(油入ケーブル)は、絶縁紙に絶縁油を含浸させ、常時ケーブル内部に 油を充填・循環させて絶縁性能を保つ方式だった。絶縁性能自体は優れていたが、油漏れのリスクと、 油圧を常時監視・維持する保守負担が大きな課題だった。
CVケーブルは架橋ポリエチレンという固体絶縁を使うため、油を使わない。油漏れのリスクがなく、 保守負担も小さい。これがOFケーブルからCVケーブルへ主流が交代した最大の理由だ。
CVケーブルの断面構造 — なぜ絶縁体だけで済まないのか
CVケーブルを輪切りにすると、導体の外側から順に次の層が重なっている。
- 導体(銅またはアルミ)
- 内部半導電層
- 絶縁体(架橋ポリエチレン)
- 外部半導電層
- 遮蔽層(銅テープや銅線。事故電流の帰路や、対地静電容量を確定させる役目も持つ)
- シース(外装のビニル被覆)
このうち、名前に「絶縁体」と紛らわしい半導電層は、絶縁のための層ではない。 その名の通り「半分導電性を持つ」材料でできている。
なぜこの層が要るのか。導体の表面や絶縁体の表面には、製造上どうしても微小な凹凸や 空隙が残る。その凹凸の部分だけ電界が集中すると、そこから部分放電が始まり、 絶縁劣化の起点になってしまう。半導電層は、導体・絶縁体の境界にできる凹凸を電気的に なじませ、電界を面全体で均一にする役目を担っている。
許容電流は太さだけで決まらない — 布設方式が放熱条件を左右する
ケーブルに電流が流れると、導体の抵抗によってジュール熱が発生する。この熱をどれだけ 周囲に逃がせるかで、安全に流せる電流(許容電流)の上限が決まる。
同じ太さのケーブルでも、
- 風通しのよい気中にトレイなどで単独布設する場合は放熱しやすく、許容電流は大きくなる
- 複数本を束ねて密閉した管路や暗きょに布設する場合は、互いの発熱が干渉して放熱しにくくなり、許容電流は小さくなる
という違いが出る。実務で許容電流表を見るときは、太さの列だけでなく、 「どの布設方式の欄を見ているか」を必ず確認する必要がある。
地中送電線の布設方法 — 直接埋設式・管路式・暗きょ式
ここまではケーブル自体の構造の話だったが、地中に送電線を通す布設方法も、 工事費・保守性・将来性が方式ごとに大きく異なるため、比較して整理しておく必要がある。
- 直接埋設式: 地面を掘った溝にケーブルを直接埋め、トラフ(保護用のコンクリート製部材) などで機械的に保護してから埋め戻す方式。工事費が安く工期も短いのが最大のメリットだが、 事故が起きた箇所を特定して掘り返す必要があるため復旧に時間がかかり、後から行われる 他工事の掘削などによる外傷を受けるリスクも高い。将来ケーブルを増設したい場合も、 そのつど掘り返す必要があり容易ではない。
- 管路式: あらかじめ地中にヒューム管などの管路を埋設しておき、その中にケーブルを 引き入れる方式。管路さえ通してあれば、ケーブルの新設・引き替えを掘削なしで行えるため、 将来の増設は直接埋設式より容易。ただし管路の中は比較的密閉された空間に近く、複数条を 束ねて通すと互いの発熱がこもりやすいため、許容電流の面では前節の「密閉した管路」の例に 当てはまり、放熱条件は良くない。
- 暗きょ式(共同溝・とう道): 人が内部に立ち入って点検・作業できる大きさのトンネル状 構造物の中に、ケーブルを架台に載せて敷設する方式。空間に余裕があるため多条数を布設しても 放熱しやすく、大容量・多条数の送電に強い。増設も最も容易だが、建設コストは3方式の中で 最も高い。
| 布設方式 | 工事費・工期 | 事故復旧 | 将来の増設 | 放熱条件(多条数時) |
|---|---|---|---|---|
| 直接埋設式 | 安い・短い | 掘り返しが必要で時間がかかる、外傷リスクも高い | 難しい | (単独なら気中に近く良好) |
| 管路式 | 中程度 | 管路内での引き替えが可能 | 比較的容易 | 密閉に近く悪化しやすい |
| 暗きょ式 | 高い | 内部に立ち入って点検・復旧しやすい | 最も容易 | 空間に余裕があり良好 |
遮蔽層とシース — 電界を閉じ込め、外傷から守る
外部半導電層のさらに外側にある遮蔽層は、絶縁体の外側の電位をほぼ大地電位に固定し、 電界をケーブルの内部に閉じ込める役目を持つ。これにより、ケーブルの外側に触れても 感電しない構造になっている。一番外側のシースは、この遮蔽層を水分や外傷から 物理的に保護する被覆だ。
マーレーループ法 — 地中ケーブルの故障点を、掘らずに探す
ここまで見てきたCVケーブルの構造や布設方法は、いずれも「事故を起こさないための工夫」だった。それでも長い地中ケーブルでは、経年劣化(水トリーなど)によって導体と遮へい層の間で地絡事故が起きることがある。地中に埋まったケーブルのどこで地絡が起きているかを、掘り返さずに知る方法がマーレーループ法だ。
マーレーループ法は、ホイートストンブリッジの平衡条件を利用してケーブルの地絡故障点までの距離を標定する。手順の骨子は次のとおり。
- 故障が起きたケーブルと、それに並行する健全なケーブル(同一仕様・同一長)を用意する。
- マーレーループ装置を接続していない側の端部(遠端)で、健全ケーブルの導体と故障ケーブルの導体どうしを接続し、輪(ループ)を作る。
- マーレーループ装置側でブリッジの平衡をとる。ブリッジの目盛全体を1000としたとき、平衡したときの読みをとすると、装置を接続した端部から故障点までの距離は次の式で求まる。
はケーブルの長さ(こう長)だ。
例題
こう長600mの2条のケーブル(同一仕様・同一長)のうち1条に地絡故障が発生した。遠端で導体どうしを接続してマーレーループ装置でブリッジを組み、全目盛1000のうち平衡時の読みがa=250であったとき、装置接続端から故障点までの距離は、
この原理上、故障点の地絡抵抗が十分低いことが良い測定精度を得るために欠かせない。地絡抵抗が高いと、ブリッジの検流計がゼロを示す平衡点そのものが不明瞭になり、標定誤差が大きくなってしまう。
マーレーループ法だけじゃない — パルスレーダ法・静電容量測定法との使い分け
マーレーループ法は、地絡事故(導体は繋がったまま絶縁が破れて大地や遮へい層と短絡した状態)の 標定に適した方法だった。しかし地中ケーブルの故障には、導体そのものが物理的に切れる 断線事故もある。断線事故ではマーレーループ法のブリッジ回路(健全ケーブルと故障ケーブルの 導体をループでつなぐ)そのものが成立しないため、別の原理を使う手法が必要になる。
パルスレーダ法は、健全な部分と故障点とでケーブルのサージインピーダンスが異なることを 利用する。ケーブルの一端からパルス電圧を送り込み、故障点で反射して戻ってくるまでの時間と、 ケーブル内をパルスが伝わる速度(伝搬速度)から、故障点までの距離を計算する。パルスの反射を 利用するという原理上、導体が繋がっている地絡事故でも、導体が切れている断線事故でも使える 汎用性の高さが特徴だ。
静電容量測定法は、ケーブルの静電容量とこう長(長さ)が比例するという性質を利用する。 健全相と故障相それぞれの静電容量を測定し、その比からこう長に対する故障点の位置を求める。 断線事故が起きても、健全に残った部分の静電容量は変わらず測定できるため断線事故に有効だが、 導体は繋がったまま絶縁だけが破れる地絡事故では、静電容量の変化が読み取りにくく不向きとされる。
| 手法 | 原理 | 地絡事故 | 断線事故 |
|---|---|---|---|
| マーレーループ法 | 導体抵抗のホイートストンブリッジ | 適する(導体が繋がっている) | 不向き(ブリッジが成立しない) |
| パルスレーダ法 | パルス反射の伝搬時間 | 適する | 適する |
| 静電容量測定法 | 静電容量とこう長の比例関係 | 不向き | 適する |
電線導体の材料 — 銅とアルミニウム、それぞれの使い分け
これまで見てきたのはケーブルの絶縁構造や布設方法だったが、電線・ケーブルの心臓部である 導体そのものの材料にも、用途に応じた使い分けがある。導体材料に一般に求められるのは、 電気抵抗を小さく抑えられる導電率の高さと、大量に必要となる資材として資源量が豊富で 入手性・コストに優れることの2点で、この条件を満たす代表的な材料が銅とアルミニウムだ。
銅導体は、導電率の基準(IACS=100%)とされるほど高い導電率を持つ。同じ銅でも、 焼きなまし処理をして柔らかくした軟銅線は伸びや可とう性に優れ、繰り返し曲げに強いため、 布設・接続の際に取り回しの多い地中ケーブルや制御ケーブルの導体に向く。一方、伸線したまま 焼きなましをしていない硬銅線は、軟銅線より曲げにくいものの機械的な引張強度が高く、 たるみ・強風・自重に耐える必要がある架空電線の導体としても使われている。
アルミニウム導体は、導電率こそ銅の6割程度と低いが、密度は銅の約1/3しかない。同じ 電気抵抗・同じ長さの条件にそろえようとすると、アルミニウムは断面積を銅より太くする必要が あるが(銅の抵抗率の1.6倍程度なので断面積も1.6倍程度必要)、それでも密度の低さの方が 勝るため、同じ抵抗・長さの条件では、アルミニウム線の方が銅線よりも軽くなる。
この軽さを活かして、架空送電線の導体には、機械的な強度を鋼線が、電気の伝導をアルミニウムが 分担する鋼心アルミより線(ACSR: Aluminum Conductor Steel Reinforced)が広く使われている。 中心に強度の高い鋼より線を置き、その周囲を導電率の高いアルミより線で囲む構造で、同じ強度を 全て銅で確保しようとするより軽量に、また外径を太くしやすいためコロナ損失の抑制にも有利に 働く(コロナ損失と導体径の関係は、別トピックであらためて扱う)。
電力用設備の絶縁油 — コンデンサ・変圧器・ケーブルに使われる絶縁材料
CVケーブルは油を使わない固体絶縁だが、変圧器・コンデンサなど電力用設備の中には、いまも 絶縁油を使うものが多い。絶縁油は、電力用設備の内部を絶縁するだけでなく、流動性を 利用して内部で発生した熱を外部へ運び出す(冷却する)役割もあわせ持つ。
絶縁油に求められる性質には、熱膨張率・粘度が小さいこと、比熱・熱伝導率が大きいことなどが ある。粘度が小さいほど流動性が良く熱を運びやすく、比熱・熱伝導率が大きいほど熱を効率よく 吸収・伝達できる。
絶縁油の種類には、古くから使われてきた鉱油系絶縁油のほか、難燃性や低損失性など、より 優れた特性が求められる場面で使われる合成絶縁油、環境への配慮から採用が進む植物性 絶縁油がある。
絶縁油の重要な特性の一つに誘電正接(tanδ、絶縁体内部で失われるエネルギーの割合を表す 指標)がある。変圧器や電力ケーブルに使う絶縁油では誘電正接が小さいもの(損失が少ないもの)が 適するのに対し、コンデンサに使う絶縁油では、あえて誘電正接が大きめのものが使われることがある。
絶縁油は、不純物や水分が混入すると絶縁性能が大きく低下し、部分放電の発生によって分解 ガスが生じることがある。このため、電力用設備から採油した絶縁油の水分量測定や ガス分析を行うことで、絶縁油そのものの劣化状態だけでなく、設備内部の異常(部分放電 など)を検知する保守手法が実務で使われている。
絶縁材料の基本性質 — 気体絶縁材料と固体絶縁材料、そしてボイドが弱点になる理由
ここまで見てきたCVケーブルの絶縁体(架橋ポリエチレン)や絶縁油は、いずれも液体・固体の 絶縁材料だった。電力設備には、SF6ガスや空気のように気体を絶縁に使う場面も多い。 気体絶縁材料は、液体・固体絶縁材料と比較すると、一般に電気抵抗率・誘電率が低いという 性質を持つ。絶縁破壊強度(どれだけの電界に耐えられるか)についても、気体絶縁材料は 液体・固体絶縁材料より一般に低いが、気圧を高める(加圧する)か、真空状態にすることで 絶縁破壊強度を高められるという性質がある。GISがSF6ガスを大気圧より高く加圧して使うのは、 この性質を利用したものだ。
もう一つ、絶縁材料の弱点として押さえておきたいのがボイド(空隙)だ。固体絶縁材料の 内部に、製造上の理由などで微小な空隙(ボイド)が生じることがある。このボイドの中は空気 などの気体で満たされており、周囲の固体絶縁材料よりも誘電率が低い。
ここで、電界がボイドと周囲の固体絶縁材料を直列に通り抜けると考えると、コンデンサを 直列接続したときと同じ関係が成り立つ。直列に配置された誘電体では、同じ電束密度に対して、 誘電率が低い部分ほど電界強度が高くなる。つまり、誘電率の低い気体で満たされたボイドの 部分には、周囲の固体絶縁材料よりも強い電界が集中してしまう。
制御盤・受変電設備の実務との接点
電材商社の見積もりでケーブルの太さを選定する場面では、許容電流表の数値を単独で 見るのではなく、「どの布設方式が指定されているか」「まとめて何本布設するか」まで 確認しないと、実際の現場で許容電流が不足する選定をしてしまう。CVケーブルの断面構造を 理解していれば、なぜ布設条件によって同じ太さでも許容電流が変わるのかを、 お客様にも筋道立てて説明できる。
冒頭の「同じ100A用でも太さが変わる」理由の答え合わせは、 理解度チェックの最後の問題でしてみよう。