太陽光発電所には、パネルとセットで必ず「パワーコンディショナ」という機器が置かれている。 一方、水力発電所や火力発電所の発電機には、そんな機器は付いていない。
同じ「発電」なのに、なぜ太陽光にはパワーコンディショナが必須で、水力・火力には要らないのか。 そして、太陽光発電の設備には必ず「系統が停電したら自動的に発電を止める」保護機能が 組み込まれているが、これはいったい何を防ぐためのものなのか。
このトピックを読み終えるころには、新エネルギー発電が抱える特有の課題と、 それを解決するために置かれている機器の役割を、仕組みから説明できるようになっている。
種明かしは、新エネルギー発電の多くが従来の回転機とは違う原理で電気を作っているという 一点にある。
新エネルギー発電とは — 電力科目でおさえる範囲
「電力」科目でいう新エネルギー発電は、太陽光・風力・バイオマス・地熱・中小水力・燃料電池 といった、水力・火力・原子力という従来の主力電源とは異なる方式の発電を指す。試験で問われる のは、発電設備そのものの構造よりも、これらの発電方式が持つ電気的な特性と、それが 系統連系(電力系統への接続)にどう影響するかという点だ。
発生する電気の種類が違う — 直流を出すもの、交流を出すもの
水力・火力・原子力は、いずれもタービンで発電機(同期発電機)を回して交流を直接発生させる。 これに対して、太陽光は光電効果、燃料電池は化学反応という回転を伴わない原理で発電するため、 どちらも直流の電気を発生させる。
風力発電機はブレードで発電機を回す回転機なので、原理的には交流を発生させる。ただし風速に よって回転数が変動するため、そのまま系統につなぐと周波数がずれてしまう。そこで多くの大型 風車では、いったん整流して直流に変換し、インバータで系統周波数に同期した交流へ再変換 する方式(可変速風車)が採用されている。
地熱発電とバイオマス発電 — 熱源・燃料の性質から仕組みを見る
太陽光・風力・燃料電池と並んで新エネルギー発電に分類される地熱発電・バイオマス発電は、 発生する電気の種類(直流か交流か)ではなく、熱源・燃料が何かという点に特徴がある。
地熱発電は、地下深くにあるマグマ由来の熱で温められた地下水を、井戸を通じて蒸気として 取り出し、その蒸気で直接タービンを回して発電する方式だ。単に温泉の熱を利用するのではなく、 「地下から取り出した蒸気でタービンを回す」という点は火力・原子力の汽力発電と共通している。 発電に適した地熱資源(高温の熱水・蒸気だまり)は、火山活動が盛んな地域に集中して分布する ため、地熱発電所の立地も火山地域に偏っている。
バイオマス発電は、植物や動物が生成・排出する有機物を由来とする燃料を利用する発電 方式だ。燃料の形態は一様ではなく、間伐材や木くずを固めた固形化燃料(木質ペレットなど)や、 家畜の排せつ物を発酵させて作る気体燃料(バイオガス)などがある。燃料は化石燃料と同じく 燃焼させて熱を得るが、成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収した植物などに由来するため、 ライフサイクル全体で見た二酸化炭素の増減が化石燃料とは異なる(カーボンニュートラルの 考え方)とされている。
誘導発電機 — 小水力・風力で使われるもう一つの発電機
水力・火力・原子力の大規模発電所では、界磁に直流を流して励磁する同期発電機が主流だ。 これに対して、小水力発電や一定速方式の風力発電などでは、モーターとしても使われる 誘導機をそのまま発電機として使う誘導発電機が採用されることがある。
同期発電機と比べたときの誘導発電機の特徴は次の通り。
- 励磁装置が不要: 同期発電機は界磁巻線に直流電流を流す励磁装置が必須だが、誘導発電機は 回転子側に別途励磁電源を持たない。その分、構造がシンプルで保守もしやすい。
- 系統への並列操作が容易: 同期発電機は系統と電圧・周波数・位相を合わせる同期投入操作 (検定)が必要だが、誘導発電機は回転速度を同期速度よりわずかに高くして接続するだけでよく、 並列(系統への接続)操作の負担が小さい。
- ただし単独では発電できない: 誘導発電機は、磁束を作るための励磁電流(無効電力)を 自前で発生できず、系統側から供給してもらって初めて発電できる。したがって電力系統に 接続された状態でなければ発電を維持できず、単独運転はできない。
パワーコンディショナ(PCS)の役割
太陽光発電のパネルが発生する直流電力を、系統で使える交流に変換し、電圧・周波数・位相を 系統側に同期させる機器がパワーコンディショナ(PCS、インバータ)だ。あわせて、パネルの 発電量が最大になる動作点を追いかける最大電力点追従(MPPT)や、力率の調整も担っている。
出力変動という新エネルギー特有の課題
太陽光・風力は、天候・日照・風速という制御できない要因で出力が刻々と変わる。この出力変動は、 系統全体の電圧・周波数を一定に保つ運用にとって新たな負担になる。特に配電線の末端に太陽光 発電設備が集中すると、逆潮流によって配電線の電圧が上昇し、他の需要家の機器に影響を与える おそれがある。
系統連系のための保護 — 逆潮流と単独運転
新エネルギー発電を系統につなぐ(系統連系する)際には、次の2つの現象を区別して理解しておく 必要がある。
逆潮流は、発電量が需要を上回ったときに、余った電力が上位系統へ流れる正常な現象だ。 一方単独運転は、系統側が事故や工事で停電しているにもかかわらず、太陽光発電設備などの 分散電源だけが電力を供給し続けてしまう異常現象を指す。停電しているはずの線路に電気が 流れていると、復旧作業をする作業員が感電する危険があるため、系統連系する設備には単独運転を 検出して発電を止める(解列する)保護機能が義務づけられている。
電材業界での位置づけ
電材商社にとって、パワーコンディショナや系統連系保護装置(逆電力継電器など)、蓄電池付帯 機器は、太陽光・蓄電池案件で扱う機会が増えている品目群だ。単に「必要だから納める」のでは なく、なぜその機器が回路上必要なのかを説明できると、選定や見積もり時の顧客への提案の質が 変わる。
冒頭の「なぜパワーコンディショナが必須で、なぜ停電検知で発電を止める機能が付いているのか」 ——答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。