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電力 ・ 4 / 16

新エネルギー発電の位置づけ

読み終えると、こうなる

太陽光発電所や自家消費用パワーコンディショナを見たとき、なぜインバータが必須で、なぜ系統事故時に発電を止める保護機能が付いているのかを、発電の仕組みから説明できるようになる

  • 太陽光・燃料電池・風力それぞれの発電方式が直流を発生するか交流を発生するかを説明でき、パワーコンディショナ(PCS)が担う直流→交流変換・系統同期の役割もあわせて説明できる
  • 逆潮流と単独運転という紛らわしい2つの用語を、正常現象と異常現象として区別できる
  • 小水力・風力で使われる誘導発電機の特徴を、同期発電機との違い(励磁装置の要否・並列操作・単独発電の可否)から説明できる
  • 地熱発電・バイオマス発電それぞれの熱源・燃料の性質を説明できる
考えてみよう

太陽光発電所には、パネルとセットで必ず「パワーコンディショナ」という機器が置かれている。 一方、水力発電所や火力発電所の発電機には、そんな機器は付いていない。

同じ「発電」なのに、なぜ太陽光にはパワーコンディショナが必須で、水力・火力には要らないのか。 そして、太陽光発電の設備には必ず「系統が停電したら自動的に発電を止める」保護機能が 組み込まれているが、これはいったい何を防ぐためのものなのか。

このトピックを読み終えるころには、新エネルギー発電が抱える特有の課題と、 それを解決するために置かれている機器の役割を、仕組みから説明できるようになっている。

種明かしは、新エネルギー発電の多くが従来の回転機とは違う原理で電気を作っているという 一点にある。

新エネルギー発電とは — 電力科目でおさえる範囲

「電力」科目でいう新エネルギー発電は、太陽光・風力・バイオマス・地熱・中小水力・燃料電池 といった、水力・火力・原子力という従来の主力電源とは異なる方式の発電を指す。試験で問われる のは、発電設備そのものの構造よりも、これらの発電方式が持つ電気的な特性と、それが 系統連系(電力系統への接続)にどう影響するかという点だ。

発生する電気の種類が違う — 直流を出すもの、交流を出すもの

水力・火力・原子力は、いずれもタービンで発電機(同期発電機)を回して交流を直接発生させる。 これに対して、太陽光は光電効果、燃料電池は化学反応という回転を伴わない原理で発電するため、 どちらも直流の電気を発生させる。

風力発電機はブレードで発電機を回す回転機なので、原理的には交流を発生させる。ただし風速に よって回転数が変動するため、そのまま系統につなぐと周波数がずれてしまう。そこで多くの大型 風車では、いったん整流して直流に変換し、インバータで系統周波数に同期した交流へ再変換 する方式(可変速風車)が採用されている。

地熱発電とバイオマス発電 — 熱源・燃料の性質から仕組みを見る

太陽光・風力・燃料電池と並んで新エネルギー発電に分類される地熱発電・バイオマス発電は、 発生する電気の種類(直流か交流か)ではなく、熱源・燃料が何かという点に特徴がある。

地熱発電は、地下深くにあるマグマ由来の熱で温められた地下水を、井戸を通じて蒸気として 取り出し、その蒸気で直接タービンを回して発電する方式だ。単に温泉の熱を利用するのではなく、 「地下から取り出した蒸気でタービンを回す」という点は火力・原子力の汽力発電と共通している。 発電に適した地熱資源(高温の熱水・蒸気だまり)は、火山活動が盛んな地域に集中して分布する ため、地熱発電所の立地も火山地域に偏っている。

バイオマス発電は、植物や動物が生成・排出する有機物を由来とする燃料を利用する発電 方式だ。燃料の形態は一様ではなく、間伐材や木くずを固めた固形化燃料(木質ペレットなど)や、 家畜の排せつ物を発酵させて作る気体燃料(バイオガス)などがある。燃料は化石燃料と同じく 燃焼させて熱を得るが、成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収した植物などに由来するため、 ライフサイクル全体で見た二酸化炭素の増減が化石燃料とは異なる(カーボンニュートラルの 考え方)とされている。

地熱発電とバイオマス発電は、どちらも「地下から取り出した蒸気」「植物・動物由来の有機物」 という、太陽光・風力とは異なる独自の熱源・燃料を持つ点で共通している。太陽光・風力が 「発生する電気の種類(直流/交流)」で整理される発電方式だったのに対し、地熱・バイオマスは 「熱源・燃料が何に由来するか」で整理すると理解しやすい。

誘導発電機 — 小水力・風力で使われるもう一つの発電機

水力・火力・原子力の大規模発電所では、界磁に直流を流して励磁する同期発電機が主流だ。 これに対して、小水力発電や一定速方式の風力発電などでは、モーターとしても使われる 誘導機をそのまま発電機として使う誘導発電機が採用されることがある。

同期発電機と比べたときの誘導発電機の特徴は次の通り。

  • 励磁装置が不要: 同期発電機は界磁巻線に直流電流を流す励磁装置が必須だが、誘導発電機は 回転子側に別途励磁電源を持たない。その分、構造がシンプルで保守もしやすい。
  • 系統への並列操作が容易: 同期発電機は系統と電圧・周波数・位相を合わせる同期投入操作 (検定)が必要だが、誘導発電機は回転速度を同期速度よりわずかに高くして接続するだけでよく、 並列(系統への接続)操作の負担が小さい。
  • ただし単独では発電できない: 誘導発電機は、磁束を作るための励磁電流(無効電力)を 自前で発生できず、系統側から供給してもらって初めて発電できる。したがって電力系統に 接続された状態でなければ発電を維持できず、単独運転はできない。
「励磁装置が不要=構造が簡単」という長所と、「励磁電流を系統からもらう=単独では 発電できない」という制約は、同じ1つの事実(誘導発電機は自前の励磁手段を持たない)の 表と裏にすぎない。片方だけを覚えると比較問題で誤答するので、セットで理解しておく。

パワーコンディショナ(PCS)の役割

太陽光発電のパネルが発生する直流電力を、系統で使える交流に変換し、電圧・周波数・位相を 系統側に同期させる機器がパワーコンディショナ(PCS、インバータ)だ。あわせて、パネルの 発電量が最大になる動作点を追いかける最大電力点追従(MPPT)や、力率の調整も担っている。

「発電機を回す方式=交流」「回さない方式(光・化学反応)=直流」という原理から考えれば、 どの発電方式にパワーコンディショナが必要かは、覚えなくても導き出せる。太陽光・燃料電池は 必ず必要、風力は回転数変動の吸収のために事実上必要、水力・火力・原子力は不要——という 整理になる。

出力変動という新エネルギー特有の課題

太陽光・風力は、天候・日照・風速という制御できない要因で出力が刻々と変わる。この出力変動は、 系統全体の電圧・周波数を一定に保つ運用にとって新たな負担になる。特に配電線の末端に太陽光 発電設備が集中すると、逆潮流によって配電線の電圧が上昇し、他の需要家の機器に影響を与える おそれがある。

系統連系のための保護 — 逆潮流と単独運転

新エネルギー発電を系統につなぐ(系統連系する)際には、次の2つの現象を区別して理解しておく 必要がある。

逆潮流は、発電量が需要を上回ったときに、余った電力が上位系統へ流れる正常な現象だ。 一方単独運転は、系統側が事故や工事で停電しているにもかかわらず、太陽光発電設備などの 分散電源だけが電力を供給し続けてしまう異常現象を指す。停電しているはずの線路に電気が 流れていると、復旧作業をする作業員が感電する危険があるため、系統連系する設備には単独運転を 検出して発電を止める(解列する)保護機能が義務づけられている。

逆潮流と単独運転は、どちらも「発電設備から系統側へ電気が流れる」場面を指す言葉で紛らわしい。 先に「正常現象か、異常現象か」で分けてから、逆潮流=正常(余剰電力の供給)、単独運転=異常 (停電中の誤供給)という対応を当てはめると混同しない。

電材業界での位置づけ

電材商社にとって、パワーコンディショナや系統連系保護装置(逆電力継電器など)、蓄電池付帯 機器は、太陽光・蓄電池案件で扱う機会が増えている品目群だ。単に「必要だから納める」のでは なく、なぜその機器が回路上必要なのかを説明できると、選定や見積もり時の顧客への提案の質が 変わる。

冒頭の「なぜパワーコンディショナが必須で、なぜ停電検知で発電を止める機能が付いているのか」 ——答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 「新エネルギー発電はすべて直流を発生する」と一般化してしまう

    なぜ引っかかる太陽光・燃料電池が直流という代表例が印象に残りやすく、そのまま新エネルギー発電全般に広げて覚えてしまう。だが風力発電機は同期発電機・誘導発電機で交流を発生させる回転機である。

    見破り方発電の物理原理に立ち返る。光電効果(太陽光)や化学反応(燃料電池)は直流を生むが、風車のように羽根を回して発電機を回す方式は交流を発生させる。ただし風力は回転数が変動するため、系統周波数に合わせるために直流を経由して再変換することが多い、という別の理由で変換機器が必要になる。

  2. 単独運転防止装置の目的を「発電量を最大化するため」と誤解する

    なぜ引っかかる名前だけを見ると発電の制御に関する装置に思えてしまい、安全のための保護装置であることを見落とす。

    見破り方系統が停電した区間に、太陽光発電設備などがそれと気づかず電力を供給し続けたらどうなるかを考える。停電したはずの線路に電気が流れていると、復旧作業をする作業員が感電する危険がある。単独運転防止は、この危険を防ぐための保安装置だと考えれば目的を取り違えない。

  3. 逆潮流と単独運転を、どちらも「系統への電力供給」に関する似た言葉として混同する

    なぜ引っかかる両方とも分散電源から系統側へ電気が流れる場面を指す用語で、名前の響きも近い。

    見破り方逆潮流=需要より発電が多く、余剰電力が上位系統へ流れる正常現象。単独運転=系統が停電しているのに発電設備側だけが動き続ける異常現象。「正常か異常か」で先に切り分けてから、それぞれの定義を当てはめる。

  4. 誘導発電機を「構造が簡単だから単独でも発電できる」と誤解する

    なぜ引っかかる励磁装置が不要という長所だけを覚えると、その装置がないことの裏返し(励磁のための無効電力を自前で作れない)を見落とし、単独でも発電できると誤って判断してしまう。

    見破り方誘導発電機は磁束を作るための励磁電流を、系統側から無効電力として供給してもらって初めて発電できる。系統から切り離された状態(単独運転)では励磁できないため発電を維持できない、という順序で理解すれば取り違えない。

  5. 地熱発電を「地下水や温泉水をそのまま汲み上げて使うだけ」、バイオマス燃料を「動植物由来なら形態を問わず同じ」と大まかに理解してしまう

    なぜ引っかかる地熱発電は地下から取り出した蒸気(または熱水を減圧して発生させた蒸気)でタービンを回す方式であり、単に温泉水の熱を直接利用するわけではない。またバイオマス燃料は木くずの固形化燃料や家畜排せつ物由来の気体燃料など由来・形態がいくつかに分かれており、ひとまとめに覚えると穴埋め問題で語群を取り違える。

    見破り方地熱発電は「地下から取り出した蒸気でタービンを回す、火山地域に適地が多い発電方式」という一文で説明できるかを確認する。バイオマス燃料は「植物・動物が生成・排出する有機物由来」という原則を軸に、木くず→固形化燃料、家畜排せつ物→気体燃料(バイオガス)、というように由来と形態をペアで覚える。

参考文献・出典

理解度チェック(8問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、8問で確認しよう。 内訳は基本5問・応用1問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 8 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 新エネルギー発電は太陽光・燃料電池など直流を発生させるものが多く、系統に流すにはパワーコンディショナ(インバータ)での交流変換が必須
  2. 風力は交流を発生させる回転機だが、回転数が風速で変動するため、多くはいったん直流に変換してから系統周波数に合わせて再度交流に変換する
  3. 出力が天候・日照・風速に左右され不安定(出力変動)で、これが系統側の電圧・周波数維持の課題になる
  4. 余剰電力が上位系統へ流れる逆潮流は正常現象、系統停電時に発電設備側だけが電力を供給し続ける単独運転は保安上の異常現象で、区別して覚える
  5. 小水力・風力の一部では、構造が簡単な誘導発電機も使われる。励磁装置が不要で系統への並列操作は容易だが、励磁のための無効電力を系統から得るため単独では発電できない
  6. 地熱発電は地下から取り出した蒸気(火山地域に多く分布する地熱資源)でタービンを回す発電方式。バイオマス発電は、植物や動物が生成・排出する有機物(木くず・家畜排せつ物など)から得られる燃料を利用する発電方式で、木くず由来の固形化燃料や排せつ物由来の気体燃料など燃料の形態も複数ある
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